パーキンソン病でよだれが増える|流涎の原因と対応
唾液が増えたのではなく、飲み込みが減っただけです。
気づくと口元が濡れている。タオルやティッシュが手放せない。それはパーキンソン病でみられる流涎(りゅうえん)かもしれません。多くの場合、唾液の量が増えたのではなく、飲み込む回数が減っていることが背景にあります。しくみと、今日から自宅でできる対応を整理します。

「口元が濡れていますよ」と、言われた。
テレビを見ているとき、話に集中しているとき、ふと気づくと口の端から唾液が垂れている。家族に指摘されて初めて気づく、ということも少なくありません。人前に出るのがおっくうになった、という声もよく聞きます。
でも、知ってほしいのです。これは唾液が増えすぎているのではなく、飲み込みの回数が減っているサインで、姿勢と合図の工夫で変えられることが多いということを。
パーキンソン病では、無意識に行っている飲み込み(嚥下)の動作が、少しずつ小さく・遅く・少なくなることがあります。これは動作緩慢と呼ばれる症状の現れ方のひとつで、口の中に唾液がたまりやすくなる原因になります。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
流涎の、しくみと特徴。
流涎は、唾液の分泌量そのものが増える症状ではなく、飲み込む回数が減ることで口の中に唾液がたまってしまう症状と考えられています。ここに、姿勢や口唇の閉じにくさが重なると、外にこぼれやすくなります。特徴を整理しておきましょう。
| 特徴 | どういうことか |
|---|---|
| 飲み込みの回数が減る | 無意識のごっくんが少なくなり、唾液がたまりやすくなる |
| 集中しているときに強まる | テレビ・会話・作業に気を取られると、飲み込みがさらに減る |
| うつむき姿勢で悪化する | 頭が前に出て顎が下がると、口が開き、こぼれやすい位置になる |
| 口唇が閉じにくくなる | 口周りの筋力低下で、無意識のうちに口が開きやすくなる |
ここに、立て直しのヒントが隠れています。飲み込みの回数が減るなら、飲み込む機会を意識的に増やせばよい。姿勢とロ唇の閉じで悪化するなら、そこを整えればよい。次の章から、この考え方を具体的な手順にしていきます。

STROKE LABの視点:”ごっくん”を取り戻す3ステップ。
流涎の対処でいちばん手早く効くのが、意識的に「飲み込む」機会を作ることです。無意識に任せると回数は減っていく一方なので、意図的に思い出す仕組みを生活の中に組み込みます。次の3ステップで、自宅でも今日から始められます。
ステップ1:姿勢をリセットする。椅子に深く座り、背すじを軽く伸ばし、顎を軽く引きます。頭が前に糸で軽く吊られているイメージを持つと、うつむき姿勢が戻りやすくなります。
ステップ2:飲み込むタイミングを作る。テレビのCMの合間、会話の切れ目、決まった時間など、「ここで一回、ごっくん」と決めておきます。付箋やスマホのタイマーで思い出す仕組みを作るのも有効です。
ステップ3:口唇と顎の運動を続ける。唇をしっかり閉じる、頬を膨らませる、「パ・タ・カ」とはっきり発音するなど、口周りの筋力を保つ運動を毎日少しずつ行います。
最初は意識しないと難しく感じますが、繰り返すうちに、飲み込む感覚そのものを取り戻しやすくなります。大切なのは、姿勢と合図をセットで習慣にすること。合う頻度やきっかけの作り方は人それぞれなので、言語聴覚士や作業療法士と一緒に調整すると近道です。

対応の工夫と、セルフケア。
3ステップに加えて、生活の中でできる工夫がいくつかあります。合言葉は「かむ・保つ・気づく」です。
かむ動作は、飲み込みの回数を自然に増やす助けになることがあります。むせやすさがなければ、無糖のガムなどをかむ習慣を試してみるのもひとつの方法です。外出時はハンカチやタオルを持ち歩き、こまめに口元をぬぐうことで、気づいたときにすぐ対処できます。テレビや読書に集中しているときほど飲み込みを忘れやすいので、家族の一言の声かけも助けになります。運動で全身の姿勢や筋力を保っておくと、口周りの状態も安定しやすくなるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。

パーキンソン病の方を対象にした予備的な研究では、ガムをかむことで、飲み込みの頻度が増え、飲み込みまでの反応も速くなったと報告されています。かむ動作が、無意識の嚥下を促す一つのきっかけになりうることを示す結果です。
限界:対象人数の少ない予備的な研究で、全ての方に当てはまるとは限りません。むせや誤嚥のリスクがある方には向かないため、安全に行えるかどうかを言語聴覚士や主治医に確認してから試してください。効果には個人差があります。
自宅での工夫が、姿勢を整え合図でその場の飲み込みを助ける対応だとすれば、専門施設で目指すのは、声や呼吸、口周りの筋力そのものを底上げし、嚥下の力を根本から整える回復的アプローチです。流涎への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 姿勢・呼吸の土台づくり。体幹の安定と呼吸のコントロールを整え、頭部が前に出にくい姿勢を保ちやすくします。
2. 声・口腔周囲の運動学習。大きな声を出す・はっきり発音するといった訓練を通じて、口唇・舌・喉の筋力と協調を高めます。
3. 生活場面での合図の定着。本人が思い出しやすいタイミングやきっかけを一緒に見つけ、日常の中で無理なく続けられる形にします。
STROKE LABが軸足を置くのは、合図で正しい姿勢と飲み込みを引き出しながら、声や口腔周囲の力そのものを底上げしていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整やボツリヌス毒素注射などの医療的な治療は、主治医の役割です。
声の大きさに焦点をあてた集中的な音声治療(LSVT LOUD)を受けたパーキンソン病の方を調べた予備研究では、訓練後に嚥下の効率や状態を示す指標が改善したと報告されています。声を大きく出す訓練が、声帯だけでなく飲み込みに関わる筋力にも良い影響を与える可能性を示す結果です。
限界:対象人数の少ない予備的な研究です。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。集中的な訓練には決められた頻度や条件があり、専門的な評価と指導が前提です。訓練は薬や医療的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
脳リハ.comのYouTubeでは、姿勢や呼吸を整える体操を配信しています。口周りの運動と合わせて、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、その人の姿勢の癖や困る場面を一緒に確認し、飲み込みの合図の作り方、口周りの運動、声の訓練を、その人に合わせて調整します。「実際に困っている場面」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整やボツリヌス毒素注射などの治療は主治医の役割で、私たちは姿勢・嚥下動作・生活の側から支えます。
受診の目安は、よだれの量で生活に支障が出てきた、むせやすさが増えてきた、飲み込みにくさを感じるようになった、といったときです。よだれが増える原因は流涎だけとは限りません。自己判断せず、神経内科・かかりつけ医で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. なぜパーキンソン病でよだれが増えるのですか?

Q. 唾液の量が増えているわけではないのですか?
Q. 自宅でできる対応はありますか?
Q. ガムやアメは効果がありますか?
Q. うつむいた姿勢は関係ありますか?
Q. 病院で相談すべき治療はありますか?
流涎の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている場面を一緒に確認し、姿勢・飲み込みの合図・口周りと声の運動を、その人に合わせて組み立てます。人前や食事の場面など、実際の場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬や医療的な治療の判断は主治医を尊重し、姿勢・嚥下動作・生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
口元は変わります。

よだれが増えると、人前に出るのがつらくなり、外出や会話を避けるようになる方が少なくありません。「自分では気づけないのが余計につらい」と話される方にも、たくさん出会ってきました。
お伝えしたいのは、唾液の量を減らすことよりも、姿勢を戻し飲み込みの合図を作ることで、口元は驚くほど変わることがあるということです。姿勢を味方につけ、意識的に、ごっくん。ちょっとした工夫で、安心して過ごせる場面はまだまだ広がります。
よだれでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う姿勢と合図を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。よだれの増加には他の原因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月8日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- South AR, et al. Gum chewing improves swallow frequency and latency in Parkinson patients: a preliminary study. Neurology. 2010;74(15):1198-1202.(ガムをかむことで嚥下頻度と反応が改善したと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- El Sharkawi A, et al. Swallowing and voice effects of Lee Silverman Voice Treatment (LSVT): a pilot study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2002;72(1):31-36.(声の集中訓練により嚥下の状態が改善したと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)