4AT-Jの実施方法とカットオフ|せん妄評価・他尺度との使い分け・最新エビデンス
4AT-J
せん妄スクリーニング
「昨日と違う」を、見逃さない。
静かに眠っている人にも、せん妄は起こります。4項目の内訳と「いつから変わったか」を合わせ、原因の評価とケアへつなぐための実践ガイドです。

所要時間と、臨床での進め方
初めて担当するときの流れ
入室時から覚醒を観察→短い認知課題→家族や記録で急性変化を確認→合計と各項目を申し送る。例えば、前日まで会話できた人が当日傾眠。点数と同時に「いつから・普段との差・変動」を伝え、原因評価につなぐ。
最初に、点数と次の行動を結びつける
| 合計 | 意味 | その場で行うこと |
|---|---|---|
| 4〜12点 | せん妄の可能性。認知機能障害を伴うこともある。 | 内訳と急性変化を医療チームへ共有し、診察・原因評価につなぐ。 |
| 1〜3点 | 認知機能障害の可能性。 | 普段の状態と比較。急な変化があれば点数に関係なく評価を続ける。 |
| 0点 | この時点では示唆する所見が乏しい。 | 項目④の情報が十分か確認。新しい変化があれば再評価する。 |
準備|普段の状態を知る人につながる
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患者側の条件を整える
眼鏡・補聴器を確認し、静かな場所で一人ずつ話します。失語や難聴があれば記録。回答を助けるつもりで正答を教えません。
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普段と直近24時間を聞く
家族や病棟に「いつから変わりましたか」「昨日の食事・会話はどうでしたか」「夜間に混乱はありましたか」と確認します。情報源と確認時刻も残します。
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原票に実際の回答と観察を書く
使用版は日本語版Ver 1.0。合計だけでなく、AMT4の回答、逆唱の発言、覚醒の様子、変化の具体例を残します。

4項目の実施と採点

以下は公式日本語版の区分に沿った解説です。[1]
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① 覚醒度:0点または4点
評価中、十分に覚醒して落ち着いていれば0点。起きた直後だけの軽い眠気が10秒以内に解消する場合も0点です。明らかな強い眠気や興奮・多動は4点。氏名の答えを間違えたこと自体を、覚醒度の異常とはしません。
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② AMT4:0・1・2点
年齢、生年月日、場所(病院・建物名)、今日の日付を尋ねます。全て正解0点、誤り1つは1点、2つ以上または実施困難は2点。英語版の「現在の年」と混ぜず、日本語版の「今日の日付」で行います。
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③ 注意力:0・1・2点
「今からいう単語をうしろ(逆)から言って下さい」と伝え、「セカイチズ」を逆唱してもらいます。正答は「ズ・チ・イ・カ・セ」。5文字が正しい位置・音節なら0点、誤りが1〜2つまたは途中で辞退は1点、誤り3つ以上または実施困難は2点です。実施困難の背景も書きます。
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④ 急な変化・変動:0点または4点
覚醒・認知・精神機能の著しい変化や変動が2週間以内に生じ、直近24時間にも明らかに残っていれば4点。該当する変化がなければ0点です。情報未確認は「変化なし」と区別して記載し、総点だけで陰性を確定しません。
3つの採点例|同じ4点でも対応の焦点が違う
日中は答えられるが、昨夜から混乱
- 内訳
- 覚醒0+AMT4 0+注意0+急性変化4=4点。
- 読み方
- 今の受け答えが良くても、直近24時間の明らかな変動を拾った結果。
- 次の行動
- 夜間の言動、開始時刻、持続時間、薬の変更や身体症状をまとめて報告。日中の正常な回答だけで終了しません。
認知症があり、普段から回答が難しい
- 内訳
- 0+2+2+0=4点。
- 読み方
- 慢性の認知障害が加点へ影響した可能性。
- 次の行動
- 「いつもと同じ」を家族・記録で確認。普段より食べない、反応が遅いなどの新情報がないか照合します。
昨日から眠気が強く、課題を始められない
- 内訳
- 4+2+2+4=12点。
- 読み方
- 覚醒低下と急性変化が重なる。静かな低活動型でも迅速な評価が必要。
- 次の行動
- 全身状態を確認して連絡。予定していた高負荷の練習を進める前に、原因と実施可能な活動を医療チームで判断します。
陽性後の対応|連絡・原因確認・ケアを並行する
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点数に「変化」を添えて報告する
例:「14時、4AT-J 8点(0/2/2/4)。昨日は会話が続きましたが、今日は応答が途切れます。看護師に昨夜からの混乱を確認しました」。この形なら、次の担当者が判断に必要な情報を受け取れます。
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原因を調べる情報を集める
職種の範囲でバイタル、呼吸状態、発熱、食事・水分、排尿・排便、痛み、睡眠、薬の変更を確認します。診断と治療は医療チームへつなぎます。
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その人が参加できる条件をつくる
短い説明、時計・カレンダー、なじみのある人、眼鏡・補聴器を活用。睡眠を妨げる刺激を減らし、水分・栄養は嚥下や循環の制約に合わせます。全員を一律に臥床させず、状態に応じた離床を検討します。
これらはNICEの多面的な予防・管理の推奨に沿う対応です。[4]

点数が予測すること/しないこと
4AT-Jの4点以上は、現在のせん妄の可能性を評価するための境界です。「せん妄になる未来の確率」や「退院までの日数」の点数ではありません。8点から4点への低下も、障害が50%改善した意味にはなりません。内訳のどこが変化し、普段の活動にどれだけ戻ったかを追います。
日本語版の検証:65歳以上150人
Hasegawaら(2022)は日本語版を検証し、4点を閾値とする妥当性を報告しました。日本語版を使う直接の根拠です。海外版の研究値は、別の集団・言語の情報として読み分けます。[3]
4AT全般の診断精度:感度・特異度とも約88%
Tiegesら(2021)の17研究・3,702評価のメタ解析では、統合感度88%、特異度88%でした。感度88%は「陽性者の88%がせん妄」という意味ではありません。[5]
2026年巻の認知症集団のメタ解析
Keaneらは認知症を伴う人での性能を検討しました。基礎の認知障害がある集団では特異度が低くなりやすいため、陽性後に普段との違いを確かめる実務が一層重要です。[6]
他尺度との使い分け・再評価
| 評価 | 4AT-Jと違う役割 |
|---|---|
| CAM | 急性発症・変動、注意障害などの特徴の組み合わせで判定。単純合計ではない。 |
| CAM-ICU/ICDSC | NICEがICU・術後回復室で推奨する評価経路。 |
| RASS | 興奮・鎮静の程度を共有。0だからせん妄なし、ではない。 |
| HDS-R・MMSE・MoCA | 認知機能の評価。急性期の低値から慢性の認知症の程度を決めない。 |
| CAT-R | 状態が安定してから、注意をさらに詳しく調べる。 |
ICUでの使い分けはNICEに従います。[4]
再評価では時刻、睡眠、薬剤・処置、補聴器、急性変化の情報源をそろえて記録します。日常観察と状態変化時の評価を組み合わせ、合計が下がったかだけでなく、食事・会話・睡眠が普段へ戻ったかを確認します。
反復評価を支える2025年の研究
McCartneyらはせん妄のある高齢入院患者で、回復過程における4ATの反復評価を検討しました。経過観察に使う根拠になりますが、日本語版の「何点改善すれば回復」という最小重要差を定めた研究ではありません。[7]
検査結果を、生活の支援へ残す
実施条件・観察・試した支援を整理する、STROKE LAB独自の臨床メモです。
既存の記録補助PDFです。正式な検査用紙や採点表の代わりではありません。
4AT © MacLullich, Ryan, Cash. CC BY 4.0。日本語版Ver 1.0に基づき解説・図を再構成しています。原票の配布元は4AT公式サイトです。
参考文献・実施資料
- 4AT公式.日本語版Ver 1.0(配布ページ・原票).
- 4AT公式.User guide and scoring.
- Hasegawa T, et al. Reliability and validity of the Japanese version of the 4A’s Test for delirium screening in the elderly patient. Asian J Psychiatr. 2022;67:102918.
- NICE. Delirium: prevention, diagnosis and management. CG103, Recommendations(2023年更新).
- Tieges Z, et al. Diagnostic accuracy of the 4AT for delirium detection in older adults: systematic review and meta-analysis. Age Ageing. 2021;50:733–743.
- Keane A, et al. 4AT screening for delirium in dementia: meta-analysis of diagnostic performance. Dement Neuropsychol. 2026;20:e20250378.
- McCartney H, et al. Validation of the 4AT for assessing recovery from delirium in older hospital patients. Age Ageing. 2025;54:afaf166.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)