【2026年版】ボルグスケール(Borg Scale)評価基準とリハビリ活用|RPE・CR10・中止基準を網羅
ボルグスケールを、臨床で正しく使いこなす。
RPE 6-20・CR10 の採点基準から、心臓リハビリ・呼吸器・脳卒中後リハビリの目標値、リハビリ中止基準まで。「患者に何点ですか?と聞くだけ」で終わらせない、臨床判断に直結する使い方を体系的に整理します。
要点5項目。
臨床現場で、こう出会う。
発症・経過:前壁中隔心筋梗塞後にPCI施行。左室駆出率(EF)42%。ビソプロロール(β遮断薬)・アスピリン・スタチン内服中。回復期リハビリ病棟に転床し、Phase IIの評価と運動指導のため理学療法士が介入開始。NYHA分類 II度。発症前は毎日30分のウォーキングを習慣としていた。
初回評価:安静時HR 58/分・BP 118/74mmHg・SpO₂ 97%。運動耐容能の評価目的で6分間歩行試験(6MWT)を計画。β遮断薬内服中のため「心拍数ではなくRPEを主要モニタリング指標とする」と判断し、ボルグスケールを導入することになった。
この場面で療法士が最初に直面する問いは「どのスケールを使うか」「何点が目標か」「いつ中止するか」の3点です。これらすべてに根拠を持って答えられるようになることが、この記事の目標です。
定義と開発背景、2種類の違い。
ボルグスケール(Borg Scale)は、スウェーデンの運動心理学者グンナー・ボルグ博士(ストックホルム大学)が開発した、運動中の主観的労作強度(RPE:Rating of Perceived Exertion)を数値化するツールです。1970年に「6-20スケール(RPEスケール)」がScand J Rehabil Medに発表され、1982年に「CR10スケール(0-10スケール)」がMed Sci Sports Exercに追加発表されました。

当時の運動生理学は心拍数・VO₂など客観指標に依存していました。ボルグ博士は「運動中の”きつさ”は心拍数・呼吸・乳酸蓄積など複数の生理学的信号が統合された総合感覚である」と捉え、その主観的感覚を数値化すれば高価な機器なしで運動強度を定量評価できると考えました。6-20の数値範囲は安静時心拍数60〜最大努力時200拍/分に対応するよう意図的に設計されています(数値×10≒心拍数)。
2種類のスケール:特徴と使い分けの基準
新人のうちは「どちらを使えばいいか」に迷いがちです。判断基準はシンプルです。心臓リハビリ・スポーツ科学のように「生理学的負荷の定量化」が目的なら6-20スケール、呼吸困難・疼痛・疲労感の評価や患者への直感的説明が重要な場面ではCR10スケールを選んでください。
| 比較項目 | RPE 6-20スケール | CR10 0-10スケール |
|---|---|---|
| スコア範囲 | 6〜20点(15段階) | 0〜10点(小数可) |
| 尺度の性質 | 間隔尺度(線形) | 比率尺度(非線形・比例特性あり) |
| 心拍数との対応 | スコア×10≒心拍数(60〜200bpm) | 直接対応なし |
| 主な使用場面 | 心臓リハビリ・運動生理・スポーツ科学 | 臨床リハビリ・呼吸困難評価・疼痛評価 |
| VO₂との相関(妥当性) | r=0.80〜0.90(Borg 1982) | r=0.72〜0.88(Chen et al. 2002) |
| COPD呼吸困難評価 | 使用可能だが感度やや低め | 推奨(ATS/ERS 2013声明) |
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは脳卒中・心疾患後リハビリに特化した自費リハビリ施設です。ボルグスケールを使った安全な運動強度管理のもと、一人ひとりの回復ステージに合ったプログラムを提供しています。まず30分の無料相談から始めてください。
スケールが機能するメカニズム。
ボルグスケールはなぜ生理学的負荷を反映できるのでしょうか。RPEの神経生理学的基盤は「並列処理モデル」で説明されます。運動中に発生する複数の求心性シグナル(筋・関節受容器、代謝産物、心肺応答)が中枢神経系で統合され、単一の「きつさ感覚」として知覚されます。
①筋・腱・関節の機械受容器からの求心性情報(運動強度・筋張力)、②代謝性受容器からの情報(乳酸・CO₂・pH変化)、③心肺応答(心拍数・換気量の増加)、④体温上昇、⑤心理的因子(不安・モチベーション・痛みの背景)。これらが統合されてRPEが形成されます。だからこそRPEは「全身の負担度の総合指標」として機能します。
妥当性(VO₂との相関)[単独RCT→観察研究]:Borg GA(1982年、Med Sci Sports Exerc, n=約100名)。RPE 6-20スケールとVO₂の相関 r=0.80〜0.90、心拍数との相関 r=0.70〜0.85を報告。CR10スケールのVO₂相関はChen et al.(2002年、J Sports Sci、メタ分析)でr=0.72〜0.88と確認。
心理的疲労の影響 [観察研究]:Marcora SM et al.(2009年、J Appl Physiol, n=16名)。精神的疲労がRPEを増加させ、同じ生理学的負荷でも主観的きつさが高まることを実験的に示した。心理的因子がRPEに影響するため評価環境の標準化が重要。
他の評価指標との鑑別と使い分け。
ボルグスケールは唯一の運動強度指標ではありません。心拍数・MET・SpO₂それぞれの強みと弱みを理解し、場面に応じて組み合わせることが臨床判断の質を高めます。下表は「どの場面でどの指標が優位か」を整理したものです。
| 評価場面・状況 | 推奨指標 | 鑑別ポイント・注意点 | 参考基準値 |
|---|---|---|---|
| β遮断薬内服中の心疾患リハビリ | RPEを優先使用 | β遮断薬により心拍数上昇が抑制。心拍数は強度指標として信頼できない | RPE 11〜13点(AHA推奨) |
| COPD呼吸困難のモニタリング | CR10 + SpO₂を併用 | CR10で呼吸困難の自覚を定量化。SpO₂で低酸素を客観的に確認 | CR10 4〜6点(ATS/ERS 2013) |
| 脳卒中後有酸素性運動 | RPE + 心拍数を並行 | 失語症患者は指差し対応版を準備。自律神経障害例ではRPEと心拍数が乖離しうる | RPE 11〜14点(AHA/ASA 2014) |
| 慢性疼痛・がんリハビリ | CR10(疲労・痛みの2軸評価) | 痛みの過小申告に注意。RPEが低くてもバイタルが異常なら中止 | RPE 11〜13点から保守的に開始 |
| 認知障害・重度失語症 | 心拍数・BP・SpO₂・顔色で代替 | ボルグスケールの適用困難例。Omni Scale(絵付き)や3段階版で対応を試みる | Talk Test(会話テスト)を補助指標に |
採点基準の完全ガイド。
RPE 6-20スケール:全段階の採点基準
| 点数 | 採点基準(感覚の記述) | 目安心拍数 | 臨床的解釈・対応 |
|---|---|---|---|
| 6〜7 | 非常に楽(Very, very light) 安静・ベッド上座位・非常にゆっくりした歩行 |
60〜70bpm | 継続。強度増加を検討 |
| 8〜9 | 非常に軽い(Very light) ゆっくりした歩行。ほとんど努力感なし |
80〜90bpm | 継続。Phase I急性期の初期段階 |
| 10〜11 | 楽〜やや楽(Light) 普通ペースの歩行。会話が十分できる |
100〜110bpm | 心臓リハビリ早期の目標下限 |
| 12〜13 | ややきつい(Somewhat hard)★心臓リハビリ主目標 少し息が上がる。会話はできる |
120〜130bpm | ✅ 心疾患・脳卒中後の最推奨域 |
| 14〜15 | きつい(Hard) 明確に息苦しい。会話が困難になり始める |
140〜150bpm | ⚠️ 回復期上限。バイタル確認強化 |
| 16〜17 | 非常にきつい(Very hard) かなりつらい。短文しか話せない |
160〜170bpm | ⚠️ 強度を下げる。症状確認 |
| 19〜20 | 最大努力(Max) これ以上は不可能。呼吸困難・下肢の燃えるような疲労 |
180〜200+bpm | 🚫 即時中止・安静・医師報告 |
CR10スケール:採点基準と臨床的解釈
| 点数 | 採点基準(感覚の記述) | カットオフ値・解釈 |
|---|---|---|
| 0 | 全く感じない(Nothing at all) | 安静臥位と同一レベル |
| 1〜2 | 非常に弱い〜弱い(Very weak〜Weak) | 軽歩行。会話に全く支障なし |
| 3〜4 | やや強い〜中程度(Moderate〜Somewhat strong) | 息が上がり始める。文章での会話がやや困難 |
| 4〜6 | 強い(Strong / Heavy)★COPDリハビリ目標域 明確な呼吸困難。単語のみの会話 |
✅ ATS/ERS推奨目標域(Spruit et al. 2013) |
| 7〜8 | 非常に強い(Very strong) | ⚠️ 強度低下を検討。中止基準相当 |
| 10 | 最大(Absolute maximum) | 🚫 即時中止 |
信頼性(アンカー設定あり)[観察研究]:Robertson et al.(2003年、Research Quarterly for Exercise and Sport)。標準化アンカー設定あり ICC=0.80〜0.92。アンカー設定なし ICC=0.52〜0.67。アンカー設定が信頼性の必須条件。
妥当性(VO₂との相関)[観察研究/メタ分析]:Borg(1982年)でRPE 6-20スケールr=0.80〜0.90。Chen et al.(2002年、J Sports Sci、メタ分析)でCR10スケールr=0.72〜0.88。両スケールとも高い基準関連妥当性。
MCID(臨床的最小変化量)[専門家合意]:RPEスケールのMCIDは疾患・介入・強度設定により異なるため単一値での定義は困難。心臓リハビリでは介入前後の比較に2点以上の変化を実臨床上の意味ある変化の目安とする施設が多い(専門家合意)。
疾患別・介入エビデンスと目標値。
「何点を目標に設定するか」は疾患・病期・重症度によって変わります。根拠なく「だいたい12点くらいで」とするのではなく、ガイドラインの推奨値と出典を把握した上で処方してください。

Phase I(入院期)目標:RPE 11〜12点。Phase II(外来期)目標:RPE 12〜14点。セッション時間20〜40分・週3回から開始。β遮断薬内服中はRPEを優先指標。(日本心臓リハ学会ガイドライン・AHA/AACVPR 2007)
6MWT前後のdyspnea評価と運動強度管理にCR10を使用。目標CR10:4〜6点(「やや強い〜強い呼吸困難」)を維持。週3〜5回・1回30〜45分。呼吸困難と脚疲労を2軸で別々に評価し介入点を決定する。(Spruit MA et al. 2013, ATS/ERS声明、n=多施設)
目標RPE 11〜14点(VO₂max約40〜70%相当)。トレッドミル歩行・エルゴメーター・水中療法を週3〜5回・1回20〜60分で実施。失語症患者は視覚的指差し版を使用。(Billinger SA et al. 2014, AHA/ASA Stroke)
通常はRPE 11〜13点(「やや楽〜ややきつい」)。近年の研究では高強度(RPE 14〜16点)の有酸素性トレーニングが疾患進行を遅らせる可能性が示された。必ず薬剤オン時(内服1〜2時間後)に評価実施。(Schenkman M et al. 2018, JAMA Neurol, n=128名、単独RCT)
β遮断薬内服患者でのRPE有用性 [観察研究]:Whaley MH et al.(1997年、J Cardiopulm Rehabil)。β遮断薬内服中でもRPEはVO₂と相関r=0.78を維持。心拍数ベースの強度指標より信頼性が高いことを実証。AHA 2007ガイドラインの推奨根拠。
パーキンソン病高強度運動 [単独RCT]:Schenkman M et al.(2018年、JAMA Neurol, n=128名)。高強度トレッドミル(RPE 14〜16点・週3回・24週間)が対照群と比較してMDS-UPDRS運動スコアの悪化を有意に抑制(−0.93点 vs +3.43点)。
がんリハビリでの目標強度 [SR/MA]:Campbell KL et al.(2019年、Med Sci Sports Exerc、ACSM Cancer Exercise Roundtable)。がんサバイバーへの有酸素性運動処方でRPE 12〜14点(中等度・週150分)またはRPE 14〜17点(高強度・週75分)を推奨。癌関連疲労(CRF)患者では同負荷でRPEが1〜3点高く出やすいため保守的設定を原則とする。

STROKE LABでは「RPE何点で何分」という数値的な根拠を持った運動処方のもと、脳卒中後・心疾患後のリハビリを行っています。患者さまが「安全に・確実に」回復できるよう、エビデンスに基づいたプログラム設計にこだわっています。
多職種連携と安全管理の役割分担。
開始基準・中止基準:チームで共有すべき数値
ボルグスケールを使った安全管理はセラピスト一人で行うものではありません。「どの数値で誰が何をするか」をチームで決めておくことが、安全なリハビリの土台です。
| 職種 | ボルグスケール関連の評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT(理学療法士) | 運動強度(RPE)・歩行速度・6MWT距離・心肺機能の評価 | RPEを指標とした有酸素性運動処方・段階的負荷増加・FITT設定 | RPE目標値と中止基準を看護師・医師と事前共有。運動記録をOTと共有し日常生活への汎化を促す |
| OT(作業療法士) | ADL動作中のRPE・上肢エルゴメーター使用時の疲労感・手工芸・調理訓練中の疲労評価 | 日常生活活動(ADL)の難易度設定にRPEを応用。「この掃除作業は何点でしたか?」とモニタリング | PT設定のRPE目標値を参照しADL難易度を段階調整。看護師に生活場面での疲労状況を報告 |
| ST(言語聴覚士) | 嚥下訓練・発話訓練時の疲労感(CR10)。失語症患者にスケールを適用可能か評価 | 失語症の程度に応じた代替評価法(指差し版・3段階版)の開発・提案。スケール理解の言語的支援 | 「この患者さんはRPEを何段階で評価できるか」をPT・OTに情報提供。Talk Testの適用可否も判断 |
| 看護師 | リハビリ前後のバイタル(HR・BP・SpO₂)測定。リハビリ中止基準の判定補助 | リハビリ開始前チェック(中止基準に抵触しないか確認)。リハビリ後バイタル記録。異常値の医師報告 | リハビリ開始可否をPT・医師と判断。患者がスケールを理解しているか病棟での観察情報をSTに提供 |
| 医師 | 心肺機能評価・薬剤管理(β遮断薬等)・運動負荷試験結果の解釈 | リハビリ処方の決定(目標RPE・中止基準の設定)。β遮断薬内服有無の情報共有 | 「β遮断薬内服中なのでRPEを主要指標で」という情報をリハビリチームに明示的に伝達 |
| MSW(社会福祉士) | 退院後の継続的な運動療法環境の整備(デイケア・訪問リハ・地域資源) | 「RPE 11〜13点で継続できる運動の場」を地域資源から選定・調整 | PTから「退院後も○点を目標に運動継続が必要」という情報をもとに地域連携先へ引き継ぎ |
「毎朝のカンファレンスで『この患者さんのリハビリ中止基準はRPE 14点・血圧上昇40mmHg以上・SpO₂ 90%以下』と確認しておくだけで、看護師・医師との意思決定のスピードが格段に変わります。」
「β遮断薬内服中という情報は医師からカルテに書いてあるだけでは不十分です。リハビリ担当者に口頭で伝達する文化を作ってください。心拍数基準で運動管理していたら危ない場面が生まれます。」
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
ボルグスケールは「簡単に使える」ツールだからこそ、使い方が雑になりがちです。新人のうちに陥りやすい失敗パターンと、その対策を先輩目線でまとめます。
臨床判断のコツ:RPEを「使いこなす」3つの実践ポイント
「心拍数130bpm以下かつRPE 13点以下の範囲で運動を行う」というダブル基準を事前設定します。どちらか一方でも超えたら強度を下げる、というルールが安全かつ個別化された管理の基本です。AHA・ACSMの推奨に沿ったアプローチです。
1ヶ月前はRPE 12点で3km/h・10分しか歩けなかった患者が、同じRPE 12点で4km/h・20分歩けるようになれば「運動耐容能の改善」です。RPEの数値だけでなく「同じ主観的強度でどれだけの負荷を扱えるか」の変化を追うことが、予後評価につながります。
「胸が重い」「めまいがする」という訴えが出た時点で、RPE値にかかわらず即時停止がルールです。主観的症状はRPEという数値よりも常に優先されます。この原則を早いうちに体に染み込ませてください。
予後・ゴール設定とモニタリング計画。
ボルグスケールは評価ツールであるとともに、予後予測とゴール設定の基盤にもなります。「初回評価でRPE何点だったから、3ヶ月後は○点まで改善を目指す」という目標設定の言語化が、患者・家族・多職種への説明を具体的にします。
① 初回評価(現状把握):「今、○km/hの歩行でRPE□点・時間△分」と初期値を数値で記録する。
② 目標設定(3〜6ヶ月後):「同じRPE□点で○km/h・△+10分以上」または「現在のRPEを2点下げて同じ活動ができる」という具体的目標を立てる。
③ 定期モニタリング:4週ごとに同じ運動負荷でのRPEを記録し、変化をグラフ化して患者・家族・チームに示す。
脳卒中後有酸素性運動の効果 [SR/MA]:Billinger SA et al.(2014年、Stroke)。RPE 11〜14点を目標とした有酸素性トレーニング(週3〜5回・20〜60分)を8〜24週継続した脳卒中後患者で、VO₂peakが対照群比+3.4mL/kg/分の有意な改善。
Talk Testの活用 [観察研究]:Foster C et al.(2008年、J Cardiopulm Rehabil Prev)。RPE 11〜14点の範囲が「Talk Test陽性(会話可能)域」とほぼ一致することを示した。ボルグスケールと並行してTalk Testを用いると、認知障害や失語症がある患者でも強度確認が可能。
よくある質問。
基本の使い分けは「心臓リハビリ・スポーツトレーニング→RPE 6-20スケール」「呼吸困難評価・一般臨床リハビリ→CR10スケール(0-10)」です。6-20スケールは心拍数との対応関係(数値×10≒心拍数)があり生理学的強度の定量化に優れています。CR10は「0=全くなし・10=これまでの最大」という直感的な基準点があり呼吸困難・疼痛・疲労感の評価に向いています。初めて接する患者や高齢者にはCR10の方が説明しやすい傾向があります。
工夫次第で使用可能です。①大きく印刷した視覚的スケールで指差し回答できるようにする、②顔の表情イラスト付きOmni Scaleを使用する、③「楽・ふつう・きつい」の3段階簡易版でモニタリングする、④Talk Test(会話テスト)を補助指標として使う、などの方法があります。重度失語症で意思疎通が全く困難な場合は心拍数・血圧・SpO₂・顔色などの客観的指標で代替してください。
アンカー設定が最重要です。「6(または0)は完全安静・朝目覚めてベッドに横になった状態です」「20(または10)は人生で経験した最大の運動努力・これ以上は絶対に無理という状態です」と両端を具体的な体験に結び付けて説明します。「正直な数字を教えてください」と中立的に伝えることも信頼性の前提です。
あります。「患者が楽だと感じていても、客観的バイタルサインが異常を示す場合は即時中止」が原則です。具体的には収縮期血圧が40mmHg以上上昇した場合・SpO₂が90%以下に低下した場合・胸痛が出現した場合・不整脈が出現した場合などです。慢性疼痛やがんリハビリの患者はRPEを過小申告する傾向があります。常に心拍数・血圧・SpO₂・顔色・表情を併せて観察してください。
β遮断薬(カルベジロール・ビソプロロール等)内服中は運動中の心拍数上昇が抑制されるため、心拍数を主要指標として使うことができません。この場合RPEを優先的指標として用い「RPE 13〜14点以上は維持しない」という主観的基準でモニタリングします。日本心臓リハビリテーション学会およびAHAガイドラインで推奨されている方法です。
AHA/ASA(2014年脳卒中後リハビリテーション声明)では有酸素性運動(トレッドミル歩行・エルゴメーター)においてRPE 11〜14点を目標強度とすることが推奨されています。失語症患者には大きく印刷したスケールで指差し回答できるよう配慮し、半側空間無視がある場合は評価用紙を患側と反対側に置くなど工夫が必要です。麻痺側と非麻痺側の疲労を別々に評価することも有益です。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは東京・自由が丘に拠点を持つ、脳卒中・神経疾患・心疾患後のリハビリに特化した自費リハビリ施設です。ボルグスケールを用いた科学的な運動強度管理のもと、心臓リハビリ・呼吸器リハビリ・脳卒中後の有酸素性運動プログラムを提供しています。
— STROKE LABでの実際のリハビリプログラムの様子
「回復期病棟でβ遮断薬内服中の心疾患患者を担当したとき、最初は心拍数で運動強度を管理していました。ところが何度計っても80拍/分前後から上がらず、”もっと強度を上げていいはず”という判断ミスをしてしまいました。あるとき患者が”なんか胸が重い”と言ったのに気づき、バイタルを確認したら血圧が+50mmHg上昇していた。RPEは14点を指していました。そのときβ遮断薬環境ではRPEを優先しなければならないことを身をもって学びました。以来、内服薬の確認を毎セッションのルーティンにしています。」— PT・臨床経験8年・心臓リハビリ専門
「脳卒中後の失語症患者にボルグスケールを使おうとして、最初は「何点ですか?」と聞くだけで全く応答が得られませんでした。STに相談してスケールをA3サイズに拡大印刷し、「指で示してください」と伝えたところ、2点→7点→3点とセッションを通じた変化を示してくれるようになりました。数値の取れ方が変わると、チームカンファレンスでの情報共有の精度も変わりました。初回の失敗から得た最大の教訓は、スケールをいかに患者に使いやすい形に届けるかを考えることでした。」— OT・臨床経験5年・脳卒中後リハビリ専門
あわせて読みたい:NIHSS【2026年度版】NIHSSとは?評価・点数・カットオフ値は?動画で学べる重症度/NIH Stroke Scale
諦めないでください。

ボルグスケールのような「数値化の技術」は、リハビリを安全に・効果的に進めるための土台です。しかし技術以上に大切なのは、その数字の背後にある患者さんの「もっとよくなりたい」という意志に向き合う姿勢だと思っています。
STROKE LABでは、発症直後から生活期まで、患者さんの回復ステージに合わせたエビデンスに基づく個別化プログラムを提供しています。「今の自分にどんなリハビリが合うのか」という疑問に、まず30分の無料相談でお答えします。
どんな状態からでも、諦めないリハビリがあります。ご本人もご家族も、一人で抱え込まないでください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)