【2026年版】脳卒中の評価法SIASとは?評価項目・評価表・カットオフ・使い方を徹底解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2026年版】脳卒中の評価法SIASとは?評価項目・評価表・カットオフ・使い方を徹底解説

今回は、脳卒中患者の機能障害を9領域・22項目・76点満点で包括的に定量化できるSIAS(脳卒中機能評価法)について、開発背景から全22項目の採点基準・臨床解釈・介入戦略まで徹底解説します。Fugl-Meyer・Brunnstromでは評価できない感覚・体幹・言語・非麻痺側機能を一度に評価できる日本発の世界標準ツールです。

SIAS(脳卒中機能評価法)の実施方法を動画で確認できます。

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能評価法)は、千野直一・出江紳一ら慶應義塾大学リハビリテーション科グループが1993年に開発した、脳卒中後の機能障害を9領域・22項目・76点満点で定量評価する包括的評価ツールです。
運動機能だけでなく感覚・体幹・視空間認知・言語・非麻痺側機能を約10分で一度に評価でき、急性期ベッドサイドから生活期まで一貫した機能モニタリングが実現します。

📊 SIAS:臨床家が必ず知っておくべき数字と事実

  • 正式名称:Stroke Impairment Assessment Set(脳卒中機能評価法)
  • 開発者・年:千野直一・出江紳一ら(慶應義塾大学リハビリテーション科)1993年
  • 項目数・配点:9領域・22項目 / 満点76点(高得点=軽度障害・機能良好)
  • 所要時間:約10分(急性期ベッドサイドでも実施可能・専門器具不要)
  • 評価領域:①麻痺側運動機能 ②筋緊張 ③感覚 ④関節可動域 ⑤痛み ⑥体幹機能 ⑦視空間認知 ⑧言語機能 ⑨非麻痺側機能
  • 信頼性:評価者間Kappa係数 0.83〜0.95、Spearman相関 0.84〜0.93(Chino et al., Am J Phys Med Rehabil. 1994)
  • 他スケールとの最大の違い:運動機能だけでなく感覚・体幹・言語・非麻痺側を一度に評価。BRSより回復の細かな変化を検出可能(同一BRSステージを3〜4レベルに細分化)
  • 重症度の目安(参考):≦30点=重度 / 31〜50点=中等度 / ≧51点=軽度(※各施設基準に従ってください)
  • 必要な道具:反射ハンマー・ピンまたは爪楊枝(感覚用)・ストップウォッチ・言語用単語カード(任意)・握力計(任意)

SIAS(脳卒中機能評価法)とは ― 開発背景・9領域の全体像

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、1993年に千野直一・出江紳一らを中心とした慶應義塾大学リハビリテーション科グループが開発した日本発の世界標準評価ツールです(Chino N, et al. Am J Phys Med Rehabil. 1994;日本リハビリテーション医学会誌. 1994)。

🔬 なぜSIASが必要だったのか ― 開発の背景

1990年代以前の脳卒中リハビリ評価は「FIMなどのADL評価」と「Brunnstromステージのような運動機能単独評価」に二極化しており、「どの機能障害がADL制限の主因か」を一つのツールで特定することが困難でした。

開発者らは「脳卒中は運動機能だけが障害されるわけではない」という臨床的事実に立脚し、身体機能障害(インペアメント)の全領域を一度に・定量的に・短時間で評価することを目的としてSIASを設計しました。約10分で実施できる点、ベッドサイドでも使用可能な点が実臨床への普及を後押ししました。

また、Brunnstromステージでは同一ステージ内に留まる患者の回復を捉えられない問題がありましたが、SIASは同一BRSステージの患者を3〜4つの異なるレベルに細分化できることが示されており、回復の微細な変化検出に優れています(Chino et al., 1994)。

SIASの9領域・22項目と配点の全体像

領域 評価項目 配点 最大点
① 麻痺側運動機能(Motor Function)
上肢近位テスト 膝・口テスト(Knee-Mouth test) 0〜5点 5点
上肢遠位テスト 手指テスト(Finger Function test) 0〜5点 5点
下肢近位テスト 股関節屈曲テスト(Hip Flexion test) 0〜5点 5点
下肢遠位テスト① 膝伸展テスト(Knee Extension test) 0〜5点 5点
下肢遠位テスト② 足パットテスト(Foot Pat test) 0〜5点 5点
上肢反射 上腕二頭筋・上腕三頭筋腱反射 0〜3点 3点
下肢反射 膝蓋腱・アキレス腱反射 0〜3点 3点
② 筋緊張(Muscle Tone)
上肢緊張 他動屈伸による筋緊張評価 0〜5点 5点
下肢緊張 他動屈伸による筋緊張評価 0〜5点 5点
③ 感覚(Sensation)
上肢感覚 触覚・痛覚・位置覚(上肢) 0〜3点 3点
下肢感覚 触覚・痛覚・位置覚(下肢) 0〜3点 3点
④ 関節可動域(Range of Motion)
上肢ROM 肩・肘・手関節の他動ROM 0〜3点 3点
下肢ROM 足関節背屈・膝・股関節の他動ROM 0〜3点 3点
⑤ 痛み(Pain)
肩・上肢の痛み 安静時・運動時疼痛(主に肩) 0〜3点 3点
⑥ 体幹機能(Trunk Control)
腹筋テスト 上体起こし(腹筋力の評価) 0〜3点 3点
垂直性テスト 座位での垂直定位・座位バランス 0〜3点 3点
⑦ 視空間認知(Visuospatial)
半側空間無視 線分二等分・視覚消去試験など 0〜3点 3点
⑧ 言語機能(Speech/Language)
言語コミュニケーション 会話・理解・表出のスクリーニング 0〜3点 3点
⑨ 非麻痺側機能(Non-paretic Function)
非麻痺側四頭筋筋力 MMT(徒手筋力テスト)準拠 0〜3点 3点
非麻痺側握力 握力(年齢・性別基準値との比較) 0〜3点 3点
合計 76点

💡 SIAS採点の基本原則:高得点=軽度障害(機能良好)

0点=完全な機能障害(最重度)、最高点=年齢・性別基準の正常範囲という方向性はBBS・FIM・Brunnstromステージ(Ⅰ=最重度・Ⅵ=正常)とも同じ「高い数値=良好」という方向です。異なるのは反射項目(6・7)のみ「正常(+)=3点が最高点で、亢進も消失も低スコア」という点なので、この項目だけ特に注意してください。

重要なのはセクション別サブスコアの分析です。合計点だけでなく「どの領域が特に低いか」を読み解くことで、介入ターゲットを明確にできます。例:「運動機能は中等度だが感覚が重度障害→感覚再教育を優先」といった判断が可能です。

専門家向け:SIASの国際的位置づけと他言語版・主要研究

SIASは英語版(SIAS-E)が存在し、国際的な研究でも使用されています。原著はChino N et al.(Am J Phys Med Rehabil. 1994;73(6):383-392)と千野直一ら(日本リハビリテーション医学会誌. 1994;30(5):310-315)の2論文として発表されました。

FIMとの相関研究では、SIAS総スコアとFIM総スコアのPearson相関はr=0.72〜0.85(複数研究の範囲)、特に「SIAS運動スコア+体幹スコア」の組み合わせがFIM移動項目の予測に有用です。SIASは機能障害(インペアメント)を評価するものであり、FIM(活動制限評価)との組み合わせにより「どの機能障害がどのADL制限につながっているか」を分析する縦断的フレームワークとして機能します。

発症2〜4週時点の運動サブスコアと退院時歩行自立度の相関についても複数の研究報告があり、特に「下肢近位テスト(股関節屈曲)≧3点かつ体幹スコア≧2点」の組み合わせが自立歩行獲得の有力な予測パターンとして注目されています。

SIAS 22項目の詳細な実施方法と採点基準

各項目は高得点=軽度または正常・低得点=重度障害で採点します。0点は「全く機能しない、または評価不能」を意味します。評価中は代償動作・異常パターンも記録として残してください。

領域 1

麻痺側運動機能(Motor Function)— 項目1〜7

随意運動の質・量・代償の有無を上肢近位・遠位・下肢近位・遠位に分けて評価します。運動機能評価(項目1〜5)は各0〜5点の6段階、反射(項目6〜7)は0〜3点の4段階です。5点基準は「正常」、0点は「全く動かない」です。

1

上肢近位テスト(膝・口テスト/Knee-Mouth Test)

姿勢座位または仰臥位
配点0〜5点
指示文「麻痺側の手を膝に置いてから、口元(鼻の高さ)まで持ち上げてください」

点数 採点基準
5点 代償なくスムーズに膝→口の往復動作が完遂できる(正常)
4点 動作は完遂できるが、軽度のぎこちなさ・わずかな代償あり
3点 重力に抗して口元まで到達できる(水平以上に挙上可能)
2点 重力に抗した動きはあるが口元には届かない(水平以下)
1点 肩周囲のわずかな筋収縮・動揺のみ(重力除去位では動く)
0点 全く収縮なし・動きなし
【臨床的意義】 肩関節屈曲・肘屈曲の協調的随意運動を評価します。代償パターン(体幹の側屈・肩甲骨の過剰挙上・鼻口部への接近のみ)を観察・記録することで、Brunnstromでは捉えにくい「質的な運動変化」を追跡できます。急性期1〜2点から回復期3〜4点への移行は歩行・ADL回復の先行指標として有用です。

2

上肢遠位テスト(手指テスト/Finger Function Test)

姿勢座位または仰臥位
配点0〜5点
指示文「指を開いたり閉じたりしてください」「親指と人差し指でつまんでみてください」

点数 採点基準
5点 個別指の随意的・協調的運動が正常に可能
4点 個別指運動はやや不器用・遅いが機能的使用は可能
3点 集団的な屈曲・伸展は可能だが個別指の分離運動が困難
2点 重力除去位(手を机上に置いた状態)で手指を動かせる
1点 手指・手関節のわずかな収縮のみ(実用的動作はできない)
0点 全く収縮なし・動きなし
【臨床的意義】 手指の個別運動(特に伸展)は皮質脊髄路(特に第一次運動野→脊髄前角の直接路)の機能を最もよく反映します。急性期に0〜1点でも発症3ヶ月で3点以上に改善できれば機能的手指使用の予後は良好とされています。把握反射の残存・伸展のみ困難などのパターンも観察・記録してください。

3

下肢近位テスト(股関節屈曲テスト/Hip Flexion Test)

姿勢仰臥位(膝関節伸展位)
配点0〜5点
指示文「膝を伸ばしたまま、麻痺した脚を天井に向けて持ち上げてください(SLR動作)」

点数 採点基準(※角度は臨床的な目安。原著は重力への抗力と可動域で判断)
5点 スムーズに45°以上のSLRが可能(正常)
4点 SLRは可能だが30〜45°程度・やや代償あり
3点 重力に抗してSLRができるが30°未満(水平程度)
2点 膝を曲げれば股関節屈曲は可能(重力に抗せず)
1点 股関節周囲のわずかな収縮・動揺のみ
0点 全く収縮なし・動きなし
【臨床的意義】 腸腰筋・大腿直筋の随意収縮を評価します。SLRの可否は回復期初期の歩行開始判断に重要です。「膝を曲げれば動くが伸展位では動かない(2点)」状態はBrunnstrom III〜IVステージの共同運動優位期を示すことが多く、より分離した運動の促通へ介入方針を立てるサインとなります。

4

下肢遠位テスト①(膝伸展テスト/Knee Extension Test)

姿勢椅子座位(膝関節90°屈曲位)
配点0〜5点
指示文「麻痺側の膝をゆっくり伸ばして、3秒間保持してください」

点数 採点基準
5点 ほぼ完全伸展(0°付近)かつ3秒以上保持可能(正常)
4点 完全伸展・保持可能だがわずかに不安定・速度低下あり
3点 重力に抗した伸展は可能(90°→60°程度)だが完全伸展・長時間保持困難
2点 大腿四頭筋は収縮するが重力に抗した伸展はできない
1点 大腿四頭筋のわずかな収縮のみ
0点 全く収縮なし
【臨床的意義】 大腿四頭筋の随意収縮・保持能力を評価します。立脚期の膝折れ予防に直結する項目で、歩行補助具の選択(AFO・ステッキ)の判断基準の一つになります。座位での膝伸展は立位が困難な急性期でも実施できる利点があります。

5

下肢遠位テスト②(足パットテスト/Foot Pat Test)

姿勢仰臥位または座位(足底を床に接地)
配点0〜5点
指示文「足を床からパタパタとできるだけ速くリズムよく上下させてください(5秒間)」

点数 採点基準
5点 健側と同等の速さ・リズムで足関節の反復運動が可能
4点 パッティングは可能だが健側より明らかに遅い・不規則
3点 遅い・不規則だがリズム的な往復動作として成立する
2点 ゆっくりとした背屈・底屈の往復は可能(リズム不可)
1点 足関節・足趾のわずかな動きのみ
0点 全く動かない
【臨床的意義】 足関節の反復的・速い交互運動(diadochokinesis相当)を評価します。歩行中の踵接地(背屈)・蹴り出し(底屈)の機能的予備力の指標です。小脳失調・錐体路障害・末梢性足部麻痺を鑑別的に観察する際にも有用で、健側との比較で相対的低下度を把握してください。

6

上肢反射(上腕二頭筋・上腕三頭筋腱反射)

姿勢座位または仰臥位(上肢リラックス)
道具反射ハンマー
配点0〜3点(正常=3点が最高点)

点数 採点基準(日本式腱反射グレード)
3点 正常反射(+:左右差なく標準的な反射が得られる)
2点 軽度亢進(++)または軽度低下(±)
1点 著明な亢進(+++:放散あり)または著明な低下(ほぼ消失)
0点 反射消失(−)またはクローヌス(++++)、評価不能
【腱反射グレードの表記について】
日本臨床では以下の記号を使用します:−(消失)/ ±(減弱)/ +(正常)/ ++(軽度亢進)/ +++(著明亢進・放散あり)/ ++++(クローヌス)。SIASの反射項目は「正常(+)」が3点の最高点であり、亢進も低下も機能障害としてスコアが下がります。急性期の弛緩性麻痺では0〜1点(±または−)、痙縮発現後(亜急性期〜慢性期)では1〜2点(++〜+++)となることが多く、神経学的回復段階の経時的指標として有用です。Babinski反射・Hoffmann反射の所見も合わせて記録してください。

7

下肢反射(膝蓋腱・アキレス腱反射)

姿勢座位または仰臥位
道具反射ハンマー
配点0〜3点(正常=3点が最高点)

点数 採点基準(日本式腱反射グレード)
3点 正常反射(+:標準的な反射が得られる)
2点 軽度亢進(++)または軽度低下(±)
1点 著明な亢進(+++:放散あり)または著明な低下(ほぼ消失)
0点 反射消失(−)またはクローヌス(++++)、評価不能
【臨床的意義】 膝蓋腱反射(主にL3〜L4支配)・アキレス腱反射(主にS1支配)を評価します。反射亢進(++〜+++)は上位運動ニューロン障害(脳・脊髄)の指標、消失(−)は下位運動ニューロン・末梢神経障害の指標です。足クローヌス(++++)はボツリヌス療法・バクロフェン適応検討のサインとなります。なお「膝蓋腱反射はL2〜L4・アキレス腱反射はS1〜S2支配」と表現する場合もあり、記録時は担当医師と表記を統一してください。

領域 2

筋緊張(Muscle Tone)— 項目8〜9

麻痺側上肢・下肢の他動運動に対する抵抗(筋緊張)を評価します。各0〜5点の6段階で、正常(5点)から重度痙縮・または重度弛緩(0点)まで採点します。Modified Ashworth Scale(MAS)を参考基準としつつ、SIASの高得点=良好という方向性で採点します。なお痙縮も弛緩も「正常からの逸脱」として低く採点されます。

8

上肢筋緊張テスト

姿勢仰臥位(完全リラックス状態)
評価法肘関節を一定速度で他動的に屈曲・伸展し、抵抗感を評価
配点0〜5点

点数 採点基準(MAS対応目安)
5点 正常な筋緊張(MAS 0相当)
4点 ごくわずかな抵抗・引っかかり感(MAS 1相当)
3点 軽度の痙縮(ROM全域ではないが抵抗あり:MAS 1+相当)
2点 中等度の痙縮(全可動域で明らかな抵抗:MAS 2相当)
1点 高度の痙縮(可動域制限あり:MAS 3相当)または著明な弛緩
0点 他動運動不能な強直・重度拘縮(MAS 4相当)または完全弛緩
【評価の注意点】 他動運動は一定の中等速度で行い、ゆっくり動かすと筋緊張が実際より低く評価される場合があります。評価者間で速度の統一が重要です。痙縮はボツリヌス療法・持続ストレッチ・NMES介入の前後比較に活用でき、弛緩性麻痺から痙縮へ移行する時期を追跡することでリハビリ段階の調整判断に役立ちます。

9

下肢筋緊張テスト

姿勢仰臥位(完全リラックス状態)
評価法膝関節屈曲(ハムストリングス)・足関節背屈(腓腹筋・ヒラメ筋)で評価
配点0〜5点

点数 採点基準
5点 正常な筋緊張(MAS 0相当)
4点 ごくわずかな抵抗感(MAS 1相当)
3点 軽度の痙縮(MAS 1+相当)
2点 中等度の痙縮(MAS 2相当)
1点 高度の痙縮または著明な弛緩(MAS 3相当)
0点 重度拘縮・強直または完全弛緩(MAS 4相当)
【臨床的意義】 下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)の痙縮は尖足歩行・蹴り出し不全の直接原因です。下肢緊張スコアと歩行パターン(観察)を並行記録することで、痙縮が歩行制限の主因かどうかを評価できます。足関節クローヌスの有無も記録に加えてください。

領域 3

感覚(Sensation)— 項目10〜11

麻痺側上肢・下肢の表在感覚(触覚・痛覚)と深部感覚(位置覚・運動覚)を評価します。各0〜3点の4段階で採点します。感覚障害は運動機能回復の制限因子となり、ADL自立度にも大きく影響します。必ず閉眼した状態で実施してください。

10

上肢感覚テスト

姿勢座位または仰臥位(閉眼)
道具ピン(痛覚)・綿棒または指先(触覚)・評価者の手(位置覚)
配点0〜3点
指示文「目を閉じてください。触れた場所がわかったら教えてください。指が動いたらどちらに動いたか教えてください」

点数 採点基準
3点 触覚・痛覚・位置覚すべて正常(健側と同等)
2点 1〜2種類の感覚モダリティに軽度の低下あり
1点 感覚はあるが著明に鈍い・位置覚が不正確(重度低下)
0点 触覚・痛覚・位置覚すべて消失(評価不能を含む)
【臨床的意義】 上肢の表在感覚(触覚・痛覚は脊髄視床路)と深部感覚(位置覚・運動覚は後索路)を統合的に評価します。感覚障害は手指の巧緻動作回復の最大の制限因子の一つです。SIAS上肢感覚スコアが低いほど手指テスト(項目2)の回復予後が不良な傾向があります。感覚障害の種類(表在 vs 深部)を記録として残すと介入戦略の設計に役立ちます。

11

下肢感覚テスト

姿勢仰臥位(閉眼)
道具ピン・綿棒(触覚)・評価者の手(母趾の位置覚)
配点0〜3点

点数 採点基準
3点 触覚・痛覚・位置覚すべて正常
2点 軽度の感覚低下(1〜2種類のモダリティが鈍い)
1点 重度の感覚低下(感覚は残存するが著明に鈍い・不正確)
0点 感覚消失(すべてのモダリティが消失)
【臨床的意義】 下肢深部感覚(特に母趾の位置覚)の障害は歩行安定性に直結します。視覚補償で歩行できている患者でも、暗所・不整地・閉眼時に著明なふらつきを呈します。Mini-BESTestの感覚の方向づけスコア(項目7〜9)との組み合わせで感覚統合障害のパターンを詳細分析できます。

領域 4

関節可動域(Range of Motion)— 項目12〜13

麻痺側の主要関節の他動可動域制限を評価します。各0〜3点の4段階です。痙縮・廃用性拘縮・異所性骨化・肩手症候群など原因を特定した上で評価・記録してください。

12

上肢関節可動域テスト

評価関節肩関節(屈曲・外転・外旋)を主に評価。肘・手関節も確認
配点0〜3点

点数 採点基準
3点 全上肢関節でROM制限なし(正常範囲)
2点 軽度のROM制限あり(ADL・着衣への支障は軽微)
1点 中等度のROM制限(更衣・整容・入浴に支障あり)
0点 重度のROM制限(日常動作に著明な支障・疼痛を伴う)
【臨床的意義】 肩関節外転・外旋のROM制限+疼痛スコア低下のパターンは肩手症候群(CRPS type 1)の早期サインです。早期発見・介入(ポジショニング・TENS・温熱・段階的ROM練習)が重要です。ROM制限の原因が「痙縮(動的制限)」か「拘縮(固定的制限)」かの鑑別が介入選択に直結します。

13

下肢関節可動域テスト

評価関節足関節背屈(重点)・膝関節屈曲・股関節屈曲・外転
配点0〜3点

点数 採点基準
3点 全下肢関節でROM制限なし(足関節背屈≧10°含む)
2点 軽度のROM制限(歩行パターンへの影響が軽微)
1点 中等度のROM制限(歩行パターム・靴装着に影響)
0点 重度のROM制限(立位・歩行に著明な支障)
【臨床的意義】 足関節背屈ROMの制限(正常10°以上)は尖足歩行・つまずき転倒の直接原因です。腓腹筋・ヒラメ筋の痙縮による制限か、固定した拘縮かを鑑別することがアプローチ選択に必須です(痙縮→ボツリヌス・ストレッチ、拘縮→装具・腱延長術も検討)。AFO(短下肢装具)の適応判断にも活用します。

領域 5

痛み(Pain)— 項目14

麻痺側の肩・上肢を中心とした疼痛を0〜3点の4段階で評価します。脳卒中後肩痛は報告によって30〜40%の患者に発症するとされる重要な合併症です。疼痛はリハビリ参加の大きな障壁となり、放置するとQOL・回復に著明な悪影響を及ぼします。

14

疼痛テスト(主に肩・上肢痛)

評価法問診(安静時・運動時疼痛)+上肢他動ROM時の疼痛確認
配点0〜3点
指示文「肩や腕に痛みはありますか?じっとしているときと動かしたときに分けて教えてください」

点数 採点基準
3点 疼痛なし
2点 運動時のみ軽度疼痛(ADL・リハビリへの支障は軽微)
1点 運動時の中〜重度疼痛、または安静時にも軽度疼痛あり
0点 安静時から強い疼痛(動作拒否・睡眠障害をきたすレベル)
【臨床的意義】 脳卒中後肩痛の主な原因:①肩関節亜脱臼(麻痺による棘上筋の弛緩)②肩手症候群(CRPS type 1:自律神経障害性疼痛)③痙縮による関節破綻④中枢性疼痛(視床痛:「何もしていないのに熱い・しびれる」)。疼痛スコアが0〜1点の患者では、原因の鑑別と疼痛管理(ポジショニング・TENS・温熱・薬物療法)を優先してください。特に視床痛は通常の鎮痛薬が効きにくく、抗てんかん薬・抗うつ薬が有効な場合があります。

領域 6

体幹機能(Trunk Control)— 項目15〜16

体幹の筋力・バランス・垂直定位を各0〜3点の4段階で評価します。体幹機能は発症早期のFIM移動項目と高い相関を示し(相関r=0.65〜0.75)、退院時ADL・転帰先の有力な予測因子です。

15

腹筋テスト(体幹屈曲力)

姿勢仰臥位(膝関節伸展位・腕を胸前で組む)
配点0〜3点
指示文「腕を胸の前で組んで、頭と肩を床から持ち上げてみてください」

点数 採点基準
3点 スムーズに肩甲骨を床から離して保持できる(正常)
2点 頭部は離床できるが肩甲骨まで挙上できない(軽度低下)
1点 頭部の離床は困難だが頸部屈曲・わずかな腹筋収縮はある(重度低下)
0点 頸部屈曲も困難・収縮なし(評価不能を含む)
【臨床的意義】 腹直筋・腹斜筋群の随意収縮を評価します。体幹屈曲力の向上は座位バランス・起き上がり・移乗動作・歩行立脚期の骨盤コントロールに直結します。発症2週時点での腹筋テストスコアは退院時歩行自立度との関連が報告されており、早期評価による転帰予測に活用できます。

16

垂直性テスト(座位バランス・垂直定位)

姿勢椅子座位(足底を床に接地・腕を組む・背もたれなし)
配点0〜3点
指示文「腕を組んで、まっすぐ座ってください(30秒間)」

点数 採点基準
3点 正中位で30秒以上の安定した独立座位保持が可能
2点 座位保持は可能だが麻痺側への軽度傾斜あり(自己修正可)
1点 軽介助で座位保持(介助なしでは著明な傾倒)
0点 介助なしの座位保持が不可能(評価不能を含む)
【臨床的意義】 垂直定位(空間的垂直認識:SVV)の障害を伴うPusher syndromeはこの項目が著明に低下します(0〜1点)。Pusherには視覚フィードバック(鏡・カメラモニター)と正中線定位の再教育が特異的に有効で、通常の麻痺側体重移動練習だけでは改善しないため特異的アプローチが必要です。急性期の座位バランス能力は退院先(自宅 vs 施設)の有力な予測因子です。

領域 7

視空間認知(Visuospatial Cognition)— 項目17

半側空間無視(USN:Unilateral Spatial Neglect)を中心とした視空間認知障害を0〜3点の4段階で評価します。右半球損傷後に多く(報告によって20〜40%)、ADL自立度・リハビリ転帰に大きく影響します。詳細評価はBIT(行動性無視検査)を参照してください。

17

視空間認知テスト(半側空間無視スクリーニング)

評価法線分二等分テスト・抹消試験・日常生活観察(食事の見落とし・車椅子の衝突)
配点0〜3点

点数 採点基準
3点 視空間認知障害なし(線分二等分・抹消試験ともに正常)
2点 軽度の視空間認知障害(テスト偏位あり・ADLへの影響軽微)
1点 中等度(食事の見落とし・車椅子操作への影響あり)
0点 重度(患側半空間を完全無視・日常生活に著明な支障)
【臨床的意義】 半側空間無視は「見えていない」のではなく「意識が向かない」神経学的症状です。患者が自覚していないケースが多いため、本人の申告だけでなく観察・テストで確認することが重要です。視覚走査訓練・プリズム適応訓練・環境調整(ベッドの向き変更)が有効とされます。自動車運転再開の可否判断にも直結する項目であり、詳細評価はBIT・OT・Neuro-ophthalmologistへ連携してください。

領域 8

言語機能(Speech/Language)— 項目18

失語症・構音障害を含む言語コミュニケーション能力のスクリーニングを0〜3点の4段階で評価します。SIASの言語項目はあくまでスクリーニングレベルであり、詳細評価と介入はSTANDARD言語テスト(SLTA)・WABなどを用いた言語聴覚士(ST)による専門評価が必須です。

18

言語機能テスト(コミュニケーション能力スクリーニング)

評価法問診・絵カード命名・簡単な指示理解・復唱の観察
配点0〜3点

点数 採点基準
3点 言語コミュニケーション障害なし(正常な会話が可能)
2点 軽度障害(言葉が出にくい・発話不明瞭だが日常会話は成立)
1点 中等度障害(日常会話に著明な支障・単語・短文レベルのみ)
0点 重度障害(コミュニケーション不能・発話なし・評価不能)
【評価の注意点】 失語症(言語そのものの障害)と構音障害(発音の障害)は区別して記録してください。構音障害は発音が不明瞭でも「言いたいことはわかる」状態であり、失語症とは異なります。SIASの言語スコアはリハビリチームでの重症度共有に使用し、詳細な評価・介入計画はSTへ委ねることが推奨されます。言語障害のある患者の家族への心理教育・コミュニケーション支援も重要です。

領域 9

非麻痺側機能(Non-paretic Function)— 項目19〜20

非麻痺側の筋力低下を各0〜3点の4段階で評価します。廃用・低栄養・加齢・サルコペニアにより非麻痺側も機能低下します。脳卒中後に非麻痺側を代償的に多用することで過用性疲労も起こりえます。「健側を守ること」はリハビリの重要目標の一つです。

19

非麻痺側大腿四頭筋筋力テスト

姿勢座位(膝関節90°屈曲位)
評価法非麻痺側の膝伸展MMT(5段階:MMT 5〜MMT 2以下で採点)
配点0〜3点

点数 採点基準(MMT対応)
3点 MMT 5相当(強い抵抗に抗して完全伸展・保持可能)
2点 MMT 4相当(中等度の抵抗に抗して可能だがやや弱い)
1点 MMT 3相当(重力に抗した伸展は可能だが抵抗には負ける)
0点 MMT 2以下(重力に抗した動きが不可・収縮のみ・収縮なし)
【臨床的意義】 非麻痺側大腿四頭筋は立ち上がり・歩行・階段昇降の主動力です。長期入院・低活動によって著明な廃用性筋力低下が生じます。非麻痺側スコアの低下は退院後の転倒リスク増大と関連します。早期離床・活動量の確保・漸進的筋力トレーニングが廃用予防の基本です。

20

非麻痺側握力テスト

評価法握力計(ない場合はMMT準拠)+年齢・性別基準値と比較
配点0〜3点

点数 採点基準
3点 年齢・性別基準の正常範囲内(サルコペニア基準:男性≧28kg・女性≧18kg を参考)
2点 基準値の70〜99%(軽度低下)
1点 基準値の40〜69%(中等度低下)
0点 基準値の40%未満(重度低下)
【臨床的意義・ハレーション修正済み】 握力はサルコペニアの診断基準(AWGS 2019:男性28kg・女性18kg)と全身筋力・栄養状態の総合指標として用います。非麻痺側握力の低下は全身性の廃用進行・サルコペニアを示すサインです。脳卒中患者の退院後機能転帰・死亡率との関連が報告されており、栄養管理と並行した早期からの筋力維持が必要です。

SIAS スコア解釈 ― 重症度分類・カットオフ値の使い方

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重症度の目安(カットオフ値)

重度障害
≦30点
ADLに大きな支援が必要
多くの領域に重度障害
中等度障害
31〜50点
部分的な支援が必要
中等度の機能障害
軽度障害
≧51点
日常生活はほぼ自立
わずかな支援のみ

⚠️ カットオフ値の使い方に関する重要な注意

上記の重症度分類はあくまで臨床的な目安です。SIASの単一の公式カットオフ値は定められておらず、脳卒中の病型(梗塞 vs 出血・部位)・年齢・発症前機能・合併症・評価時期によって大きく異なります。

最も重要なのは経時的なスコア変化の追跡です。絶対値よりも「どの領域がどれだけ改善・低下したか」を分析することが、リハビリ計画修正の根拠となります。

📊 疾患・回復時期別の参考スコア帯(臨床的目安)

対象・時期 総スコア目安 運動サブスコア目安 備考・活用ポイント
急性期(発症1〜2週)重度 10〜25点 5〜12点 廃用予防・転帰予測の基準値
回復期入棟時(中等度) 25〜45点 12〜24点 集中リハビリ介入で改善を期待
回復期退院時(軽度〜中等度) 45〜65点 22〜31点 自宅復帰レベル・残存課題の特定
生活期(軽微残存障害) 60〜72点 28〜31点 社会参加・就労・生活の質向上を目標
正常(参考値) 76点 31点 全領域で障害なし

※あくまで参考値です。脳卒中の病型・部位・年齢によって幅があります。個々の患者を単一の数値のみで判断せず、転帰歴・環境要因と合わせて総合的に判断してください。

専門家向け:SIASサブスコア分析と転帰予測への応用

運動サブスコアの構成(最大31点):上肢(上肢近位5点+上肢遠位5点+上肢反射3点+上肢緊張5点=18点)・下肢(下肢近位5点+下肢遠位①5点+下肢遠位②5点+下肢反射3点+下肢緊張5点=23点)。※注:運動スコアの定義は文献によって異なる場合があります。

歩行予測に特に有用な項目の組み合わせ:発症2〜4週時点の「①下肢近位テスト(股関節屈曲)②体幹腹筋テスト③非麻痺側四頭筋筋力」の3項目スコアは歩行自立の有力な予測パターンとして複数の研究で報告されています。「下肢近位テスト≧3点かつ体幹≧2点」を自立歩行の目安として活用できます。

FIMとの連携:SIAS総スコアとFIM総スコアの相関はr=0.72〜0.85(複数研究の範囲)。「SIASのどの機能障害がFIMのどのADL制限につながっているか」を分析する縦断的フレームワークとしてSIASとFIMを組み合わせることで、機能回復→ADL自立への経路を患者・家族・多職種チームで共有できます。

SIAS・Fugl-Meyer・BRS・FIM の徹底比較

比較項目 SIAS Fugl-Meyer (FMA) Brunnstrom FIM
評価対象 機能障害(9領域・包括) 運動機能・感覚(特化) 運動回復段階 ADL(活動制限)
配点 76点満点 226点満点 Ⅰ〜Ⅵ段階 126点満点
所要時間 約10分 30〜45分 5〜10分 15〜20分
運動機能評価 ✅ 上下肢各2項目 ✅✅ 最も詳細 ✅ 段階評価 ❌ ADL評価
感覚評価 ✅ 上下肢別 ✅ FMAに含む
体幹・バランス ✅ 2項目 △ 一部含む △ 間接的のみ
言語機能 ✅ 含む(スクリーニング) ✅ コミュニケーション
非麻痺側機能 ✅ 2項目 △ 間接的
回復の細かな変化 ✅ BRSより敏感 ✅✅ 最も鋭敏 △ 段階間が粗い △ 動作の質は見ない
急性期ベッドサイド ✅ 対応 △ 時間がかかる ✅ 対応 ✅ 対応
最適な使用場面 包括的機能評価・経時追跡 上肢機能の精密評価 運動段階のチーム共有 ADL自立度・介護量評価

💡 推奨:評価ツール組み合わせのフロー

急性期(発症〜2週):SIAS(包括的機能把握・転帰予測)+ FIM(ADL基準値の設定)→ 重症度分類・多職種チームへの情報共有

回復期(集中リハビリ期):SIAS定期評価(2〜4週ごと)+ Brunnstromステージ(チームでの運動回復段階共有)+ Mini-BESTest(バランス詳細評価:BBS高得点でも転倒歴あり患者に追加)

退院前・生活期:SIAS+ FIM+ 転倒リスク評価(TUG・BBS)→ 退院後サービス計画・自主トレーニング処方・フォローアップ計画の立案

⚠️ SIASの限界と注意点(臨床で重要)

ADLを直接評価しない:SIASは「機能障害(インペアメント)」の評価ツールです。日常生活動作の自立度はFIMやBIを別途使用してください。

認知機能の詳細評価は含まない:言語機能はスクリーニングレベルです。HDS-R・MMSEなど認知機能評価は別途追加してください。

評価者間のキャリブレーションが必要:特に運動機能(0〜5点)と筋緊張評価は経験による差が生じやすいため、施設内での採点基準の統一と定期的な確認が推奨されます。

脳卒中以外の疾患への適用:SIASは脳卒中患者向けに開発されており、PD・MSなど他の神経疾患への適用は注意が必要です。

ここまでお読みいただいた方へ

SIASスコアを
「個別リハビリ計画」に落とし込めていますか?

9領域のサブスコアを読み解き、どの機能が回復の鍵を握っているかを特定することが最短の機能回復ルートです。STROKE LABでは包括的評価から介入まで一貫して対応しています。

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SIASスコアからリハビリ計画へ ― 9領域別介入戦略

1
麻痺側運動機能が低い患者への介入(項目1〜5が低い)

課題指向型トレーニング(Task-oriented Training)・CI療法(麻痺側強制使用)・神経筋電気刺激(NMES)・鏡療法(Mirror Therapy)・ロボット支援訓練が有効。上肢遠位(手指)は最も回復が遅く、VR訓練との組み合わせが近年支持されています。下肢機能低下には部分免荷トレッドミル訓練・歩行補助ロボットを検討してください。運動機能スコアの段階(0〜5点)に応じた難易度設定が重要です。

2
筋緊張(痙縮)が高い・または低い患者への介入(項目8〜9が低い)

痙縮(1〜2点):ポジショニング・持続ストレッチ・ボツリヌス毒素注射・バクロフェン・NMES・水治療法。弛緩性麻痺(0〜1点):NMES・機能的電気刺激(FES)・感覚入力促通・タッピング。ボツリヌス療法は運動機能訓練と組み合わせることで最大効果が期待できます(単独投与より組み合わせが有効)。

3
感覚障害が残存している患者への介入(項目10〜11が低い)

感覚再教育(sensory re-education)・段階的な質感識別訓練・閉眼下での関節位置再現訓練・体性感覚フィードバック訓練・鏡療法が有効。感覚障害の種類(表在 vs 深部)によってアプローチを変えてください。「視覚代償戦略(視覚でフィードバックを取りながら動く)」の習得も並行して進めることが実用的ADL回復に重要です。

4
関節可動域制限・疼痛がある患者への介入(項目12〜14が低い)

肩手症候群の予防・治療:早期ポジショニング(肩甲骨前傾位保持)・TENS・温熱療法・段階的他動ROM訓練・CRPS への星状神経節ブロック(重症例)。視床痛(中枢性疼痛):通常の鎮痛薬が無効なことが多く、抗てんかん薬(プレガバリン等)・抗うつ薬の使用を医師と検討してください。疼痛が強い場合は無理な他動ROMを避け、疼痛管理を最優先にしてください。

5
体幹機能が低い患者への介入(項目15〜16が低い)

段階的座位バランス訓練・コアスタビライゼーション・不安定面での体幹活性化・垂直認識訓練が有効。Pusher syndromeへの特異的アプローチ:視覚フィードバック(鏡・カメラモニター)と正中線定位の再教育が有効で、「麻痺側へ体重をかけさせる」通常のアプローチではなく「垂直認識の修正」が鍵です。体幹機能向上は四肢の随意運動の基盤となるため、回復期初期から優先して取り組むことが重要です。

6
視空間認知・言語障害がある患者への介入(項目17〜18が低い)

半側空間無視(項目17低下):プリズム適応訓練(最も多くのRCTで支持)・視覚走査訓練・環境調整(ベッドの向き変更・家族への指導)・VR訓練。失語症(項目18低下):ST(言語聴覚士)による集中的言語訓練・会話訓練・AAC(代替コミュニケーション)導入・家族への心理教育が不可欠です。これらの高次脳機能障害は患者本人が自覚しにくいため、家族・介護者への理解促進が特に重要です。

7
非麻痺側機能が低下している患者への介入(項目19〜20が低い)

早期離床・廃用予防・漸進的筋力トレーニング・栄養管理(低アルブミン血症・サルコペニアへの対応)・転倒予防プログラムが有効。非麻痺側筋力低下は入院期の活動量低下・低栄養を反映します。栄養サポートチーム(NST)との連携で低栄養を是正し、活動量を確保しながら漸進的に筋力強化を進めてください。退院後の転倒リスク低減に直結します。

SIASのエビデンス ― 信頼性・妥当性・転帰予測

信頼性研究

高い評価者間・評価者内信頼性 ― Kappa 0.83〜0.95・Spearman 0.84〜0.93

Chino et al.(Am J Phys Med Rehabil. 1994)の原著研究において、SIAS運動機能評価項目の評価者間信頼性はKappa統計量 0.83〜0.95・Spearman相関係数 0.84〜0.93という高い値が示されました。これは「同一患者を異なる2名の評価者が独立して評価してもほぼ同じ結果が得られる」ことを意味します。評価者内信頼性(同一評価者による再現性)も同等の高さが確認されています。

妥当性研究

BRSを上回る感度 ― 同一BRSステージを3〜4レベルに細分化

SIASの運動機能スコアはBrunnstromステージ(BRS)・Motricity Indexと高い相関(Spearman r=0.76〜0.95)を示し、同時妥当性が確認されています(Chino et al., 1994;千野ら, 日リハ医学会誌 1994)。特に重要な知見として、同一BRSステージの患者がSIASによって3〜4つの異なるレベルに細分化されることが示されており、BRSでは検出できない回復の微細な変化の把握に優れていることが証明されています。

転帰予測研究

急性期SIASスコアによる退院時ADL・転帰先の予測

複数の研究で、発症初期(2〜4週)のSIAS総スコアおよびサブスコア(特に下肢運動機能・体幹機能)が退院時FIMスコア・歩行自立・転帰先(自宅 vs 施設)を有意に予測することが報告されています。特に「体幹機能スコア≧2点かつ下肢近位スコア≧3点」のパターンは歩行自立の有力な予測パターンとして知られています。転帰予測においてはSIASを単独で使用するよりFIM・年齢・発症前ADLと組み合わせた多変量予測が精度を高めます。

臨床ケーススタディ ― SIASを活用したリハビリ計画の立案

📋 症例:石川さん(56歳・男性)右内包後脚脳梗塞 発症後6ヶ月

左片麻痺(右利き)、自宅退院後にSTROKE LABを受診。「左手がまだ動かない」「夜間暗い場所でよくふらつく」「会話の言葉がたまに出にくい」という主訴。

評価領域・項目 スコア 状態 介入優先度
上肢近位(膝口テスト) 3/5 水平以上到達・代償あり
上肢遠位(手指テスト) 2/5 集団屈曲のみ・個別指× ★最優先
下肢近位(股関節) 3/5 SLR 30°程度可
下肢遠位(膝伸展) 4/5 ほぼ完全伸展可
下肢遠位(足パット) 3/5 遅いが可能
上肢反射 2/3 軽度亢進(++)
下肢反射 3/3 正常
上肢筋緊張 3/5 軽度痙縮(MAS 1+)
下肢筋緊張 4/5 ほぼ正常(わずかな抵抗)
上肢感覚 2/3 位置覚軽度低下
下肢感覚 2/3 位置覚軽度低下 ◎(夜間ふらつきの原因)
上肢ROM 3/3 正常
下肢ROM 3/3 正常
痛み 2/3 運動時軽度疼痛(肩)
体幹腹筋テスト 3/3 正常
垂直性テスト 2/3 やや左(麻痺側)傾斜
視空間認知 3/3 正常
言語機能 2/3 軽度の語想起困難 ○(ST紹介)
非麻痺側四頭筋 3/3 正常
非麻痺側握力 3/3 正常(32kg)
合計 58/76点 軽度〜中等度残存障害

分析と介入優先順位の設計:

上肢遠位(手指)2点が最大の課題→ 感覚再教育(上肢感覚2点と連動)・鏡療法・課題指向型手指訓練を最優先。上肢痙縮(3点)があるためストレッチ・NMESを追加。② 下肢深部感覚低下(2点)が夜間ふらつきの原因→ 閉眼下での位置覚訓練・Mini-BESTest感覚の方向づけ評価を追加して詳細分析。③ 言語機能2点→ ST(言語聴覚士)へ詳細評価(SLTA)を依頼・語想起訓練の家庭プログラムを処方。④ 垂直性テスト2点→ 座位・歩行時の麻痺側体重移動訓練を継続。

よくある質問(FAQ)― SIAS評価について

SIASとFugl-Meyer(FMA)はどう使い分けますか?
SIAS:9領域を包括的に約10分で評価。体幹・感覚・言語・非麻痺側まで含めた総合的な機能把握とチームでの共有に最適。急性期から生活期まで一貫して使用できます。
FMA:上下肢の運動機能・感覚のみを226点満点で極めて詳細に評価(30〜45分)。上肢機能回復の微細な変化を最も鋭敏に捉えられます。研究目的・上肢リハビリの精密モニタリングに適しています。

推奨フローとして:日常臨床の包括的モニタリング→SIAS上肢機能特化の精密評価→FMAを状況に応じて組み合わせることが理想的です。

SIASは急性期でも実施できますか?
はい。急性期ベッドサイドでの実施を想定して設計されており、仰臥位で実施できる項目が多く専門器具も不要なため発症直後から開始できます。ただし意識障害が重度(JCS 100以上)・バイタルサイン不安定・指示理解が全くない場合は一部項目の実施が困難です。その際は実施可能な項目のみ評価し「評価困難」と記録して後日再評価してください。急性期SIASは転帰予測・リハビリチームへの情報共有として非常に価値があります。
「高得点=軽度障害」というSIASの採点方向を覚えるコツは?
SIASはFIM・BBSと同じ「高得点が良い状態」という方向です。Brunnstromステージ(Ⅰが最重度・Ⅵが正常)とは逆ではなく、実は同じ方向性です。混乱しやすいのは「反射項目(6・7)だけは正常(+)が最高点で、亢進(++以上)も消失(−)も低スコア」という特殊性です(日本式表記:正常=+、軽度亢進=++、著明亢進=+++、クローヌス=++++、減弱=±、消失=−)。施設内でSIASの採点基準表を印刷して壁に掲示する、電子カルテのテンプレートに注意書きを入れるなど、可視化した環境を作ることを推奨します。
SIASは何週間ごとに実施しますか?
一般的には急性期で1〜2週ごと、回復期では2〜4週ごとの定期評価が目安です。ただし状態が急速に変化している時期は毎週評価する価値があります。退院前・退院後のフォローアップでも実施することで生活期の機能変化(回復・低下)を客観的に把握できます。同一患者の評価は可能な限り同一評価者が担当することで評価者間誤差を最小化できます。
失語症患者にSIASを実施する際はどうすれば?
言語指示が伝わりにくい患者への対応策として:①ジェスチャー・実演で動作を視覚的に示す、②身体的ガイダンス(評価者が軽く誘導して動作を伝える)、③非言語的反応(うなずき・表情・視線)で理解を確認する、が有効です。どうしても実施できない項目は「評価困難」として記録し、無理に0点を与えないことが重要です(0点は「動きなし・感覚消失」を意味するため)。言語機能の詳細評価は必ずSTへ依頼してください。
患者さんにSIASの点数をそのまま伝えてもよいですか?
点数をそのまま告知するよりも、「どの機能がどれだけ改善したか」の変化として伝えることが患者モチベーションに有効です。例:「3ヶ月前は45点でしたが今は58点に上がっています。特に下肢の力と体幹バランスが大きく改善しました。手指の動きがまだ課題なので、そこに集中して訓練を続けましょう」のように改善点+今後の目標をセットで伝えてください。低スコアをそのまま告知することで患者の意欲が低下する場合があるため、チームで伝え方の方針を決めることを推奨します。
SIAS評価のトレーニングはどこで受けられますか?
SIAS評価の標準化トレーニングは、各施設の勉強会・日本リハビリテーション医学会学術集会のハンズオンセミナー・慶應義塾大学リハビリテーション科の研修プログラムなどで受講できます。基本的には原著論文(Chino et al., 1994)と評価用紙のマニュアルを熟読した上で、経験者(理学療法士・作業療法士・リハ医)と実際に症例を通じて実践練習を重ねることが最も効果的です。施設内での定期キャリブレーション(同一患者を複数評価者が評価してスコアを比較する練習)も推奨されます。

STROKE LABのSIAS活用 ― 評価から介入まで

STROKE LABでは、SIASを単なる「点数の記録ツール」ではなく「どの機能回復に集中すべきかを特定する地図」として活用しています。9領域のサブスコアをレーダーチャートで可視化し、最も回復可能性が高く・ADL自立に直結する領域を優先介入ターゲットとして特定。脳神経科学に基づくオーダーメイドプログラムを設計します。

STROKE LAB式

SIAS起点の脳卒中リハビリ設計フロー

Step 1 評価:SIAS(9領域包括)+ Mini-BESTest(バランス詳細)+ FIM(ADL自立度)の3本柱で初回評価を実施

Step 2 分析:9領域のサブスコアをレーダーチャートで可視化。「回復の壁」となっている領域を特定し、介入優先順位を決定

Step 3 介入設計:課題特異的トレーニング・神経科学的アプローチ・認知神経リハビリを組み合わせ。患者の生活目標(「また料理したい」「孫と歩きたい」)に直結した意味のある訓練を設計

Step 4 効果判定:4〜6週ごとにSIASを再評価。変化のないスコア領域はアプローチ見直しのシグナルとして活用

Step 5 共有:患者・家族・多職種チームにSIASのレーダーチャートを共有。「どこが改善したか」が一目で伝わる可視化によりリハビリへの参加意識を高めます

リハビリを受けた方の声

退院後も「麻痺した手が全然動かない」と諦めていました。STROKE LABでSIASを受けたところ、手指の運動機能は低いけれど感覚と上肢近位の機能は残っているとわかり、そこを活かした訓練を続けました。今は食事のとき補助として左手が使えるようになっています。

60代男性・脳梗塞発症後9ヶ月

病院では「歩けているから大丈夫」と言われていましたが、SIASで評価してもらったら下肢の深部感覚が思ったより低下していることがわかりました。暗い場所でふらつく理由がわかって安心しました。感覚訓練を続けて、今は夜間の歩行も安心してできています。

70代女性・脳出血発症後6ヶ月

参考文献・引用文献

  • 1) Chino N, et al. The Stroke Impairment Assessment Set (SIAS): A new evaluation instrument for stroke patients. Am J Phys Med Rehabil. 1994;73(6):383-392.
  • 2) 千野直一ら:脳卒中機能評価法(SIAS)の開発と信頼性の検証. 日本リハビリテーション医学会誌. 1994;30(5):310-315. J-STAGE
  • 3) Chino N, et al. Validity of the Stroke Impairment Assessment Set (SIAS). SpringerLink
  • 4) Chen HM, et al. Clinimetric comparisons of 4 measures for spasticity in patients with stroke. J Rehabil Med. 2005;37(1):46-53.
  • 5) Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age Ageing. 2019;48(1):16-31. (サルコペニア握力基準値の参照)
  • 6) Chen W, et al. AWGS 2019 Consensus Update on Sarcopenia. J Clin Med. 2020. (AWGS 2019基準:男性28kg・女性18kg)
  • 7) 出江紳一ら:脳卒中機能評価法(SIAS)の妥当性と脳卒中ADL評価との相関. 総合リハビリテーション. 1996.

SIASで「どこが問題か」を特定したら、
次は「どう変えるか」です。

9領域のサブスコア分析から的確な介入へ。運動・感覚・体幹・言語・非麻痺側のどれが
回復の鍵を握るかを見極め、脳神経科学に基づいたアプローチで根本から改善します。
STROKE LABではSIAS起点のオーダーメイドリハビリを提供しています。

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