標準高次視知覚検査(VPTA)とは?7領域・採点の読み方と臨床での活用
VPTA
標準高次視知覚検査
「見えている」の、その先を調べる。
道具の名前が出ないことと、道具そのものが分からないことは違います。視覚・触覚・言葉での反応を比較し、本人が使える手がかりを生活に組み込みます。

所要時間と、臨床での進め方
初めて担当するときの流れ
見るだけでは何か分からない物を、触覚など別条件で確認する場合は追加の鑑別観察として記録。顔は分からないが声で分かるなら、日常の名乗りや声の手がかりを検討。条件間の差を具体的に記述する。
VPTAで、何を明らかにするか
VPTA(Visual Perception Test for Agnosia)は、高次視知覚機能を包括的に調べる検査です。視力だけでは説明できない物・顔・色・文字・場所の認識の難しさを、領域ごとに整理します。[1]
例えば、洗面台で歯ブラシを選べないとき。「形が取りにくい」「何に使うか分からない」「名前だけ出ない」「物が多いと探せない」では、支援が変わります。VPTAでは、この区別につながる反応を拾います。
7領域と、生活から立てる問い
| 領域 | 検査で見ること | 生活の問い |
|---|---|---|
| 視知覚の基本機能 | 形・長さなどの基礎的な視知覚。 | 単純な形でも捉えにくいか。 |
| 物体・画像認知 | 見た形を物の意味へ結びつける。 | 道具を見て選べるか、用途が分かるか。 |
| 相貌認知 | 顔の知覚・人物の認識。 | 知人の顔が分からないのか、名前だけ出ないのか。 |
| 色彩認知 | 色の弁別・呼称・知識。 | 色は見分けられるが、名前にできないのか。 |
| シンボル認知 | 文字・数字などの認識。 | 文字ラベルを手がかりにできるか。 |
| 視空間の認知と操作 | 位置・方向・構成。 | 物の配置や身体との位置関係を扱えるか。 |
| 地誌的見当識 | 場所や経路に関わる認知。 | 目印が分からないのか、曲がる方向を忘れるのか。 |
正式構成は学会案内によります。各領域がそのまま一つの診断名を意味するわけではありません。[1]
実施|標準課題の後に、別の手がかりで比較する
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入力・理解・反応を確認
眼鏡、視力・視野、複視、眼球運動、照明を確認。教示理解、呼称、指さし、描画が可能か、どの手を使うかを記録します。知らない人物・道具への不正答を、既知のものと同じに扱いません。
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正規図版で提示・計時・採点
規定の提示方法と反応時間の扱いをそろえ、答えをそのまま記録します。色や顔の課題は、画面や自作プリントへの置換で条件が変わります。
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標準得点を確定して、追加比較
生活の物を単独で見せる、触って判断してもらう、用途を言葉で説明するなどを比較。直前に正答を教えると記憶で答えられるため、提示順と伝えた情報を残します。

採点|0・1・2の方向と、プロフィールの読み方
VPTAは誤反応・遅延反応に点が付くため、得点が増えることを改善と読みません。基本的な区分として正答0点、遅延反応1点、誤答・無反応2点が用いられますが、時間条件や項目ごとの扱いはマニュアルで確認します。[1][3]
| 読み方 | 具体例 |
|---|---|
| 項目ごとの基準と照合 | 同じ合計の誤り点でも、物体に集中するのか、顔・色・空間へ広がるのかを見る。 |
| 実施範囲を明示 | 未実施は0点と区別。全領域を行っていない場合は、その範囲を記す。 |
| 正誤だけでなく条件差 | 名称は出ないが用途は説明できる、単独なら分かるが重なりで難しい、などを残す。 |
| 変化の方向を読む | 誤答から遅延正答への変化は、時間をかければ認識できるようになった可能性。生活でも確認する。 |
反応の違いから、使える支援を選ぶ
| 観察した反応 | 解釈の方向 | 最初に試す支援 |
|---|---|---|
| 名前は出ないが、用途は分かる | 呼称の問題を含めて言語機能を確認。 | 名称を言わせ続けず、選択や実際の用途で確認。 |
| 見て分からず、触ると分かる | 視覚から認識への過程を詳しく調べる。 | 安全な物で触覚を使う確認方法。 |
| 単独なら分かるが、並ぶと探せない | 混み合い・探索・注意の負荷を確認。 | 背景を簡素にし、必要物だけを提示。 |
| 色は照合できるが、色名が出ない | 知覚と呼称を分ける。 | 色名の指示より、現物同士の照合。 |
| 顔が分からず、声で分かる | 相貌認知と人物知識を確認。 | 会うときに名乗る、声で人物を確認。 |

こうした比較は臨床的な仮説です。視覚以外でも認識が難しい場合には、意味記憶や言語理解などへ評価を広げます。[2]
介入例|洗面台と、病室までの道順
歯ブラシを単独なら選べるが、洗面台で止まる
- 最初に測る
- 普段の配置で選択までの時間と取り違えを記録。
- 試す支援
- 必要な歯ブラシとコップだけを、模様の少ない背景に置く。まず提示数だけを変えて反応を見る。
- 手がかりを確認
- 文字が読めるなら文字ラベル、触ると分かるなら安全な触覚確認を使います。色だけで識別させるのは色認知を確認してから。
- 再評価
- 自分で選べた回数/機会数、促し、別の洗面台での再現性。
病室へ戻る途中で迷う
- 観察
- どの分岐で止まるか、目印を認識しているか、方向が分からないのかを同行して確認。
- 試す支援
- 本人が実際に認識できた目印を一つ選び、「この目印で右へ」のように行動と結びつけます。地図理解が難しい人へ地図だけを渡しません。
- 再評価
- 同じ経路で必要な促しと誤った曲がりを記録。安定してから別の時間帯・経路へ広げます。

予後・他尺度・研究の読み方
VPTAから見通せるのは、どの情報が生活で使いにくく、どの手がかりが利用できそうかです。合計点から回復期間や外出自立の確率は出せません。検査プロフィールと、実物・実環境での成功率を並べて追います。
| 補う評価 | 役割 |
|---|---|
| SLTAなど | 理解・呼称・読みの問題を分ける。 |
| BIT・CAT-R | 片側の見落としや注意の影響を確認。 |
| 視力・視野・眼球運動 | 視覚入力の基礎条件を確認。 |
| VPTA-FFT ver.2 | 熟知相貌検査部分の改訂版。VPTA全体の第2版ではない。 |
2026年の国内一症例報告
顔の特徴を手がかりにする訓練後、顔認知課題やVPTA相貌認知項目の改善が報告されています。本人に使える特徴を探す参考になりますが、全例に同じ方法を選ぶ根拠ではありません。[3]
失認のリハビリテーション研究
Gobboらの系統的レビューは、物体失認・相貌失認の介入を整理しています。認知のどの過程が弱いかに合わせた支援が検討されており、生活では未練習の物や人物へ広がるかを確かめます。[4]
検査結果を、生活の支援へ残す
実施条件・観察・試した支援を整理する、STROKE LAB独自の臨床メモです。
既存の記録補助PDFです。正式な検査用紙や採点表の代わりではありません。
参考文献・実施資料

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)