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医療者

【令和版】MASで筋緊張を評価!(Modified Ashworth Scale)検査方法・痙縮・エビデンス・理学療法

学生さん
学生さん
実習で筋緊張の検査のMASをやらせてもらったんですが、方法や判断が難しくて・・

ストロボ君
ストロボ君
筋緊張なのか可動域制限なのか、速度はどのくらいでやれば良いのかとか難しい面は多いからね。今回はMASについて勉強してみようか!
学生さん
学生さん
はい!お願いします!

動画で視聴されたい方は↓↓↓

はじめに

 

 

痙縮が起こるには「なぜ」という論理的背景があり、「軟部組織の保護が必要だから」という理由で、痙縮は良いことだと考える人たちもいます。つまり、軟部組織、特に筋肉を保護するために、痙縮によって関節の位置が一定に保たれるのです。

 

 

もちろん、痙縮が保護であるとすれば非効率です。痙縮は通常、主動作筋だけ、あるいは拮抗筋だけが発火しているのではありません。屈筋、伸筋、そしてすべて作用筋の同時収縮です。

 

 

上肢の場合、痙縮は多くはすべての関節を屈曲させ、四肢を身体に密着させた状態で表れます。肩の内旋、肘の屈曲、手首と指の収縮は、伸筋に対する屈筋の相対的な強さを表しています。

 

 

つまり、肘が屈曲している原因は、上腕三頭筋が痙縮していないからではありません。むしろ、肘の屈筋が肘の伸筋よりも非常に強いために屈曲しています。下肢の場合、痙縮は通常、足関節底屈筋、膝関節伸筋、股関節内旋筋の相対的な強さを表しています。

 

 

痙縮に対する第一は治療ですが、治療者が痙縮を測定することはほとんどありません。セラピストは、動作の変化やADLの改善、抵抗の大きさを「感じ取る」ことで痙縮を評価しようとします。しかし、測定ができない以上、介入がうまくいっているかどうかを知る方法はありません。

 

 

痙縮をすばやく簡単に測定する方法のひとつに、MAS(Modified Ashworth Scale)があります。

 

 

痙縮をより深く理解されたい方は下記記事も併せてご覧ください。

 

 

MASの対象疾患

 

脳卒中、脊髄損傷、多発性硬化症、脳性麻痺、外傷性脳損傷、中枢神経系病変などに使用されています。

 

MASの実施方法

 

MASは、受動的な軟部組織(筋)のストレッチングの際の抵抗を測定します。

 

一般的なルールは以下の通りです。

 

●MASは仰臥位で行います(これが最も正確で最も低いスコアとなります。体のどこかに緊張があると痙縮は増加します)

 

 

●痙縮は「速度依存性」(手足を速く動かすほど痙性が強くなる)であるため、MASは「重力速度」で手足を動かして行われます。これは、非麻痺側が自然に下がるのと同じ速度と定義されます。言い換えれば、速いということです。大まかな目安としては全可動域を1秒間で動かします。

 

 

●このテストは、各関節で最大3回まで行われます。※3回以上行うと、ストレッチによる短期的な効果がスコアに影響します。

 

 

●MASは可動域評価の前に行います。可動域テストを事前にしてしまうとストレッチが行われ、ストレッチの短期的な効果がスコアに影響してしまいます。

 

手順
1)患者の評価する関節の全可動域または疼痛が出現する範囲までを一度確認しましょう。

 

2)開始位置をとります。

 

3)開始位置から全可動域を1秒間で動かします。

 

4)計3回実施します。各試技間は3秒以上間隔を空け、前の試技の影響を極力なくして行いましょう。

 

採点
評価内容:3回実施し、一番スコアが低い値を採用します

 

0:筋緊張の亢進はない。

 

1:軽度の筋緊張亢進がある。
引っ掛かりとその消失、または屈曲・伸展の最終域でわずかな抵抗がある。

 

1+:軽度の筋緊張亢進がある。明らかな引っ掛かりがあり、それに続くわずかな
抵抗を可動域の1/2以下で認める。

 

2:よりはっきりとした筋緊張亢進を全可動域で認める。
しかし、運動は容易に可能。

 

3:かなりの筋緊張亢進がある。他動運動は困難。

 

4:患部は硬直し、屈曲・伸展は困難。

 

 

MASの問題はスケールの両端にあります。技術的には、MASは受動的ROM中に遭遇する抵抗を評価するための尺度です。特に痙縮のテストではありません。「0点」は「緊張なし」を意味するのではなく、「正常な緊張」を意味します。つまり、正常な筋緊張より低い(弛緩した)場合のスコアは存在しないのです。「4」というスコアでは、関節の硬直が痙縮の優位のものなのか、拘縮優位のものなのかはわかりません。

 

 

MASの開始位置と運動範囲

 

 

以下は、通常MASの開始位置と運動範囲です。

 

●肘関節伸展:【開始位置】肘を完全に曲げ、前腕は中間位にします。【範囲】肘を最大屈曲から最大伸展まで伸ばします。

 

●手関節背屈:【開始位置】。肘関節をできるだけ伸ばし、前腕は回内させます。【範囲】患者の手関節を最大掌屈位から最大背屈位まで伸張します。

 

●指関節伸展:【開始位置】肘関節をできるだけ伸ばし、前腕は中間位にします。すべての指を一度に行います。【範囲】患者の指を最大屈曲位から最大伸展位まで伸ばします。

 

●母指伸展:【開始位置】肘はできるだけ伸ばし、前腕・手関節は中間位を取ります。【範囲】母指を最大屈曲位(親指が人差し指に当たる)から最大伸展位(解剖学的位置では「外転位」)まで伸展させます。

 

●膝関節伸展:【開始位置】足関節がベッドの端から落ちるように仰向けになり、股関節は内外旋中間位にします。【範囲】患者の膝関節を最大屈曲位から最大伸展位まで伸展させます。

 

●膝関節屈曲:【開始位置】 足関節がベッドの端から落ちるように仰向けになり、股関節は内外旋中間位にします。【範囲】患者の膝関節を最大伸展位から最大屈曲位まで伸ばします。

 

●足関節背屈:【開始位置】 仰臥位で足関節を底屈させ、股関節を内外旋中間位にさせ足関節を背屈させます。【範囲】患者の足関節を最大可能底屈位から最大可能背屈位まで伸ばします。ヒラメ筋を見たい場合は、膝関節を屈曲位で実施します。

 

MASのエビデンス メリットデメリットは?

 

利点 欠点
1. 簡便性: 1. 主観性:
改良アシュワーススケール(MAS)は、筋緊張度の評価に簡単な採点システムを使用しており、使いやすいです。 MASは試験者の筋抵抗に対する主観的な知覚に依存しているため、異なる評価者間で一貫性がなくなる可能性があります。
2. 時間効率: 2. 感度が限定的:
MASは迅速に実施できるため、日常的な臨床評価に適しています。 MASは粗い採点システムを使用しているため、筋緊張度や痙縮の小さな変化を検出する感度が限定的です。
3. 広く使用されており認知度が高い: 3. 特異性が不足している:
MASは臨床実践や研究で確立されたツールであるため、異なる研究間での知見の比較が容易です。 MASは筋緊張の異なる成分(神経成分と非神経成分など)を区別しないため、精度と臨床的有用性が制限されます。
4. 様々な患者層に適用可能: 4. 位置依存性:
MASは、脳卒中、多発性硬化症、脳性麻痺など、さまざまな神経疾患の患者の痙縮を評価するために使用できます。 筋緊張は患者や肢位の位置によって変化する可能性があり、これがMASスコアに影響し、筋緊張の正確な評価が困難になる場合があります。
5. 非侵襲的: 5. 治療介入に対する反応性が限定的:
MASは特別な機器が必要なく、患者に不快感を与えずに済む非侵襲的なツールです。 MASは薬物療法やリハビリテーションなどの介入後の筋緊張の微妙な変化を検出するのに十分な感度がない場合があります。

痙縮の指標として修正アシュワース尺度の信頼性を調査した研究。

信頼性

 

 

内容

 

・検者間信頼性について:片麻痺患者の肘関節屈曲・伸展筋、膝関節屈曲筋の測定

 

・参加者は34名のCVA患者、検者は4名の(2名の医師、2名の理学療法士)であった。評価者は各被験者を連続的に評価した。

 

・スピアマンの順位相関係数では肘で0.56から0.90、膝で0.26から0.62の間で変動した。

 

 

・日常診療では、Modified Ash-worth Scaleの使用方法は迅速かつ簡単で、痙縮の測定において一般的なツールとなっています。

 

 

脳卒中、多発性硬化症、脊髄損傷などの異なる患者グループにおいて、Modified Ashworth Scaleの評価者内信頼性は中程度から良好、評価者間信頼性は低程度から中程度であることが判明しています。

 

 

妥当性

 

内容1)
修正Ashworthスコアとテストした筋の同時表面筋電図記録から得られた筋電図パラメータとの間に良好な相関を示したことが報告されている。

 

しかし、修正Ashworthスコアが有効な痙縮の順序尺度であるという明確な裏付けを得ることはできません。

 

痙性を評価するための実際の時間(手足を受動的に動かす)は、0.25~0.33秒と報告されていますが、派生した多くのEMGパラメータは、この時間窓への参照に不十分でした。

 

 

内容2)

 

・Bohannon and Smith (1987)は感度を高める目的で、1と2の間に位置する1+というカテゴリーを追加し、オリジナルのスケールを修正しました。

 

・その後、両尺度は臨床や研究目的の痙縮の尺度として使用されています。アシュワーススケールによる痙性の臨床評価は、評価者が関節の受動動作に対する抵抗をテストした後に行われます。両スケールは、関節を全可動域で動かす際に感知される抵抗を記述します(グレード4を除く)。

 

 

内容3)

 

・アシュワース・スケールは、当初、多発性硬化症患者における抗痙攣薬の効果を調べるための簡単な臨床ツールとして開発された、痙性の測定法です。

 

References

 

Charalambous CP. Interrater reliability of a modified Ashworth scale of muscle spasticity. InClassic papers in orthopaedics 2014 (pp. 415-417). Springer, London.

 

Morris S. Ashworth and Tardieu Scales: Their clinical relevance for measuring spasticity in adult and paediatric neurological populations. Physical Therapy Reviews. 2002 Mar 1;7(1):53-62.

 

Rw B, Smith MB. Interrater reliability of a modified Ashworth scale of muscle spasticity. Phys ther. 1987;67(2):206-7.

 

Ad P, Johnson GR. Price CiM, Curless RH, Barnes MP, Rodgers H. A review of the properties and limitations of the Ashworth and modified Ashworth Scales as measures of spasticity. Clin Rehabil. 1999;13(5):373-83.

 

 

 

 

ストロボ君
ストロボ君
MASを実施する際のポイントは整理できてきたかな?痙縮や筋緊張に関する動画をYouTubeでも紹介しているので併せてみてみてね。

 

 

 

 

 

Modified Ashworth Scaleに関する論文の紹介

 

麻痺側上肢の筋緊張と運動機能の関係

 

カテゴリー

 

神経系、上肢、筋緊張

 

タイトル

●慢性期脳卒中患者の上肢の筋緊張亢進と運動機能の関係性

 

●原著はAssociation of spasticity and motor dysfunction in chronic strokeこちら

 

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

 

 

●脳卒中患者の訓練において上肢に過緊張を呈する患者の治療を行うことがよくある。上肢治療を行うにあたってより基礎を学びたいと思い学習の一助として本論文に至る。

 

内 容

 

背景

 

●脳卒中後の筋緊張亢進の有病率は30〜40%と報告されることが多く、これはしばしば運動制御障害と同時に起こり、麻痺側四肢の関節の動きを分離できないという現象として観察されます。

 

●本研究では中等度、重度の運動障害を伴う128名の慢性期脳卒中患者における筋緊張亢進の有病率を報告し、筋緊張と運動障害の関係を定量化することを目的とした。

 

 

方法

 

● 分析には記述統計と重回帰モデリングが含まれ、MASが独立した関節運動障害(FMAを運動障害評価として使用)の予測因子として使用されました。

 

結果

 

●被験者の97%に筋緊張亢進が観察された。筋緊張亢進の有病率は、以前の報告よりもこの研究で高かった。筋緊張の増加は年齢、経過時間、性別を調整した後の運動障害(FMA)と関連していた。手指、肘、股関節、膝関節の屈筋と伸筋の強度(拮抗筋との関係性)に有意差があることがわかった。

 

● 手指の屈曲と前腕の回内筋のMASのスコアが高い患者と、これらの同じ筋の組み合わせのMASスコアが低い患者と比較すると、筋緊張亢進が観察される患者では拮抗筋(それぞれ指伸筋と前腕回外筋)の強度が低下する傾向が見られました。

 

●運動機能障害を伴う慢性期脳卒中生患者の筋緊張の亢進は、運動制御の障害および拮抗筋の筋力差と関連している可能性があります。

 

 

 

 

 

私見・明日への臨床アイデア

 

●拮抗筋との相反的で適切な関係性の獲得が痙縮の改善には重要であることが示唆された。拮抗筋との関係性は臨床において重要で、それは筋出力関係だけでなく、伸張性などもそうである。拮抗筋の短縮が主動作筋による関節運動を阻害することも多い。結局、双方向に運動性が低下している方も多い。

 

執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表

・国家資格(作業療法士)取得

・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務

・海外で3年に渡り徒手研修修了

・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆

 

併せて読みたい【痙縮、筋緊張】関連論文

 

Vol.565.脳性麻痺患者の痙縮筋に対する寒冷療法 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー

 

Vol.538.脳梗塞患者の筋緊張増加・拘縮の予測因子とは?

 

脳卒中の動作分析 一覧はこちら

 

論文サマリー 一覧はこちら

 

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