パーキンソン病で料理の下ごしらえがしにくい|原因と対策・自宅でできる工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で料理の下ごしらえがしにくい|原因と対策・自宅でできる工夫

COOKING PREPARATION

まな板を固定するだけで、手はまた動き出します。

玉ねぎのみじん切りに30分かかる。皮むきの途中で手が止まる。包丁を持つのが怖い——。パーキンソン病では、料理の下ごしらえがしにくくなることがあります。原因は一つではなく、動作緩慢・固縮・振戦・両手の協調・すくみなど、複数の症状が重なって起きています。しくみを知り、今日から台所でできる工夫を整理します。

UPDATED2026
READ約10分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。手の使いにくさには他の原因もあります。気になる変化は自己判断せず、神経内科で確認してください。
Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
下ごしらえの困難は、一つの原因ではなく複数の症状が重なって起きます
02
食材やまな板を「固定する」だけで、片手の負担が大きく減ります
03
作業を細かく区切り、一つずつ終わらせると動きが止まりにくくなります
04
薬がよく効いている時間帯に、下ごしらえを合わせるのも有効です
05
危険を感じる工程は無理をせず、道具や家族の手を借りましょう
01
A Kitchen That Feels Unsafe

「切る」のが、怖くなった。

A Family’s Voice
「気づけば、同じ玉ねぎの前で何分も手が止まっていて」

長年台所に立ってきたのに、包丁を握る手に力が入らない。皮むきの途中で、次にどう動かせばいいか分からなくなる。急いで刻もうとすると、かえって指が思うように動かない——。毎日のことだけに、できなくなっていく実感はつらいものです。

でも、知ってほしいのです。下ごしらえのしにくさには理由があり、台所と道具、そして動き方を変えるだけで、また手を動かせる場面が増えるということを。

下ごしらえは、皮をむく・切る・混ぜる・計量するなど、いくつもの細かい動作の積み重ねです。それぞれの動作に、指先の細かい動き、両手を別々に使う協調、立ったまま姿勢を保つ力、次の手順を考える力が関わっています。パーキンソン病では、これらのどこか、あるいは複数が影響を受けることで、下ごしらえ全体がしにくくなります。まずは、何が起きているのかを整理していきましょう。全体のリハビリの考え方はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Why It Happens

下ごしらえが、難しくなる原因。

「手先が不器用になった」とひとくくりにされがちですが、実際には性質の異なる複数の症状が、それぞれ違う形で下ごしらえに影響します。原因によって効く工夫も変わるため、まずは自分(またはご家族)がどれに当てはまりそうか、照らし合わせてみてください。

原因 下ごしらえで起きること
動作緩慢 動きが小さく・遅くなり、皮むきや刻む動作に想像以上の時間がかかる
固縮(筋肉のこわばり) 手首や指がこわばり、包丁やピーラーを滑らかに動かしにくくなる
振戦(ふるえ) じっとしているときに手が震え、包丁や熱いものを扱う不安が増す
両手の協調(バイマニュアル) 「片手で押さえて片手で切る」など、左右で違う動きを同時に行うのが苦手になる
すくみ(動作の途中で止まる) 次の食材に手を伸ばす、道具を持ち替えるといった切り替えの瞬間に動きが止まる
姿勢反射障害・立位バランス シンクの前に立ち続けるのが不安定で、作業に集中しにくい
遂行機能(段取り) 複数の食材を同時に進める、順序を組み立てるのが負担に感じられる
薬の効果の波(オン・オフ) 同じ日でも、時間帯によって下ごしらえのしやすさが大きく変わる

大切なのは、「不器用になった」で終わらせず、どの要素が強く出ているかを見極めることです。固定すれば楽になるのか、区切れば楽になるのか、時間帯を変えれば楽になるのか。次の章から、原因に対応した具体的な工夫を見ていきます。

03
Redesign The Kitchen

STROKE LABの視点:台所を「分割式」に変える。

下ごしらえの工夫でいちばん手早く効くのが、一つの複雑な作業を、小さく区切られた単純な動作に分けることです。分けることで、両手協調やすくみの負担が減り、一つひとつの動作に集中できます。今日から台所で試せる3ステップにまとめました。

Three Steps

ステップ1:まな板と食材を「固定する」。まな板の下に滑り止めシートを敷き、可能ならくぎ付きのまな板(食材を刺して固定できるもの)を使います。食材が動かなければ、片手で押さえる動作そのものが要らなくなり、両手協調の負担が大きく減ります。

ステップ2:作業を「区切る」。「玉ねぎの皮をむく」「半分に切る」「みじん切りにする」のように、一連の作業を細かい工程に分け、一工程ごとに手を止めて一呼吸おきます。次の工程に移る前に「次は、切る」と声に出すのも、すくみの予防に役立ちます。

ステップ3:刻む動作に「リズム」をつくる。「トン、トン、トン」と声に出しながら、あるいはキッチンタイマーやメトロノームアプリの一定のテンポに合わせて刻みます。一定のリズムが動きの手がかりになり、動作が詰まりにくくなります。

この3つは、単独ではなく組み合わせて使うほど効果を感じやすくなります。まずは慣れた一品(味噌汁の具材など)で試し、うまくいった工夫を少しずつ他の料理にも広げていくのがおすすめです。合う工夫の組み合わせは人それぞれなので、作業療法士と一緒に調整すると近道です。

04
Tools & Techniques

道具と、工程別の工夫。

3ステップの考え方に加えて、工程ごとに合う道具を選ぶと、さらに負担が減ります。道具は「できないことを補う」ためのものであり、頼ることは決して後ろ向きな選択ではありません

切る工程には、刃を上下に押し出して切るロッカーナイフや、握りが太く力の入りやすい柄のついた包丁が向いています。振戦が強いときは、食材を刺して安定させるフォーク付きのまな板を併用すると安心です。皮むきには、Y字型よりもT字型のピーラーのほうが力を伝えやすい方もいます。瓶や袋を開ける工程には、滑り止め付きのオープナーや電動缶切りが有効です。計量する工程には、目盛りの大きい計量カップや、こぼれにくい注ぎ口のついた容器が扱いやすくなります。

立位バランスに不安があるときは、椅子やスツールに座って作業するだけで、注意を作業そのものに向けやすくなります。薬の効果に波があるときは、薬がよく効いている時間帯に下ごしらえをまとめて行い、保存容器で冷蔵・冷凍しておくという段取りも現実的です。同時に二つの作業を進めようとすると動きが乱れやすいため、一つの作業に集中し、次の作業に移ってから前の作業を思い出すくらいのペースを心がけてみてください。手や体を動かしておくと下ごしらえの土台も安定しやすいので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。フードプロセッサーや電動ピーラーなど電動調理器具に任せる工程を増やすのも、賢い選択です。

Evidence
課題に即した自宅練習で、手先の動きと生活動作が改善した研究

パーキンソン病の方103名を対象にした無作為化比較試験では、生活動作に即した課題を用いた自宅での巧緻動作訓練を4週間行った群は、一般的な運動を行った群に比べて、手先の巧緻性と、それに関連する生活動作(ADL)が有意に改善したと報告されています。

限界:改善の効果は12週間後の追跡評価では維持されておらず、継続した練習が必要であることが示されています。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。訓練は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

出典:Vanbellingen T, et al. Home based training for dexterity in Parkinson’s disease: A randomized controlled trial. Parkinsonism Relat Disord. 2017;41:92-98
固定する。区切る。リズムをつくる。それだけで、台所はまた動ける場所になります。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の回復的アプローチまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
道具で「補う」段階から、動作そのものを立て直す段階へ。

自宅での工夫が、固定や道具でその場で作業をしやすくする代償だとすれば、専門施設で目指すのは、道具の助けを減らしても動ける状態に近づける回復的アプローチです。下ごしらえへの働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. 個々の症状を見極めた評価。動作緩慢・固縮・振戦・両手協調・すくみのどれが強く出ているかを動作分析で確認し、その方に必要な工夫だけに絞り込みます。

2. 大きく動く運動学習と両手協調練習。あえて大きな動作を繰り返し、縮こまった動きの幅を上肢全体から立て直しながら、左右で違う動きを同時に行う両手協調の練習を段階的に行います。

3. 実際の台所を使った練習。その方の台所の高さ・道具・よく作る料理を題材にして練習することで、練習の成果がそのまま生活に活きやすくなります。

STROKE LABが軸足を置くのは、大きく確実な動きを繰り返して運動を学習し、成功体験を積みながら、少しずつ道具への依存を減らしていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
大きく動く課題指向型の訓練で、手の機能と生活動作が改善した研究

パーキンソン病の方を対象にした無作為化比較試験では、大きく確実な動きに焦点をあてた課題指向型の訓練を通常の作業療法に組み合わせた群は、通常の作業療法のみの群に比べて、利き手・非利き手いずれの手の機能も改善し、生活動作(ADL)もより大きく改善したと報告されています。

限界:対象者数は14名と多くなく、より大規模な検証が必要とされています。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。集中的な訓練には専門的な評価と指導が前提です。

出典:Choi Y, Kim D. Effects of Task-Based LSVT-BIG Intervention on Hand Function, Activity of Daily Living, Psychological Function, and Quality of Life in Parkinson’s Disease: A Randomized Control Trial. Occup Ther Int. 2022;2022:1700306
Watch & Practice
手や体を動かす体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、手や体を大きく動かす体操を配信しています。下ごしらえの土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

大きく動く体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、その方が実際に困っている台所の様子や、よく作る料理を確認したうえで、固定具・道具・動作の順序を、その人に合わせて組み立てます。「実際に困っている工程」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と生活の側から支えます。

受診・相談の目安は、工夫をしても改善が見られない、切る・熱を扱うといった場面で危険を感じることが増えてきた、下ごしらえ以外にも動作の変化が広がってきた、といったときです。手の使いにくさの原因は、パーキンソン病だけとは限りません。自己判断せず、神経内科や主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 野菜を切る、皮をむくといった下ごしらえが急に苦手になりました。パーキンソン病のせいですか?

下ごしらえには、細かい指の動き・両手を別々に使う協調・立って作業するバランス・段取りを組み立てる力など、多くの要素が関わります。パーキンソン病では動作緩慢や固縮、振戦などがこれらに影響し、結果として下ごしらえがしにくくなることがあります。ただし手の使いにくさには他の原因もあるため、気になる変化は自己判断せず、神経内科で確認してください。

Q. 包丁を使うのが怖くなってきました。もう料理はできないのでしょうか?

怖さを感じたら、まず包丁の種類とまな板の固定を見直すタイミングです。刃を押し出すロッカーナイフや、滑り止め・くぎ付きのまな板を使うと、片手で食材を支える動作が減り、安全性が上がります。座って作業する、慣れた調理器具に頼るという工夫も有効です。工夫をしても危険を感じる作業は、無理に続けず家族や電動調理器具に任せるという選択も大切です。

Q. 自宅でできる、台所の工夫はありますか?

あります。まな板や作業スペースを滑り止めで固定する、一つの作業を細かく区切って一呼吸おく、刻む動作に一定のリズム(声や音)をつけるという3つの工夫が、今日から自宅で試せます。詳しい手順は本文の「台所を分割式に変える3ステップ」で紹介しています。

Q. 下ごしらえの練習は、リハビリとして意味がありますか?

家庭での課題に即した練習を続けることで、手の細かい動き(巧緻動作)や、それに関わる生活動作が改善したという報告があります。ただし効果には個人差があり、進行に伴って変動することもあります。運動や動作練習は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。続け方は作業療法士に相談すると、自分に合う方法が見つかりやすくなります。

Q. 家族はどこまで手伝えばよいですか?

すべてを代わりにやってしまうと、できる動作まで失われやすくなります。危険な工程(熱源・刃物の際どい場面)は見守りや代行をしつつ、皮をむく、混ぜるといった安全にできる工程は本人に任せるという役割分担が現実的です。どこまで任せてよいか迷うときは、作業療法士に生活場面を見てもらうと判断がしやすくなります。

Q. 下ごしらえのしにくさは、いつ受診・相談すべきサインですか?

工夫をしても改善しない、転倒や火傷など危険な場面が増えてきた、下ごしらえ以外にも動作の変化が広がってきた、というときは主治医や神経内科に相談するタイミングです。字の変化や歩行の変化と同様、手の使いにくさにも他の原因が隠れていることがあります。自己判断で様子を見続けず、早めに確認してください。
07
STROKE LAB

台所の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている台所の場面を一緒に確認し、固定具・道具・動作の順序を、その人に合わせて組み立てます。よく作る料理や実際のキッチンを題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
まな板を1枚固定するだけで、
台所はまた動ける場所になります。
STROKE LAB代表 金子唯史

台所に立てなくなると、長年続けてきた「家族のために作る」という役割そのものが揺らぎます。「もう料理はできないかもしれない」と、道具を片づけかけていた方に、たくさん出会ってきました。

お伝えしたいのは、まな板を固定し、作業を区切り、リズムをつくるだけで、また動かせる場面が驚くほど増えるということです。原因を一つに決めつけず、その方に合う工夫を積み重ねていく。そうすると、台所は少しずつ「怖い場所」から「動ける場所」に変わっていきます。

下ごしらえでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。実際の台所とよく作る料理を題材に、その方に合う動き方を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。手の使いにくさには他の原因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月29日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Vanbellingen T, Nyffeler T, Nigg J, et al. Home based training for dexterity in Parkinson’s disease: A randomized controlled trial. Parkinsonism Relat Disord. 2017;41:92-98.(生活動作に即した自宅での巧緻動作訓練が手先の巧緻性と関連ADLを改善したが、12週後は効果が持続しなかったと報告。第1エビデンスボックスの出典)
  • Choi Y, Kim D. Effects of Task-Based LSVT-BIG Intervention on Hand Function, Activity of Daily Living, Psychological Function, and Quality of Life in Parkinson’s Disease: A Randomized Control Trial. Occup Ther Int. 2022;2022:1700306.(課題指向型の大きく動く訓練が手の機能とADLを改善したと報告。第2エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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