運動でパーキンソン病の進行は遅らせられるのか?|強さ(強度)と量の話 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

運動でパーキンソン病の進行は遅らせられるのか?|強さ(強度)と量の話

EXERCISE & PROGRESSION

運動量とパーキンソン病との関係|予後予測と強度は?

「運動が大事」とはよく聞く。けれど、どのくらいの強さで、どれだけやれば意味があるのかは、あまり語られません。近年の研究は、ある程度きつめの運動が、進行に関わる可能性を示しています。治すためではなく、経過に関わるために。強さと量を、根拠から整理します。

UPDATED2026
READ約15分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。運動の評価と介入は、書籍連動のYouTube動画でも実際の様子をご覧いただけます。

運動強度の写真

Quick Reference
先に知ってほしい5つのこと。
01
運動で病気は治りませんが、進行への関わりを示した研究は複数あります
02
鍵は強度。楽な運動より、少し息がはずむくらいの強さが目安です
03
在宅では心拍数より「息づかい・会話・翌日の疲れ」で強さを測ります
04
有酸素・筋トレ・バランス・柔軟を、有酸素を軸に組み合わせます
05
強さを上げる前に主治医へ。低い強さから慣らし、安全を最優先に
01
A Shift in Thinking

運動の位置づけが、変わってきた。

A Patient’s Voice
「運動が大事なのは分かります。でも、どのくらいやれば意味があるの?」

毎日散歩はしている。体操もやっている。でも、これで進行に関われているのか分からない。もっとやるべきなのか、今のままでいいのか。誰も具体的な強さや量を教えてくれない——。

この問いに、近年の研究は少しずつ答えを出しつつあります。ポイントは「何をするか」だけでなく「どのくらいの強さでやるか」。運動は、症状をやわらげるだけの手段から、経過に関わりうる手段へと、位置づけが変わってきています。

これまで運動療法は、「今ある症状をやわらげ、体力を保つための対処」として位置づけられてきました。それはもちろん正しく、大切なことです。日本神経学会のガイドラインでも、薬物療法や手術療法とあわせて運動療法を行うことが、運動症状の改善に有用とされています。

ここに、近年もう一歩踏み込んだ見方が加わりました。ある程度きつめの運動を続けると、症状の進み方そのものがゆるやかになる可能性を示す研究が出てきたのです。運動は「症状への対処」から「経過に関わる介入」へ。ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。運動でパーキンソン病そのものが治るわけではありません。誇大な宣伝には注意が必要です。この記事は、治すためではなく、経過に前向きに関わるために、どんな運動を・どのくらいの強さで・どれくらい続ければよいのかを、根拠から整理するものです。

リハビリ全体の地図はリハビリ完全ガイドにまとめています。具体的な体操の続け方は体操・自主トレ大全で扱っています。本記事は、その中でも特に「強さと量」に絞って掘り下げます。

運動の位置づけと変化

02
The Evidence

研究で、わかってきたこと。

「運動が進行に関わる」という主張は、印象論ではありません。診断からまもない方を対象に、運動の強さを変えて比べた研究が、その手がかりを与えています。中でも代表的なのが、次のエビデンスボックスで紹介する試験です。

Evidence
強さで差が出た、という研究

診断から5年以内で、まだ薬を始めていないパーキンソン病の方128名を、高強度(最大心拍数の80〜85%)・中強度(60〜65%)・運動なしの対照の3グループに分けて、半年間追跡した研究があります。その結果、高強度の運動を続けたグループは、6か月後も運動症状が悪化せずに保たれたのに対し、運動をしなかったグループでは悪化がみられました。ある程度きつい強さが、進行への関わりの鍵になりうることを示した結果です。ただし、これは半年間の比較的元気な方を対象にした研究で、効果を保つには続けることが前提であり、同じ強さが誰にでも安全とは限りません。強さは必ず主治医と相談して決めてください。

出典:Schenkman M, et al. Effect of High-Intensity Treadmill Exercise on Motor Symptoms in Patients With De Novo Parkinson Disease: A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2018;75(2):219-226

この研究が投げかけるメッセージは、シンプルです。運動をするなら、楽な強さで終わらせず、無理のない範囲で少し強度を上げたほうが、進行への関わりという点では期待が持てる。逆に言えば、「やるかやらないか」だけでなく「どのくらいの強さでやるか」が問われているということです。次の章では、その「強さ」をどう捉えればよいかを整理します。

強度に対する研究報告

03
Three Levels

強さの3段階を、知る。

「ある程度きつい強さ」と言われても、どのくらいか分かりにくいものです。運動の強さは、大きく3段階に分けて考えると整理できます。研究で進行への関わりが注目されたのは、下の表でいう「きつめ」の水準です。ご自身が今どのあたりで運動しているかを、当てはめてみてください。

強さ 体感の目安(会話・息づかい) 心拍数の目安
軽い ふつうに会話できる。息はほとんど乱れない。ゆっくりの散歩 最大心拍のおよそ50〜60%
中くらい 会話はできるが、少し息がはずむ。うっすら汗ばむ速歩 最大心拍のおよそ60〜70%
きつめ 短い返事が精一杯。会話がとぎれがち。しっかり息がはずむ 最大心拍のおよそ80〜85%

※最大心拍数のおおよその目安は「220−年齢」で概算できますが、薬や持病で変わります。実際の目標心拍は必ず主治医・療法士に確認してください。数値はあくまで参考です。

多くの方は、自分では運動しているつもりでも、実際には「軽い」にとどまっていることがあります。もちろん軽い運動にも価値はありますが、進行への関わりを期待するなら、無理のない範囲で「中くらい」から「きつめ」を目指したいところです。とはいえ、いきなり最高強度を狙う必要はありません。次の章で、心拍数に頼らずに強さを測る、現実的な方法をお伝えします。

運動の強さの3段階

04
Our Perspective

STROKE LABの視点:強さは、数字だけで測らない。

研究で使われた「最大心拍の80〜85%」という数字は、とても分かりやすい指標です。けれど、当施設で在宅の自主トレを見ていて感じるのは、家庭で心拍数だけを頼りに強さを管理するのは、意外と難しいということです。心拍計がなければ測れませんし、パーキンソン病では薬や自律神経の影響で心拍が読みにくいこともあります。数字に縛られて、かえって運動が続かなくなっては本末転倒です。

そこで私たちが臨床で使うのは、「動きの大きさ」と「手ごたえ」の掛け算で強さを捉えるという見方です。強さは、心臓を追い込むことだけを指すのではありません。一歩を大きく踏み出す、腕を大きく振る、しっかり踏ん張る——動きを大きくすると、自然と使う筋肉と息づかいが増え、強さが上がります。パーキンソン病では動きが小さくなりやすいので、「大きく動く」ことが、そのまま「強さを上げる」ことにつながるのです。ここは、体操の記事でお伝えした「大きく動く」という原則が、進行への関わりという文脈で改めて効いてくるところです。

具体的な手ごたえの目安は3つです。ひとつ、少し息がはずんで、短い返事が精一杯なくらい。ふたつ、運動の後に心地よい疲れがあり、翌日には残らないくらい。みっつ、動きが小さく縮こまらず、大きく動けているか。この3つがそろっていれば、心拍を測らなくても、進行への関わりが期待できる強さに近づいています。数字はあくまで参考、体の手ごたえを主役にする。これが、続けられて、かつ効かせる強さの決め方です。

在宅で強さを図る考え方

05
Four Types

4つの運動を、どう組むか。

進行への関わりで注目されているのは有酸素運動ですが、それだけをやればよいわけではありません。運動は大きく4種類あり、役割が違います。有酸素運動を軸にしながら、他の3つを組み合わせるのが理想です。

01
有酸素運動(軸にする)

速歩、自転車、トレッドミル歩行、水中歩行など。少し息がはずむ強さを続けることが、体力の維持と、進行への関わりの面で注目されています。まずはここを、週の運動の中心に置きます。安全に行える方は、無理のない範囲で強度を上げていきましょう。

02
筋力トレーニング

立ち座りの繰り返し、かかと上げ、スクワットなど。姿勢を保ち、転倒を防ぐための体幹と下肢の力を維持します。回数を追うより、正しい姿勢で大きく動かすことを優先してください。週2〜3回が目安です。

03
バランスの運動

片足立ち、体重移動、方向転換の練習など。転倒を防ぐ力を養います。必ず手すりや壁の近くで、支えられる状態で行ってください。太極拳やヨガのように、楽しみながらバランスを鍛えられる運動もおすすめです。

04
ストレッチ・柔軟

こわばりやすい胸、背中、股関節、首をゆっくり伸ばします。動きの土台になる柔らかさを保つ運動で、毎日行う価値があります。反動をつけず、息を吐きながら伸ばしてください。運動の前後に取り入れると、けがの予防にもなります。

量の目安は、中等度の運動で週合計150分程度が一つの基準です。たとえば、少し息がはずむ速歩を1回30分、週5回。これに筋トレとバランスを週2〜3回、ストレッチを毎日。ただし適量は病期や体力で異なります。ダンスやボクシング型のプログラムなど、楽しみながら続けられる運動も、この4種類の要素を含んでいれば同じように役立ちます。大切なのは種類そのものより、続けられて、かつ十分な強さがあることです。個別の体操の選び方は体操・自主トレ大全にまとめています。

運動配分モデル パーキンソン病

Watch & Practice
動画で、体を動かしてみましょう。

脳リハ.comのYouTube(登録者約6.4万人)では、続けやすい体操を配信しています。まずは軽い強さから始め、慣れてきたら少しずつ大きく、力強く動かしてみてください。

7日間プログラムの体操を見てみる

06
Raising Intensity Safely

安全に、強さを上げる。

強さが鍵だからといって、いきなりきつい運動を始めるのは危険です。安全に強度を上げるには、順序があります。次のステップで、少しずつ進めてください。

Steps
1
まず主治医に相談する。強い運動を始める前に、心臓や関節の状態を確認します。今の体に合う強さの上限を、あらかじめ聞いておくと安心です。
2
低い強さから慣らす。いきなりきつめを狙わず、まず軽い強さで体を慣らします。準備運動とストレッチを必ず入れてから始めます。
3
少しずつ上げる。数週間かけて、時間や速さを少しずつ増やします。「先週より少しだけ大きく、少しだけ長く」を積み重ねます。翌日に強い疲れが残る量は上げすぎです。
4
薬が効く時間に、支えのある環境で。体が動きやすいオン時間に行い、手すりや壁、家族の見守りのもとで。胸の痛み・強いめまい・息苦しさが出たら、すぐ中止します。

強度を上げることと、無理をすることは違います。目指すのは、続けられる範囲でいちばん大きく・力強く動くこと。疲れをためて運動が嫌になったり、転倒してけがをしたりしては、かえって逆効果です。転倒への備えは転倒予防ガイドもあわせてご覧ください。

07
Keep It Going

続けるための、工夫。

どんなに良い強さで運動しても、続かなければ意味がありません。研究でも、効果を保つには続けることが前提でした。三日坊主にならないための、現実的な工夫を紹介します。

Tips

好きな運動を選ぶ。強さが同じなら、続けやすい運動がいちばんです。音楽に合わせる、外の景色を楽しむ、仲間と行う。楽しめる形を優先してください。

記録する。やった日、強さの手ごたえ、翌日の調子をメモします。続いている実感が力になり、主治医との相談材料にもなります。

生活に溶け込ませる。買い物を速歩で、階段を使う、家事を大きく動いて行う。研究でも、家事や仕事に伴う活動にも一定の意味があると示されています。運動の時間が取れない日も、日常の中で体を大きく動かせます。

できない日を責めない。調子の悪い日は軽い運動や休息でよいのです。ゼロにしないこと、そして長く続けることが、いちばん大切です。

08
What to Avoid

やってはいけないこと。

避けたいこと 理由 代わりに
相談せず急にきつい運動を始める 心臓や関節に負担がかかり、思わぬ事故につながる 主治医に相談し、低い強さから慣らして上げる
薬が切れた時間にきつい運動をする 動きにくく転倒しやすい。失敗体験で自信も失う きつい運動はオン時間に。オフ時間は軽い運動に
数字にこだわり追い込みすぎる 疲労がすくみや転倒を増やし、続かなくなる 翌日に残らない範囲を守る。手ごたえを目安にする
自己判断で薬を減らして運動に置き換える 運動は薬の代わりにならない。症状が急に悪化しうる 薬は主治医の指示どおりに。運動は薬と組み合わせる
強度を上げることと、無理をすることは違います。続けられる範囲で、いちばん大きく動く。
09
Professional Rehab

専門リハで、できること。

「どのくらいの強さが、自分にとって安全で効果的か」は、一人ひとり違います。専門のリハビリでは、その人の体力・心臓や関節の状態・薬の効く時間を評価したうえで、安全に取り組める強さと運動の種類を、その人に合わせて設計します。動きの大きさや踏ん張りが十分かも動作分析で確認し、より効かせられる体の使い方をお伝えします。進行のなかで身体機能を守るための考え方を、動画でもご覧いただけます。

進行を見すえ身体機能を守る7つの鍵(脳リハ.com)。効果には個人差があります。

より専門的に、運動の神経保護的な効果や、評価・治療のアプローチを知りたい医療者の方は、医療者向けの解説記事もあわせてご覧ください。

10
FAQ

よくある質問。

Q. 運動でパーキンソン病の進行を遅らせることはできますか?

運動でパーキンソン病そのものが治ることはありません。ただし、運動が症状の進みをゆるやかにする可能性を示した研究は複数あります。特に、ある程度きつめの有酸素運動を続けたグループで、運動症状の悪化が抑えられたと報告されています。運動は薬の代わりではなく、薬とあわせて続けることで意味を持ちます。効果を保つには続けることが前提です。

Q. 軽い散歩だけでは足りないのですか?

散歩を続けること自体には価値があります。ただ、進行への関わりという点では、少し息がはずむくらいの強さが目安になると考えられています。研究では、楽に感じる強さよりも、ある程度きつい強さの運動のほうが、運動症状の維持につながったと報告されています。無理のない範囲で、少しずつ強さを上げていくのがよいでしょう。強さの上げ方は必ず主治医や療法士と相談してください。

Q. どのくらいの強さ・量が目安ですか?

研究で用いられた強さの目安は、最大心拍数のおよそ80〜85%という、ある程度きつい水準でした。ただし在宅では心拍数だけで管理するのは難しいため、少し息がはずんで会話がとぎれがちになる、翌日に強い疲れが残らない、という体感を目安にするのが現実的です。量は中等度の運動で週合計150分程度が一つの目安ですが、適量は病期や体力で異なります。

Q. きつい運動は体に悪くないですか?

研究では、診断からまもない比較的元気な方を対象に、安全に配慮した環境で行われました。心臓や関節に持病がある方、進行が進んだ方では、同じ強さが適切とは限りません。強い運動を始める前には主治医に相談し、低い強さから慣らして、少しずつ上げてください。胸の痛み、強いめまい、息苦しさが出たら中止します。安全の確保が最優先です。

Q. 有酸素運動と筋トレは、どちらがよいですか?

どちらか一方ではなく、組み合わせるのが理想です。有酸素運動は体力と、進行への関わりの面で注目されています。筋力トレーニングは姿勢を保ち転倒を防ぐ力を維持します。あわせてバランスと柔軟の運動も加えると、生活を守る土台が整います。まず続けやすい有酸素運動を軸に、少しずつ他の種類を足していくとよいでしょう。

Q. 運動はいつから始めるのがよいですか?

診断された直後からが理想です。進行への関わりを示した研究の多くは、診断からまもない時期に運動を始めています。早く始めるほど、体力の貯金が作れ、選べる運動の幅も広がります。すでに進行している場合でも、運動をやめる理由にはなりません。今の状態に合った強さと種類に切り替えて、続けることに意味があります。
11
STROKE LAB

運動の強さと種類は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。進行への関わりを目指す運動では、その人の体力・状態・薬の効く時間を評価し、安全に取り組める強さと種類を、動作分析にもとづいて設計します。数字に頼りすぎず、体の手ごたえで強さを管理する方法もお伝えします。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動の強さや種類の選び方、続けるための考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
数字に縛られず、
続けられる強さで、大きく動く。
STROKE LAB代表 金子唯史

「運動が進行に関わる」という研究は、大きな希望です。ただ、その希望を数字のノルマにしてしまうと、続かなくなる方をたくさん見てきました。

私が臨床で大切にしているのは、心拍計の数字より、その人が大きく、力強く動けているかという手ごたえです。動きを大きくすれば、強さは自然とついてきます。そして、続けられる強さこそが、いちばん効く強さです。

今の運動が自分に合っているか不安な方は、どうぞ一度ご相談ください。診断名ではなく、あなたの体力と生活から、安全で続けられる強さを一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。運動の可否や強度は、必ず主治医・担当療法士にご相談ください(最終確認日:2026年7月5日)。

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