パーキンソン病で肩や腰の痛みが続く|原因と対策・自宅でできる工夫
「歳のせい」ではなく、そこには理由があります。
肩や腰の痛みが何年も続き、湿布や我慢でやり過ごしていませんか。それはパーキンソン病に伴う症状のことがあります。原因はひとつではなく、こわばり・姿勢の変化・薬の効き目の波など、いくつもの理由が重なって起こります。しくみと、今日から自宅でできる工夫を整理します。

「気のせい」と、片づけられて。
肩が上がらない、腰が抜けるように痛い。そんな日が続いても、レントゲンでは特に異常が見つからないことがあります。整形外科をいくつも回っても、はっきりした原因が分からず、「年齢のせい」「姿勢の問題」で片づけられてしまう——そんな経験をした方は、少なくありません。
でも、知ってほしいのです。その痛みには、パーキンソン病に特有のいくつかの理由があるということを。
パーキンソン病では、体を動かす量が減る、姿勢が変わる、薬の効き目に波があるなど、いくつもの要因が絡み合って、肩や腰の痛みにつながることがあります。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
痛みの、しくみと原因。
パーキンソン病に伴う肩や腰の痛みは、ひとつの原因だけでなく、いくつかのしくみが重なって起こります。代表的なものを整理しました。
| 種類 | 特徴 | 起こりやすい場面 |
|---|---|---|
| 筋骨格系の痛み(こわばり・肩関節) | 体を動かす量が減り、関節や筋肉がこわばって硬くなる。特に肩に起こりやすく、フローズンショルダーとして診断の何年も前から現れることも | 片側の肩、腕を上げる動作 |
| 姿勢の変化による腰・背中の痛み | 体が前かがみになる、横に傾くといった姿勢の変化が続くと、特定の筋肉や関節に負担がかかり続ける | 長く座った後、立ち上がった直後 |
| 薬の効き目が切れる時間帯の痛み | 薬の効果が薄れる「オフ」の時間帯に、手足や体幹がつっぱるように痛むことがある | 明け方、次の薬を飲む前 |
| 神経が圧迫されて起こる痛み | 姿勢の変化が背骨に負担をかけ、足やお尻にしびれを伴う痛みとして現れることがある | 歩いているとき、片足に沿って |
| 脳の働き自体に関わる痛み | 場所がはっきりせず、締め付けられる・じんじんするといった、他に原因が見当たらない痛みのことがある | 体の中心、両側性 |
| 他の病気が隠れていることも | 変形性関節症や骨粗しょう症による圧迫骨折など、パーキンソン病以外が原因のこともある | 転倒後、急な激しい痛み |
これらは重なって起こることも多く、「これが原因」と決めつけず、複数の可能性を考えながら対処していくことが大切です。実際、パーキンソン病のある方は、そうでない方に比べて腰の痛みを感じる割合がはっきり高いことが調査で分かっています。

STROKE LABの視点:痛みの地図を作る。
肩や腰の痛みへの対処で、まず大切なのは、「いつ・どこが・どんな時に痛むか」を記録して、痛みの地図を作ることです。原因がひとつではないからこそ、記録が対処の手がかりになります。紙とペンだけで、次の3ステップで始められます。
ステップ1:体の絵に、痛む場所の印をつける。人型のイラスト(記録用紙や、自分で描いた簡単な絵で構いません)に、痛みを感じる場所へ印をつけます。複数箇所に痛みがあれば、遠慮なくすべて書き込みます。
ステップ2:いつ、どんな時かを書き添える。朝起きた時か、薬が効き始める前か、長く座った後か、歩いている時か。痛みが強まる状況を、できるだけ具体的にメモします。
ステップ3:動くと楽になるか、休むと楽になるかを記録する。これが、こわばりからくる痛みか、姿勢からくる痛みか、他の原因かを見分ける手がかりになります。
この地図は、次の診察やリハビリの際に医師や療法士と共有すると、原因の絞り込みに役立ちます。数日続けるだけでも、自分では気づかなかったパターンが見えてくることがあります。合う記録の仕方は人それぞれなので、作業療法士と一緒に工夫すると続けやすくなります。

姿勢と、動き方のコツ。
地図ができたら、日々の動き方と姿勢で、さらに痛みを和らげやすくなります。合言葉は「同じ姿勢を続けない、大きく動く」。固まった動きが、こわばりや姿勢の崩れを強めてしまうためです。
30分に一度は姿勢を変える、座りっぱなしを避けるといった工夫に加え、腕を大きく振って歩く、肩を大きく回す運動は、フローズンショルダーの予防に役立ちます。腰や背中には、壁に背をつけて伸びをする、仰向けで軽く胸を反らすといった、丸まった姿勢を戻すストレッチが向いています。入浴や温タオルで温めてから動くと、こわばりがやわらぎやすくなります。体操の詳しい内容は体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。

パーキンソン病の方150名と、そうでない方60名を比較した調査では、肩の愁訴やフローズンショルダーが、パーキンソン病のある方で有意に多くみられ、その症状の半数以上は、パーキンソン病と診断される0〜2年前から始まっていました。少なくとも8%の方では、肩の痛みが最初の症状だったと報告されています。
限界:これは調査当時の記録に基づくもので、対象者数も限られます。肩の痛みがあるからといって必ずパーキンソン病というわけではなく、他の原因も多くあります。気になる肩の痛みは、整形外科・神経内科の両方の視点で確認することをおすすめします。
自宅での工夫が、痛みをその場でやわらげる対処だとすれば、専門施設で目指すのは、痛みの背景にある原因を見極め、原因ごとに異なるアプローチを組み合わせていくことです。肩や腰の痛みへの働きかけは、大きく4つの方向から組み立てます。
1. 原因の評価から始める。痛みの地図をもとに、こわばりによるものか、姿勢によるものか、薬の効き目の波によるものかを見極めます。
2. 姿勢への働きかけ。前かがみや体幹の傾きに対して、大きく体を伸ばす運動を繰り返し、崩れた姿勢のパターンを立て直していきます。
3. 関節可動域への働きかけ。肩関節を無理のない範囲で動かし、腕を振って歩く動きを取り戻すことで、フローズンショルダーの進行を防ぎます。
4. 薬の効き目の波との付き合い方。痛みの記録と服薬のタイミングを照らし合わせ、必要に応じて主治医と情報を共有します。薬の調整そのものは主治医の役割です。
STROKE LABが軸足を置くのは、痛みをひとつの原因に決めつけず、体の使い方・姿勢・生活のリズムから多角的に整えていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。姿勢を立て直す大きな運動学習の考え方は、医療者向けのLSVT BIG解説もご覧ください。
パーキンソン病の方101名と、そうでない方132名を比較した調査では、腰痛のある方の割合は、パーキンソン病群で74%、そうでない群で27%と大きな差がみられました。痛みの強さもパーキンソン病群のほうが強く、神経根に関連する痛みと、そうでない痛みの両方が、パーキンソン病群でより多く報告されています。
限界:この調査は病気の進行度や罹病期間との明確な関連は示していません。腰痛の原因はひとつではなく、加齢に伴う変化なども重なります。痛みが強い、長く続く場合は、整形外科的な評価もあわせて受けることが大切です。
脳リハ.comのYouTubeでは、肩や体幹を大きく動かす体操を配信しています。姿勢を立て直す土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、痛みの地図をもとに、こわばり・姿勢・薬の効き目の波のどれが影響しているかを一緒に確認し、ストレッチ・姿勢の練習・生活動作の工夫を、その人に合わせて組み立てます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは体の使い方と生活の側から支えます。
次のような痛みは、自己判断せず、早めに医療機関で確認してください。転倒した後に強くなった痛み、しびれや脱力を伴う痛み、安静にしていても強まり続ける痛み、夜間に眠れないほどの痛み。痛みの原因はパーキンソン病だけとは限りません。骨や神経の別の問題が隠れていることもあります。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 肩や腰の痛みは、パーキンソン病のせいですか?
Q. 朝や薬が切れる時間に特に痛むのはなぜですか?
Q. 自宅でできる痛みへの対処はありますか?
Q. マッサージや温めるのは良いですか?
Q. 痛みが強い時は運動しない方がいいですか?
Q. どんな時に受診が必要ですか?
痛みの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。痛みの地図をもとに、こわばり・姿勢・薬の効き目の波のどれが影響しているかを一緒に確認し、ストレッチ・姿勢の練習・生活動作の工夫を、その人に合わせて組み立てます。薬の調整は主治医を尊重し、体の使い方と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
我慢するものではありません。

「レントゲンでは異常がないので、様子を見ましょう」。そう言われて、痛みだけが残る。そんな経験をした方に、たくさん出会ってきました。原因がひとつに絞れないからといって、その痛みが「気のせい」であるはずがありません。
お伝えしたいのは、パーキンソン病に伴う肩や腰の痛みには、いくつもの理由があり、そのぶん立て直す方法もいくつもあるということです。痛みの地図を作り、原因を見極め、体の使い方から整えていく。ちょっとした工夫で、楽になる場面はまだまだあります。
肩や腰の痛みでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。痛みの背景にある原因を、一緒に丁寧に見極めていきます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。痛みの原因はパーキンソン病だけとは限りません。気になるときは、必ず医療機関にご相談ください(最終確認日:2026年8月27日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Riley D, Lang AE, Blair RD, Birnbaum A, Reid B. Frozen shoulder and other shoulder disturbances in Parkinson’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1989;52(1):63-66.(肩の愁訴・フローズンショルダーがパーキンソン病群で有意に多く、診断の0〜2年前から始まっていたと報告。第1エビデンスボックスの出典)
- Broetz D, Eichner M, Gasser T, Weller M, Steinbach JP. Radicular and nonradicular back pain in Parkinson’s disease: a controlled study. Mov Disord. 2007;22(6):853-856.(腰痛の有病率がパーキンソン病群74%・対照群27%と報告。第2エビデンスボックスの出典)
- Nebe A, Ebersbach G. Pain intensity on and off levodopa in patients with Parkinson’s disease. Mov Disord. 2009;24(8):1233-1237.(薬の効果が切れる「オフ」の時間帯に痛みの強さが増したと報告。本文中の記述の参考)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)