【2026年版】COPM(カナダ作業遂行測定)評価用紙・メリット・デメリットは? 手順は?作業療法士向け
COPMの採点で迷わないための完全ガイド。
「この患者さんは何を目標にリハビリすればいいのか」。新人セラピスト誰もがぶつかる問いに、COPM(カナダ作業遂行測定)はクライエント自身の言葉から答えを引き出す仕組みを与えてくれます。採点の仕方から臨床応用まで、先輩の視点で整理しました。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
60代男性。脳卒中発症から6か月が経過し、生活期に入っています。右片麻痺があり、Brunnstrom Stage上肢III・手指III、FIM運動項目68/91点。主訴は「自分のことは自分でやりたい」でした。
初回評価では、食事・移動・更衣・入浴・園芸の5活動で遂行度・満足度がいずれも低い状態であることがCOPM面接から明らかになりました。何を優先して訓練すべきか、担当した新人作業療法士は迷っていました。
こうした場面で新人セラピストがよく悩むのは、「機能訓練を優先すべきか、それとも本人が困っている生活動作を優先すべきか」という点です。COPMは、この判断をクライエント自身の言葉に基づいて行うためのツールです。次章から、その仕組みを順に見ていきます。
COPMの定義と成り立ち。
カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure: COPM)は、1980年代後半にDr. Mary Lawを中心とするカナダの作業療法士チームが開発した評価法です。セラピストがクライエントの作業遂行に対する自己認識を時間経過で捉えるために設計され、1991年に正式発表されました。現在は第5版まで改訂され、40カ国以上で使用されています。

評価対象はクライエントの日常生活における作業遂行の自己認識であり、セルフケア・生産活動・レジャーの3領域で測定します。半構造化インタビューを通じて問題を特定し、各活動の遂行度と満足度を1〜10で評価します。治療介入後に同じ項目を再評価することで、経時的な変化を定量的に追跡できます。身体リハビリ、精神科、小児科、老年科、地域リハなど幅広い臨床場面で適用可能です。
COPMの3領域と下位カテゴリ
COPMでは作業遂行を以下の3領域に分類して聴取します。クライエントが問題を特定しやすくするためのフレームワークであり、すべてのカテゴリを網羅的に確認することが重要です。
クライエントが「やりたいこと」「やらなければならないこと」を自由に語る形式で、セラピストが3領域を網羅的に確認していきます。
重要度・遂行度・満足度をそれぞれ1(低い)〜10(高い)で採点し、平均値をベースラインとして記録します。
同一項目を治療前後で再評価し、MCID(2点以上)を基準に介入効果を判定します。[観察研究]
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABでは、ご本人が大切にしている生活活動を丁寧にお伺いした上で、脳科学に基づく専門リハビリプログラムをご提案しています。東京・大阪で無料相談を受け付けています。
自己評価を支える理論的基盤。
COPMは作業療法のクライエント中心実践モデル(Canadian Model of Occupational Performance and Engagement: CMOP-E)に理論的基盤を置いています。「人・環境・作業」の相互作用の中で、クライエント自身が意味を見出す活動を主観的に評価する構成概念です。[専門家合意]
なぜ「自己評価」に注意が必要なのか
COPMはクライエント本人の自己認識に依存するため、自己モニタリング機能(自分の状態を正確に把握する脳の働き)が保たれていることが前提となります。脳卒中では前頭葉・頭頂葉を中心とするネットワークの損傷により、自身の障害を過小評価する病態失認(anosognosia)が生じることがあります。この場合、COPMの遂行度スコアが実際の能力よりも高く出る可能性があるため、他の客観的評価と併用して解釈することが重要です。[専門家合意]
測定特性の検証[観察研究]:COPMの測定特性はラッシュ分析による検証が行われており、項目の適合度が確認されています(PMID: 34817593)。多様なクライエント集団において信頼性・応答性が高いことが示されており、クライエント中心の成果を捉えるツールとして支持されています。
他の評価法との使い分け。
新人のうちは「COPMとGAS、COPMとFIM、どちらを使えばいいのか」で迷いがちです。似た場面で使われる評価法との違いを整理しておきましょう。

| 似ている評価法 | COPMとの共通点 | 使い分けのポイント | 選ぶ場面 |
|---|---|---|---|
| GAS(目標達成尺度) | 個別目標を設定し達成度を測る | GASはセラピスト主導で目標の達成段階を設定、COPMはクライエントの主観的認識そのものを測る | 具体的な目標到達度を厳密に追いたい時はGAS併用 |
| FIM(機能的自立度評価) | ADL領域を扱う | FIMは介助量に基づく客観評価、COPMは本人の満足度を測る主観評価 | 客観的な自立度の記録が必要な診療報酬・カンファレンス資料ではFIM |
| COSA(小児版作業自己評価) | クライエント自身の作業遂行認識を測る | COSAは学齢期の子ども向けに設計、COPMは保護者面接と併用する形が主 | 学齢期の子どもが自分で回答できる場合はCOSAを検討 |
採点基準の完全網羅。
COPMでは、クライエントが特定した作業上の問題について重要度・遂行度・満足度の3軸で評価します。以下、それぞれの意味と計算方法を整理します。

| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 重要度 | 1〜10点(自己申告) | 上位5項目を選定基準に | 高いほど治療優先度が高い |
| 遂行度 | 1〜10点(自己申告) | 再評価時+2点以上でMCID達成 | 低いほど遂行上の困難が大きい |
| 満足度 | 1〜10点(自己申告) | 再評価時+2点以上でMCID達成 | 遂行度と満足度の乖離は困り感の強さを示す |
| 平均遂行度スコア | 遂行度合計÷問題数(通常5) | 初回→再評価で+2点以上 | 介入前後のベースライン比較に使用 |
| 平均満足度スコア | 満足度合計÷問題数(通常5) | 初回→再評価で+2点以上 | 生活の質に関する主観的改善の指標 |
信頼性[観察研究]:Law et al.(2005)により、検査-再検査信頼性は遂行度ICC=0.63〜0.89、満足度ICC=0.61〜0.84と中等度〜良好な値が報告されている。
妥当性[専門家合意]:CMOP-Eに基づく内容妥当性を有し、ラッシュ分析によって項目の構成概念妥当性が検証されている(PMID: 34817593)。
MCID[専門家合意]:遂行度・満足度ともに2点以上の変化が臨床的に意味のある変化とされる。2点未満は測定誤差の範囲とみなし、慎重に解釈する。
介入エビデンスと実施手順。
COPMは半構造化インタビューとして実施します。初回面接は20〜40分、再評価は10〜20分を目安に、以下の手順で進めます。

COPMの目的を説明し、3領域から作業上の問題を自由に語ってもらい、各問題の重要度を1〜10で評価します。
重要度上位5項目について遂行度・満足度を採点し、平均スコアを算出してクライエントの自己認識の全体像を把握します。
COPMで特定された優先課題を軸に、週2〜3回・1回40〜60分の課題指向型訓練を計画します(頻度・時間は臨床設定に応じて調整)。
目安として4〜8週ごとに再評価を行い、MCID(2点以上)を基準に介入効果を判定・戦略を見直します。

目標設定構造の導入効果[観察研究]:Wressle E, et al. J Rehabil Med. 2002;34(1):5-11では、クライエント中心の目標設定構造を導入することでリハビリテーションへの参加度が向上したことが報告されている。COPMのようなクライエント中心評価を目標設定に組み込むことの意義を支持する知見である。

STROKE LABでは、COPMで明らかになったご本人の目標を起点に、脳の可塑性を活用した専門的な介入プログラムを設計しています。機能訓練と生活目標を切り離さないアプローチを大切にしています。
多職種連携と環境調整。
COPMの結果をチームでどう共有するか
COPMで特定された優先課題は数値化されているため、カンファレンスでの共有に適しています。ただし各職種が同じスコアを見ても着眼点は異なります。それぞれの役割を整理しておきましょう。
| 職種 | 評価項目 | 主な介入内容 | 連携ポイント |
|---|---|---|---|
| OT | COPM・上肢機能・IADL | COPM実施・課題指向型訓練 | 優先課題をチーム全体に共有 |
| PT | 歩行・バランス・基本動作 | 移動関連の目標に対する運動療法 | 「自宅での移動」等の共通目標をOTと連動 |
| ST | 言語・嚥下・高次脳機能 | COPM実施時のコミュニケーション支援 | 重度失語症例でのCOPM実施方法をOTに助言 |
| 看護師 | 生活リズム・服薬・全身状態 | 病棟生活でのセルフケア実践の見守り | 訓練室での達成度を病棟生活へ橋渡し |
| 医師 | 医学的重症度・全身管理 | リハビリ処方・リスク管理 | COPMの優先課題が医学的に安全か確認 |
| MSW | 退院後の生活環境・社会資源 | 介護保険サービス調整・住環境整備 | COPMのレジャー・生産活動の目標を退院後支援へ接続 |
「COPMのスコアだけをカンファレンスで報告しても、他職種には伝わりにくい。『重要度10・遂行度2』のように、数字の意味をセットで伝えるようにしよう。」
「園芸のように屋外活動が絡む目標は、OT単独では完結しない。MSWや家族との情報共有を早めに始めておくとスムーズだよ。」
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
COPMは一見シンプルな評価に見えますが、実施の質はセラピストの面接技術に大きく左右されます。新人が特に陥りやすい失敗パターンを3つ紹介します。
実施が難しい場面への対応
「重度認知症の方には家族による代理回答(Proxy COPM)を使うといい。ただし本人の認識とズレることがあるから、結果は鵜呑みにせず参考値として扱おう。」
「意欲が著しく低下している急性期の患者さんに『重要なことは?』と聞いても『何もない』と返ってくることがある。そういう時は実施を急がず、発症前の生活の話から糸口を探るといいよ。」
予後とゴール設定。
冒頭の山田さんのケースでは、COPMの結果に基づき食事・移動・着替え・入浴・園芸の5項目を治療目標としました。3か月後の再評価では、食事・移動でそれぞれ遂行度+3点・満足度+3点、着替え・入浴で+2点の改善を認め、4項目でMCIDを達成しました。園芸のみ+1点にとどまり、屋外活動への介入強化が課題として残りました。
精神科領域のケースでは、平均遂行度2.3・満足度1.7と山田さんに近い数値でしたが、制約の主因は身体機能ではなく意欲・不安といった心理的障壁でした。同じスコアでも原因が異なれば介入方針は変わります。COPMは「数値」だけでなく、その裏にある物語を読み取るためのツールです。
よくある質問。
初回面接は20〜40分程度、再評価は10〜20分程度が目安です。クライエントの状態によって延長する場合は、無理に1回で終わらせず複数回に分けることも検討してください。
使えます。COPMは疾患特異的な尺度ではなく、セルフケア・生産活動・レジャーという生活機能全般を対象とした汎用ツールです。精神科、小児科、老年科、地域リハなど40カ国以上で幅広く使用されています。
重要度が同点の場合は、クライエントに優先順位を直接尋ねるか、遂行度・満足度のギャップが大きい項目(困り感が強い項目)を優先する方法があります。最終的な判断はクライエント自身に委ねることが原則です。
重度認知症では家族や介護者による代理回答(Proxy COPM)、重度失語症では写真カードやYes/No質問と指差しの併用が有効です。ただし代理回答は本人の認識とずれる可能性があるため、結果の解釈には注意が必要です。
遂行度・満足度ともに2点以上の変化が臨床的に意味のある変化とされています。2点未満の変化は測定誤差の範囲内である可能性があるため、慎重に解釈します。
併用が推奨されます。COPMはクライエントの主観的な作業遂行の認識を、FIMは介助量に基づく客観的な自立度を測定します。両者は測定する軸が異なるため、併用することで多角的に介入効果を検証できます。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳卒中専門の自費リハビリ施設です。COPMなどクライエント中心評価から出発し、脳の可塑性を活用した専門的な介入プログラムで「その人らしい生活」の回復を支援しています。
— STROKE LABでのリハビリプログラムの様子
「発症8か月の利用者様が『畑仕事に戻りたい』と話された時、当初はFMAの数値ばかり気にしていました。COPMで改めて聴取すると、重要度10・遂行度2と大きな乖離があり、優先度を畑仕事に切り替えました。しゃがみ動作と道具操作を組み合わせた課題指向型訓練を3か月継続した結果、遂行度が2から6まで改善し、実際に短時間の作業を再開できました。目標を数値だけでなく本人の言葉で確認する重要性を学びました。」— 作業療法士・経験8年・脳卒中生活期担当
「意欲が低下していた急性期の利用者様にCOPMを実施した際、最初は『特にない』という返答が続きました。発症前の生活について雑談から聴取していくと、『孫と散歩したい』という言葉が出てきました。この目標を重要度10として採用し、歩行訓練の意味づけを『孫との散歩』に変えたところ、訓練への参加意欲が明らかに変化しました。評価は聴き方次第で引き出せる情報が変わることを実感しています。」— 理学療法士・経験6年・急性期〜回復期担当
諦めないでください。

脳卒中後のリハビリでは、「何ができるようになったか」という機能面だけでなく、「何がしたいか」というご本人の思いが置き去りにされがちです。
STROKE LABでは、ご本人が本当に大切にしている生活活動を丁寧にお伺いした上で、脳科学に基づく専門的なリハビリプログラムをご提案しています。
東京・大阪で、一人ひとりの目標に合わせたプログラムを提供しています。まずは無料相談で、お悩みをお聞かせください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)