6分間歩行テスト (6MWT)とは?エビデンスから評価・実践方法まで解説!
6分間歩行テストは、距離だけで判断できるのか。
コース設定、距離の計算、正常値、MCID・MDC(臨床的に意味のある変化と測定誤差)を、臨床で使う順序に整理しました。休憩と中止の区別、再評価で条件をそろえる方法、生活目標への落とし込み方まで、新人セラピスト向けにまとめています。

— 6分間歩行テスト(6MWT)は、6分間で歩ける距離を測る評価です
6分間歩行テストとは何か。
6MWT(6-Minute Walk Test)は、6分間でできるだけ長い距離を歩き、その距離(6MWD、単位m)を記録する評価です。点数への換算はありません。自己調整したペースで行い、必要に応じて減速・休憩できます。最大酸素摂取量を直接測る検査ではありません。[専門家合意]
脳卒中後の歩行持久力を考える際にもよく使われます。ただし、結果には麻痺、バランス、方向転換、疼痛、心肺機能、補助具、理解・不安などが関わります。距離だけで、低下の原因や屋外歩行の安全性を診断することはできません。
— 歩行距離と、症状・測定条件を一緒に記録します
実施方法:コースと条件をそろえる。
この記事と付属PDFは、屋内の直線往復コースを使うATS/ERS系の方法を基準に整理しています。神経疾患向けには別のコース・介助・休息ルールもあります。異なる手順を混ぜず、施設が採用した原文と版を記録してください。[専門家合意]
| 項目 | 設定・記録 |
|---|---|
| コース | 平坦で安全な直線30mが標準的。両端を明示し、端数を測れる目印を用意する。短いコースでは長さと変更を明記する。 |
| 準備 | 椅子、計時器、距離計測用具、記録用紙、バイタル測定機器と緊急時の対応体制を整える。 |
| 測定前 | 座位で少なくとも10分間安静にする。血圧・HR・SpO₂・症状を確認し、実施の適否を判断する。 |
| 条件 | 靴・杖・歩行器・装具、介助、酸素流量・機器・運搬方法、服薬時刻を記録する。 |
| 説明 | 6分間でできるだけ遠くまで歩く目的と、減速・休憩ができること、終了の合図を説明する。走らないよう伝える。 |
| 計測中 | 施設で統一した案内を一定の調子で行う。歩行ペースを先導しない。症状と測定機器の信号品質を観察する。 |
— 付属PDFは「片道を1回完了するごと」にチェックする方式です
折り返し回数やコース形状は結果に影響します。短いコースの結果を、30mコースの予測値と無条件に比較しないでください。2MWTへの変更は、空間だけでなく対象者・評価目的・採用手順から決めます。
安全管理:休憩と検査中止を分ける。
実施前に医学的安定性、安静度、歩行時の介助、心肺疾患、当日の症状を確認します。急性期という日数だけで可否を決めません。ATS 2002は最近の不安定狭心症・心筋梗塞などの禁忌や、安静時頻脈・高血圧などの相対的禁忌を挙げています。施設基準と担当医の判断を優先します。[専門家合意][1]
距離を伸ばすことより安全を優先して中止し、状態を評価します。異常を認めたら、設定した数値まで悪化するのを待ちません。対応・連絡・回復経過も記録します。[1]
SpO₂の「85%未満」を全対象に共通する中止基準とするのは適切ではありません。慢性呼吸器疾患を対象としたERS/ATS 2014では80%未満での中断、85%以上に回復した場合の再開条件が示されています。これは脳卒中患者全員に80%まで歩かせる指示ではありません。個別の中止・再開条件を事前に決め、症状と信号品質を合わせて判断します。[2]
— 休憩と、安全上の検査終了を分けて記録します
ATS/ERS系の測定では、途中で休んでも6分間の時計は進みます。中止して終了した場合は「何分何秒時点で何m」とし、6分完遂と区別します。ANPTの別プロトコルには着座休息で終了するルールがあり、手順間で混在させません。[1][5][6]
距離の計算:「片道」と「往復」を混同しない。
6MWD = 片道の長さ × 完了した片道数 + 端数
片道30mを7回完了し、次の片道を10m歩いたところで終了した場合、30×7+10=220mです。「7往復」なら420mとなるため、カウント単位を明記します。端数は、最後に到達した折り返し点から終了地点までの距離です。
休憩時間を6分に足したり、中止時の距離を6分相当に外挿したりしません。計時・距離計測の誤りがあった試行は理由を残します。
正常値・予測値:年齢だけでは決まらない。
[観察研究] Enright・Sherrill(1998)の式は、40〜80歳の健常成人290人から得た予測式です。年齢だけでなく身長・体重も必要です。日本の脳卒中患者の正常・異常を単独で診断する式ではなく、コース・対象集団の違いを確認して参考にします。[3]
| 原著の区分 | 予測距離(m) |
|---|---|
| 男性 | 7.57 × 身長cm − 5.02 × 年齢 − 1.76 × 体重kg − 309 |
| 女性 | 2.11 × 身長cm − 2.29 × 体重kg − 5.78 × 年齢 + 667 |
例:68歳・男性・170cm・70kgでは、予測値は約513m。実測220mなら予測値比は約43%です。同じ68歳男性でも、体格が違えば予測値は変わります。[3]
予測式の適用範囲、正常下限の定義、対象集団を確認します。健常者の実測値から得られた規範値と、仮定した体格を予測式に入れた試算値は区別して扱います。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
ご本人・ご家族の希望や現在の状況をお伺いします。STROKE LABは、評価の数値だけでなく、実際の生活場面まで含めてご相談に対応します。
MCID・MDC:脳卒中の54mを一律に使わない。
MCIDは臨床的な意味、MDCは測定誤差を超える変化の判断に関する指標です。統計学的な有意差とも区別します。対象者の病期・初期能力・参照した尺度によって値が変わります。[4][5]
| 指標・対象 | 報告値 | 読み方 |
|---|---|---|
| Fulk・He 2018:脳卒中、発症後2〜6か月の変化 | 全体:71m(mRS基準)、65m(SIS基準) | 基準尺度によって異なる。判別性能にも限界がある。 |
| 同研究:初期歩行速度0.40m/s未満 | 44m(mRS基準)、34m(SIS基準) | 全脳卒中患者の固定基準にしない。 |
| ANPT資料:慢性期脳卒中のMDC例 | 34.4m、36.6m | 研究集団とコースを確認する。MCIDと読み替えない。 |
| ANPT資料:パーキンソニズムのMDC例 | 82m | 臨床的に意味のある変化を表すMCIDとは区別する。 |
— 変化量の解釈では、数値と研究の適用条件をセットで確認します
例えば220mから260mへ増えた場合、差は+40mです。まず条件と休憩の変化を確認し、その患者に適用できる研究を選びます。固定した54m未満だから無効、超えたから治療が効いた、と結論づけません。自然回復や学習効果も考慮します。
結果の読み方:距離が短い理由を探る。
| 観察 | 次に確認する内容 |
|---|---|
| 息切れ・SpO₂変化 | 信号品質、心肺疾患、医師への報告・追加評価の必要性。 |
| 足が重い・歩容が崩れる | 麻痺、筋力、筋持久力、装具、疼痛、バランス。 |
| 折り返しで停止・不安 | 方向転換、注意、転倒恐怖、環境理解。 |
| 条件が前回と異なる | 介助量、補助具、酸素、コース、声かけ、服薬・体調。 |
これらは追加評価の手がかりです。Borgの呼吸と下肢疲労の大小だけで原因を確定したり、SpO₂が保たれていることだけで心肺疾患を除外したりしません。
評価目的に応じて組み合わせる検査
| 評価 | 主に確認すること |
|---|---|
| 10MWT | 短距離の歩行速度。6分間の継続能力とは別に測る。 |
| TUG・BBSなど | 起立・方向転換、バランス課題。必要に応じて選択する。 |
| 2MWT | 短い時間での歩行距離。6MWTとの換算や3倍計算はしない。 |
| 生活場面の観察 | 段差、混雑、荷物、往復、疲労時の介助。 |
生活目標・介入:400mだけで外出自立を決めない。
6MWDが400mでも、一人で買い物に行けるとは限りません。往復距離、店内移動、信号・段差、荷物、休憩場所、注意機能、転倒歴を確認します。検査中の6分間の距離と、実生活で安全に移動できる範囲を区別してください。
— 本人が行きたい場所の環境と、帰り道を含めて目標を設定します
「今日は杖と装具を使い、途中で20秒休んで220mでした。後半に足が重くなったので、歩き方や装具も確認します。買い物の目標に向けて、実際の道の段差や帰り道の疲れも一緒に評価しましょう。」
※説明のための架空例です。
介入は、医学的リスク、歩行の制限、本人の希望に応じて設計します。歩行練習、休息を挟んだ練習、筋力・バランスへの介入などを検討しますが、6MWDだけから運動強度や回復期間を処方することはできません。再評価では距離だけでなく、同じ課題での休憩・症状・介助の変化も共有します。

歩行距離に加え、実際の道や生活上の課題を整理し、目標を一緒に考えます。STROKE LABでは、評価の数値をご本人の希望する生活の場面に結びつけてお伝えしています。
再評価:比較できる記録を残す。
コース、補助具・装具、介助、酸素条件、説明・声かけ、服薬時刻、試行回数をそろえます。必要な条件変更を避けるのではなく、変更した理由を記録し、その条件下での結果として比較します。
ERS/ATS 2014は慢性呼吸器疾患において学習効果を考慮した2回測定を推奨しています。同日に繰り返す場合は少なくとも30分の間隔を設け、HR・SpO₂が基準に戻ったことを確認します。この運用を全神経疾患患者に無条件に適用せず、負担と採用プロトコルを確認します。[2]
— 同条件の変化と、条件を変更した後の結果を分けて解釈します
評価シートPDF:測定から経時比較まで。
測定条件、片道カウント、1分ごとの観察、休憩・中止、再評価の比較を記入できます。専門職が施設手順と照合して使う、オリジナルの手書き用紙です。
無料・登録不要 / v1.0 / 公式尺度の転載ではありません。Borg尺度の全文は含みません。
測定条件
距離・観察
経時比較
A4 / 3 pages
よくある質問。
使用条件を決めて実施し、種類・装着・介助を記録します。再評価で条件が変わった場合はその理由を残し、同条件での変化と条件変更後の変化を区別してください。
この記事が基準とするATS/ERS系の方法では、休憩中も計時を継続します。安全上の理由で中止した場合は、時刻・距離・理由を記録します。採用する別プロトコルの休息ルールとは混在させないでください。
短いコースを使う場合は、採用する方法の妥当性と安全性を確認したうえで、長さ・形状を記録してください。30mコースの結果や予測値と単純に比較することは避けます。
全員に共通する一律の値はありません。MCID(臨床的に意味のある変化)とMDC(測定誤差を超える変化)を区別し、疾患・病期・初期歩行能力と、参照する研究の測定条件を合わせて解釈します。
距離だけでは判断できません。往復距離、段差、信号、荷物、休憩場所、注意機能、実際の介助の有無を確認したうえで判断します。
なりません。6分間では後半に疲労やペースの変化が生じますが、2分間の結果を3倍してもそれは反映されません。2MWTと6MWTは別の検査として扱い、変更する際は検査名と条件を明記してください。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳卒中などの神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。保険リハビリの日数や時間の枠にとらわれず、時間・内容・頻度を設計できます。医療保険のリハビリとの併用も可能です。

— 評価の数値を、生活場面の目標づくりに結びつけて活用しています
— 実際のリハビリの様子と、評価から目標設定までの流れを紹介しています
「6MWTで220mだった方を担当しました。距離だけを見ると『歩けている』ように見えましたが、後半に速度が落ち、装具のずれが原因でした。装具を調整し直したうえで再評価すると、同じ220mでも後半の失速が減りました。距離の数字の裏にある歩容の変化を見る大切さを学びました。」— 理学療法士・経験6年・回復期脳卒中
「『400m歩けるなら一人で買い物に行けますね』と伝えかけたところ、実際の帰り道には急な坂と信号待ちがありました。本人と一緒に実際の道を歩いて確認すると、休憩できる場所がないことが分かり、先に休憩ポイントを決めてから外出練習を始めました。検査の距離と、生活の距離は別物だと実感した経験です。」— 作業療法士・経験9年・生活期支援
あわせて読みたい:10m歩行テストの測定方法
参考文献。
実現したい生活を。

6分間で歩けた距離は、生活の一部を映す数字にすぎません。大切なのは、その先にある「行きたい場所」に届くかどうかです。
私たちは、検査の数値と実生活の条件を合わせて評価し、次の一歩を一緒に決めます。
現在の歩行に関する不安や、外出の希望をご相談ください。まずは無料相談から承ります。
代表取締役 金子 唯史

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)