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vol.97:視床病変ではないプッシャー症候群についての考察 脳卒中/脳梗塞リハビリに関わる論文サマリー

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カテゴリー

脳科学

 

 

 

タイトル

視床を温存している皮質損傷後の「Pusher Syndrome」について “Pusher syndrome” following cortical lesions that spare the thalamus?PubMedへ Johannsen L et al:J Neurol. 2006 Apr;253(4):455-63. Epub 2006 Feb 3

 

 

 

内 容

Introduction

●プッシャー症候群の患者は、損傷部位と同側(麻痺側)に約20°傾けられたときに身体が直立したと感じるが、視覚および前庭の入力の処理はほとんど障害されていない。

 

●この知見はヒトの神経経路を論じたものであるが、重力方向の知覚や直立姿勢の制御と視覚による姿勢方向の知覚とは別なものだと考えられる。

 

●Karnathらの調査の結果、プッシャー症候群を伴う左右どちらの脳損傷患者においても典型的に後外側部の視床が損傷を受けていたことが明らかになった。

 

●この知見は、視床後部の直立姿勢の制御のための基本的な役割を示唆している。

 

●しかし頻繁ではないが、プッシャー症候群は視床を温存する脳病変を有する患者においても( contraversive pushingが)観察されており、本研究の目的は、このシステムの皮質基質を調べることであり、視床を含まない皮質脳損傷を示すプッシャー患者における病変位置を研究した。

 

 

 

対象と方法

●プッシャー症候群の21人の視床損傷のない片側性の皮質病変を持つ急性期脳卒中患者を調査した(表1参照)

 

●コントロール患者の2つのグループ-視床損傷のない急性の左側12人および急性の右側の皮質病変を有する12人の被験者を、プッシャー患者のグループと一致させた(表1参照)

 

●コントロール群の被験者は、プッシャー患者と入院期間、年齢、脳卒中発症からの時間、空間無視の頻度、失語の頻度、視野欠損の頻度が同じになるよう一致させた。

 

●さらに、病変の大きさおよび両側の体性感覚喪失の頻度は、プッシャー患者と対照群とで同等であった。 fig. (表1)Johannsen L et al:2006?PubMedへ

 

 

 

分析・解析

●脳卒中患者において、MRIが19例、スパイラルCT画像が26例に実施された(責任病巣が明確になるまで随意的に検査を繰り返し、最後に撮った画像が本研究で用いられている)。

 

●MRIを受けた患者では、脳卒中後48時間以内に拡散強調画像(DWI)を、また脳卒中後の48時間以降においてはFLAIR画像を撮影した。

 

●病変は、Talairach空間のTalairach Z軸に対応するスライス上に、同一のまたは最も近くに適合している各個人の横断画像を利用してマッピングされた。

 

●我々は重なり合った病巣を プッシャー症候群を有する群の重複画像からコントロール群(R-コントロール、L-コントロール;図1aおよび2a)の病変を差し引いた。

 

●この方法は、プッシャー症候群の患者で一般的に損傷を受けコントロール患者(陽性値としてコード化されている)では温存される領域があることを画像で示しているが、それと同様にコントロール患者で特異的に損傷を受けた領域がプッシャー患者では温存されていることも併せて示している(陰性値としてコード化されている)

 

●サブトラクション画像は、肯定的な値を強調するために橙色の漸進的に明るい色調を使用し、負の値を示すために青色の徐々に明るい色合いを使用する(図) fig. (図)Johannsen L et al:2006?PubMedへ

 

 

 

結 果

●プッシャー症候群の病変の重複は右側・左側の2群間で同等であった。

 

●左右それぞれの片麻痺のプッシャー患者の病変の重なりの中心は島皮質後部、中心後回、白質周辺に及んでいた。

 

●contraversive pushing伴う患者は一般的に皮質に損傷を受けているが、典型的にはプッシング行動を示さない患者では皮質が損傷を受けていない。

 

●我々は、左島皮質後部および上側頭回、左下頭頂小葉、右中心後回にとても小さな領域を見つけた。それらは一致させたコントロール群を差し引いたときのプッシャー患者に特異的にみられた

 

 

 

考 察

●どちらの半球においても、プッシャー患者の単純な病変の重なりは、島皮質と中心後回の中心に位置しており、これらの皮質構造の一部は、身体の向きの知覚および制御に関与しているようである。マカクザルの解剖学的所見では、視床後部と本研究で同定された皮質基質との間の直接的な関係が立証された。

 

●後外側腹側核および後内側核に生じた視床皮質軸索は、中心後回の一次体性感覚皮質(Brodmann area 3a、3b、1および2)、頭頂弁蓋部の二次体性感知性皮質、および島に投射する。

 

●視床損傷のないプッシャー患者と(本研究では21症例しかいなかった)、対照との間の信頼できる皮質レベルの解剖学的相違を得るために、より多くの患者が必要な可能性がある。

 

●Mittelstaedt は、体幹の重力受容器から脳に情報を伝達する2つの求心性感覚経路を仮定した。第1は腎臓の神経で、これは腎臓に位置する機械受容器からの情報を伝達すると想定されるめ、腎臓は重力垂直の方向を示す耳石のように機能している可能性がある。

 

●第2は、迷走神経で、体幹の大血管の血液分布に関する情報を中継することが示唆されたが、これは重力による体の方向付けに影響しているかもしれない。

 

●Vaitl らは、健康な被験者の下半身に陰圧及び陽圧(LBNP / LBPP)をかけ、体内の体液分布を変化させることによってこの後者の可能性を試験した。実際、LBNPはヘッドアップしている体の傾きの主観的知覚をもたらし、LBPPは明らかなヘッドダウンの体の傾きの感覚を誘発した。

 

●猫において、腎臓の神経の刺激は、視床の腹側後外側核、背側部および後外側部複合体周辺にある神経の反応において生じ、これらの部位が腎臓からの求心情報を処理することが示された。ヒトでは、機能的画像技術において、てんかん患者の迷走神経の刺激が、他の脳領域のうち視床、島皮質および中心後回の神経活動に影響を及ぼすことを示している。

 

●下肢からの固有感覚入力は、姿勢の知覚と制御に体幹の重力受容器の出力の実行または調整によって、ごく間接的に影響する事が見出された。

 

●視床の後部、島の皮質、そして中心後回の間の近接する解剖学的なつながりのために 、そのような障害は、視床皮質と皮質視床の両方またはいずれか一方の直立の身体姿勢の制御に関連する処理過程の変更または機能的な変化をもたらす可能性がある。

 

 

 

私見・明日への臨床アイデア

●臥位から身体を起こすことで、下肢へ血液が流入し、迷走神経を通じて主観的身体の垂直軸の知覚を援助できる可能性がある。

 

●腹部の内圧を高める等腎臓の重力受容器を刺激することで、主観的身体の垂直軸の知覚を援助できる可能性がある。

 

●視床後部、中心後回、島のネットワークはいずれかが損傷した場合に相互補完的に機能する可能性がある.

 

 

 

氏名 白崎 周平

職種 理学療法士

 

臨床後記:更新日2021/3/5

 

●身体の垂直性の知覚には視空間認知・前庭系・固有感覚・筋出力の左右差はじめ様々な要因が混在する。前庭系など過活動になる部分の抑制や知覚できている部分を軸に苦手部分の促通と整理して介入する必要がある。要因が混在している場合は、身体部位をハンドリングや環境設定で補償するなど課題難易度を下げて本人の能力に合わせる必要がある。

 

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