パーキンソン病で運動する時間帯の決め方|原因と対策・自宅でできる工夫
何時にやるかより、今どれだけ動けるか。
「運動は朝がいい」「夕方は避けたほうがいい」——そんな話を耳にして、かえって迷ってしまう方は少なくありません。パーキンソン病では、一日の中で「動きやすい時間」と「動きにくい時間」が入れ替わることがあります。しくみを知り、自分の波に合わせて運動する時間を選ぶ考え方を整理します。

「今日はダメな日」ではなく。
がんばって決めた時間に運動しているのに、日によって、いや同じ日の中でさえ、できる時とできない時がある。「気合が足りないのかも」「今日は調子が悪い日なんだ」と、自分を責めてしまう方は少なくありません。
でも、知ってほしいのです。それはあなたの気合の問題ではなく、パーキンソン病そのものの特性である可能性があるということを。
パーキンソン病は、症状が一日中同じ強さで続くわけではありません。薬の効き方、睡眠、食事、疲労など、いくつもの要因が重なって、動きやすさが時間帯ごとに変化します。まずはその原因を知り、そのうえで自分に合った時間の選び方を組み立てていきましょう。運動全体の考え方はリハビリ完全ガイドにまとめています。
時間帯で変わる、5つの原因。
動きやすさの波には、いくつもの原因が重なっているのが普通です。一つに絞り込もうとせず、自分に当てはまりそうなものを確認してみてください。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| 薬の効果の波(ウェアリングオフ) | 服薬から時間が経つと効果が薄れ、次の薬までの間に動きにくくなることがある |
| 起床後のこわばり(早朝オフ) | 夜間は薬の効果が途切れやすく、朝は特に体がこわばりやすい |
| 食後の変化 | 消化に血液が使われ、眠気やふらつき・立ちくらみが出やすい |
| 一日の疲労の蓄積 | 夕方に向けて体力が落ち、動作がゆっくりになりやすい |
| 睡眠の質・体内時計 | 夜眠れていないと、翌日の動きやすさやだるさに影響しやすい |
ここで大切なのは、「なぜ動きにくいか」を知ることは、「いつ運動すればよいか」を知ることと表裏一体だという点です。次の章では、それを自分の生活の中で見える化する方法を紹介します。

STROKE LABの視点:自分の「体内リズム表」を作る。
動きやすい時間は、本やインターネットに書かれている一般論ではなく、あなた自身の記録から見つけるのが一番確実です。特別な道具は要りません。3日間、次の3ステップで記録してみてください。
ステップ1:3日間、”感じ”を記録する。朝・昼・夕方・夜の4回、動きやすさを5段階(とても動きにくい〜とても動きやすい)でメモするだけ。「歩きやすさ」「立ち上がりやすさ」など、目安になる動作を一つ決めておくと書きやすくなります。
ステップ2:服薬の時刻と並べて “見える化” する。記録した動きやすさの点数を、服薬した時刻と一緒に表にします。「薬を飲んで1時間後がいちばん動きやすい」など、自分だけのパターンが見えてきます。
ステップ3:動きやすい時間に運動を “寄せる”。見えてきたパターンに合わせて、しっかり動く運動は動きやすい時間に、軽い運動は動きにくい時間に、と使い分けます。この表は、次の受診で主治医に見せる資料としても役立ちます。
記録はスマートフォンのメモでも、カレンダーの余白でも構いません。完璧に毎日つける必要はなく、3日間だけでも十分に傾向がつかめます。合う記録の形や、パターンの読み解き方は人それぞれなので、作業療法士と一緒に振り返ると理解が深まります。

場面別・自宅でできる工夫。
記録から見えたパターンを、実際の生活の場面に落とし込みましょう。起床後・食後・夕方の3つの場面には、それぞれ共通した工夫があります。
起床後は、布団の中から始める。いきなり立ち上がって大きく動こうとせず、寝たまま手足を軽く動かす、足首を回すといった小さな動きから体を目覚めさせます。体が慣れてきたら、座って行う体操、そして立って行う体操へと段階を上げていきます。
食後は、30分〜1時間の間を置く。食後すぐは立ちくらみやふらつきが出やすい時間です。少し休んでから軽い運動に入り、様子を見ながら強度を上げます。眠気が強く出る方は、その時間帯自体を避けて、別の時間に振り替えるのも一つの方法です。
夕方は、内容を軽くする勇気を持つ。一日の疲れが出やすい時間帯に、朝と同じ強度の運動を無理に行う必要はありません。ストレッチや呼吸を整える運動に切り替えるなど、「今日はこのくらいでいい」と割り切ることも、長く続けるための大切な工夫です。体を動かす具体的なメニューは体操・自主トレ大全を参考にしてください。
levodopa治療を受けている運動症状の変動がある方を対象にした調査では、朝いちばんの薬の効果が出るまでに時間がかかる、いわゆる早朝オフを経験する方が一定数いることが報告されています。朝に動きにくさを感じるのは、珍しいことではありません。
限界:この報告は通院中の患者を対象にした調査であり、全てのパーキンソン病の方に当てはまるわけではありません。症状の出方や程度には個人差があります。薬の飲み方の調整は、必ず主治医と相談してください。
自宅での工夫が、今ある波に合わせて運動する時間を選ぶことだとすれば、専門施設で目指すのは、継続的な運動によって、動きにくい時間そのものを少しずつ短くしていくアプローチです。組み立ては大きく3つの方向からです。
1. 構造化された有酸素運動。決まった頻度・強度で継続的に体を動かすプログラムを通じて、運動機能そのものの底上げをねらいます。
2. リズムを使ったキューイング。音楽や一定のリズムを取り入れた運動は、動きの開始やスムーズさを引き出す手がかりとして働くことがあります。
3. 転倒予防を組み込んだ設計。動きにくい時間帯にも安全に体を動かせるよう、バランス練習や環境調整を運動プログラムに組み込みます。
STROKE LABが軸足を置くのは、今日の運動時間を選ぶだけでなく、継続を通じて動きにくい時間そのものを減らしていくという長期的な視点です。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。
高齢のパーキンソン病の方を対象にしたランダム化比較試験では、週3回・約90分のペアダンス形式の有酸素運動を3か月続けたグループで、通常のウォーキング運動を行ったグループと比べて、日記で記録した動きにくい時間(OFF時間)や運動症状の指標が有意に改善したと報告されています。運動そのものを続けることが、時間帯ごとの波の大きさに影響しうることを示す一例です。
限界:これは対象人数が45名(完了者32名)と多くない研究であり、脱落した参加者もいます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。運動療法は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。プログラムの内容や頻度は、専門的な評価と指導のもとで検討してください。

脳リハ.comのYouTubeでは、動きにくい時間帯でも取り組みやすい、座ったままできる体操を配信しています。無理のない範囲で、その日の体調に合わせて活用してください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、体内リズム表をもとに、その方の生活リズムに合った運動の組み立てを一緒に考えます。「何時にやるか」だけでなく「どんな強度で、どんな内容にするか」まで含めて調整することで、無理なく継続しやすくなります。薬の量やタイミングの調整は主治医の役割で、私たちは生活の中での運動の側から支えます。
受診の目安は、動きにくい時間が以前より長くなってきた、転倒やふらつきが増えてきた、といったときです。これらの変化は薬の調整で改善できることもありますので、自己判断で我慢せず、神経内科で相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 運動する時間帯は、何時と決まっていますか?

Q. 薬が効いていない時間に運動してもよいですか?
Q. 朝、起きた直後に体が硬く感じるのはなぜですか?
Q. 食後すぐに運動してもよいですか?
Q. 毎日同じ時間に運動したほうがよいですか?
Q. 家族は運動の時間選びにどう関わればよいですか?
運動の時間の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。体内リズム表を一緒に作りながら、その方の生活パターンに合った運動の時間・強度・内容を組み立てます。継続を通じて、動きにくい時間そのものを少しずつ短くしていくことを目指します。薬の調整は主治医を尊重し、生活の中での運動の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
付き合い方は変えられます。

「同じ体操なのに、時間帯によってできたりできなかったりする」。この揺れに戸惑い、自分を責めてしまう方に、たくさん出会ってきました。
お伝えしたいのは、波そのものはパーキンソン病の特性であり、その波に合わせて運動を組み立てることは、立派な立て直しの戦略になるということです。動きにくい時間を否定せず、うまく付き合う方法を一緒に見つけていきましょう。
運動の時間の組み立て方でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。あなたの生活のリズムそのものを題材に、続けられる形を一緒に考えます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。運動と服薬の時間の関係で気になることは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月24日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Stocchi F, Coletti C, Bonassi S, Radicati FG, Vacca L. Early-morning OFF and levodopa dose failures in patients with Parkinson’s disease attending a routine clinical appointment using Time-to-ON Questionnaire. Eur J Neurol. 2019;26(5):821-826.(早朝オフの実態調査。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Kim CL, Morton D, McKay JL, Nocera JR, Huddleston D, Rafie F, Hackney ME. Three Months of Partnered Dance Aerobic Exercise Can Reduce OFF-time and Enhance Quality of Life in Older Adults with Parkinson’s Disease. medRxiv. 2025 Jul 18. doi:10.1101/2025.07.17.25331727.(3か月の運動プログラムでOFF時間が改善したという報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)