パーキンソン病で仕事のパフォーマンスが落ちた|原因と対策・自宅でできる工夫
「前と同じように、働けなくなった」
仕事のスピードが落ちた、ミスが増えた、会議についていけない——パーキンソン病になってから、そう感じている方は少なくありません。原因は一つではなく、いくつもの要因が重なって起きています。原因ごとの対策と、今日から自宅・職場でできる工夫を整理します。

仕事で、こんな変化はありませんか。
書類の作成に時間がかかる。会議で発言のタイミングを逃す。午前中はできていたことが、午後になるとつらくなる。周りには「怠けている」と誤解されているのではと、一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。
でも、知ってほしいのです。パフォーマンスの低下には理由があり、原因ごとに対策があるということを。
パーキンソン病になると、仕事のパフォーマンスに次のような変化が現れることがあります。動作が遅くなる、細かい作業に時間がかかる、話し始めるまでに間があく、資料を見ながら話すなど同時作業が苦手になる、午後になると急に疲れる——。こうした変化は、決して「気の緩み」ではありません。まずは背景にある原因を、一つずつ見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
パフォーマンス低下の、5つの原因。
仕事のしづらさは、たいてい一つの原因ではなく、複数が重なって起きています。原因を分けて考えると、対策も具体的になります。

| 原因 | 仕事にどう出るか |
|---|---|
| 運動症状 | 動作緩慢・固縮により、書字・入力・移動に時間がかかる |
| 認知面の変化 | 考える速さの低下、二重課題(同時作業)が苦手になる |
| 薬の効き方の波 | ウェアリングオフにより、時間帯でできることが変わる |
| 疲労・睡眠 | 症状としての易疲労性や、夜間の睡眠の質低下が日中に影響 |
| 気分・意欲 | 抑うつ・意欲低下(アパシー)が、取り組み始めるまでの時間を長くする |
それぞれ、もう少し詳しく見てみましょう。
運動症状
動作緩慢(動きが遅くなる)や固縮(筋肉のこわばり)は、タイピングや書字、資料をめくる、席を立つといった細かい動作を一つひとつ時間のかかるものに変えます。姿勢の変化による歩行のしにくさも、移動を伴う仕事では負担になります。
認知面の変化
情報を処理する速さがゆっくりになり、とっさの判断や会話のテンポについていきにくくなることがあります。特に二つ以上のことを同時に行う二重課題が苦手になりやすいのが特徴で、「話しながらメモを取る」「歩きながら考える」といった場面で影響が出やすくなります。
薬の効き方の波
内服薬の効果には持続時間があり、次の服薬時間が近づくと効果が弱まるウェアリングオフという現象が起こることがあります。よく動ける「オン」の時間と、動きにくい「オフ」の時間が生まれ、同じ人でも時間帯によって作業の質が変わります。
疲労・睡眠
パーキンソン病では、動いた分の疲れとは別に、症状そのものとしての強い疲労感(易疲労性)が現れることがあります。夜間の睡眠が浅くなりやすいことも重なり、日中の集中力に影響します。
気分・意欲
抑うつや意欲低下(アパシー)は、パーキンソン病でみられる非運動症状の一つです。「やる気が出ない」「取りかかるまでに時間がかかる」という形で、パフォーマンスに影響することがあります。これは性格の問題ではなく、症状として理解することが大切です。
STROKE LABの視点:自宅・職場でできる工夫。
原因が複数あるからこそ、対策も一つに絞らず、仕事の「組み立て方」そのものを見直すのが効果的です。今日から試せる工夫を4つの切り口で紹介します。

1. 動きやすい時間帯に、重要な作業を集める。薬の効果や体調には、一日の中で波があります。集中力や正確さが求められる作業は、比較的動きやすい時間帯に配置し、単純作業や休憩を、動きにくい時間帯にまわします。
2. タスクを分解し、同時作業を減らす。複数の作業を並行して進めるより、一つずつ順番に片づけるほうが負担は少なくなります。長い作業は、区切りのよいところで小さく分けておくと、途中で疲れても再開しやすくなります。
3. メモとリマインダーを外部化する。覚えておくこと自体が負担になるため、頭の中だけで管理せず、付箋・チェックリスト・スマートフォンの通知など、外部の仕組みに任せます。
4. こまめに、短い休憩を挟む。疲れを感じてから休むのではなく、時間を決めて先に休憩を入れておくと、疲労の波が大きくなる前に立て直せます。5分でも席を立ち、姿勢を変えるだけで違いが出ます。
体を動かす習慣自体が、作業の持続力を支える土台になります。体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。合う工夫は仕事の内容や症状の出方によって異なるので、作業療法士と一緒に、自分の一日の流れに合わせて調整すると近道です。
動きの「大きさ」に焦点をあてた集中的な運動療法(LSVT BIG)を検証した無作為化比較試験では、別の運動や自宅練習と比べて運動症状の指標が大きく改善し、その効果が16週間後にも維持されていたと報告されています。動作の速さや大きさを底上げすることは、仕事の場面での作業効率にもつながる可能性があります。
限界:この研究は全身運動を対象としており、仕事のパフォーマンスそのものを指標にしたものではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。集中的な訓練には専門的な評価と指導が前提です。運動療法は薬による治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
脳リハ.comのYouTubeでは、日常動作の持久力を支える体操を配信しています。仕事の合間の休憩時間にも取り入れやすい内容です。
職場への、伝え方。
病気のことを職場にどこまで伝えるかは、決まった正解がありません。ただし、「配慮してほしい具体的な場面」を伝えると、誤解を防ぎやすくなります。「病名」だけでなく、「午前中は集中できるが、午後は休憩を挟みたい」「会議は着席位置に配慮してほしい」など、日常の困りごとに落として伝えると、周囲も対応しやすくなります。
産業医や人事の担当者がいる職場では、間に入ってもらうのも一つの方法です。主治医からの意見書があると、必要な配慮を職場に伝えやすくなることもあります。一人で抱え込まず、主治医・職場・家族と情報を共有しながら、無理のない働き方を探っていきましょう。
専門リハで、さらにできること。
1. 運動面へのアプローチ。大きく動く運動学習や、動作のスピード・巧緻性を高める練習で、書字・入力・移動などの動作効率を底上げします。
2. 二重課題への対応。あえて「動きながら考える」「聞きながら書く」といった課題を段階的に練習し、同時作業への耐性を高めていきます。
3. 一日のリズムの調整。服薬タイミングと生活リズムを踏まえ、動きやすい時間帯と作業内容を一緒に整理します。薬の調整自体は主治医の領域ですが、生活の組み立て方から支えます。
4. 疲労・体力の底上げ。疲れやすさそのものに対して、無理のない範囲で持久力を高める運動を段階的に取り入れ、日中のパフォーマンスの波を小さくしていきます。
STROKE LABでは、実際に困っている仕事の場面を題材に、複数のアプローチを組み合わせて練習を設計します。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
受診・相談の、目安。
次のような場合は、自己判断で工夫を続けるだけでなく、主治医への相談をおすすめします。薬の効き方の波が大きく生活に支障が出ている、以前より抑うつ的な気分が続いている、睡眠の質が明らかに悪化しているといった変化です。これらは服薬タイミングの調整や、別のアプローチで改善できることがあります。パフォーマンス低下の原因を自己判断で決めつけず、専門家と一緒に整理していきましょう。

よくある質問。
Q. 仕事でミスが増えたのは、パーキンソン病のせいですか?
Q. 薬が効いている時間と効いていない時間で、仕事のできが違います。これは普通ですか?

Q. 一つの作業に集中すると、もう一つのことがおろそかになります。なぜですか?

Q. 会社に病気のことをどこまで伝えるべきですか?
Q. 疲れやすさも仕事に影響しますか?
Q. リハビリで仕事のパフォーマンスは戻りますか?
働き方の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。仕事で困っている具体的な場面を伺い、運動・認知・生活リズムの視点から、複数のアプローチを組み合わせて練習を設計します。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
「働き方を変える」だけです。

仕事のパフォーマンスが落ちたと感じたとき、多くの方が「自分の努力不足では」と自分を責めてしまいます。でも実際には、動きの遅さ、考える速さ、薬の波、疲労、気分——いくつもの要因が重なって起きているのです。
原因を一つずつ整理すれば、対策は必ず見つかります。時間帯を組み立て直す、タスクを分解する、体を動かす習慣を持つ。小さな工夫の積み重ねが、働き続けるための力になります。
働き方でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている仕事の場面そのものを題材に、その方に合う工夫を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。仕事のパフォーマンス低下には複数の原因が関わります。気になるときは、必ず主治医・産業医にご相談ください(最終確認日:2026年9月2日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Ebersbach G, et al. Comparing exercise in Parkinson’s disease—the Berlin LSVT BIG study. Mov Disord. 2010;25(12):1902-1908.(動きの大きさに焦点をあてた集中的運動療法が運動症状を有意に改善し、16週後も効果が維持されたと報告。エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)