DEX(遂行機能障害の質問表)とは?採点・カットオフ【PDF評価付き】
DEX
遂行機能障害の質問表
本人と家族の違いを、支援の糸口に。
20項目の得点を、具体的な出来事と必要な援助へ結びつけます。回答を一致させることより、誰が何を支えると活動が成立するかを共有するために使います。


回答の時間と、照合する面接を分ける
英語論文では自記式で5分未満、口頭実施で約10分とされています。日本語での理解確認や、本人と家族の回答を照合する面接には追加の時間を見込みます。[6]
正規の日本版用紙を本人用・他者用に準備し、使用版、教示、対象期間、回答者を確認します。家族が本人の回答を代わりに決めない環境を整えます。
DEXとBADSは、何が違うか
DEX(Dysexecutive Questionnaire)は、日常に現れる遂行機能に関連した行動の問題を評定する質問表です。本記事は日本版BADSに含まれる20項目版を扱います。BADSの6課題が「その場でどう行動したか」を見るのに対し、DEXは本人・身近な人の経験を聞きます。[1][2][3]
机上ではできるのに、家事や仕事で予定が崩れる。家族は毎回助けているのに、本人は自立していると感じる。その違いを、行動の開始、計画、確認、抑制、感情・対人面まで含めて整理します。
実施|別々に回答し、その後に出来事を聞く
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版・期間・回答者をそろえる
正規の日本版用紙を使い、教示と回答対象期間を確認。本人と他者の回答を別に用意します。他者は生活を知る人を選び、続柄、接触頻度、見ている場面を記録。
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相手の答えに合わせず評定
本人の回答を家族が決めたり、二人で一つの回答を作ったりしません。読み上げなどの補助が必要なら、正規資料の範囲と行った補助を残します。
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採点後に、高い項目・差の大きい項目を確認
「最近、いつ起きましたか」「そのとき誰が何をしましたか」と出来事を一つ聞きます。「できない」の意味を、開始・途中・終了の行動に分けます。
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同じ活動を観察する
外出準備など本人に必要な活動を一つ選び、予測→実行→振り返りの順で確認。家族の援助を危険な形で突然外さず、どの援助が必要かを記録します。


採点|二つの0〜80点を、そのまま残す
各項目0〜4点を合計し、本人・他者それぞれ0〜80点で記録します。高いほど、評定された日常の問題が多い方向です。160点満点へ合算したり、BADSの24点へ加えたりしません。空欄は0点と別に扱い、欠損の処理は正規資料に合わせます。[3]
日本版20項目DEXに、全対象へ使える一つの診断カットオフをここで設定することはできません。80点の半分だから40点以上を障害とする、といった読み方も不適切です。合計の高低に加え、問題の項目と実際の支援量を読みます。[3]
評定差から、何を見通せるか


| 組み合わせ | 考える背景 | 確認する問い |
|---|---|---|
| 本人低い/他者高い | 援助への気づき、経験の違い、自己認識の低下など。 | 準備や修正を、誰がしていたか。 |
| 本人高い/他者低い | 職場など他者が見ない場面、努力・疲労・気分。 | どの活動で、どの程度の負担があるか。 |
| 両者高い | 共通して困る活動がある。 | まず一つ変えるなら何か。 |
| 両者低い | 安定している場合と、活動の要求が少ない場合がある。 | 家族が代行している活動、避けている活動はないか。 |
DEXは「何日で復職できるか」の予測式ではありません。生活のどこに支援が必要か、本人と周囲の見立てがどこで違うかを示します。合計点が近くても問題としている項目が違うことがあるため、項目別にも照合します。
他者評定も一つの視点
McGuireらの脳損傷者113人の研究では、本人・身近な人・臨床家の間で評定が一致しにくいことが示されました。家族の得点を唯一の正解にせず、観察できた場面と援助の違いを聞きます。[4]
図の会話は面接の架空例です。質問表の正式項目や採点例ではありません。
介入例|評定差を、共同作業に変える
本人は準備できたと言い、家族は毎回手伝ったと言う
- 最初にすること
- 外出準備の「予定確認・持ち物選択・収納・最終確認」を並べ、本人と家族がどこを担ったか確認します。
- 試す支援
- 持ち物の写真または文字一覧を用意し、本人が一つずつ照合。読む・見る力に合わせて情報量を減らします。
- 声かけ
- 「できていません」ではなく、「最後の照合を今日はご自分で確認してみましょう」。
- 再評価
- 外出5回なら、そのうち自分で照合できた回数、忘れ物、家族の促し回数を残します。5回は記録例で、DEXの判定単位ではありません。
本人の訴えは強いが、家庭では問題が見えない
- 確認
- 職場での割り込み、時間制限、疲労など、家族が見ていない条件を聞きます。
- 試す支援
- 中断時に「次にする一手」をメモし、再開時にそこから始める。まず一つの業務で試します。
- 再評価
- 抜け・重複、再開時間、本人の負担を比較。気分・睡眠も合わせて確認します。


事実:本人は外出準備を自立と説明。家族は物品を事前に選び並べていた。
解釈と次の確認:本人は収納、家族は準備工程を評価していた可能性がある。物品一覧を用いて、選択から照合まで本人が行う場面を観察し、促し回数・忘れ物を確認する。
点数が上がっても、悪化とは限らない
退院して家事に取り組む機会が増えたり、自分の困難を説明できるようになったりすると、自己評定が上がることがあります。逆に、家族が全て代行すると失敗の機会が減り、点数が下がる場合もあります。得点と活動量・支援量を並べると、変化の意味が分かります。
| 再評価で残すもの | 例 |
|---|---|
| 同じ条件 | 使用版、回答者、対象期間、接触頻度。 |
| 活動の機会 | 外出5回中、準備を本人が担った回数。 |
| 援助の量 | 促し、準備、代行、修正を誰が行ったか。 |
| 実際の達成 | 完了、時間、誤り、本人・家族の負担。 |


他の検査との整合性・近年の研究
BADSやKWCSTが良好でも、DEXで生活の問題が多いことはあります。静かな検査室と、割り込み・時間制限・感情が関わる生活では要求が違います。点数を一致させるのでなく、どの条件で違いが出るかを確かめます。
近年の研究:課題検査とは異なる情報を持つ
Vigらは心疾患後の196人と情報提供者179人を調べ、DEXと課題検査の関連は弱く、自己評定は不安・抑うつと強い関連を示しました。生活の評定と課題検査を併用する根拠ですが、脳卒中患者に同じ関連の強さがあるとは限りません。訴えを「気分だけ」と片づけず、活動条件と心身の負担を合わせて確認します。[5]
追加評価は困りごとに合わせ、BADSで計画・時間配分、KWCSTで分類の変更、CAT-Rで注意、必要に応じて記憶・言語・気分・睡眠を確認します。
点差の背景を、生活の記録に。
A4縦・3ページ
① 20項目の本人・他者得点と回答条件
② 具体的な出来事と工程別の援助
③ 支援量・活動機会・カルテ記載
正規用紙の得点を転記し、面接と再評価に使う記録シートです。質問文・選択肢は正規の日本版用紙をご確認ください。
参考文献・実施資料
- Gakken.検査&リハ:日本版検査・教材の公式案内.
- Pearson. Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome(BADS): 構成・DEX本人用/他者用の案内.
- Takeuchi H, et al. Brain structures associated with executive functions during everyday events in a non-clinical sample. Brain Struct Funct. 2013;218:1017–1032.
- McGuire BE, et al. Impaired self-awareness after traumatic brain injury: inter-rater reliability and factor structure of the Dysexecutive Questionnaire (DEX) in patients, significant others and clinicians. Front Behav Neurosci. 2014;8:352.
- Vig A, et al. Psychometric properties of the Dysexecutive Questionnaire (DEX) in individuals with a previous cardiac event. Neuropsychol Rehabil. doi:10.1080/09602011.2025.2591784.
- Shaw S, Oei TPS, Sawang S. Psychometric validation of the Dysexecutive Questionnaire (DEX). Psychol Assess. 2015;27:138–147.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)
