BADS日本版とは?6つの下位検査・DEX・採点とカットオフの読み方【PDF評価付き】
BADS
遂行機能障害症候群の行動評価 日本版
段取りのつまずきを、生活の支援へ。
計画を立てる、時間を配る、途中で確認する。BADSの6課題を、外出準備や家事のどこを支えるかへつなぐ実践ガイドです。


道具・教示・時間を、開始前にそろえる
原版出版社の案内は約40分です。日本版の各課題の時間規則を確認し、面接・休息・結果説明の時間は別に確保します。正規の検査用具・記録用紙と、必要な計時・録音の準備を済ませてから始めます。[2]
検査中に段取りを助言すると、本人が自分で管理できた範囲が分からなくなります。採点条件を守って観察した後、別の生活課題で支援の効果を確かめます。
BADSは「段取りを実行する力」を見る
BADS(Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome)は、計画、規則の運用、探索、時間の見積もり、複数課題の管理などを調べる評価です。6つの課題と、日常行動を聞くDEX質問紙を組み合わせます。[1][2]
「持ち物は分かるのに出発時刻を過ぎる」「一つの作業に集中して残りを忘れる」という場合、個々の操作ができるかだけでなく、全体を管理できるかを確認します。BADSはその仮説を立てるために使います。
6つの課題を、3つの組み合わせで理解する
それぞれの課題は複数の認知機能を使います。低得点を一つの機能障害に直結させず、理解・記憶・視覚・運動などの影響と一緒に読みます。[3]
規則変換カード・行為計画


規則変換では、変更後に同じ誤りを繰り返すのか、自分で気づいて戻れるのかを区別します。行為計画では、試行の多さだけでなく、失敗を次の方法へ生かせているかを見ます。
鍵探し・時間判断


探索の抜けがあっても、視野や半側空間無視、課題理解の影響を先に確認します。時間の見積もりは知識・生活経験にも左右されるため、数字の大小だけで時間管理の困難を断定しません。
動物園地図・修正6要素


動物園地図では、自分で計画する条件と、順序が与えられる条件の差が手がかりになります。修正6要素は計算・絵の呼称・口述の3種類に各2課題があり、制限時間内の配分と規則の管理を調べます。単に6問を速く解く課題ではありません。
図は課題の特徴を伝える独自の説明図です。問題・用具配置・解答の再現ではありません。正式な教示、実施条件、採点は日本版の正規資料をご確認ください。課題構成の参考:[6]
実施|検査者が段取りを代わりにしない
-
生活の目標を一つ決める
復職、外出準備、料理など、結果を何に使うかを聞きます。本人・家族の説明から、開始・途中・終了のどこで困るかを具体化。
-
理解・記憶・視覚・運動を確認
規則を理解できたか、材料が見えるか、道具を操作できるかを確認します。低成績に影響する失語・無視・麻痺・疲労を記録。
-
正規材料・教示・時間で行う
マニュアルの範囲を超えて「次へ移りましょう」「時計を見て」と教えません。自己開始、規則違反、自己修正、時間確認を観察します。
-
採点後に別の生活課題で支援を比較
工程表、タイマー、完了チェックなどを一つずつ試します。検査成績と支援下の遂行を分けて残します。
得点|24点と標準化得点、DEXを区別する
| 数値 | 意味 | 次にすること |
|---|---|---|
| 各課題0〜4点 | プロフィール得点。高いほど良好。 | 低い課題の反応過程を確認する。 |
| 6課題の合計0〜24点 | 全体のプロフィール合計。 | 日本版の規定に沿って換算し、分類を記録。 |
| 標準化得点・年齢補正得点 | 規定の換算表による数値。24点満点とは単位が違う。 | どの得点で、どの分類かを併記する。 |
| DEX 0〜80点 | 日常の問題。高いほど問題が多い方向。 | 本人・他者を別記し、24点へ足さない。 |
プロフィール得点と分類の扱いは日本版の資料に合わせます。[3]
分類が正常域でも、対人場面や割り込みがある生活で困ることがあります。逆に低成績でも、明確な工程と支援があれば活動が成立します。点数の役割は、支援の必要な条件を絞ることです。
結果が示す仮説を、生活で検証する
| 検査で見たこと | 生活で予測する困難 | 支援の候補 |
|---|---|---|
| 自由な計画が難しく、構造があると改善 | 「自分で準備して」では動きにくい。 | 工程と終わりを見える形にする。 |
| 一つの課題に時間を使い切る | 外出準備の一部分だけで出発時刻を過ぎる。 | 途中の時間確認と未完了の一覧。 |
| 規則違反に気づかない | 作業を進めても、守る条件から外れる。 | 実行前と区切りで条件を照合。 |
| 探索が無計画 | 同じ場所を探し、未確認の場所が残る。 | 探す順番と探索済みの印。 |
これらは生活場面で確かめる予測です。「BADSが何点だから復職できる」という換算ではありません。復職では作業量、割り込み、疲労、対人要求、必要な支援を実際の業務に近い条件で確認します。
介入例|外出準備を、時間内に終える
持ち物探しに集中して、出発できない
- 目標
- 玄関に出る時刻を決め、必要物をそろえて準備を完了する。
- 準備
- 「持ち物を確認→そろえる→最後に照合」の3段階を見える位置に置く。開始前に本人が所要時間を予測します。
- 実行
- 途中で一度タイマーを鳴らし、「今どこまで終わったか」「何が残ったか」を本人が確認。次にする一つを選びます。
- 再評価
- 完了時刻、忘れ物、促しの回数、本人の予測と実際の時間差を記録。次はタイマーなしで確認できるかを試します。
説明はできるが、割り込み後に作業を失う
- 観察
- 紙の仕分けなど安全な模擬作業で、中断後にどこへ戻るかを見る。
- 試す支援
- 中断前に「次はここ」のカードを置く。再開時はカードを読み、一工程だけ始めます。
- 負荷を上げる
- 一回の中断で安定してから、予定変更など別の要求を加える。
- 再評価
- 再開までの時間、重複・抜け、本人がカードを使い始めたか。


観察:外出準備で持ち物探しに時間を使い、出発前の照合を省略した。
支援と反応:工程表と途中確認のタイマーを導入すると、未完了の物品を自分で確認した。次回は完了時刻・忘れ物・促し回数を比較し、別の日にも使えるか確かめる。
BADS・DEX・KWCSTの違いと、研究の読み方
| 評価 | 主に得る情報 |
|---|---|
| BADS | 計画・探索・時間配分を、課題遂行で見る。 |
| DEX | 日常で困る行動の頻度を、本人と他者が評定する。 |
| KWCST | 正誤を手がかりに、分類を発見・維持・変更する。 |
| CAT-R・記憶評価 | 指示を保つ、情報を更新するなどの土台を確認する。 |
日本版研究:社会的行動は別に聞く
用稲らは脳損傷者65人を検討し、BADSの課題成績と社会的行動障害の評価が食い違う例を報告しました。課題検査だけで対人・感情面まで説明せず、DEXや具体的な出来事を合わせます。[3]
2025年:就労を単独で予測する尺度ではない
Jeffayらの軽度外傷性脳損傷の研究では、多重比較補正後、BADSも従来の検査も就労状況を区別しませんでした。仕事の可否を決めるには、業務条件と支援量の評価が必要です。[4]
介入は目標・実行・確認を練習する
INCOG 2.0は外傷性脳損傷の遂行機能に対して、自己への気づきや目標管理を含む方略の指導を扱っています。本記事の脳卒中などの例では、この考え方を個別の生活課題で試し、実際の効果を確認します。[5]
段取りの過程を、記録に残す。
A4縦・3ページ
① 6課題の得点・実施条件・DEX
② 計画・切り替え・自己修正の観察
③ 支援前後の比較・カルテ記載
正式な採点結果の転記と臨床観察に使う用紙です。教示・採点・換算は正規資料をご確認ください。
参考文献・実施資料
- Gakken.検査&リハ:日本版検査・教材の公式案内.
- Pearson. Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome(BADS): 構成・DEX本人用/他者用の案内.
- 用稲丈人ほか.脳損傷者に実施した遂行機能障害症候群の行動評価(BADS日本版)成績による遂行機能障害の因子分析的検討.高次脳機能研究.2009;29:247–255.
- Jeffay E, et al. On the ecological validity of the behavioural assessment of dysexecutive syndrome measure in mild traumatic brain injury. Brain Inj. 2025. doi:10.1080/02699052.2025.2554248.
- Jeffay E, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part III: Executive Functions. J Head Trauma Rehabil. 2023;38:52–64.
- Murakami H, et al. Modified Six Elements Test: Earlier diagnosis of the correlation between motor and executive dysfunction in Parkinson’s disease without dementia. Neurol Clin Neurosci. 2015;3:209–214.(課題構成の参考)

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)
