日本版RBMTリバーミード行動記憶検査|実施手順・年齢別カットオフ・生活支援への活用
RBMT
日本版リバーミード行動記憶検査
「覚えている」を、「暮らしで使える」へ。
予定・持ち物・道順。日常に近い課題から、記憶のつまずきと支援の手がかりを見つけます。

RBMTで何がわかる?
「話の内容は覚えているのに、予定の時刻になると動けない」「財布をしまったことは覚えているが、どこに置いたか出てこない」。日本版RBMTは、こうした日常の記憶の困りごとを、実際の行動に近い課題で捉える検査です。物語の再生や絵・顔の再認に加え、あとで用事を実行する展望記憶を扱います。[1],[3]
展望記憶は「未来を予測する能力」という意味ではありません。あとで行うと決めたことを、その場面で思い出し実行する記憶です。約束を口頭で復唱できても、必要な時に自分から行動できるとは限りません。RBMTの持ち物・約束・用件は、この違いを考える入口になります。
所要時間と、始める前の準備
検査枠は約30分を目安に確保します。日本版の検証では、実施時間を調べた205例の平均は27分でした。説明、移動環境の調整、採点、本人・家族へのフィードバックは別に時間を取ります。疲労や理解の確認が必要な場合、時間内に終えることを優先しません。[2]
| 確認すること | 新人が準備する具体例 |
|---|---|
| 正規の用具と版 | マニュアル、記録用紙、使用する並行版、絵・顔のカード、タイマー、封筒等をそろえる。別の並行版の刺激と記録用紙を混ぜない。 |
| 部屋と動線 | 静かな部屋を使い、道順課題の配置を事前にマニュアルで確認する。障害物、歩行補助具、介助の必要性を確認する。 |
| 見える・聞こえる・理解できる | 眼鏡、補聴器、視野、半側空間無視、失語、教示理解を確認する。失敗をすべて記憶に帰属しない。 |
| 当日の状態 | 覚醒、睡眠、痛み、疲労、気分、服薬変更の有無を記録する。急な混乱や大きな日内変動があれば、その評価を先に検討する。 |
| 生活上の疑問 | 「予約を忘れる」のような言葉を、何を・どの場面で・週何回・どんな援助で、と具体化しておく。 |
実施前に、検査者自身が一度、用具を扱う順番・タイマーを扱う時点・遅延課題へ戻る位置を通して確認します。記憶課題では、間に何を行ったかも実施条件です。項目を見やすい順に並べ替えたり、全部を直後再生だけで済ませたりすると、標準の実施とは異なります。
課題ごとの「何をする・どこを見る」
以下は理解のための整理で、実施順の台本ではありません。正式な教示、刺激数、提示時間、遅延の取り方、許容される促し、換算は日本版マニュアルで確認します。各課題を知るだけでなく、自発的な反応と、促しの後の反応を分けて記録することが大切です。[1],[4]
| 課題のまとまり | 行うことの概要 | 観察を生活へつなぐ視点 |
|---|---|---|
| 姓名 | 顔と姓名を結び付け、あとで思い出す。 | 顔への注目、姓名の取り違え、部分的な想起。人名だけが出にくいか。 |
| 持ち物 | 預けた自分の持ち物について、あとで返却を求め、置き場所を思い出す。 | 「返してもらう」という用事と、物・場所の記憶を分ける。 |
| 約束 | 事前に覚えた用件を、タイマーの合図をきっかけに実行する。 | 音への反応と用件の想起を分ける。音に驚いたことだけで成功としない。 |
| 絵 | 先に見た絵を、あとで提示される候補から選び分ける。 | 見た絵の見落としと、見ていない絵を選ぶ反応を記録する。 |
| 物語:直後・遅延 | 聞いた内容を直後と、他の課題を挟んだあとに話す。 | 最初の取り込みから難しいか、時間後の再生で変化するか。 |
| 顔写真 | 先に見た顔を、あとで候補から選び分ける。 | 視覚認知・相貌認知の問題が影響していないかも確認する。 |
| 道順:直後・遅延 | 示された室内の道順をたどり、あとでも再現する。 | 場所、順序、戻る動き。歩行や視空間の問題と区別する。 |
| 用件:直後・遅延 | 道順の途中で、封筒に関する所定の用事を実行する。 | 道順が合っていても用事を抜かすことがある。両者を分けて見る。 |
| 見当識と日付 | 現在の場所や時間に関する質問に答える。 | 日付の誤りだけでなく、生活の時間的な見通しとの関連を確認する。 |


新人のための実施の流れ
ここでは、初めて担当する療法士が準備から結果説明まで進める場面を示します。記載の順序は臨床業務の流れであり、下位検査の正式な提示順ではありません。
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開始前:今回知りたい生活の問題を決める
家族から「帰る時に持ち物を忘れる」と聞いたら、忘れる頻度、場所、本人が自分で気づくかを確認します。「記憶が悪い」を、その後の支援で確かめられる問いに変えます。
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導入:理解を確認し、標準の教示で始める
「ふだんの生活に関係する記憶を調べます」と検査全体を説明します。個別の教示はマニュアルどおりに行い、検査者の判断で覚え方や正答を教えません。
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実施中:言葉だけでなく動きを残す
たとえばタイマーが鳴った時、顔を向けたか、話し始めたか、何を言ったかを短く記録します。先回りして「さっきの約束は?」と助けると、自分から思い出したかが分からなくなります。促しは正式手順に従い、反応と区別して残します。
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遅延課題:決められた位置で戻る
直後の反応が良かったからと省略せず、指定の流れで遅延課題を行います。中断・休憩・予定外の会話が入った場合は、その位置と時間を記録します。標準から外れた条件を、通常の結果と同じようには扱いません。
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採点後:生活で試す支援を一つ決める
正式な採点を終えた後で、「音が鳴れば気づけるが、用件を思い出せなかった」という観察を共有します。生活場面では通知に用件を表示し、読んでから実行する練習を試す、という次の行動まで決めます。

点数と年齢別カットオフの読み方
日本版では、正式な換算を経て標準プロフィール点(SPS:0~24点)とスクリーニング点(SS:0~12点)を求めます。どちらも高いほど良い成績ですが、別の指標です。合計して36点満点にしたり、SPSを単純に2で割ってSSにしたりしません。[4]
| 年齢区分 | SPS:記憶障害が疑われる範囲 | SS:記憶障害が疑われる範囲 |
|---|---|---|
| 39歳以下 | 19点以下 | 7点以下 |
| 40~59歳 | 16点以下 | 7点以下 |
| 60歳以上 | 15点以下 | 5点以下 |
表はJEEDの公的資料に掲載された日本版の年齢別基準です。「以下」には境界の点数も含みます。実際の判定では、使用版のマニュアルと正式な記録用紙を照合します。[4]
資料にはSPSの重症度区分として0~9点、10~16点、17~21点、22~24点という区分も掲載されています。ただし、重症度区分と年齢別の判別基準は目的が違います。年齢を問わず一つのラベルだけで説明すると、上の例のような食い違いを生みます。本記事では年齢別基準を先に示し、生活の観察を併記する方法を勧めます。[4]
「何点なら独居できる」「何点なら復職できる」という一律の判定には使いません。仕事の複雑さ、慣れ、支援者、予定の多さ、メモを確認する習慣が違うためです。点数は記憶の困難を疑う根拠であり、生活上の成功確率そのものではありません。
同じ点数でも、支援は変わる

| 観察された組み合わせ | 次に確かめたいこと | 生活で試す支援の例 |
|---|---|---|
| 直後から内容が少ない | 聴力、理解、注意、情報量の影響。 | 伝える内容を短く区切り、本人の言葉で確認する。一度に複数の予定を伝えない。 |
| 直後より遅延で再生が難しい | 他の課題を挟むと何が残るか。生活でも時間後に忘れるか。 | 必要な情報をすぐ記録し、使う時に見られる場所へ置く。時間を空けた確認も練習する。 |
| 再生は難しいが再認は比較的保たれる | 選択肢や見える手がかりが実際に役立つか。 | 自由に思い出させるだけでなく、予定表や持ち物写真を見て確認する。 |
| 音には気づくが用件が出ない | 合図と用件の結び付き、用件の保持。 | 通知に具体的な行動を書く。「予定」だけでなく「予定帳を開いて確認」のように次の動作を示す。 |
| 用件は言えるが実行を開始しない | 発動、段取り、他の作業からの切り替え。 | 開始の一手を小さくする。通知後に予定帳を開く動作から練習する。 |
| 道順は合うが用件を抜かす | 移動と別の用事を同時に保持できるか。 | 用事を行う場所に目印や確認表を置き、到着したら確認する習慣を作る。 |
これらは支援を選ぶ仮説です。RBMTの再生課題と再認課題は刺激も要求も同一ではないため、その差だけで「貯蔵障害」「検索障害」を確定できません。また、道順の失敗を記憶だけで説明せず、視空間認知、注意、運動面を確認します。
生活で使う:3つの介入ストーリー

① 通知は聞こえるのに、予約を忘れる
架空例:Aさんは音に反応するものの、約束した用件が出てきません。退院後の練習ではスマートフォンに「予定帳を開く」と表示し、予定帳の今日の欄を確認して準備する流れを一緒に行います。最初は誤りを繰り返さないよう必要な援助を入れ、慣れたら援助を減らします。「通知を見た」「予定帳を開いた」「用件を実行した」を別々に数え、5機会中の自力実行回数を記録します。画面操作が難しければ、見やすい紙の予定表と家族の定時確認に変えます。
② 持ち物を預けたまま帰ろうとする
架空例:Bさんは持ち物の場所を聞かれれば答えられても、返却を求めることを忘れます。外出前の確認場所を玄関の一か所に決め、写真付きの持ち物表と実物を照合します。「覚えてください」を増やすより、出発という場面と確認行動を結び付ける支援です。家族は本人より先に荷物をそろえず、必要だった声かけの回数を記録します。急ぐ日・別の鞄の日にも使えるかを後で確認します。
③ 道順はたどれるが、届け物を忘れる
架空例:Cさんは目的地まで歩けますが、途中の用事を抜かします。訓練では生活で必要な短いルートを使い、届け先に確認カードを置きます。最初は一つの用事から始め、到着時に確認し、終わったら印を付けます。到着だけで成功とせず、届ける・完了を確認するまでを目標にします。検査の道順や正答を反復練習するのではなく、生活上の別の用事で支援効果を確かめます。
上の例は臨床で検討するための架空例で、RBMTの点数から効果が保証される処方ではありません。本人にとって重要な用事を一つ選び、支援を使う前後で失敗・援助・完了を記録すると、続ける支援を選びやすくなります。
ほかの評価と、どう組み合わせる?
| 評価・情報 | RBMTに加える意味 |
|---|---|
| EMC(日常記憶チェックリスト) | 検査室の行動に、本人・家族が見ている日常の失敗を加える。両者の食い違いも確認する。 |
| WMS-Rなどの記憶検査 | 記憶の側面をより詳しく検討する。異なる検査の点数やカットオフを相互に換算しない。 |
| CAT-Rなどの注意評価 | 情報の取り込みが悪い時、注意の持続や選択が影響しているかを調べる。 |
| BADS・DEX | 用件を覚えていても、段取りや切り替えのために実行できない場面を検討する。 |
| 失語・視知覚・半側空間無視の評価 | 教示、物語、絵・顔、道順の失敗に、記憶以外の要因が関与していないかを確かめる。 |
| 生活場面の観察 | 予約、買い物、外出準備、仕事の伝言など、本人が実際に行う場面で支援の有効性を確かめる。 |
EMCの日本版検証では、介護者が評価した日常記憶の問題と記憶検査の成績に関連があり、その中でRBMTとの関連が最も強く報告されました。本人の自己評価だけ、家族の印象だけ、検査点数だけのいずれか一つで結論を出さないことが実務上の要点です。[5]
日本語・英語の研究から言えること
| 研究 | わかったこと | この記事での使い方 |
|---|---|---|
| 原版の検証:Wilsonら、1989 | 健常者118人と脳損傷者176人を対象に、日常記憶を扱う検査バッテリーを検討。[3] | 生活との関連を重視する検査の背景。個々の人の独居・復職の予測式としては使わない。 |
| 日本版:数井ら、2002 | 健忘を有する脳損傷者478例と健常者199例で検討。記憶検査や介護者のEMCとの関連を報告。[2] | 日本版の信頼性・妥当性を考える主要資料。平均27分は時間を調べた205例の結果。 |
| メモリーノート:大石ら、2013 | 回復期の19例を検討し、活用の成否と動機づけ・自己モニタリング等との関係を考察。[6] | ノートを渡すだけではなく、本人が必要性を理解し、適時に見る行動まで練習する。ただし少数の観察研究で、因果関係は断定しない。 |
| INCOG 2.0:2023 | 外的補助手段や機能的な練習などを扱う外傷性脳損傷の記憶リハビリテーション指針。[7] | 通知・予定帳等の支援を検討する根拠。脳卒中だけの研究や、日本版RBMTの採点基準ではない。 |
| 展望記憶リハのレビュー:Sodaら、2026 | 非進行性の後天性脳損傷を対象とする27研究をレビュー。10件のRCTをメタ解析し、展望記憶への改善効果を示したが、研究間の違いや出版バイアス等がある。[8] | 訓練効果を期待しつつ、長期の維持や生活への般化を実際に確認する。RBMTの特定の点数から改善幅を予測する根拠ではない。 |
2026年のレビューも、検索対象は2024年12月までです。発表年が新しくても、すべての最新研究を含むとは限りません。検査の再得点が上がることと、自宅で用事を忘れなくなることは分けて記録します。[8]
再評価とダウンロード
日本版には4つの並行版があります。再評価では使用した版と前回の日付を確認し、同じ刺激の記憶による影響を減らすよう計画します。別の版でも練習効果がゼロになるとは限りません。覚醒、疲労、中断、援助条件もそろえて比較します。[1]
結果は「SPSが何点変わったか」に加えて、予定を実行できた割合、本人が予定表を開いた回数、家族の声かけ回数で確かめます。今回確認した資料だけから、全員に使える最小重要変化量や、固定した再検査間隔は提示していません。
検査用具とマニュアルは千葉テストセンターの日本版RBMT増補版ページから確認できます。
参考文献・確認資料
- 千葉テストセンター.日本版リバーミード行動記憶検査【増補版】(2023年).版・構成・用具の確認。
- 数井裕光ほか.日本版リバーミード行動記憶検査(RBMT)の有用性の検討.神経研究の進歩.2002;46(2):307–318. DOI:10.11477/mf.1431901355
- Wilson B, et al. The development and validation of a test battery for detecting and monitoring everyday memory problems. J Clin Exp Neuropsychol. 1989;11(6):855–870.
- JEED 障害者職業総合センター.高次脳機能障害者の復職におけるアセスメント 資料集.RBMTの項(PDF 62–63ページ)。
- Kazui H, et al. The validation of a Japanese version of the Everyday Memory Checklist. 脳と神経.2003;55(4):317–325.
- 大石斐子ほか.メモリーノートの活用の成否に関わる要因─回復期病棟における検討─.認知リハビリテーション.2013;18(1):29–37.
- Velikonja D, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part V: Memory. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):83–102.
- Soda M, et al. A Systematic review and meta-analysis on prospective memory rehabilitation in adults with non-progressive acquired brain injury. Scientific Reports. 2026;16:1983.
- Pearson. Rivermead Behavioural Memory Test–Third Edition (RBMT-3): Overview. 日本版との版の区別に使用。
情報確認:2026年10月24日。日本版検証論文は公開抄録を、採点基準は公的資料を、版と用具は出版社情報を照合しました。正規マニュアル全ページの照合を済ませた記事ではありません。正式実施に必要な細部は、お手元の日本版マニュアルを参照してください。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)