標準高次動作性検査(SPTA)とは?13項目・採点の読み方と失行の臨床評価
SPTA
標準高次動作性検査
動作が難しい理由を、条件を変えて探る。
言葉では止まる、見本なら動ける、実物を持つと使える。動作が変わる条件を見つけ、本人に必要な生活動作で再現できる手がかりにします。

所要時間と、臨床での進め方
初めて担当するときの流れ
口頭指示では検者が動作を見せない。模倣では見本提示という条件を記録。実物品条件と混ぜず、誤りの形・順序・自己修正を観察。麻痺、失調、感覚、理解の影響も別記する。
SPTAで、何を分けて考えるか
SPTA(Standard Performance Test for Apraxia)は、失行症を中心とする高次動作性障害を調べる日本の検査です。2003年の改訂第2版では、麻痺・失語の影響と誤反応得点の扱いを再検討したプロフィールが追加されています。[1]
歯ブラシを握れるのに、毛先を歯へ向けられない。着替えの説明はできるのに、袖の操作が進まない。こうした場合は、力、感覚、言語理解、物の認識と、目的動作の組み立てを分けて調べます。非麻痺側の手でも失行が現れることがあります。[2]
13項目の全体像
| 領域 | 正式項目と観察の焦点 |
|---|---|
| 顔面 | 顔面動作/物品を使う顔面動作。随意動作と物がある条件。 |
| 片手・両手 | 上肢(片手)慣習的動作/手指構成模倣/上肢(両手)客体のない動作。身振り、手の形、両手の関係。 |
| 連続・系列 | 上肢(片手)連続動作/上肢・系列的動作。切り替えと順序。 |
| 着衣・物品 | 上肢・着衣動作/上肢・物品を使う動作/下肢・物品を使う動作。身体・物・対象の関係。 |
| 描画・構成 | 上肢・描画(自発)/上肢・描画(模倣)/積木テスト。形と位置関係の構成。 |
13項目を5群にまとめて表示しています。着衣・構成の不良には視空間や注意も関わるため、各項目を一つの失行の診断名へ置き換えるものではありません。[1]
実施|成功・失敗のほかに、動作のどこが違うかを書く
-
基本機能と使用手を確認
筋力・可動域・痛み・失調、触覚・位置覚、視野、言語理解を確認。病前の利き手と道具の経験、使用手を残します。
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項目ごとの正式条件で実施
正規マニュアルの教示、提示、実施側、反復・時間・採点の規則にそろえます。口頭指示、模倣、物品の条件を自己流の順で全項目へ適用しません。
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反応を動作の言葉で記録
「握りを3回変えた」「毛先を逆へ向けた」「次の工程へ移らず反復した」など、観察できる事実を書く。麻痺や理解困難で未実施なら理由を残します。
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採点後に、支援を一つずつ比較
別の生活課題で見本、実物、対象の提示、物品数の整理を試します。補助後の成功は標準得点に混ぜず、「何を示すとできたか」として記録します。

採点と解釈|「実物でできる」の意味を読む
SPTAは誤反応得点とプロフィールで読みます。誤反応点の増加を改善と読まず、実施条件・側・領域ごとの変化を確認します。13項目を各1点として合算する方式ではありません。全体の一律カットオフより、どの動作がどの条件で崩れるかが、支援に直結します。[1]
| 反応の組み合わせ | 次に考えること | 生活で使う候補 |
|---|---|---|
| 口頭指示で難しい/模倣でできる | まず言語理解。見本からの動作は使えているか。 | 短い言葉と一回の見本。 |
| 道具なしで難しい/実物で改善 | 実物の形・触覚・対象が手がかりになるか。 | 慣れた道具と、使う対象を一緒に提示。 |
| 単一動作はできる/系列で抜ける | 工程の保持・切り替え・終了判断も確認。 | 一工程ずつの提示、終了した道具を片づける。 |
| 見本でも手の形が崩れる | 視空間、身体の位置関係、感覚・運動を確認。 | 見本の見え方を調整し、一部分ずつ比較。 |
条件差だけで観念性・観念運動性などの診断名を自動的に決めません。診断の検討と、いま使える手がかりの選択を並行します。[2]
結果から生活の何を見通せるか
実物使用で成績が保たれる人には、道具と対象を整えた生活場面で成功する余地があります。一方、系列的動作で抜けが多ければ、道具を使う瞬間だけでなく、準備・次の工程・片づけまで確認します。検査の点数は自立度の換算表ではありませんが、何を提示し、どの工程を見守るかを決める材料になります。
介入例|実物の手がかりと、工程の整理
パントマイムは曖昧だが、実物なら歯磨きが始まる
- 準備
- 普段の歯ブラシとコップを、本人が見つけやすい位置に置く。口腔・嚥下の条件に合わせます。
- 試す支援
- 最初は道具と対象を示し、短い言葉で目的を伝えます。動きが止まったら、説明を重ねる前にどの工程か確認。
- 促しを減らす
- 見本を毎回示す状態から、実物だけで始められるかへ進めます。
- 再評価
- 選択・準備・使用・終了の自力工程数、促し、翌日の再現性。
一つずつ使えるが、整容の途中で同じ操作を繰り返す
- 観察
- 歯磨き→洗顔→整髪のどこで切り替わらないか、終わりを認識しているかを見る。
- 試す支援
- その工程の物だけを出し、終えた物は終了トレーへ。次の物を一つ提示します。
- 本人へ戻す
- 本人が終了トレーへ置いて次の物を取れるように、移行の一工程を練習。
- 再評価
- 工程の抜け・反復、次へ移る促し、全体の完了時間。

他の評価・介入研究・再評価
| 評価 | 追加する目的 |
|---|---|
| TULIA/AST | 上肢の身振りの評価・スクリーニング。SPTAと同じ満点・基準ではない。 |
| VPTA・言語評価 | 物が分かるか、指示が伝わるか。 |
| CAT-R・BADS | 系列での保持・切り替え・計画を補う。 |
| 実際のADL | 介助量、手がかり、工程の完了を確認。 |
方略訓練の無作為化試験
Donkervoortらは失行のある左半球脳卒中患者113人で、作業療法に方略訓練を組み込む方法を検討しました。8週後のADLで有益な差がありましたが、5か月後には群間差は認められませんでした。実生活の動作と一緒に支援を練習し、その後も効果を確認する根拠です。[3]
近年のレビュー
Purcellらのレビューでは方略訓練やジェスチャー訓練が検討されていますが、根拠の確実性は限定的です。上記の具体例は個別に試す実践案として、本人のADLで効果を測ります。[4]
検査結果を、生活の支援へ残す
実施条件・観察・試した支援を整理する、STROKE LAB独自の臨床メモです。
既存の記録補助PDFです。正式な検査用紙や採点表の代わりではありません。
参考文献・実施資料
- 日本高次脳機能学会.標準高次動作性検査(SPTA).構成・改訂第2版・プロフィール作成.
- Dovern A, Fink GR, Weiss PH. Diagnosis and treatment of upper limb apraxia. J Neurol. 2012;259:1269–1283.
- Donkervoort M, et al. Efficacy of strategy training in left hemisphere stroke patients with apraxia: A randomised clinical trial. Neuropsychol Rehabil. 2001;11:549–566.
- Purcell S, et al. Interventions to improve the occupational performance of people with post stroke upper limb apraxia – A systematic review and meta-analysis.(オンライン公開2023年)

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)