CAT-Rとは?注意機能の評価内容・結果の読み方と生活への応用
CAT-R
標準注意検査法 改訂版
注意の弱点を、支援の手がかりに。
「注意が悪い」で終えず、何を減らすと動けるか、何を足すと崩れるかを見極めます。速さ・正確さ・時間による変化を並べて読むと、食事、家事、仕事への支援が具体的になります。

所要時間と、臨床での進め方
初めて担当するときの流れ
準備:視聴覚・使用手・疲労を確認。実施:各課題の正規練習と教示を使う。記録:正確さ、速さ、誤反応、経時変化を別記。生活:会話後に食事が止まるなら、会話・テレビなど一つの条件を変えて停止回数を見る。
何を調べ、どんなときに使うか
CAT-R(改訂版 標準注意検査法)は、脳損傷後の注意機能を複数の課題から評価する検査です。2022年の改訂版は5課題群で構成され、旧版にあったSDMTとPosition Stroopは含まれません。意欲・自発性を扱うCASとは役割が異なります。[1][2]
使いどころは「話しかけると食事が止まる」「説明を最後まで保てない」「作業の後半で抜けが増える」といった場面です。検査前に、困っている活動を一つ決めておきます。検査後は、その活動の条件を変えて確かめます。
実施の流れと、5つの課題の見どころ
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開始条件を整える
眼鏡・補聴器、教示理解、筆記・発話・ボタン操作を確認します。使用手、検査時刻、眠気、痛み、前夜の睡眠を記録。急な覚醒低下や変動がある日は、詳細な注意検査より全身状態の評価を先に行います。
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正規の課題で実施し、過程を残す
提示速度・練習・終了条件はCAT-Rの手順にそろえます。記録するのは正誤と時間に加え、停止した箇所、同じ対象への重複反応、自己修正、前半と後半の違いです。
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採点を確定してから、生活で支援を試す
検査中に独自のヒントを加えると元の成績が分からなくなります。支援の比較は検査後の別課題で行い、「補助なし」と「補助あり」を分けて残します。
| 課題群 | 何をしてもらうか | 臨床で見ること |
|---|---|---|
| Span | 聞いた数字や見た位置の系列を、指定の順序で再現する。 | 保てる長さ。聴覚と視覚、順唱と逆唱などの条件差。 |
| 抹消・検出 | 多数の刺激から標的を探して印をつける/聴覚の標的に反応する。 | 見落とし、標的以外への反応、所要時間、探索の左右差。 |
| Memory Updating | 次々に入る情報のうち、必要な直近の情報を保持し直す。 | 古い情報が残るか、途中から更新できなくなるか。 |
| PASAT | 続けて聞く数字について、隣り合う2つの和を順に答える。 | 提示についていけるか。聴力・計算・不安の影響も確認。 |
| CPT2 | 画面の刺激に、決められた条件でボタン反応を続ける。 | 反応の遅れ、見逃し、誤反応、反応時間の変動。 |
構成は現行の公式案内に基づきます。CPT2のX・AXは条件名であり、実際の刺激は数字です。[1][2]

PASATの考え方:例えば「4→2→5」なら「6→7」。直前の答え6に5を足す課題ではありません。これは仕組みを説明する創作例です。

点数は「正確さ・速さ・安定性」の順に読む
各指標を年齢などの適用条件に合うCAT-Rの基準と照合します。異なる単位の指標を足した「注意の総合点」は作りません。所要時間は長いほど負担を示しやすく、正答率は高いほど良好というように、数値の向きを先に確認します。[1]
| 結果の組み合わせ | 読み取る仮説 | 次の確認 |
|---|---|---|
| 正確だが遅い | 時間をかけて正確さを保っている可能性。 | 余裕がある家事と、時間制限がある作業で差が出るか。 |
| 速いが誤反応が多い | 標的の選別や反応を待つことが不安定な可能性。 | 一つ確認してから動く手順で誤りが減るか。 |
| 開始時は良いが後半で低下 | 持続、疲労、覚醒変動の影響を考える。 | 停止が増える時点と休憩後の戻り方。 |
| 単純条件は良好、更新や連続処理で低下 | 情報を保ちながら操作する負荷が高い可能性。 | 一度に伝える工程数を減らすと遂行が変わるか。 |
| 見落としが片側に集中 | 全般的注意だけでなく空間性の問題を考える。 | 視野とBIT・生活場面での探索。 |
点数から何を見通せるか
基準を下回る成績は、どの負荷をかけると遂行が崩れやすいかを探す手がかりです。特に、同時に行うことが増える、作業が長くなる、周囲から話しかけられる場面を優先して観察します。検査結果から直接「何日で復職」「一人で服薬可能」という確率や期限は算出できません。代わりに、その活動での抜け・所要時間・必要な支援を測ります。
介入例|食事の停止と、家事の工程抜け
以下は検査で立てた仮説を試す臨床例です。練習時間や目標値は個別に設定するもので、検査の判定基準ではありません。
会話が入ると、食事の手が止まる
- 観察
- 食事の最初の10分で、会話の後に手が止まる回数を記録。嚥下や食具操作自体の問題も確認します。
- 試す支援
- 次の同条件の食事ではテレビだけを消す。それでも会話で止まるなら、話す時間を一口の動作と分けます。
- 声かけ
- 「集中して」ではなく「次の一口を食べてから、お話を聞きますね」。
- 再評価
- 停止回数、再開に必要な声かけ、摂取量を比較。刺激を戻したときの状態も確認します。
洗濯はできるが、複数の指示で抜ける
- 観察
- 洗濯物を「分ける→入れる→開始する」のどこで抜けるか記録。
- 試す支援
- 一工程だけを示すカードを置き、終えたら裏返す。まず本人がカードを見て次へ移れるか確認します。
- 負荷を上げる
- 一工程が安定したら二工程へ。項目数と周囲の刺激を同時に増やしません。
- 再評価
- 自力で完了した工程数/全工程数、促しの回数、翌日の再現性。

他の検査との使い分けと、根拠の位置づけ
| 併用する評価 | 答えたい問い |
|---|---|
| 4AT-J | 注意低下は、普段と違う急な変化か。 |
| BIT | 見落としに空間的な偏りがあるか。 |
| BADS・DEX | 情報を捉えられても、自分で計画・確認できないのか。 |
| 記憶・言語評価 | 聞き取る/理解する/覚えることの影響はどれか。 |
現行版の構成と、旧版の研究を分ける
旧版CATの開発報告は標準化の背景を理解する資料です。CAT-Rで使う課題と判定は2022年改訂版に合わせます。古いウェブ記事のSDMTやPosition Stroopの値をCAT-Rの結果へ足しません。[3]
生活場面で注意への要求を調整する
脳卒中ガイドラインは、注意の問題が実際の活動へ及ぼす影響の評価と、妨害刺激や課題の要求を減らす対応を勧めています。机上練習の成績とともに、本人の活動が成立する条件を追います。[4]
検査結果を、生活の支援へ残す
実施条件・観察・試した支援を整理する、STROKE LAB独自の臨床メモです。
既存の記録補助PDFです。正式な検査用紙や採点表の代わりではありません。
参考文献・実施資料
- 日本高次脳機能学会.改訂版 標準注意検査法・標準意欲評価法(CAT-R・CAS).現行構成・プロフィール作成ソフト.
- Gakken.検査&リハ:日本版検査・教材の公式案内.
- 加藤元一郎ほか.標準注意検査法(CAT)と標準意欲評価法(CAS)の開発とその経過.高次脳機能研究.2006;26:310–319.旧版の開発報告.
- Intercollegiate Stroke Working Party. National Clinical Guideline for Stroke(2023): Rehabilitation and recovery – psychological effects of stroke.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)