【2026年版】CI療法におけるシェーピングとトランスファーパッケージ(Transfer Package)の重要性とは?脳卒中上肢リハビリを徹底解説
CI療法のエビデンスは、どこまで進んだか。
脳卒中後の上肢麻痺に対するCI療法(Constraint-Induced Movement Therapy)は、「学習性不使用」という神経科学的概念に基づく、エビデンスの厚いアプローチです。しかし、「知っているけれど臨床で使えていない」という声は新人セラピストの間で後を絶ちません。この記事では、適応基準・プロトコル・トランスファーパッケージまでを体系的に整理します。
CI療法 要点5項目。
臨床現場でCI療法に出会う場面。
入院中の訓練では手指の伸展が回復していた。しかし退院後の自宅では、左手だけで生活が成立していた。麻痺側を使うことが面倒・怖いという心理が積み重なり、「学習性不使用」の状態に陥っていた。
このようなケースこそが、CI療法の最も典型的な介入対象です。機能は残っているのに、使っていない——その乖離を解消することがCI療法の核心です。
脳卒中後の上肢リハビリにおいて、CI療法は特に「慢性期の学習性不使用」への介入として重要です。新人セラピストが最初に混乱するのは「知っている介入なのに、なぜ臨床で使われていないのか」という疑問です。
理由は明確で、適応基準の厳格さ・プロトコルの強度・トランスファーパッケージの設計という3つのハードルがあるからです。この記事ではその3つを丁寧に解説します。
CI療法の定義と疫学。
CI療法(CIMT:Constraint-Induced Movement Therapy)とは、脳卒中後の上肢機能低下に対して設計された神経リハビリテーション手法です。「学習性不使用(Learned Non-Use:LNU)」という行動科学的概念を理論的根拠としています。
学習性不使用とは、「使おうとしたが失敗した」という経験が繰り返され、脳が麻痺側を使うことを学習的に回避するようになる状態です。機能的な回復余地があるにもかかわらず、使用しないことで廃用が進みます。
脳血管障害(CVA)後に上肢の機能低下を経験するのは、生存者の30〜66%とされています。CI療法はCVA後を主な対象とする一方、脳性麻痺(CP)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症(MS)に対しても適用される場合があります。
「慢性期でも改善できる」という強力なエビデンスを持つ数少ない介入の一つです。
CI療法の3つの構成要素
麻痺側上肢を使った構造化された反復訓練を、1日6〜7時間・10〜15セッション連続して行います。シェーピングにより難易度を段階的に上げていきます。
起きている間の90%の時間、非麻痺側にミトングローブなどを装着します。これにより代償動作を抑制し、患側使用を強制的に引き出します。
臨床環境での訓練効果を日常生活に転移させるための行動変容プログラムです。運動日誌の記録・宿題課題・毎週の電話フォローなどを組み合わせます。TPの有無がMAL改善に最大2.4倍の差を生じさせます。
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STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。残存機能を最大限に引き出す個別プログラムを、経験豊富なセラピストが設計します。まずは無料相談でお気軽にご相談ください。
学習性不使用の神経メカニズム。
脳卒中後、麻痺側を使わない生活が続くと、大脳皮質の運動野における「手の表現領域」が縮小します。これは廃用による皮質再編成です。逆に、集中的な使用訓練によって皮質表現が拡大する——これが神経可塑性(ニューロプラスティシティ)です。
CI療法はこの神経可塑性を意図的に引き出す介入です。トランスファーパッケージが神経形成変化にも寄与することが、Taub et al.(2013)の研究で示されています。
学習性不使用のサイクルは以下のように進行します。①麻痺側を使おうとする→②失敗する→③非麻痺側でうまくいく→④麻痺側を使わなくなる→⑤廃用が進む。このサイクルを断ち切るのが、拘束+集中訓練+行動変容の3本柱です。
対象・方法:慢性期脳卒中患者40名(発症後1年以上の外来患者)。平日10日間・1日3.5時間の訓練を実施。MALとWMFTで評価。
主要結果:TPあり群でのMAL改善はTPなし群の2.4倍。1年後のフォローアップでも改善は維持。神経形成変化に対するTPの効果も同時に報告された。
出典:Taub E, et al. Method for enhancing real-world use of a more affected arm in chronic stroke. Stroke. 2013;44(5):1383-8. PMC3703737
適応基準と他の上肢介入との違い。
CI療法の適応を判断するには、運動機能・認知機能・モチベーション・安全性の4つの観点から包括的に評価する必要があります。最低限の運動機能基準を下回る場合、まず他の手法(電気刺激・筋力増強・感覚入力訓練など)を先行させることを検討してください。
以下の3基準をすべて満たすことが必要です。これ以下の場合はCI療法の適応外です。
| 観点 | CI療法(CIMT) | 修正CI療法(mCIMT) |
|---|---|---|
| 訓練時間 | 1日6〜7時間 | 1日2〜3時間 |
| 拘束時間 | 起きている間の90% | 週5日・特定時間帯 |
| 期間 | 10〜15セッション連続 | 2〜10週間 |
| 適した患者像 | 高モチベーション・歩行安定・自宅以外でも生活可能 | 通院困難・疲労感が強い・高齢者 |
| エビデンス | SR・メタアナリシス複数(強く推奨) | RCT複数(強く推奨) |
評価尺度と採点基準。
CI療法では「日常生活での患側使用量」と「最大運動能力」の2軸を評価することが標準です。それぞれを別々の尺度で捉える必要があります。
0点:麻痺側を全く使用しない(生活場面での使用ゼロ)
1点:まれに使用するが、実際的な助けにはなっていない
2点:まれに使用し、わずかに実際的な助けになっている
3点:発症前より少ないが、ほぼ半分の動作場面で使用する
4点:発症前とほぼ同程度の頻度で使用している
5点:発症前と同様の頻度で使用している(正常)
介入プロトコルとエビデンス。
CI療法の介入は大きく「シェーピング訓練」と「トランスファーパッケージ」の2本柱で構成されます。どちらかを省略すると効果が大幅に減弱します。
シェーピング訓練のプロトコル
シェーピング(Shaping)とは、運動課題の難易度を段階的に引き上げていく訓練方法です。「成功の連鎖」を作ることで、脳内の報酬回路を活性化させながら学習を促進します。
基本的な課題群(把握・リリース・前腕回内外など)から10〜15課題を選択します。患者の残存機能・興味・生活上の目標に合わせて個別に組み立てます。
各課題を10〜30秒の試行時間で実施します。10試行ごとに課題を変更し、一度に変える難易度は1段階のみです。励ましは5分ごとなど不定期に与え、課題終了時に具体的なフィードバックを行います。
個別の機能的課題を反復練習するパートで、約15〜20分かけて実施します。シェーピングと組み合わせて、より生活動作に近い課題を扱います。
運動日誌の毎日記録・自宅での宿題課題・毎週の電話フォロー(治療後1ヶ月間)・家族との目標共有などを組み合わせます。TPの実施が、MAL改善を2.4倍に拡大させます(Taub et al., 2013)。
修正CI療法(mCIMT)の研究知見:標準CIMTの強度を下げた修正版でも、通常訓練と比べて上肢機能・日常生活使用量の有意な改善が複数のRCTで確認されています(エビデンスレベル:強く推奨)。
課題特異的訓練の反復回数:最適な反復回数については、300〜600回/セッション程度が上肢機能改善に有効というエビデンスが蓄積されています(関連論文:STROKE LAB Vol.422)。
慢性期での有効性:Taub et al.(2013)の研究では、発症後1年以上経過した慢性期患者でもMALの有意な改善が確認されています。「慢性期では改善しない」は誤りです。

脳神経系の専門施設として、私たちは患者様の「まだ使えていない機能」を最大限に引き出すことに専念してきました。CI療法の理論と最新エビデンスに基づき、一人ひとりの状態に合わせた個別プログラムを提供しています。
多職種連携と環境調整。
CI療法は「OTだけの介入」ではありません。特にトランスファーパッケージの成否は、生活環境への働きかけと多職種の連携に大きく依存します。
多職種の役割分担
| 職種 | 主な役割 | CI療法との関連 |
|---|---|---|
| OT(作業療法士) | シェーピング設計・MAL評価・TP設計のコア担当 | ADL場面での患側使用促進・運動日誌の指導 |
| PT(理学療法士) | 拘束中の安全確保・姿勢・歩行安定性評価 | ミトン装着中の転倒リスク評価と介入 |
| 看護師 | 病棟・生活場面でのTP実践の見守り・強化 | 拘束中の安全確認・日常ケアでの患側使用促進 |
| 医師 | 適応・禁忌の医学的判断・痙縮管理 | 疼痛・骨関節疾患・心疾患の評価と許可 |
| MSW / 家族 | 家庭環境の整備・患側使用機会の創出 | TPの家庭実践における協力者として最重要 |
「TP設計の肝は、患者さんの1日の生活動線を把握することです。どの場面で麻痺側を使えそうか、家族と一緒に考えます。」
「ミトンをつけている間に転倒しないか、PTと連携して歩行安定性を確認してからCI療法を開始してください。」
「運動日誌は本人が記録することに意味があります。記録すること自体が行動変容の動機づけになります。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
CI療法は理論的に明快な介入ですが、実際の臨床では多くの落とし穴があります。先輩セラピストが経験してきた「やってしまいがちな失敗」を3つに絞って整理しました。
臨床判断の分岐点
「患者さんのモチベーションが低い場合、まず目標の共有から始めます。”なぜ手を使いたいのか”を明確にしないと、TPの宿題は続きません。」
「CI療法を開始する前に、ミトン装着で屋内歩行ができるかPTに確認します。転倒リスクを見落とすと信頼を失います。」
「生活動作の自主トレとして何ができるかを、患者さん自身に考えてもらいます。その発想力を鍛えることが、長期的なTP継続に繋がります。」
予後とゴール設定。
CI療法の予後を語るうえで重要なのは、「WMFT改善」と「MAL改善」を分けて考えることです。臨床目標の設定においても、この2軸は明確に区別してください。
Taub et al.(2013)の研究では、MALの改善効果が治療後1年間、損失なく維持されることが確認されています。これはCI療法が「一時的な効果」ではなく「学習として定着する」ことを示します。
さらに、治療後1ヶ月間にわたる毎週の電話フォローアップを実施したサブスタディ(n=10)では、6ヶ月後のMALスコアが電話フォローなし群の2倍になることが報告されています。治療後のフォローが長期予後を大きく左右します。
よくある質問(新人臨床家の疑問)。
手関節10°以上の背屈、母指10°以上の外転、手指10°以上の伸展が最低基準です。
加えて高いモチベーション、最小限の認知機能障害、拘束具装着中の安全な歩行能力も必要です。これらを複合的に評価して適応を判断してください。
標準プロトコルでは、起きている間の90%は非麻痺側にミトンを装着します。患側上肢で1日6〜7時間の課題指向型反復訓練を10〜15セッション連続して実施します。
修正CI療法(mCIMT)では1日2〜3時間・週5日・2週間程度が多く採用されています。どちらにもTPは必須です。
TPとは、病院内での訓練効果を日常生活に転移させるための行動変容プログラムです。運動日誌の記録・家庭での宿題課題・電話フォローアップなどを組み合わせます。
TPありの場合、Motor Activity Log(MAL)の改善効果がTPなしと比べて2.4倍になることが示されています(Taub et al., 2013)。
シェーピングとは、運動課題を段階的に難しくしていく訓練方法です。10〜15の課題を選択し、各課題を10〜30秒の試行で実施します。
10試行ごとに課題を変更し、一度に難易度を上げるのは1段階のみです。セラピストの継続的な関与と定期的なフィードバックが不可欠です。
Taub et al.(2013)の研究では、MALの改善効果が治療後1年間維持されることが示されています。
さらにTPを実施した患者では、治療後1ヶ月間の電話フォローアップにより6ヶ月後のMALスコアが2倍になることも報告されています。
重度の麻痺(手指伸展・手関節背屈が10°未満)、高度の認知機能障害、拘束具装着中の転倒リスクが高い方、著明な痙縮・疼痛・骨折がある場合は適応外または慎重適応です。
また、高いモチベーションが治療成功の前提となります。意欲が低い場合は、まず目標共有と動機づけ支援から始めてください。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。「慢性期でも回復できる」という最新の神経科学の知見に基づき、一人ひとりの状態に合わせた個別プログラムを提供しています。CI療法の理論を基盤にした上肢機能回復プログラムも、経験豊富なセラピストが設計・実施しています。
— STROKE LABでの脳卒中上肢リハビリの実際の様子です。

「退院から2年が経ち、”もうこれ以上は無理”と思っていた患者さんが、CI療法を通じて利き手でコップを持てるようになりました。慢性期だからこそ、行動変容の支援が重要だと改めて感じています。」— 作業療法士・経験12年・脳卒中上肢リハビリ専門
「シェーピングの難易度調整が甘いと、患者さんが挫折します。10試行ごとに1段階だけ——このルールを守るだけで、セッションの質が大きく変わりました。」— 理学療法士・経験8年・神経系リハビリ担当
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諦めないでください。

脳卒中後の上肢麻痺に対して、私は「慢性期でも必ず改善の余地がある」という信念で臨床を続けてきました。CI療法のエビデンスはその信念を強く支持しています。
「使えていない機能を、生活に取り戻す」——それが私たちSTROKE LABの使命です。まずは無料相談で、あなたの現状をお聞かせください。
どんな状況でも、一緒に考えます。一歩踏み出すことから、回復は始まります。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)