【2026年版】膝関節の整形外科テスト/ラックマンテスト/前方引き出しテスト/ストレステストなど
脳卒中後の膝痛に、整形外科的テストで向き合う。
脳卒中発症から1〜2年が経過すると、麻痺側だけでなく非麻痺側の膝痛を訴える患者さんが増えます。中枢神経系を専門とするセラピストでも、整形外科的テストを正確に使いこなすことで、医師へのディスカッションや診断サポートができます。この記事では歩行観察から各種整形外科的テスト、脳卒中特有の歩行パターンまで体系的に解説します。
— 脳卒中・パーキンソン病に応用できる膝関節の整形外科的テストを動画で解説します。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
脳卒中発症から2年が経過した60代男性。ADL(日常生活動作)は自立し歩行距離も延びてきた。ある日のリハビリで「非麻痺側の膝が荷重時に痛い」と訴える。
あなたはどのように評価しますか?脳卒中専門の立場でも、整形外科的テストを系統的に実施できることで、医師との連携が格段に深まります。
脳卒中患者さんの膝痛に関わるとき、多くの新人セラピストは「整形外科の先生に任せるべきか」と迷います。しかし適切な評価ができれば、担当セラピストが最初にその異変を捉え、適切なタイミングで医師に情報提供できます。それが患者さんにとっての最善策です。
脳卒中後膝痛の疫学と原因。
脳卒中発症後1〜2年が経過すると、歩行距離が伸びるにつれて膝への負荷が増大します。麻痺側だけでなく、代償的に酷使される非麻痺側にも痛みが生じることが明らかになっています。
対象:48名の脳卒中患者(筋骨格系超音波を使用)
結果:33.3%が麻痺側の膝痛、12.5%が非麻痺側の膝痛を訴えた。膝痛は肩痛と並んで合併しやすく、重症例より軽度〜中等度麻痺の方が多く訴える傾向がある。
臨床的示唆:歩行距離が伸びてきた時期こそ、膝の評価を積極的に行うべきサインです。
膝痛の主な原因分類
| 原因カテゴリ | 具体的な病態 | 関連する評価テスト |
|---|---|---|
| 関節内病変 | 滑液貯留・滑膜炎・軟骨損耗 | 跳動テスト・ワイプテスト・温度評価 |
| 靭帯損傷 | ACL・PCL・MCL・LCL損傷 | ラックマン・引き出しテスト・内外反ストレステスト |
| 半月板損傷 | 内側・外側半月板断裂 | アプレイコンプレッションテスト・関節ラインの圧痛 |
| 軟部組織・変形 | 変形性膝関節症・骨棘・鵞足炎 | 静的立位評価・周径計測・触診 |
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専門家に相談してみてください。
STROKE LABは脳卒中後のリハビリに特化した自費リハビリ施設です。膝の痛みによって歩行や生活動作が制限されているご本人・ご家族のご相談を、無料でお受けしています。まずはお気軽にご連絡ください。
歩行動作分析の6つの視点。
膝関節評価は、まず歩行観察から始めましょう。評価室での静的テストだけでは気づけない異常が、歩行中に明確に現れることがあります。
つま先のオフやかかと接地の異常に注目します。麻痺側立脚相での過伸展や膝折れが起こりやすいため、各相での膝関節角度を確認します。
変形性関節症や炎症性関節炎では可動域が制限されます。歩行中の最大屈曲・伸展角度を視覚的に評価します。
有痛性歩行・靭帯の不安定性・筋力低下を示唆します。患者さんが痛みを避けるような体重移動をしていないか観察します。
関節病態の原因または結果としての脚長差に注目します。骨盤の傾斜や体幹の側屈と合わせて評価します。
関節疾患では可動域制限・不安定性のためゆっくり方向転換します。パーキンソン病の方はすくみ足が出やすいので区別が必要です。
高い歩幅(ステッピング歩行)は、腓骨神経麻痺による下垂足(足関節背屈が困難な状態)に関連します。膝評価とあわせて足部も確認します。
静的立位評価(前・側・後面)。
歩行観察の後は、静的立位で3方向から系統的に膝関節を観察します。前面・側面・後面それぞれの観察ポイントを整理しました。
前面から見る

傷跡:過去の手術(関節鏡のポート挿入部位など)や外傷の手がかりになります。
あざ:最近の外傷、または抗凝固剤使用・血液凝固障害患者での自然発生的な関節症を示唆します。
腫れ:片側の腫れによる左右非対称は、胸水・炎症性関節症・敗血症性関節炎・血行性関節症の可能性があります。
乾癬プラーク:伸展面に多く、乾癬性関節炎のリスクが高まります。
膝蓋骨の位置:通常は膝関節中央にあります。ずれがあれば脱臼・亜脱臼の可能性があります。
膝外反変形(X脚):大腿骨に対して脛骨が外方に偏位します。
膝内反変形(O脚):脛骨が大腿骨に対して内側に曲がります。
大腿四頭筋の萎縮:左右の筋量差は廃用性萎縮または下位運動ニューロン病変を示唆します。
側面から見る

過伸展:膝の過伸展は十字靭帯損傷に二次的に起こる可能性があります。脳卒中後の反張膝(はんちょうひざ)にも注意します。
屈曲変形:外傷・炎症・神経疾患による拘縮(関節が固まった状態)が疑われます。
足部の評価:足部アーチや前足部の変形も膝への力学的影響を評価するうえで重要です。
後面から見る

傷跡:以前の外傷や手術の痕跡を確認します。
筋力低下:大腿後部・下腿後部の筋肉の非対称性は廃用性萎縮や下位運動ニューロン病変を示します。
膝窩(しっか)の腫れ:Baker嚢胞(膝裏にできる液体の袋)や膝窩動脈瘤が考えられます。動脈瘤は通常拍動性です。
水腫・浮腫の評価テスト。
膝関節内の滲出液(しんしゅつえき:関節内に異常に溜まった液体)の有無を評価します。評価前に必ず患者さんへ説明し同意を得てから始めましょう。
温度評価と左右差の比較

検査肢位:背臥位。方法:手の背(手背)を使って左右の膝関節温度を比較します。判定:関節温度の上昇は腫脹・圧痛と組み合わさった場合、敗血症性関節炎・炎症性関節炎・痛風・偽痛風の可能性を示します。
腫脹・圧痛と合わせて評価することで炎症性病変のスクリーニングとして有用とされます。(エビデンスレベル:観察研究)
膝蓋骨跳動テスト(Ballottement of Patella Test)

肢位:背臥位、膝伸展位。①膝蓋骨方向に向かって滑液を集めるよう圧迫を加えます。②一方の手で膝蓋骨を大腿骨に向けて押します。
判定:滑液の貯留がある場合、または膝蓋骨が沈みこむ感触があり、衝突音・クリック音が聞こえれば陽性です。
感度18.2〜85.7%、特異度35.3〜93.3%と幅があります。単独での確定診断は困難であるため、ワイプテストや触診との組み合わせが推奨されます。
ワイプテスト(Swipe Test)

膝関節包内の腫脹確認テストです。少量の関節液でも検出できるため、跳動テストが陰性でも疑いが残る場合に有用です。
①膝伸展位にて手背部で膝蓋骨内側下方から上方に向けて圧迫しながら移動させます。②他方の手で膝蓋骨外側の上方から下方に向けて強めに擦ります。複数回繰り返しても構いません。
判定:膝蓋骨内側下方に膨隆が認められれば陽性です。評価者間信頼性は非常に高く(κ=0.75)、一致率73%と報告されています(Sturgill 2009)。
触診と関節可動域評価。
膝関節伸展位での膝蓋骨周囲の触診

触診部位は①大腿四頭筋腱 ②膝内側の境界 ③膝外側の境界 ④膝蓋腱の4箇所です。大腿四頭筋から膝蓋骨腱の滑走不全・筋長・膝蓋骨の不安定性・可動性低下・滲出液の貯留・部位ごとの圧痛・左右差を確認します。
膝関節90°屈曲位での触診

①膝蓋骨の位置:腱炎の可能性があるため、膝蓋靭帯を評価します。
②脛骨隆起:オスグッド・シュラッター病(脛骨結節への過剰なストレスによる痛み)の圧痛を評価します。
③内側・外側関節ライン:骨折・半月板損傷の可能性があります。
④側副靭帯:MCL・LCL損傷の評価を行います。
⑤腓骨頭:骨折の可能性があるため、アライメントを評価します。
⑥膝窩(ひかがみ):Baker嚢胞を示す腫脹の有無を確認します。
膝周囲の周径計測と関節可動域評価

周径計測:膝蓋骨上縁より5cm上、または脛骨粗面より20cm上の大腿周径を左右比較します。筋萎縮の定量的評価として継続的に計測することが推奨されます。
関節可動域:膝関節の正常可動域は屈曲0〜140°です。脳卒中患者の自動運動評価では、特に代償運動(頸部・腰背部への代償)と運動パターンを観察します。
靭帯・半月板の整形外科テスト。
整形外科的テストの実施前に、患者さんへの事前説明と同意取得を行います。手洗い・感染防止策の実施、痛みの有無の事前確認も必須です。
アプレイコンプレッションテスト(半月板)

肢位:腹臥位。方法:膝屈曲位で大腿部を固定し、下腿に①外旋・②内旋を加えます。判定:疼痛または可動域制限があれば陽性。下腿内旋位の疼痛は外側半月板損傷、外旋位は内側半月板損傷を示唆します。
半月板は三日月形をした2つの繊維軟骨組織で、膝関節を安定させ大腿骨と脛骨の間の力を分散します。Hegedusら(2007)SR:感度60%・特異度70%。(エビデンスレベル:SR・弱く推奨)
前方・後方引き出しテスト(十字靭帯)

肢位:背臥位、膝屈曲90°・足底接地。①脛骨前上面を把持し前方に引き出す(前引き出し=ACL評価)。②後方に押し込む(後引き出し=PCL評価)。判定:異常な可動性があれば陽性です。
前十字靭帯(ACL)は脛骨の前方亜脱臼を、後十字靭帯(PCL)は後方亜脱臼を防ぎます。Benjaminseら(2006)メタアナリシス:感度・特異度ともに0.92・0.91。(エビデンスレベル:RCT複数・強く推奨)
ラックマンテスト(Lachman’s Test)

肢位:背臥位、膝屈曲30°。方法:大腿部を一方の手で固定し、他方の手で脛骨近位部を内側から把持します。下腿を外旋方向に誘導しながら前方へ引き出します。判定:反対側と比べて可動性が大きければ陽性。ACLや後斜走靭帯の損傷を示唆します。
Katzら(1986):急性ACL断裂:感度77.7%・特異度95%(受傷2週間以内)。亜急性〜慢性:感度84.6%・特異度95%以上。(エビデンスレベル:RCT・強く推奨)
内外反ストレステスト(MCL・LCL)

肢位:背臥位、膝伸展位。方法:大腿部を固定し①内反ストレス(LCL評価)②外反ストレス(MCL評価)をそれぞれ加えます。判定:疼痛または反対側比で可動性が大きければ陽性。
ポイント:大腿骨が安定しにくい場合は、より膝関節付近を把持すると評価しやすくなります。内側側副靭帯(MCL)は膝外側への外力で、外側側副靭帯(LCL)は膝内側への外力で損傷します。

STROKE LABでは、脳卒中後の膝痛や歩行障害に悩むご本人・ご家族のために、専門セラピストが個別プログラムを立案します。「もう治らない」と言われた方でも、まずは無料でご相談いただけます。
Pitfallsと臨床判断のコツ。
中枢神経系が専門のセラピストが、膝の整形外科的評価で陥りやすい失敗パターンを整理しました。
「整形外科テストを実施する前に、必ず『この患者さんに今テストを実施する理由』を自分の中で言語化してください。目的のない検査は患者さんを疲労させるだけです。」
「両側の評価を必ず行いましょう。健側と比較することで、異常の大きさが初めて分かります。」
「テスト結果を医師に伝える際は、テスト名・肢位・結果(陽性/陰性)・疑われる病態の順で簡潔に伝えると、連携がスムーズになります。」
脳卒中特有の歩行パターンと膝。
De Quervainら(1996)は、脳卒中患者の膝に着目した歩行パターンを3つに分類しています。この分類を知ることで、膝への機械的ストレスの種類と介入方針が見えてきます。

出典:脳卒中の動作分析(著者:金子唯史)
発症10年経過の方で、非麻痺側の腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)から膝蓋骨外側にかけた荷重時痛が出現していました。非麻痺側膝蓋骨の動きが悪く、ハムストリングス短縮と大腿四頭筋の過剰収縮・短縮が同時に認められました。
膝蓋骨を引き出しながら大腿部と下腿の動きの再現性と自由度を高めるアプローチを継続した結果、1か月で歩容の改善が認められました。

— 症例①:非麻痺側膝荷重時痛に対するセラピーの詳細
立ち上がり時に右膝内側部痛が認められた症例です。長期間の同一動作パターンの継続により、縫工筋(ほうこうきん)停止部・内転筋群停止部の可動性低下、膝中央部の滲出液、内側裂間の圧痛が認められました。
全身の動作パターンへの介入と局所へのアプローチを組み合わせることで、痛みが消失しました。

— 症例②:立ち上がり時の膝内側部痛に対するセラピーの詳細
よくある質問。
Aderibigbeら(2020)の研究では、48名の脳卒中患者のうち33.3%が麻痺側、12.5%が非麻痺側の膝痛を訴えたと報告されています。
軽度〜中等度麻痺の方で多く、歩行距離が伸びるにつれて痛みが顕在化しやすい傾向があります。膝痛は肩痛と並んで脳卒中後に合併しやすい症状です。
Maricarら(2016)の系統的レビューでは、感度18.2〜85.7%、特異度35.3〜93.3%と幅があります。
単独で確定診断には用いず、ワイプテスト・触診と組み合わせて総合的に判断することが推奨されます。
Katzら(1986)の報告では、急性ACL断裂に対して感度77.7%・特異度95%(受傷2週間以内)、亜急性〜慢性では感度84.6%・特異度95%以上と報告されています。
前引き出しテストよりも優れた診断精度を持ち、ACL評価の標準テストとして広く使われています。
De Quervainら(1996)は脳卒中の膝関連歩行パターンを3つに分類しました。①Extension thrust pattern、②Shift-knee pattern、③Buckling-knee patternです。
個人によってパターンが異なるため、丁寧な歩行観察が必要です。
Hegedusら(2007)のメタアナリシスでは、感度60%・特異度70%と報告されています。
下腿内旋位の疼痛は外側半月板損傷、外旋位の疼痛は内側半月板損傷を示唆します。単独より複数テストの組み合わせが推奨されます。
JainNBら(2020)の研究では感度0.7、特異度0.81と報告されています。
腫脹・圧痛と組み合わせることで、炎症性関節炎のスクリーニングとして有用です。単独での診断には限界があります。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳卒中後のリハビリに特化した自費リハビリ施設です。脳科学と徒手技術に基づいた個別プログラムで、「もう良くならない」と言われた方の回復を支援しています。膝の痛みや歩行の問題でお困りの方・ご家族をお持ちの方は、まず無料相談からご連絡ください。
「脳卒中専門といっても、整形外科的な問題を見逃せば患者さんのQOLを下げてしまいます。整形外科テストを一通りできるようにするだけで、医師との関係が大きく変わりました。」— 理学療法士・臨床経験12年・神経リハビリテーション専門
「患者さんが『膝が痛い』と言った時に、すぐに評価できる引き出しを持っているかどうかで信頼度が全然違います。結果を医師に伝える習慣をつけると、チームとして動けるようになります。」— 作業療法士・臨床経験9年・脳血管疾患リハビリ専門
あわせて読みたい:脳卒中患者の歩行が膝に与える影響
諦めないでください。

脳卒中後の膝痛は、歩行距離が延びてきたこと、つまり回復のサインと裏表にあることがあります。せっかく歩けるようになってきたのに、痛みで意欲を失ってほしくありません。
STROKE LABでは、整形外科的な問題も含めて全身の動作パターンを丁寧に評価し、個別のプログラムを立案します。「他の病院で限界と言われた」という方からのご相談も多く受けています。
まずは無料相談で、現状をお聞かせください。何ができるか、一緒に考えさせてください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)