プッシャー症候群とは?原因/病巣/リハビリ/ 評価/予後/画像MRIに至るまで解説!!脳卒中/片麻痺 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
  1. HOME
  2. ブログ
  3. 医療者
  4. プッシャー症候群とは?原因/病巣/リハビリ/ 評価/予後/画像MRIに至るまで解説!!脳卒中/片麻痺
医療者

プッシャー症候群とは?原因/病巣/リハビリ/ 評価/予後/画像MRIに至るまで解説!!脳卒中/片麻痺

Pusher Syndrome — A Guide for Young Clinicians
“

プッシャー症候群は、なぜ正中へ戻すほど押し返すのか。

麻痺側へ傾き、非麻痺側の手足で押し、正中への修正に抵抗する。この姿は「非協力」ではなく、垂直を感じる仕組みの障害です。本稿では診断基準・SCP/BLSの採点・段階的な介入を、新人セラピスト向けに整理します。

UPDATED2026
READ約15分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

— プッシャー症候群の臨床評価と介入の考え方を解説(STROKE LAB公式)

Incidence
10.4%
急性期脳卒中の入院時に
みられた頻度(Pedersen 1996)
Extra Rehab Time
3.6週
同等のADLに到達するまで
余分にかかった期間(Pedersen 1996)
Recovery
6か月
多くの例でプッシングが
消失する目安(Karnath 2002)

Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
診断は「傾斜・押し出し・矯正への抵抗」の3要素で判断します。
02
鑑別の最大の手がかりは、正中誘導への能動的な抵抗の有無です。
03
SCPは座位3点+立位3点の最大6点です。「12点満点」は誤りです。
04
力で戻さず、鏡や柱などの垂直な目印で本人に傾きを気づかせます。
05
多くは6か月前後で改善しますが、回復には時間がかかる前提で計画します。

01
Clinical Encounter

臨床現場で、こう出会う。

Case Vignette(教育用の想定症例)
起こそうとするほど、左へ押し返してくる。

70代男性、右視床出血で発症10日目の急性期です。左片麻痺はBRS下肢Ⅲ、FIM運動項目は28点です。主訴は看護師からの「移乗が重く、ベッド上でも左へ倒れる」です。

端座位で左へ強く傾き、右上下肢を伸ばして座面を押していました。正中へ誘導すると右手で押し返し、本人は「まっすぐ座っている」と話します。SCPは5.75点、BLSは12点で、3要素すべてが陽性でした。

※本症例は学習用に構成した想定例です。特定の患者・施設の実績ではありません。

プッシャー症候群は、急性期脳卒中の約5〜10%にみられます。珍しくないのに、「非協力的な患者」と誤解されがちです。本稿では、診断・評価・介入・連携の要点を順に整理します。

つまり臨床では:強く傾く患者を見たら、まず「押し返しがあるか」を確かめます。

02
Definition & Epidemiology

定義と疫学。

プッシャー症候群(Contraversive Pushing)は、脳卒中後の姿勢制御障害です。非麻痺側の手足で支持面を押し、体を麻痺側へ傾けます。背景にはSPV(身体的垂直認知:自分の体がまっすぐかを感じる脳の機能)の障害があります。1985年に理学療法士のDavisが記載し、Karnathら(2000)が神経科学的に体系化しました。

プッシャー症候群の定義と特徴的な姿勢を整理した図解

— プッシャー症候群の定義を整理した図解。SPV障害による姿勢制御障害として捉えます。

Clinical Key Point
患者は、自分の傾きに気づいていません。

垂直の基準がずれているため、傾いた姿勢を「まっすぐ」と感じます。正中への誘導は、本人には「倒される」体験になります。押し返しは拒否ではなく、本人なりの転倒回避です。この理解が臨床推論の出発点です。

EVIDENCE
どれくらいの頻度で出会うのか

発生頻度[観察研究]:Pedersenら(Arch Phys Med Rehabil, 1996)は急性期脳卒中327例を前向きに調べ、入院時の10.4%にプッシングを認めました。左右どちらの半球病変でも起こります。

Karnathの3要素診断基準

Karnathら(Neurology, 2000)の基準では、次の3要素がそろえば陽性と判断します。現在も臨床診断の基本です。

01
麻痺側への自発的な傾斜Postural Tilt

支持なしの座位・立位で、麻痺側へ自然に傾きます。軽症では数度〜10°程度です。重症では20°以上傾き、支えなしでは保持できません。傾斜角度を記録すると、経過の指標になります。

02
非麻痺側上下肢の伸展・外転Pushing

非麻痺側の上下肢を伸ばして開き、座面や床を押します。これで重心を麻痺側へ移そうとします。立位では非麻痺側の脚を外へ開き、支持面を広げるのも特徴です。

03
他動的な矯正への抵抗Resistance

正中へ誘導すると、非麻痺側の手足で押し返します。本人が「まっすぐ」と感じる位置へ戻ろうとする反応です。麻痺による受動的な崩れとは違い、鑑別で最も大事な所見です。

つまり臨床では:傾き・押し出し・抵抗の3つを、座位と立位の両方で確認します。

STROKE LABでの無料相談の様子

— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします

Free Consultation
退院後のリハビリ、
このままでいいのか迷っていませんか。

STROKE LABは、脳神経疾患・整形外科疾患を専門とする自費リハビリ施設です。保険のリハビリと併用でき、初回20分の無料体験があります。ご本人・ご家族の目標をお聞きし、内容を個別に考えます。

無料相談を予約する→

03
Neural Mechanism

神経メカニズムと責任病巣。

Neural Mechanism
「垂直の地図」がずれた状態と考える

直立の制御には、前庭・視覚・体性感覚の情報統合が必要です。プッシャー症候群では、このうち体で垂直を感じる経路が障害されます。その結果、本当の垂直と「感じる垂直」の間にずれが生じます。介入の目標は、このずれた地図の再調整です。

プッシャー症候群の病態生理とSPV障害のメカニズムを示す図解

— SPV障害のメカニズムを示す図解。多感覚統合の破綻として整理します。

SVVとSPVの解離が、介入の鍵

SVV(視覚的垂直認知:目で見て垂直を判断する機能)は、比較的保たれることが多いとされます。Karnathら(2000)は、体が病巣側へ約18°傾いた位置を患者が「直立」と感じると報告しました。一方、Pérennouら(2008)は垂直認知が麻痺側へ偏る例を報告しています。方向の解釈は研究で異なるため、「体の垂直基準がずれている」と押さえれば十分です。

SVV(視覚的垂直認知)とSPV(身体的垂直認知)の違いを比較した図解

— SVVとSPVの関係を示す図解。視覚が代償経路になる理由がわかります。

SVV — Visual Vertical
視覚的垂直認知
— 比較的保たれやすい
→目で見た情報から垂直を判断する
→鏡やドア枠で姿勢のずれに気づける
→視覚フィードバック介入の理論的根拠
SPV — Postural Vertical
身体的垂直認知
— 障害される
—体性感覚と前庭の情報で垂直を感じる
—約18°のずれが報告(方向は研究で異なる)
—閉眼するとずれが再び現れやすい

責任病巣は視床後外側部が中心

最も多く報告される病巣は、視床後外側部です。視床は多感覚情報の中継・統合を担います。視床以外では、島皮質後部・上側頭回・下頭頂小葉・中心後回も報告されています。単一の病巣より、姿勢制御ネットワークの障害と捉えるのが現在の主流です(Paci 2009)。

EVIDENCE
責任病巣と垂直認知の研究

垂直認知のずれ[観察研究]:Karnathら(Neurology, 2000)はプッシング例5例と対照例を比較しました。患者は体が約18°傾いた位置を「直立」と感じ、視覚的垂直は保たれていました。

視床病変[観察研究]:Karnathら(Neurology, 2005)は視床出血例を解析しました。プッシングを伴う例では、視床後外側部の損傷が共通していました。

皮質病変[観察研究]:Johannsenら(J Neurol, 2006)は視床が保たれた21例を解析しました。左島皮質後部・上側頭回・左下頭頂小葉・右中心後回の損傷を報告しています。

垂直認知と側方傾斜[観察研究]:Pérennouら(Brain, 2008)は半球性脳卒中86例で、側方傾斜と垂直認知の偏りの関連を示しました。

つまり臨床では:画像で視床後部や島皮質後部の病巣を見たら、座位での押し返しを早めに確認します。

04
Differential Diagnosis

鑑別診断。

傾く患者が、すべてプッシャー症候群とは限りません。病態が違えば、介入も根本から変わります。見分ける最大の手がかりは、正中誘導への能動的な抵抗です。

体幹傾斜を示す類似病態とプッシャー症候群の鑑別を示す図解

— 類似病態との鑑別を示す図解。抵抗の有無と傾く方向に注目します。

鑑別疾患 共通点 鑑別ポイント 参考検査
前庭・脳幹病変による側方突進(Wallenberg症候群など) 座位・立位で一側へ傾く 主に病巣側へ傾く。怖がる反応はあるが、押し返しは弱い 眼振・めまいの確認、頭部MRI(延髄外側など)
小脳病変による体幹失調 座位・立位が不安定 揺れ(動揺)が主体で、傾く方向が一定しにくい。矯正への抵抗はない 指鼻試験、SARA(小脳性運動失調の評価尺度)
麻痺・筋緊張低下による受動的な崩れ 座位保持が難しく、姿勢が崩れる 誘導を受け入れ、むしろ支えに頼る。非麻痺側で押さない SCPの抵抗項目、体幹機能の評価
半側空間無視(USN)による姿勢の偏り 麻痺側への注意が乏しく、合併も多い 無視だけでは押し返しは出ない。合併時は両方を評価する BIT行動性無視検査、線分二等分試験

Pérennouら(Brain, 2008)は、半球性脳卒中86例で側方傾斜と垂直認知の偏りの関連を示しました[観察研究]。傾きの背景に垂直認知の問題があるかを考えることが、鑑別の軸になります。

見分けるカギは傾きの大きさではなく、正中へ戻したときの能動的な抵抗です。

つまり臨床では:初回評価で、ゆっくり正中へ誘導し、手に返ってくる力を必ず確かめます。

05
Assessment & Scoring

評価尺度と採点基準(SCP・BLS)。

重症度の判定と経過の追跡には、標準化された尺度を使います。代表はSCPとBLSの2つです。運用は「SCPで診断を確定し、BLSで週1回程度モニタリング」が効率的です。

SCPとBLSによるプッシャー症候群の評価を示す図解

— 標準化評価尺度の図解。SCPとBLSの使い分けを押さえます。

Scale 01
SCP
— Scale for Contraversive Pushing
→最大6点(座位3点・立位3点)
→3要素×2姿勢で評価する
→急性期のスクリーニングと診断確定に向く
Scale 02
BLS
— Burke Lateropulsion Scale
—最大17点(5項目)
—寝返りから歩行までを横断的に評価
—段階が細かく、経過の追跡に向く

SCPの完全採点基準

項目 採点基準 カットオフ値 解釈
A 姿勢の対称性(座位) 0=正中/0.25=軽度傾斜/0.75=重度傾斜(転倒なし)/1=著明傾斜(支えなしで転倒) 座位+立位の合計が原法で≧1、Baccini法で>0 傾斜の重さを示す。経過で最も変化が見えやすい
A 姿勢の対称性(立位) 座位と同じ4段階(0/0.25/0.75/1)
B 伸展・外転(座位) 0=なし/0.5=姿勢変換時のみ/1=安静時から出現 座位+立位の合計が原法で≧1、Baccini法で>0 非麻痺側による押し出しの有無と場面を示す
B 伸展・外転(立位) 0=なし/0.5=歩行時のみ外転/1=起立段階から外転
C 矯正への抵抗(座位) 0=抵抗なし/1=抵抗あり(2択) 座位+立位の合計が原法で≧1、Baccini法で>0 鑑別上の最重要項目。「2点」は存在しない
C 矯正への抵抗(立位) 0=抵抗なし/1=抵抗あり(2択)
合計 0〜6点(各姿勢の最大3点) A・B・Cの3要素すべてが基準を満たす 3要素すべて陽性でプッシャー症候群と判断

BLSの完全採点基準

項目 採点基準 カットオフ値 解釈
① 背臥位からの寝返り(最大4点) 非麻痺側への寝返りで0=抵抗なし〜3=強い抵抗。麻痺側への寝返りにも抵抗があれば+1 合計2点以上で陽性 ベッド上での抵抗の強さ
② 座位(最大3点) 麻痺側へ30°傾けた位置から正中へ戻し、抵抗の出方で0〜3点 座位での垂直基準のずれ
③ 立位(最大4点) 麻痺側20°傾斜位から非麻痺側10°まで戻し、抵抗の出方で0〜4点 立位での垂直基準のずれ
④ 移乗(最大3点) 非麻痺側方向への乗り移りでの抵抗を0〜3点 介助量と転倒リスクに直結
⑤ 歩行(最大3点) 歩行中に体幹を正中へ戻す際の抵抗を0〜3点 動作中の姿勢制御
合計 0〜17点 ≧2点 点数が高いほど重症。項目別の変化も記録する
SCORING CRITERIA
測定特性(信頼性・妥当性・MCID)

評価ツールの比較[SR/MA]:Babyarら(Clin Rehabil, 2009)は側方傾斜の評価ツールを系統的に検討しました。SCPとBLSは、信頼性・妥当性の検証が比較的進んだ尺度として整理されています。

SCPのカットオフ[観察研究]:Bacciniら(Phys Ther, 2008)は、各要素>0を陽性とする基準を提案しました。原法の「各要素≧1」より、軽症例の見逃しを減らせるとしています。

BLSの妥当性:BLSは合計2点以上を陽性とします。Krewerら(2013)の研究でも、治療効果の指標として使われています。

MCID(臨床的に意味のある最小変化量):SCP・BLSともに、確立した値は示されていません。合計点だけでなく、項目ごとの変化で判断します。

つまり臨床では:初回にSCPで確定し、BLSを週1回つけて項目別の変化を追います。

06
Intervention Evidence

介入のエビデンスと4段階プロトコル。

力ずくの正中誘導は、抵抗をかえって強めます。保たれやすい視覚を足場にし、体性感覚の再調整へ進むのが基本です。この段階的な考え方は、Karnath & Broetz(2003)が示しました。

プッシャー症候群に対する段階的な介入プロトコルを示す図解

— 介入プロトコルの図解。視覚から体性感覚、そして生活課題へ進みます。

01
転倒への恐怖を取り除くPhase 1

非麻痺側へ倒れる恐怖が、押し出しの引き金になります。セラピストは非麻痺側に立ち、手の接触と言葉で「必ず支える」と伝えます。恐怖が和らぐと、押す力も弱まりやすくなります。

02
視覚の目印でずれに気づくPhase 2

鏡・窓枠・ドア枠・柱など、垂直な目印を使います。「あの線と体を平行にできますか」と問い、本人が自分でずれを見つけるよう促します。自分で直せた経験の反復が、再調整の起点です。

03
体性感覚の再調整Phase 3

視覚頼みのままでは、暗い場所や目印のない場面で崩れます。部屋の角で両側の壁に触れる、座面の感触を工夫する、体幹を軽く圧縮するなどで、体の感覚からの入力を増やします。

04
課題特異的な訓練と汎化Phase 4

目印がなくても姿勢を保てることを目標にします。食事・更衣・移乗・歩行などの生活課題に組み込みます。二重課題(dual-task:話しながら動くなど)も加え、生活場面へ広げます。

EVIDENCE
介入研究とパラメータ

視覚フィードバック訓練[単独RCT]:Yangら(Clin Rehabil, 2015)は12例を2群に分けました。対話型の視覚フィードバック訓練を3週間・週5回(計15回)行い、通常の理学療法よりSCP等の改善が大きかったと報告しています。

ロボット支援歩行の即時効果[単独RCT]:Krewerら(2013)はプッシング例15例で、単回介入を無作為な順序で比較しました。ロボット支援歩行(Lokomat)は、視覚フィードバックを用いた理学療法よりBLSの即時改善が大きい結果でした。

免荷歩行の実施例:前後にSCP・BLSを記録します。免荷率30〜40%、速度0.8〜1.2km/hから始め、鏡などで視覚フィードバックを加えます。適応に応じて免荷を減らし、平行棒・杖・歩行器へ移行します。※臨床での設定例で、原著の固定パラメータではありません。

モニタリング:介入中はBLSを週1回つけ、項目別に効果を確認します。

つまり臨床では:まず安心を作り、目印で気づかせ、体の感覚へ移し、最後に生活動作で試します。

STROKE LAB代表 金子唯史

Message from CEO
目標に合わせて、
リハビリを一緒に組み立てます。

STROKE LABでは、時間・内容・頻度をお一人おひとりに合わせて設計します。麻痺や動作の集中的な改善、転倒・再発の予防、旅行や趣味のための体力づくりに取り組めます。まずは初回20分の無料体験でご相談ください。

無料相談を予約する→

07
Team Approach

多職種連携と環境調整。

効果は、リハビリの時間だけでは決まりません。病棟の24時間を通じた一貫した関わりが大切です。プッシングのある例は、同等の回復に約3.6週長くかかります(Pedersen 1996)[観察研究]。早めにチームで方針をそろえましょう。

プッシャー症候群における多職種連携と家族指導を示す図解

— 多職種連携と家族指導の図解。関わり方をチームで統一します。

他職種・家族に伝える5原則

病態を共有する:拒否ではなく、垂直認知の障害による反応だと伝えます。
介助者は非麻痺側に立つ:本人の恐怖が強い側から支え、安心を先に作ります。
急な矯正を避ける:ゆっくり誘導し、言葉での保証を必ず添えます。
病室に垂直の目印を置く:ベッドサイドの鏡や窓枠の位置を共有します。
変化をチームで記録する:SCP/BLSの推移を共有し、方針調整に使います。
Mentor’s Voice

声かけは「まっすぐにして」ではなく、「正面の柱と体は平行ですか」と問いかけてください。命令では、本人の探索が始まりません。自分で傾きに気づくことが、再学習の入り口です。

不安が強い間は、先に「倒れないよう必ず支えます」と伝えましょう。うまく揃ったら「今の感覚を覚えておいてください」とすぐ返します。この3つの声かけを、病棟スタッフとも統一しておくと効果が上がります。

職種 この病態での評価項目 主な介入内容 他職種との連携ポイント
PT 座位・立位の傾斜、SCP・BLS、移乗・歩行 視覚の目印を使った姿勢訓練、移乗・歩行練習 スコアの推移をカンファで共有する
OT 食事・更衣・排泄時の姿勢、USNの有無 ADL場面での姿勢修正、病室の目印づくり 鏡や目印の配置を看護師と調整する
ST 嚥下機能、失語・指示理解 傾斜を踏まえた食事姿勢と嚥下の評価、声かけの理解度確認 誤嚥リスクのある姿勢を看護・OTへ伝える
看護師 移乗・排泄・夜間の転倒リスク 非麻痺側からの介助、ポジショニング、ベッド柵・離床センサー 生活場面の変化を療法士へ報告する
医師 病巣部位、全身状態、合併症 診断とリスク管理、リハビリの処方 画像所見と予後の見通しを共有する
MSW 家族の介護負担、退院先、社会資源 サービス調整、レスパイトなどの提案 回復に時間がかかる前提で、退院支援を早めに始める

つまり臨床では:立ち位置・声かけ・目印の3つを、病棟全体でそろえます。

08
Pitfalls & Clinical Reasoning

つまずきポイントと臨床判断のコツ。

プッシャー症候群は、新人がつまずきやすい病態の代表です。失敗の多くは、病態の誤解と採点のミスから生まれます。先に失敗の型を知っておくと、初回評価の質が上がります。

Pitfalls — よくある失敗パターン
新人臨床家が陥りやすい3つのつまずきポイント
!
「傾く=プッシャー」と早合点する:傾きだけで判断すると、麻痺による崩れや側方突進を見誤ります。必ず正中誘導で抵抗の有無を確かめます。
!
力で正中へ戻そうとする:本人には「倒される」体験になり、抵抗が強まります。非麻痺側から支え、目印で気づかせる方法に切り替えます。
!
SCPを12点満点で採点する:流通資料の誤りです。正しくは最大6点で、抵抗項目は0か1の2択です(Karnath 2000)。

臨床判断のコツ

Karnathら(Neurology, 2000)の5例の検討では、患者は傾いた姿勢を「直立」と感じていました[観察研究]。だからこそ、言葉で説得しても変わりません。判断に迷ったら、「本人にはどう感じられているか」から考え直します。

Clinical Insight

押し返しが強い日ほど、訓練量を増やしたくなります。まずは恐怖のサインを確認してください。表情のこわばりや、非麻痺側の手が支持面を探す動きです。

点数が変わらない時期も、項目別に見ると変化が見つかります。「抵抗が座位だけ消えた」などの小さな変化を、本人と家族にも伝えてください。

押し返しは、患者の「まっすぐ」を守る反応です。戦わず、気づかせることが基本です。

つまり臨床では:鑑別・関わり方・採点の3点を、初回評価のチェック項目にします。

09
Prognosis & Goal Setting

予後とゴール設定。

予後の見通しは、本人・家族への説明と退院支援の土台です。多くは改善しますが、時間がかかる例もあります。楽観しすぎず、症例ごとの因子を踏まえて伝えます。

Recovery Profile
多くは発症後6か月前後で改善します。

Karnathら(J Neurol, 2002)の追跡研究では、多くの例で6か月までにプッシングが消失しました[観察研究]。一方、Pedersenら(1996)の327例の研究では、同等のADLに達するまで約3.6週長くかかりました[観察研究]。

ゴールは「座位保持→移乗→歩行」の順に、段階的に置きます。BLSの項目別の変化を、短期目標の達成指標に使うと説明しやすくなります。

Santos-Pontelliら(Clinics, 2011)は、発症2年以上プッシングが残った症例を報告しています[観察研究]。重症例や、USN・両側病変を合併する例では経過が長引きやすいとされます。生活期でも継続的な評価と介入を検討します。

全例が6か月で消えるわけではない。重症例・合併例では長期化の可能性を念頭に置く。

つまり臨床では:「多くは改善するが時間がかかる」と伝え、段階的なゴールで経過を共有します。

10
Clinical FAQ

よくある質問。

Q.麻痺側へ傾斜する症例はすべてプッシャー症候群と判断してよいか?
A.

いいえ。最も確実な鑑別指標は、他動的な正中誘導に対する能動的な抵抗の有無です。麻痺による受動的な崩れでは、患者は誘導を受け入れ、むしろ支えに頼ります。プッシャー症候群では、非麻痺側の上下肢を伸展・外転して押し返します。前庭・脳幹病変による側方突進は病巣側へ傾くことが多く、方向も手がかりになります。

Q.家族へのホームエクササイズ指導はどう設計すべきか?
A.

まず病態とリスク管理を説明し、自己流の矯正による転倒を防ぎます。そのうえで、姿見や窓枠・柱などの垂直な目印の使い方、非麻痺側からの介助、気づきを促す声かけを実演して伝えます。家族が参加すると、退院後の生活への汎化にもつながります。

Q.患者が「自分は傾いていない」と主張する場合の臨床対応は?
A.

本人はSPVのずれにより、本当に「まっすぐ」と感じています。否定や説得は逆効果です。鏡や柱の垂直線と体軸を比べるよう促し、自分で傾きに気づく体験をつくります。気づけた瞬間にすぐ肯定的なフィードバックを返し、その感覚を定着させます。

Q.家族介護者のバーンアウト予防にどう関与すべきか?
A.

プッシャー症候群の介助は身体的・心理的負担が大きく、介護者はバーンアウトの高リスク群です。ケアマネジャーやMSWと連携し、サービス調整、2人介助の検討、短期入所(レスパイト)の活用などを提案します。介護者の健康が本人の生活を支えることを、早い段階で家族と共有します。

Q.回復期退院後(生活期)でも改善は期待できるか?
A.

改善が続く例はあります。多くは発症後6か月前後で所見が軽くなりますが、2年以上残存した報告もあり、経過には個人差があります。退院後は訪問リハ・通所リハ・自費リハビリなどの選択肢があり、評価にもとづいて継続の方法を検討します。

Q.SCP/BLSスコアを家族・他職種とどう共有すべきか?
A.

スコアの絶対値より、経時的な変化を共通言語にします。たとえば「初回SCP4.0点、現在2.5点、抵抗の項目が消失」のように、変化の方向と改善した項目を示します。項目別に伝えると、介入効果と今後の方針を客観的に共有できます。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABは、脳神経疾患・整形外科疾患を専門とする自費リハビリ施設です。神経疾患に精通した理学療法士・作業療法士が担当します。評価から課題設計まで個別に組み立て、変化は動画で見える化します。保険のリハビリと併用でき、初回20分の無料体験があります。

Our Strengths
STROKE LABの特徴
— 一人ひとりに合わせた個別設計
→神経疾患に精通したPT・OTが担当
→時間・内容・頻度を個別に設計
→変化を動画で確認できる
→保険リハビリと併用可・1回ごとの予約
What You Can Work On
取り組める内容
— 目的に合わせて選べます
—麻痺や動作の集中的な改善
—転倒・再発の予防
—旅行や趣味のための体力づくり
01
無料体験・ご相談初回20分

今の状態とご希望をお聞きします。

02
評価とプラン設計個別設計

評価にもとづき、時間・内容・頻度を決めます。

03
練習と記録動画で確認

練習を進め、変化を動画で見える化します。

04
目標と内容の見直し定期的に

定期的に目標と内容を見直します。

※効果には個人差があります。評価にもとづき、無理のない範囲で進めます。

Message from CEO
退院したあとのリハビリも、
諦めないでください。

STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

体が思うように動かない、転ぶのが怖い。退院後もそんな悩みを抱えるご本人やご家族は少なくありません。

STROKE LABでは、神経疾患に精通した理学療法士・作業療法士が担当します。評価から課題設計まで一人ひとりに合わせて組み立て、変化は動画で確認できます。

保険のリハビリと併用でき、1回ごとのご予約です。まずは初回20分の無料体験で、今の状態をお聞かせください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する→

References

参考文献。

01Davis PM. Steps to Follow: A Guide to the Treatment of Adult Hemiplegia. Springer. 1985.
02Pedersen PM, et al. Ipsilateral pushing in stroke: incidence, relation to neuropsychological symptoms, and impact on rehabilitation. The Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77(1):25-28.
03Karnath HO, Ferber S, Dichgans J. The origin of contraversive pushing: evidence for a second graviceptive system in humans. Neurology. 2000;55(9):1298-1304.
04Karnath HO, et al. Prognosis of contraversive pushing. J Neurol. 2002;249(9):1250-1253.
05Karnath HO, Broetz D. Understanding and treating “pusher syndrome”. Phys Ther. 2003;83(12):1119-1125.
06Karnath HO, et al. Posterior thalamic hemorrhage induces “pusher syndrome”. Neurology. 2005;64(6):1014-1019.
07Johannsen L, et al. “Pusher syndrome” following cortical lesions that spare the thalamus. J Neurol. 2006;253(4):455-463.
08Pérennou DA, et al. Lateropulsion, pushing and verticality perception in hemisphere stroke: a causal relationship? Brain. 2008;131(9):2401-2413.
09Baccini M, et al. Scale for contraversive pushing: cutoff scores for diagnosing “pusher behavior” and construct validity. Phys Ther. 2008;88(8):947-955.
10Paci M, et al. Pusher behaviour: a critical review of controversial issues. Disabil Rehabil. 2009;31(4):249-258.
11Babyar SR, et al. Clinical examination tools for lateropulsion or pusher syndrome following stroke: a systematic review of the literature. Clin Rehabil. 2009;23(7):639-650.
12Santos-Pontelli TEG, et al. Persistent pusher behavior after a stroke. Clinics. 2011;66(12):2169-2171.
13Krewer C, et al. Immediate effectiveness of single-session therapeutic interventions in pusher behaviour. Gait Posture. 2013;37(2):246-250.
14Yang YR, et al. Effects of interactive visual feedback training on post-stroke pusher syndrome: a pilot randomized controlled study. Clin Rehabil. 2015;29(10):987-993.
15金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.

CATEGORY

 

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

CATEGORY

関連記事

誠心誠意の機能向上に向けたリハビリ支援
脳卒中・パーキンソン病に特化した個別リハビリ支援。
病院で培った機能をつなぎ、可能性を広げる施設です。
〒113-0033 東京都文京区本郷2-8-1 寿山堂ビル3階・5階
03-6887-5263
〒158-0082 東京都世田谷区等々力7-2-31 The Room 等々力West 201号 2026.3 OPEN
03-6887-5263
〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満6-3-16 梅田ステートビル202号
06-7220-4733
ACCESS
会社案内
事業案内
その他