パーキンソン病で近くに専門施設がない場合|原因と対策・自宅でできる工夫
通えなくても、続けられます。
近くにパーキンソン病の専門医や専門リハがない。片道2時間かけて通院するだけで、その日は何もできなくなる——。そんな悩みを抱える方は少なくありません。通院の回数を減らしても、支援を仕組みとして持っておけば、リハビリは続けられます。距離のハンデを埋める考え方と、今日からできる工夫を整理します。

通院だけで、一日仕事だった。
パーキンソン病に詳しい神経内科は、車で2時間の隣の市にしかない。専門的なリハビリを受けられる施設はさらに遠い。診察のたびに家族が仕事を休んで送迎し、待ち時間も含めれば一日がかりになる——。そんな声を、地方にお住まいの方からたびたびお聞きします。
でも、知ってほしいのです。対面の通院回数を減らしても、支援を仕組みとして持っておけば、専門的なサポートは受け続けられるということを。
パーキンソン病は、症状の変化に応じて薬の調整やリハビリの見直しが必要になる病気です。本来であれば、こまめに専門家に相談できるのが理想ですが、現実には距離の壁がそれを難しくしています。まずはこの壁がなぜ生まれるのかを整理し、そのうえで距離があっても続けられる工夫を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
専門施設が近くにない、本当の理由。
「近くに専門施設がない」という状況は、一つの原因だけで起きているわけではありません。医療体制の問題と、パーキンソン病そのものの症状が、二重に重なって負担を大きくしています。代表的な要因を整理してみましょう。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| 医療資源の地域偏在 | パーキンソン病に詳しい神経内科医・専門リハ施設は、都市部に集中しやすい |
| 症状による移動の困難 | 歩行障害やすくみ足、疲労のため、長距離の移動自体が大きな負担になる |
| 運転が難しくなる | とっさの反応の遅れなどから、本人による車の運転が難しくなることがある |
| 送迎する家族の負担 | 送迎する家族自身も高齢だったり、仕事を休みづらかったりする |
| 専門人材の不足 | 近くにリハビリ施設があっても、パーキンソン病に詳しい療法士が少ないことがある |
つまり、「施設が遠い」という問題と「症状のせいで移動しにくい」という問題が、お互いを強め合っているのです。だからこそ、通院そのものを減らしても専門的な支援を受け続けられる仕組みが必要になります。

STROKE LABの視点:通院を「仕組み」に変える。
距離のハンデを埋めるいちばんの近道は、「毎回対面で頑張る」のではなく「役割を分けて仕組み化する」ことです。オンライン・地域の医療者・自主トレの3つを組み合わせます。

ステップ1:オンライン相談を、日々の相談窓口にする。症状の変化やちょっとした疑問は、オンライン診療やオンライン相談で確認します。対面の通院は、実際に触れて確認が必要なときに絞ります。
ステップ2:地域のかかりつけ医・訪問リハと連携する。専門施設からの情報を、近くのかかりつけ医や訪問リハビリのスタッフと共有します。日常の見守りは地域で、専門的な判断は遠方の専門医で、と役割を分けます。
ステップ3:自主トレーニングを「型」として持ち帰る。専門施設で教わった運動を、自宅で毎日繰り返せる決まった型にします。通院の間隔が空いても、型があれば継続がぶれにくくなります。
この仕組みを機能させる鍵は、日々の様子を記録しておくことです。歩きにくさが強い時間帯、転びそうになった場面、薬の効き方の変化などをメモしておくと、限られた対面診療やオンライン相談の時間を、より的確な内容に使えます。
アメリカで行われた大規模な無作為化比較試験(Connect.Parkinson試験)では、自宅からビデオ通話で神経内科医の診察を受けたグループと、通常どおり通院したグループを比較した結果、生活の質の指標に差がなく、一人あたり片道100マイル以上、3.7時間分の移動が節約されたと報告されています。
限界:この研究は主に診察(問診・遠隔での観察)を対象としたもので、触れて評価する身体診察や訓練の代わりにはなりません。地域や通信環境によって利用のしやすさは異なります。オンライン診療は対面診療の完全な代わりではなく、組み合わせて使うものです。
今日から、できる工夫。
仕組みの考え方を、実際の行動に落とし込んでみましょう。特別な準備がなくても、今日から始められることがあります。

| 場面 | 今日からできる工夫 |
|---|---|
| 日々の記録 | 歩きにくさや転倒しかけた場面、薬の効き方をノートやスマホにメモしておく |
| 動画での確認 | 気になる歩き方や動作をスマホで撮影し、次の受診や相談時に見せる |
| 地域の窓口 | 地域包括支援センターやケアマネジャーに、使える送迎・訪問サービスを相談する |
| 仲間とのつながり | パーキンソン病友の会など患者会のオンライン交流会に参加し、情報や工夫を共有する |
運動そのものは、専門施設に頼らなくても自宅で積み重ねられます。型として体に覚え込ませた運動は、通院の間隔が空いても続けやすいので、体操・自主トレ大全も参考にしてください。
脳リハ.comのYouTubeでは、自宅で繰り返せる体操を配信しています。通院の間隔が空いても、型として毎日続けられる体操の一つに加えてみてください。
専門リハと、相談の目安。
1. 初回の対面評価。可能であれば一度は実際に会って、動作や姿勢、生活環境を確認します。以降の遠隔でのやりとりの土台になります。
2. オンラインでの継続相談。自主トレーニングの進み具合や、日々のちょっとした困りごとを、画面越しに定期的に確認します。
3. かかりつけ医・地域リハとの情報連携。専門的な評価内容を、お住まいの地域のかかりつけ医や訪問リハビリのスタッフと共有し、日常の見守りにつなげます。
4. 自主トレーニングの型化。その方の症状や生活環境に合わせて、毎日繰り返せる運動の型を一緒に作り、動画や紙で持ち帰れる形にします。
5. ご家族・地域資源の活用支援。送迎や見守りの負担を、家族だけでなく地域のサービスとどう分担できるか、一緒に整理します。
6. 定期的な集中フォロー。数か月に一度など、まとまった対面での評価・調整の機会を設け、その間はオンラインで継続的に支えるという形も可能です。

オランダで行われた無作為化比較試験(Park-in-Shape試験)では、パーキンソン病の方が自宅で自転車運動を行い、遠隔モニタリングを用いて運動強度を管理された結果、通常のケアを受けたグループに比べて、6か月後の運動症状の指標が有意に改善したと報告されています。
限界:この研究は自転車運動を対象としたもので、家事や書字など生活動作全般を検証したものではありません。遠隔モニタリングには機器や通信環境が必要で、誰でもすぐに同じ形で導入できるとは限りません。在宅運動プログラムは薬による治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
相談の目安は、症状の変化が急に大きくなった、転倒が増えた、自主トレーニングだけでは対応しきれないと感じたときです。オンラインや自主トレだけでは対応できない場面も必ずあります。無理をせず、主治医や専門職に率直に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. 近くに専門施設がない場合、どうすればいいですか?
Q. オンライン診療でパーキンソン病のリハビリは受けられますか?

Q. かかりつけの整形外科や一般のリハビリでも大丈夫ですか?
Q. 家族の送迎が難しいときはどうすればいいですか?
Q. 自宅でのリハビリだけで進行を抑えられますか?
Q. 専門施設が遠い場合、受診の頻度はどのくらいが目安ですか?
遠方からのご相談も、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。遠方にお住まいの方には、初回の対面評価と、その後のオンライン相談・自主トレーニングの型化を組み合わせたサポートも行っています。かかりつけ医や地域のリハビリスタッフとの情報共有もお手伝いします。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活の側から支えます。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、自宅でも実際の動きを確認できます。
支える形は、一つではありません。

「近くに専門の先生がいない」「通うだけで疲れ果ててしまう」。そんな理由で、必要な支援をあきらめかけている方に、これまでたくさん出会ってきました。
お伝えしたいのは、対面で毎回会えなくても、支える形はいくつも作れるということです。オンラインでの相談、地域の医療者との連携、自宅で続けられる自主トレーニング。距離があっても、専門的な視点を生活に届ける方法はあります。
遠方でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。その方の暮らしに合う、無理のない続け方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。地域や症状によって使える手段は異なります。医療体制や制度の詳細は、必ずお住まいの自治体・主治医にもご確認ください(最終確認日:2026年9月3日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Beck CA, et al. National randomized controlled trial of virtual house calls for Parkinson disease. Neurology. 2017;89(11):1152-1161.(自宅からのオンライン診療が通院と同等の生活の質を保ち、大きな移動時間の節約につながったと報告。第3節エビデンスボックスの出典)
- van der Kolk NM, et al. Effectiveness of home-based and remotely supervised aerobic exercise in Parkinson’s disease: a double-blind, randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2019;18(11):998-1008.(遠隔モニタリングによる在宅運動プログラムが運動症状を有意に改善したと報告。第5節エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)