【2026年版】Fugl-Meyer Assessment(FMA /フーゲル・マイヤー評価法/ヒューゲルメイヤー評価法)上肢評価|手順・採点・脳卒中の予後予測を解説
FMAの採点で迷わないための完全ガイド。
226点満点・155項目におよぶFugl-Meyer Assessment(FMA)を、上肢運動機能を中心に実施手順から採点基準、MCIDを使った臨床解釈まで、先輩セラピストの目線で一つずつ整理しました。
— FMA上肢評価の実技解説動画。文章だけで分かりにくい肢位・抵抗のかけ方は、まずこちらで動きを確認してください。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
62歳男性、右被殻出血による左片麻痺。発症後6週(回復期)、NIHSS 8点、FIM運動項目48点。主訴は「左手が思うように動かせず、食事の際に器を支えられない」。
担当1年目のOTが初回評価で確認したブルンストロームステージは左上肢Stage Ⅲ。しかし「Stage Ⅲの中でどれだけ改善しているか」を月次カンファレンスで説明できず、先輩に相談したことがこの評価の見直しのきっかけでした。
新人のうちは、ブルンストロームステージやMMTのような大まかな評価だけで「変化が見えない」ことに悩む場面が多いと思います。同じStage Ⅲでも、共同運動の中でどこまで分離が進んでいるかは患者ごとに大きく違います。
FMA(Fugl-Meyer Assessment)は、この「Stage Ⅲの中身」を0〜2点の3段階で細かく数値化できる評価法です。次の章から、なぜこの評価が必要なのか、どう実施するのかを順に見ていきましょう。
評価表・採点基準・カットオフ値・臨床活用法をA4資料としてお使いいただけます。
— 資料表紙(全ページ・A4印刷対応)- ✓ 全評価内容収録
- ✓ カットオフ値一覧
- ✓ リハビリ活用のステップ
- ✓ A4印刷対応・全ページ
約4MB/A4サイズ/印刷対応/登録・費用は一切不要
FMA(Fugl-Meyer Assessment)とは。
FMAは”Fugl-Meyer Assessment”の略称で、脳卒中の疾患特異的な評価スケールです。1975年にスウェーデンの医師Axel Fugl-Meyerらが発表しました[観察研究](Fugl-Meyer AR, et al. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13-31, n=39)。日本の脳卒中治療ガイドライン2015(追補2019)では、上肢機能評価としてグレードB(行うように勧められる)に位置づけられています。
最大の特徴は、Signe Brunnstromが提唱した運動回復段階(弛緩→共同運動→分離運動→正常に近い運動)を土台にしながら、各段階を0・1・2点の3段階で定量採点できる点です。ブルンストロームステージが6段階の大まかな区分であるのに対し、FMAは合計226点の中でより精密な変化を捉えられます。海外ではブルンストロームより主流の評価として使われ、臨床研究のアウトカム指標としても頻用されています。
評価領域は5領域(運動機能・感覚・バランス・関節可動域・関節痛)、合計226点満点。運動機能のみなら100点満点(上肢66点+下肢34点)です。所要時間は全項目で30〜45分、運動項目のみなら約20分。採点基準は0点=実行できない、1点=部分的に実行できる、2点=完全に実行できる、の3段階です。特別な機器は打腱器・ゴニオメーター・ペン・紙・ボール程度で、大がかりな設備は不要です。
5つの評価領域の内訳
FMAは運動機能だけでなく、感覚・バランス・関節機能まで含む包括的なスケールです。各領域は単独でも使用可能で、特に上肢運動機能(FMA-UE:66点満点)は臨床・研究で最も頻用される部分です。
| 評価領域 | 配点 | 内訳 |
|---|---|---|
| ① 運動機能 | 0〜100点 | 上肢66点+下肢34点 |
| ② 感覚 | 0〜24点 | 触覚(上下肢各4点=8点)+位置覚(上下肢各8点=16点) |
| ③ バランス | 0〜14点 | 座位バランス6点+立位バランス8点 |
| ④ 関節可動域 | 0〜44点 | 上下肢各関節の他動可動域 |
| ⑤ 関節痛 | 0〜44点 | 上下肢各関節の動作時疼痛 |
「新人のうちは運動機能項目(100点)だけで十分。5領域全部を最初から完璧にやろうとすると挫折します」
「まず上肢66点だけ覚えて、慣れてきたら下肢・感覚に広げていくのが現実的な順番です」
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABでは、FMAなど客観的評価に基づき、脳の可塑性を活かした専門的なリハビリプログラムをご提案しています。まずは無料相談で、現在の状態と回復の可能性をご確認ください。
共同運動理論と神経メカニズム。
Twitchell(1951)による片麻痺の自然経過観察[観察研究]と、それを体系化したBrunnstromの回復段階理論では、皮質脊髄路の損傷後、運動は原始的な屈筋・伸筋の共同運動パターンとして再出現し、その後に関節ごとの分離運動へと進むとされています。FMAはこの臨床観察を土台に、各段階を数値で追跡できるよう設計された評価法です。
共同運動が優位になる理由
皮質脊髄路(随意的な分離運動を担う経路)が損傷を受けると、より原始的な網様体脊髄路などの下行路が相対的に優位になり、複数関節が連動して動く共同運動パターンが出現しやすくなります[専門家合意]。FMAのA-Ⅱ(共同運動)からA-Ⅳ(分離運動)への項目配列は、この神経学的な回復順序をそのまま評価構造に反映したものです。
Nudo RJ, et al. Science. 1996(動物モデル)[観察研究]:損傷後の高頻度な課題特異的反復練習が、隣接する皮質領域の運動地図再編成(神経可塑性)を促すことを示した基礎研究。FMAで共同運動から分離運動への移行を追跡することは、この可塑性の進行を臨床で捉える手段といえます。
評価時に見誤りやすい現象の鑑別。
FMAは動作の「見え方」だけで採点すると誤差が生まれやすい評価法です。同じように見える現象でも、背景にある機序が異なれば採点は変わります。代表的な4つの鑑別ポイントを整理しました。
| 鑑別対象 | 共通点(見え方) | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| 真の分離運動 vs 共同運動の代償 | 目的の関節が動いて見える | 体幹回旋・肩甲骨挙上など代償の有無 | ビデオスロー再生 |
| 運動麻痺 vs 感覚性の協調運動障害 | D項目で測定障害・振戦が出る | 閉眼で悪化するか、H項目の結果と一致するか | H項目(感覚)との照合 |
| 痙縮による制限 vs 整形外科的拘縮 | 他動ROMが制限されて見える | 速度依存性の抵抗感(痙縮)か一定の抵抗感(拘縮)か | Modified Ashworth Scale |
| 半側空間無視 vs 真の運動麻痺 | 患側上肢を自発的に使わない | 促した際の自発性の左右差、高次脳機能検査の結果 | BIT行動性無視検査 |
上肢評価の実施法と採点基準。
ここからは上肢運動機能(FMA-UE:66点満点)の具体的な評価法を項目ごとに解説します。FMAの運動評価は共同運動パターンの出現→分離運動の獲得→協調性の順に配列されており、「できる/できない」だけでなく回復の質的段階を数値で捉えられます。
A. 上肢運動機能(A-Ⅰ〜A-Ⅴ)
屈筋は上腕二頭筋または手指屈筋群のどちらか1つを選択、伸筋は上腕三頭筋の1つで実施します。反射の出現の有無を確認します。判定:2点=反射が出現/0点=反射が消失。
評価のコツ:反射が出現しない場合は非麻痺側も確認しましょう。両側消失なら病的変化ではなく個人差と判断できます。

A-Ⅱ以降は随意運動の評価です。事前に可動域を確認しておきましょう。可動域制限がある場合は動作可能な範囲内で評価します(例:前腕回外が不可なら回内〜中間位の範囲で、中間位まで自分で動かせれば満点)。共同運動評価は1回の動作で複数要素を同時に観察するため、ビデオ撮影での確認も有効です。
肩甲骨後退・肩関節屈曲・肩関節外転(90°)・肘関節屈曲・前腕回外・肩関節外旋の6要素を各0〜2点で評価します。実施方法:①麻痺側を非麻痺側の膝の上に置く→②後頭部に手を回していく。
判定(各要素共通):0点=関節運動なし/1点=一部分可能/2点=全可動域可能。


肩関節の内転・内旋、肘関節の伸展、前腕の回内の3要素を各2点満点で評価します。実施方法:①肩関節屈曲・外転・外旋、肘関節屈曲、前腕回外を行い麻痺側の耳の横に手を置く→②非麻痺側の膝の上に手を伸ばす。
注意:手を伸ばす際にわずかに抵抗をかけます。抵抗がないと重力による他動運動で遂行できてしまい正確な評価になりません。判定は各要素とも0点=関節運動なし/1点=一部分可能/2点=全可動域可能。


上前腸骨棘(ASIS)を超えられるか、脊柱に届くかが評価ポイントです。肩甲骨挙上や体幹回旋などの代償運動が入ると減点となります。実施方法:①手を膝の上に乗せる→②麻痺側上肢を同側の腰に回す→③脊柱に手が触れる位置まで移動。
判定:0点=ASISに届かない/1点=(代償なく)ASISを超える/2点=(代償なく)脊柱に手が届く。


実施方法:①肘関節伸展、前腕回内外中間位に置く→②その肢位のまま肩関節を90°屈曲。
判定:0点=肩関節外転位・肘関節屈曲位で開始/1点=運動に伴い肩関節外転・肘関節屈曲が出現/2点=全可動域で外転・屈曲を伴わず可能。


実施方法:①肩関節0°、肘関節90°屈曲位に置く→②その肢位で前腕の回内外を行う。開始肢位が取れるか、回内外がどこまでできるかが評価ポイントです。
判定:0点=回内外できない・開始肢位が取れない/1点=開始肢位は取れるが一部分の運動/2点=全可動域可能。


実施方法:①肘関節伸展位、前腕回内外中間位に置く→②その肢位で肩関節を90°外転。前腕回外・肘関節屈曲がどのタイミングで出現するかがポイントです。
判定:0点=開始直後から前腕回外・肘屈曲が出現/1点=運動に伴い出現/2点=全可動域で回外・屈曲を伴わず可能。


実施方法:①肩関節90°屈曲位、肘関節伸展位、前腕回内外中間位に置く→②その肢位から肩関節を180°まで屈曲。肩外転・肘屈曲がどの段階で出るかが評価ポイントです。
判定:0点=開始直後から外転・肘屈曲が出現/1点=運動に伴い出現/2点=全可動域で伴わず可能。


実施方法:①肩関節を30〜90°屈曲位にする→②その肢位で前腕回内外を行う。
判定:0点=不可または開始肢位が取れない/1点=開始肢位は取れるが一部分の運動/2点=全可動域可能。


次のA-Ⅴ(深部腱反射の程度)はA-Ⅳが満点の方のみ実施します。分離運動が完全にできない場合は評価対象外です。
上腕二頭筋・手指屈筋・上腕三頭筋の3筋すべてを評価し、著明に亢進している筋肉の割合で判断します。A-Ⅰでは「どちらか1つ」でしたが、ここでは3筋すべてを評価する点に注意してください。
判定:0点=3筋中2筋以上が著明な亢進/1点=3筋中1筋が著明な亢進/2点=3筋中1筋以下が亢進(軽度亢進含む)。

B. 手関節の評価(5動作・10点満点)
手関節評価の原則:肘関節は支えても問題ないが、手関節は支えないようにしましょう。手関節を支えると外部から安定性が供給され、正確な運動機能評価になりません。
実施方法:①テーブルに肘を乗せるか検査者が肘を支える→②手関節を背屈→③背屈位から掌屈方向へ抵抗をかける。
判定:0点=不可/1点=15°背屈できるが抵抗に抗せない/2点=15°背屈位で抵抗に抗せる。


実施方法:①テーブルに肘を乗せるか検査者が肘を支える→②手関節の背屈と掌屈を反復。
判定:0点=不可/1点=一部分可能/2点=全可動域を滑らかに可能。


B-1との違いは肘関節が伸展位であること。共同運動パターンの影響をより明確に評価できます。実施方法:①肩関節軽度屈曲位、肘関節伸展位、前腕回内位に置く→②手関節を背屈→③背屈位から掌屈方向へ抵抗をかける。
判定:0点=不可/1点=15°背屈できるが抵抗に抗せない/2点=15°背屈位で抵抗に抗せる。


実施方法:①肩関節軽度屈曲位、肘関節伸展位、前腕回内位に置く→②手関節の背屈と掌屈を反復。
判定:0点=不可/1点=一部分可能/2点=全可動域を滑らかに可能。

実施方法:①肘関節90°屈曲、前腕回内位をとる→②手関節の回転運動(circumduction)を行う。
判定:0点=不可/1点=不完全でぎこちない/2点=滑らかに可能。


C. 手指の評価(7項目・14点満点)
手指の評価は、集団屈曲・集団伸展(随意運動)と、把握パターン(かぎ握り・母指内転・指尖つまみ・筒握り・球握り)に分かれます。把握パターンでは「保持できるか」に加え「抵抗に抗せるか」が採点の鍵になります。
肘関節90°屈曲位、他動的に伸展位を保持した状態からスタートします。実施方法:①肘関節90°にし前腕を支える→②他動的に手指を伸展→③手指を握るように屈曲。
判定:0点=不可/1点=一部分可能/2点=全可動域可能。


手指屈曲位からスタートし、すべての指を同時に伸展していきます。実施方法:①肘関節90°にし前腕を支える→②他動的に手指を屈曲→③手指を伸展。
判定:0点=不可/1点=一部分可能/2点=全可動域可能。


第2〜4指のPIP・DIPを屈曲、MCPを伸展した肢位を自動運動で保持し、抵抗をかけます。実施方法:①肘関節90°にし前腕を支える→②第2〜4指のPIP・DIP屈曲、MCP伸展位を保持→③手指を伸展する方向へ抵抗。
判定:0点=不可/1点=可能だが抵抗に抗せない/2点=抵抗に抗せる。


母指と第2指のMCP関節で紙を母指の内転で挟み、抵抗に抗せるかを評価します。実施方法:①母指を外転→②紙を母指と第2指のMCP関節で把持→③紙を引っ張り抵抗をかける。
判定:0点=不可/1点=保持可能だが抵抗に抗せない/2点=抵抗に抗せる。


実施方法:①母指と第2指でペンをつまむように持つ→②ペンを上に引っ張るように抵抗をかける。抵抗をかける方向にも注意しましょう。真上に引き抜く方向が基本です。
判定:0点=不可/1点=保持可能だが抵抗に抗せない/2点=抵抗に抗せる。


評価方法は文献により2種報告されています。施設で統一した方法がある場合はそちらに従ってください。方法①:母指とすべての指で筒状のものを握り上へ引っ張り抵抗。方法②:母指と示指でのつまみ動作に抵抗。
判定:0点=不可/1点=保持可能だが抵抗に抗せない/2点=抵抗に抗せる。


実施方法:①全指を外転し、母指と対立した状態でボールを持つ→②斜め下方向に引っ張り抵抗をかける。
判定:0点=不可/1点=保持可能だが抵抗に抗せない/2点=抵抗に抗せる。


D. 協調性の評価(6点満点)
振戦と測定障害の有無、非麻痺側と麻痺側の所要時間差の3観点で評価します。分離運動が獲得された後の「運動の質」を捉える項目です。実施方法①:示指を立て膝の上に置き、目を閉じ、膝と鼻を交互に5回往復。実施方法②:示指を立て肩外転90°・肘屈曲で鼻を触り、目を閉じ、肩外転位のまま肘の屈伸を反復。
振戦:0点=著明/1点=わずか/2点=なし。
測定障害:0点=顕著・一定しない/1点=わずか・程度が一定/2点=なし。
所要時間(非麻痺側との差):0点=6秒以上遅い/1点=2〜5秒遅い/2点=差が2秒以下。


H. 感覚の評価(上肢12点満点)
感覚の正確な評価のため、なるべく服の上でなく直接触れましょう。上腕(または前腕)と手掌面の2か所を評価し、非麻痺側と比較して判定します。実施方法:①上腕または前腕と手掌面を検査者の手で触る→②非麻痺側と比較して評価。
判定(各部位):0点=感覚脱失/1点=感覚鈍麻・異常感覚/2点=正常。

肩関節、肘関節、手関節、母指IPの4部位を評価します。各部位で運動方向の判別を行い、正答率で採点します。実施方法:①内側・外側を持つ(上下で挟まない、触圧覚での判断を避けるため)→②上に動かしたか下に動かしたかを判断してもらう。
判定(各部位):0点=正答数2/4以下/1点=正答数3/4/2点=正常(全問正答)。非麻痺側でもわからないほど微小に動かさないよう注意しましょう。




I. 関節可動域 / J. 関節痛
関節可動域はゴニオメーターを使用して測定し、同時に動作時の疼痛の有無も評価します。この2項目は同時に実施するのが効率的です。評価部位は肩関節(180°屈曲、90°外転、内旋・外旋)、肘関節(屈曲・伸展)、前腕(回内・回外)、手関節(掌屈・背屈)、指節間関節(DIP・PIP・MCP)です。
評価例(各関節の実施場面)
肩関節:180°屈曲

肩関節:90°外転

肩関節:内外旋(肘関節90°屈曲位)

肘関節:屈曲・伸展

前腕:回内・回外

手関節:背屈・掌屈

手指:DIP・PIP・MCP関節

信頼性・妥当性[SR/MA]:Gladstone DJ, et al. Neurorehabil Neural Repair. 2002;16(3):232-240. FMAの測定特性に関する系統的レビューで、検者間・検者内信頼性が高いこと、ARATやBox and Block Testとの併存的妥当性が確認されています。
MCID(FMA-UE)[単独RCT/コホート]:Page SJ, et al. Phys Ther. 2012;92(6):791-798. 慢性期の軽度〜中等度障害者を対象に、臨床的に意味のある最小変化量を4.25〜7.25点と算出しています。
妥当性の実証[観察研究]:Baker K, et al. Stroke. 2011;42(6):1787-94. 脳卒中のアウトカム評価尺度を比較検討し、FMAが運動機能の変化を高感度に検出できる尺度であることを支持しています。
下肢運動機能評価の概要(34点満点)
本記事では上肢を中心に解説しましたが、下肢運動機能評価(34点満点)の構成も把握しておきましょう。上肢と同様、共同運動→分離運動→協調性の順で配列されています。
| 項目 | 評価内容 | 配点 |
|---|---|---|
| E-Ⅰ.深部腱反射 | 膝蓋腱反射・アキレス腱反射 | 4点 |
| E-Ⅱa.屈筋共同運動 | 股関節屈曲・膝関節屈曲・足関節背屈 | 6点 |
| E-Ⅱb.伸筋共同運動 | 股関節伸展・膝関節伸展・足関節底屈 | 6点 |
| E-Ⅲ.分離運動 | 膝関節屈曲(立位)・足関節背屈(座位) | 4点 |
| E-Ⅳ.分離運動 | 膝関節屈曲(座位)・足関節背屈(立位) | 4点 |
| E-Ⅴ.深部腱反射の程度 | 膝蓋腱・アキレス腱反射の亢進 | 2点 |
| F.協調性 | 振戦・測定障害・所要時間 | 6点 |
下肢FMAスコアは歩行自立度の予測に有用と報告されています[観察研究]。上肢と下肢のスコアは相関するものの独立した指標として扱うべきで、合算して100点満点とする際は回復が均一でないことに注意が必要です。下肢FMAのMCIDは上肢ほどコンセンサスがありませんが、約5〜6点が目安として用いられることがあります[専門家合意]。
臨床でFMAを活用する5つのコツ

FMAで運動機能の現在地が分かっても、そこからどう介入するかが回復を左右します。STROKE LABでは脳科学の知見に基づき、評価結果を具体的なプログラムへ落とし込みます。
介入エビデンスとパラメータ。
FMAで現在地を把握したら、次は「どの介入をどれだけ行うか」です。ここでは上肢麻痺に対して質の高いエビデンスが蓄積されている3つの介入と、実践に必要なパラメータ(時間・回数・頻度・強度)を整理します。
French B, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016. 課題特異的な反復練習が上肢機能を改善させることを示すコクランレビュー。パラメータ:1回30〜60分、週3〜5回、実際の動作(コップを持つ、ボタンをかける等)を高頻度に反復することが要点です。
Wolf SL, et al(EXCITE trial). JAMA. 2006;296(17):2095-2104. 非麻痺側の使用を抑制しながら麻痺側を集中的に使わせる介入。パラメータ:2週間、1日3時間程度の訓練、日中起床時間の一定割合で非麻痺側を拘束(施設の方針に応じ調整)。A-Ⅳの分離運動がある程度獲得された症例が適応です。
Thieme H, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2018. 鏡に映した非麻痺側の動きを見せることで運動イメージを促す介入。パラメータ:1回15〜30分、週5回程度、共同運動優位の重度例(A-Ⅱ段階)でも導入しやすい点が特徴です。
Kawahira K, et al. Int J Rehabil Res. 2010;33(4):298-305. 特定の運動パターンを他動的に誘発し高頻度に反復する介入。パラメータ:1動作あたり50〜100回の反復を目標に、共同運動から分離運動への移行を狙って実施します。
多職種連携と環境調整。
FMAの結果は誰と共有するか
FMAは運動・感覚・バランスにまたがる評価のため、PTだけで完結させず多職種で共有することで初めて活きてきます。特にC項目(手指)とH項目(感覚)の結果はADL自立度に直結するため、OTや看護師との情報共有が重要です。
「FMAのスコアだけをカンファレンスで読み上げても、他職種には伝わりません。『共同運動は出ているが分離運動がまだ』のように、患者さんの動きが目に浮かぶ言葉に変換して伝えましょう」
「特に病棟看護師には、C項目の結果から『どの持ち方ならこぼさず食事できるか』を具体的に伝えると、実際のADL場面で活きてきます」
| 職種 | この場面での評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 下肢FMA・バランス項目、歩行分析 | 起居動作・歩行練習、下肢促通 | OTへ座位・立位保持能力を共有し上肢課題の難易度設定に活用 |
| OT | 上肢FMA・手指・感覚項目 | ADL訓練、上肢促通、自助具選定 | STへ注意・失行など高次脳機能の情報共有を依頼 |
| ST | 構音・嚥下・高次脳機能評価 | 摂食嚥下訓練、言語訓練 | OT・PTへ半側空間無視の有無を共有(第04章の鑑別に直結) |
| 看護師 | 病棟ADL場面での実行状況観察 | 病棟内ADL誘導、安全管理 | セラピストへ病棟での実際の麻痺側使用状況をフィードバック |
| 医師 | 神経学的所見、画像診断 | 薬剤調整、装具処方の判断 | リハビリスタッフへ禁忌・注意事項を共有 |
| MSW | 退院後の生活環境・社会資源 | 退院支援、福祉サービス調整 | 全スタッフへFMAスコアを踏まえた退院時期・目標を共有 |
新人が陥りやすいつまずき。
FMAは採点ルールが細かいぶん、慣れないうちは判断に迷う場面が多い評価法です。よくある3つのつまずきを先に知っておくと、実施がぐっとスムーズになります。
先輩からのひとこと
「完璧に採点できなくても大丈夫。まずは同じ患者さんを同じ検者(あなた自身)が繰り返し評価することから始めましょう。検者内の一貫性があれば、変化は十分に追えます」
「迷ったら『非麻痺側と比べてどうか』を基準にすること。FMAの多くの項目はこの相対評価の発想で判断できます」
重症度分類と予後・ゴール設定。
FMAの運動機能スコア(100点満点)には、Duncanら(1994)による重症度分類が広く用いられています[観察研究](Duncan PW, et al. Stroke. 1994;25(6):1181-1188)。このカットオフ値はリハビリの目標設定や予後予測に活用できます。
| 運動機能スコア | 重症度 | 解釈・ゴール設定の目安 |
|---|---|---|
| 0〜35点 | 非常に重度(Severe) | 共同運動の獲得が優先目標。ミラーセラピー等の導入を検討 |
| 36〜55点 | 重度(Severe-Moderate) | 分離運動の獲得へ移行。促通反復療法の適応を検討 |
| 56〜79点 | 中等度(Moderate) | 課題指向型トレーニングやmCIMTの導入を検討 |
| 80点以上 | 軽度(Mild) | 天井効果に注意。ARAT・WMFT併用で微細な変化を追う |
FMA-UEのMCID(4.25〜7.25点)を超える変化は臨床的に有意な改善と解釈できます。月1回のFMA再評価でMCIDを超える改善が確認できれば、現在のプログラムが有効と判断できます。逆にMCIDに達しない場合は、介入内容・頻度・強度の見直しを検討するタイミングです。ゴール設定の際は「◯週間で+5点(1つ上の重症度分類へ)」のように、期間とスコア変化を具体的に組み合わせることをおすすめします。
よくある質問。
FMAは運動機能・感覚・バランス・関節可動域・関節痛という身体機能を定量評価するスケールです。一方FIMは食事や移動などADLの自立度を評価する指標であり、評価対象の階層が異なります。FMAで機能障害を把握し、FIMで生活での実行状況を把握するという役割分担で併用されることが一般的です。
全226項目を実施すると30〜45分程度かかります。運動機能項目のみ(上肢66点・下肢34点)であれば約20分程度で実施可能です。忙しい臨床現場では運動項目のみの部分実施も妥当性が確認されています。
Pageら(2012)の報告では、慢性期の軽度〜中等度障害者においてFMA上肢運動スコア(FMA-UE)のMCIDは4.25〜7.25点とされています。この数値を超える変化があれば、臨床的に意味のある改善と判断できます。
どちらか一方を選ぶというより目的に応じた使い分けが推奨されます。ベッドサイドでの簡便なスクリーニングにはブルンストローム、研究や定量的な経過観察にはFMAが適しています。日常臨床では併用することで質的変化と量的変化の両方を捉えられます。
被験者が他動的に動かせる範囲内で、その範囲の中での最大パフォーマンスを採点します。可動域制限そのものは運動機能の問題として減点しないというルールを理解しておくことが重要です。
FMA-UEが60点以上の軽度障害者では天井効果が報告されており、微細な変化を捉えにくくなります。ARAT(Action Research Arm Test)やWMFT(Wolf Motor Function Test)など他の評価法との併用が推奨されます。
STROKE LABのプログラム。
FMAスコアは「現在地」を示す地図です。しかし、スコアだけでは回復の道筋は見えません。STROKE LABでは、FMAの各サブスコアを分析し、脳科学の知見に基づいたリハビリプログラムに直結させています。療法士の育成にも力を入れており、専門的な評価技術の教育や、自費リハビリとしての個別プログラムをご提供しています。
「発症4ヶ月の利用者さんで、FMA-UEが52点から改善しない時期がありました。共同運動評価(A-Ⅱ)は満点でしたが、分離運動(A-Ⅳ)がほぼ0点だったんです。そこでミラーセラピーと促通反復療法を1日30分ずつ、週5回に切り替えました。3ヶ月後、A-Ⅳの複数項目が2点に到達し、FMA-UEは61点まで改善。MCIDの2倍近い変化が出て、利用者さん自身が『腕が自分のものに戻ってきた』とおっしゃったのが印象的でした」— 作業療法士・臨床経験8年・脳卒中上肢機能専門
「新人時代、FMAの共同運動評価で代償運動を見抜けず、実際より高い点数をつけてしまったことがあります。先輩にビデオで指摘され、体幹のわずかな回旋が採点を狂わせていたと気づきました。それ以来、A-Ⅱ〜A-Ⅳは必ず横からも動画を撮るようにしています。この経験があったからこそ、後輩指導では『真横からの確認』を口を酸っぱくして伝えています」— 理学療法士・臨床経験6年・回復期病棟勤務
あわせて読みたい:【2026年版】ヒューゲルメイヤーとは 下肢評価 (FMA-LE )と 脳卒中片麻痺者の歩行の相関 脳梗塞のリハビリ論文サマリー
諦めないでください。

FMAスコアの数字は、努力の全てを表すわけではありません。共同運動から分離運動へ移る過程には、目に見えにくい神経学的な変化が積み重なっています。
私たちSTROKE LABは、その見えにくい変化を数値と専門知識で可視化し、次の一手につなげることを使命としています。
東京・大阪の施設で、一人ひとりの回復フェーズに寄り添ったプログラムをご用意してお待ちしています。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)