パーキンソン病で台風・低気圧で不調になる|原因と対策・自宅でできる工夫
気圧は、読める。崩れる前に、備えられる。
台風が近づく前から、体がだるい。動きが硬くなる。よく眠れない——。それは気のせいではなく、気圧の変化がパーキンソン病の自律神経や症状の波に影響しているのかもしれません。しくみと、今日から自宅でできる備え方を整理します。

台風が来る前から、もう調子が悪い。
台風が接近する1〜2日前から、体が重く感じる。いつもより体がこわばり、動き出すまでに時間がかかる。夜もよく眠れず、翌朝はさらにだるい——。台風が来るたびに同じことが繰り返され、天気予報を見るのが憂うつになる、という声をよく聞きます。
この不調は、決して気のせいや甘えではありません。気圧の変化が自律神経に働きかけ、パーキンソン病の症状に影響することがあるのです。しくみを知れば、備え方が見えてきます。
「気圧が下がると調子が悪い」という感覚は、パーキンソン病の有無にかかわらず多くの人が経験する気象病(天気痛)と共通する部分があります。ただし、パーキンソン病の場合はそこに、もともとある自律神経の乱れやすさ、薬の効き目の波(オン・オフ)が重なるため、影響の出方が少し複雑になります。この記事では、その重なりを分けて整理し、台風の日を少しでも穏やかに過ごすための工夫をお伝えします。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
気圧とパーキンソン病、2つの重なり。
台風で調子が悪くなる背景には、大きく分けて誰にでも起こりうる「気象病」のしくみと、パーキンソン病に特有の自律神経の乱れやすさという、2つの要因が重なっています。
| 要因 | どういうことか |
|---|---|
| 内耳のセンサー | 耳の奥が気圧の変化を感知し、自律神経(交感神経)を興奮させる |
| もともとの自律神経の乱れ | パーキンソン病では血圧や体温調節の乱れが起こりやすく、影響が増幅されやすい |
| 睡眠・生活リズムの乱れ | 天気が悪いと眠りが浅くなり、翌日の動きにくさにつながる |
| 気持ちの緊張 | 災害への不安や外出できないストレスが、筋肉のこわばりを強めることがある |
ここで大切なのは、震えや動作の遅さといった「運動症状」そのものが天候で大きく変わるという証拠は、実はまだ一致していないという点です。一方で、血圧の変動や睡眠、幻視といった「非運動症状」は、季節や気候の影響を受けやすいことが研究で示されています。誇張せず、分けて理解することが対策の第一歩になります。

イギリスの372名のパーキンソン病患者を対象にした研究では、循環器系(血圧など)、睡眠、幻視、嗅覚といった非運動症状が、冬の時期に悪化しやすいことが報告されています。この変動は、服用しているドパミン系の薬の量とは関連していなかったとされています。
限界:これは季節(冬と夏)を比較した研究で、台風や低気圧そのものを直接評価したものではありません。また、別の研究では震えや動作緩慢などの運動症状には、はっきりした季節差が見られなかったとも報告されています。天候の影響は症状の種類によって異なる可能性があり、個人差も大きい点に注意が必要です。
STROKE LABの視点:気圧を「先読み」して備える。
気圧の変化そのものを止めることはできません。しかし、気圧は数日先まである程度予測できます。台風のように「崩れる日」が事前に分かっている天候こそ、後手に回らず先回りして備えられる絶好の機会です。次の3ステップで、崩れる前日から生活を整えていきましょう。
ステップ1:気圧予報アプリで数日先のリスクを把握する。スマートフォンの気圧予報アプリや気象庁の情報で、台風接近の数日前から気圧の下がり方を確認します。「大きく崩れそうな日」に目印をつけておきましょう。
ステップ2:崩れる前日に、生活を整える。睡眠時間を確保する、水分と食事をいつも通りとる、その日の服薬時間と体調を簡単にメモする。台風当日ではなく、前日のうちに土台を整えておくのがポイントです。
ステップ3:台風当日は「新しいことをしない日」と決めておく。予定を詰め込まず、慣れた動作だけで過ごす日と割り切ります。無理に予定をこなそうとせず、体調を最優先にする日と決めておくと、気持ちの負担も軽くなります。
体調と気圧の記録を数か月続けると、「気圧が◯hPa下がると、だいたい◯時間後に体が重くなる」といった、自分なりの傾向が見えてくることがあります。この記録は、次の章でお伝える服薬タイミングの相談にもそのまま役立ちます。合う備え方は人それぞれなので、作業療法士と一緒に振り返るのもおすすめです。

服薬と、オン・オフの波との付き合い方。
「気圧が下がると、薬が効きにくい気がする」と感じる方は少なくありません。実際に効き目が変わっているのか、それとも別の要因が重なっているのか、体感だけで見分けるのは難しいものです。だからこそ、「記録」が主治医との会話をつなぐ橋渡しになります。
服薬した時刻、効き始めた時刻、動きにくくなった時刻(オフの時間)、そしてその日の天気や気圧を、簡単なメモやアプリに残しておきましょう。台風の前後で明らかにオフの時間が長くなる傾向があれば、次の診察でそのまま伝えることができます。薬の量やタイミングを自分の判断で変えることは避け、調整が必要かどうかは記録をもとに主治医が判断するものと考えてください。

パーキンソン病患者を対象に24時間の血圧を測定した研究では、1日のうちに100mmHgを超える大きな血圧変動がみられる患者がいることが報告されています。もともと血圧調節が不安定な状態にあると、気圧の変化のような外的要因の影響も受けやすくなると考えられます。
限界:この研究は血圧変動そのものを対象にしたもので、気圧との直接的な関連を検証したものではありません。血圧の変動は転倒やめまいのリスクにもつながるため、気になる場合は自己測定の記録を持って主治医に相談してください。
台風当日の、安全な過ごし方。
台風の日は、体のこわばりやすくみ足に加えて、暗い室内や慌ただしい雰囲気など、転倒につながる要因が普段より重なりやすい日です。「いつも通り」を装備し直すつもりで、室内の環境を見直しておきましょう。
窓を閉め切って薄暗くなった部屋は、足元の物につまずく原因になります。日中でも照明はしっかりつけ、廊下や部屋の間の動線に荷物を置かないようにしておきます。もしすくみ足が出たときは、無理に足を出そうとせず、一度止まって「1、2」と声に出す、床の目印をまたぐつもりで足を運ぶ、といった方法が助けになります。外の風雨を気にして急いで動こうとすると、かえって転倒のリスクが高まるため、いつも以上に「ゆっくり」を意識してください。
また、外出を控える日だからといって、体を動かすことまでやめる必要はありません。室内でできるストレッチや体操を続けることは、こわばりを和らげ、翌日以降の動きにくさを防ぐことにもつながります。体操・自主トレ大全を参考に、いつもより軽めのメニューで続けてみてください。

脳リハ.comのYouTubeでは、座ったままでもできる体操を配信しています。外出を控える日の運動習慣として、無理のない範囲で取り入れてみてください。
専門リハと、受診の目安。
自宅での備えが、天候の崩れをその都度やり過ごすための工夫だとすれば、専門施設で目指すのは、天候の変化があっても崩れにくい体の土台をつくることです。台風不調への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 自律神経へのアプローチ。呼吸や姿勢を整える運動を通じて、自律神経が過度に興奮しにくい体づくりを目指します。
2. こわばりを和らげる運動学習。体調が優れない日でも実施できる強度に調整した運動を、繰り返し行うことで動きの幅を保ちます。
3. 転倒予防のための姿勢・バランス強化。すくみ足が出やすい状況を想定した練習を行い、とっさの場面でも対応できる体をつくります。
STROKE LABでは、天候による体調の波を記録しながら、その方の崩れ方の傾向に合わせて運動メニューを調整していくという設計を組み立てます。効果には個人差があり、体調の波は完全になくならないこともあります。薬の調整は主治医の役割です。
受診の目安は、台風の前後で普段以上に強い頭痛やめまいが続く、立ちくらみで転倒しそうになる、幻視や気分の落ち込みが目立つようになった、といったときです。不調の原因は気圧だけとは限りません。自己判断せず、神経内科で確認してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. 台風が近づくと調子が悪くなるのは、パーキンソン病と関係がありますか?
Q. 気圧が下がると、動きにくさ(オフの時間)が増える気がします。薬を増やしてよいですか?

Q. 台風の日に転びやすい気がするのですが、気のせいではないですか?
Q. 気圧の変化を事前に知る方法はありますか?
Q. 季節や天気で、パーキンソン病の症状は本当に変わるのですか?
Q. 台風の日は外出も運動も控えたほうがよいですか?
天候不調の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。天候による体調の波を一緒に記録し、その方の崩れ方の傾向に合わせて運動メニューや生活の整え方を組み立てます。薬の調整は主治医を尊重し、体の土台づくりと生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
でも、備え方は選べます。

天気予報を見るたびに気持ちが沈む、というお話を、台風の多い季節になると特によく伺います。天候は自分の力ではどうにもならないからこそ、余計につらく感じるのだと思います。
お伝えしたいのは、気圧そのものは変えられなくても、崩れる前日からの備え方は、今日から変えられるということです。記録をつけ、先読みし、安全な環境を整える。小さな積み重ねが、台風のたびのため息を少しずつ減らしていきます。
天候による不調でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。その方の崩れ方の傾向に合わせて、無理のない備え方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。気圧・気候と症状の関係には個人差があり、研究途上の部分もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月5日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- van Wamelen DJ, Podlewska AM, Leta V, et al. Slave to the rhythm: seasonal differences in non-motor symptoms in Parkinson’s disease. Parkinsonism Relat Disord. 2019;63:73-76.(非運動症状の季節変動を報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- Postuma RB, Arenovich T, Lang AE. Does severity of Parkinson’s disease vary according to season? Mov Disord. 2005;20(4):476-479.(運動症状には明確な季節差が見られなかったとする研究。限界の記述に使用)
- Suzuki M, Hirasawa A, Ito Y, et al. Blood pressure fluctuation and hypertension in patients with Parkinson’s disease. Brain Behav. 2013;3(6):710-714.(パーキンソン病患者の血圧変動を報告。第4動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)