Vol.503.眼球運動障害と脳卒中 -視機能の基礎を学ぼう-
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!! PDFでもご覧になれます。→PDF
カテゴリー
タイトル
●眼球運動障害と脳卒中~視機能の基礎を学ぼう~
●原著はEyes and stroke: the visual aspects of cerebrovascular diseaseこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●臨床において、眼球運動障害、視野欠損、視空間認知の問題を有する患者に関わることが多く、その基礎を学ぶために本論文に至る。
内 容
背景
●中枢神経系の大部分は視力に影響しているため、脳卒中は何らかの形で視覚障害を伴う可能性が高くなります。このレビューでは、脳卒中の視覚的側面について説明します。
脳卒中患者の眼球運動障害の基礎
●求心性または遠心性視覚経路に沿った血管の閉塞は、一過性の単眼視力喪失、視野欠損または眼球運動障害を含む無数の影響を引き起こす可能性があります。脳卒中による視覚への影響を理解するには、まずは血液供給に関連する視覚系の生理学的構造を理解する必要があります。
●【視交叉前の視覚経路】は眼動脈と内頸動脈の毛細血管によって供給されます。眼動脈の枝である【網膜中心動脈】は、網膜への血液供給を提供します。
●【視交叉後部の視覚経路】は、視交叉から視覚野までの領域を含み、主に前大脳動脈によって供給され、外側膝状体へ移動します。内頸動脈の枝である前大脳動脈と後大脳動脈の枝である【外側後大脳動脈】は、外側膝状体に二重血管供給を提供します。
●【後頭葉皮質】は主に脳底動脈からの末端枝である後大脳動脈によって供給されます。
●【複視】は、右側の脳卒中と左側の脳卒中で等しく発生します。複視は、Ⅲ、ⅣまたはⅥ番目の脳神経麻痺またはskew deviation(斜偏倚)のいずれかによる水平または垂直の眼球のずれの結果である可能性があります。
●Roweらによって実施された前向き多施設観察症例コホート研究では、脳卒中後の患者の16.5%が複視と眼球のずれを持っていることがわかりました。
●円滑な追跡運動の障害は、同側の後頭-頭頂部の病変によって引き起こされる可能性があります。
●右後頭-頭頂部は、右外側直筋と左内側直筋の活性化を伴う右水平の追跡運動に関与します。
眼球運動障害への介入・管理
●脳卒中後の眼球運動障害の管理には、機能回復、代償的手段の獲得、代替的手段の検討を含む複数の介入手法があります。
●複視に関して、Roweは脳卒中を起こした患者の約50%に複視の訴えがなく、見逃される可能性があることを考慮して、急性期脳卒中および回復段階のリハビリテーション中に視能訓練士の紹介を推奨し、斜視と複視を評価および管理したと報告しています。
私見・明日への臨床アイデア
●視覚は本人でないので、どのように見えているのか捉えづらい。しかし、視覚・眼球運動の基礎を学んでいくことで、脳画像等からの予測やどのような症状があるのか理解していればシンプルなスクリーニング評価の仕方のアイデアも思いつきやすくなる。
●視機能訓練士が同施設内に在籍する場合は、視機能の専門家のため助言を仰ぐこと重要である。