vol.100:視覚的手がかりとパーキンソン病のすくみ足 色の違いによる影響
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カテゴリー
歩行・神経系
タイトル
パーキンソン病のすくみ足に対する視覚的手掛かり:色の違いによる影響A pilot study: influence of visual cue color on freezing of gait in persons with Parkinson’s disease.?Pubmedへ Mon Bryant, PT et al.(2010)
本論文を読むに至った思考・経緯
●パーキンソン病(PD)によるすくみ足が出現する患者様で、自宅での転倒が増加されていた。部屋はベッドや家具で幅を取られ狭く閉鎖的で、トイレへの導線上に方向転換も要し、環境として芳しくなかった。環境変更の提案を出すも、御家族が非協力的なため動かすに動かせない状況であった。代償的なCueへの反応は良い方であったので、苦肉の策として床にテープを貼ることとした。テープとテープの間の間隔は、歩幅を広げられる幅にした。しかし、色を検討する際に、何色にするか迷い、本論文に至った。
論文内容
研究目的
●パーキンソン病患者の歩行における赤色光および緑色光が歩行およびすくみ足にどのような影響を与えるか調べることです。
研究方法
●赤色光、緑色光、光なしの杖で歩き、歩行と転倒のパフォーマンスを研究しました。また、抗パーキンソン病薬を「オフ」と「オン」の状態で行いました。歩行速度、歩行率、ストライド長が記録されました。50フィートの歩行と360°の旋回の間に、すくみ足が起こるまでの時間および回数が記録されました。
結果
●抗パーキンソン病薬が「オフ」中は、無光と比較して、緑色光を使用するとストライド長が改善されるが、赤色は改善されなかった。
●50feet歩行中、赤色光と無色光の両方に比べて緑色光を使用すると、すくみ足が減少した。
●360°回転中、赤色光および無色光と比較して緑色光を使用して、時間、ステップ数およびすくみ足の数が減少した。
●抗パーキンソン病薬「オン」中は、歩行速度および歩幅の長さは、赤色光と比較して緑色光により多く改善された。
結論
緑色光は、歩行を改善し、赤色光または無色光よりもすくみ足を軽減する。
興味深かった内容
•赤色の方が、目を引き、興奮性を高める色である印象でしたが、緑色の方が結果が良い事に驚きました。論文中に、以前の研究では「白」と「黄色」が結果として優れているエビデンスがあると書かれています。それ以外の色の効果を調べるために当研究がされています。
•発光色が良いと書かれていました。同じ色でも、薄い・濃い等あるため、今後はそこまで学習を深めていこうと感じました。
私見・明日への臨床アイデア
•他論文では、赤も良いと書いてあったとの情報もあり、他論文も読む必要性があります。
•実際、緑、白、黄色など試し個別性もある可能性があり本人の反応も見ていく必要があります。
•線以外にも、よりリアルなCueを提供する為に、足跡などの形を貼付することも有効かと思われます。
・実際行った結果、意識が向けばスムーズにすくみ足なく歩行可能であったが、1週間試用した所、注意が向かない事も多く、実用的ではなかった。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
臨床後記:2021/3/9
●パーキンソン病患者の歩行練習において視覚的手がかりを用いる場合、色味による反応の違いが起こり得る。ちなみに、身体装着型 移動支援機器「Qピット」の光線の色は論文で効果が得られた「緑」です。パーキンソン病の初期段階では、ダイナミックな動きや多感覚の練習が望ましい。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)