パーキンソン病で家の中の照明の工夫|原因と対策・自宅でできる工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で家の中の照明の工夫|原因と対策・自宅でできる工夫

LIGHTING AT HOME

影は迷路、光は道しるべです。

夜中、トイレへの廊下で急に足が止まる。薄暗い部屋で何かが見える気がする。パーキンソン病では、こうした場面に「光」が深く関わっていることがあります。しくみを知り、家の中の暗がりの継ぎ目を消していく、今日からできる工夫を整理します。

UPDATED2026
READ約10分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。転倒や見え方の変化には他の原因が隠れていることもあります。気になる変化は自己判断せず、神経内科で確認してください。
Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
パーキンソン病では明暗差を感じる力が弱くなりやすいことがあります
02
暗がりと明るさの継ぎ目は、すくみ足のきっかけになりやすい場所です
03
薄暗い場所では見間違いや幻視が起こりやすいことがあります
04
消さない・切らさない・照らし分ける、の3ステップで整えられます
05
転倒や幻視が増えているときは、自己判断せず神経内科へ相談を
01
Afraid Of The Dark Hallway

「暗いところが、こわい」。

A Family’s Voice
「夜中トイレに起きるたび、廊下の途中でぴたっと止まってしまうんです」

寝室を出て、暗い廊下の途中で足が動かなくなる。トイレの明かりをつけると、今度はまぶしくてふらつく。日が暮れると、部屋の隅に人がいるような気がすると本人が言い出す——。ご家族からは、こうした「夜」にまつわる困りごとをよくうかがいます。

実は、こうした場面の多くに「光の当たり方」が関わっていることがあります。原因を知れば、家の中でできる工夫はたくさんあります。

パーキンソン病の症状というと、震えや歩きにくさを思い浮かべる方が多いと思います。しかし実際には、「見え方」や「光への反応」に関わる変化も少なくありません。これは自宅の照明という、比較的整えやすい環境から対策できる部分でもあります。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な工夫を見ていきましょう。運動面のリハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Why Light Matters

光と症状の、しくみ。

パーキンソン病で照明が大切になる理由は、ひとつではありません。いくつかの原因が重なって、暗い場所での動きにくさや、見え方の変化につながっていると考えられています。代表的なものを整理します。

関わる原因 どういうことか
コントラスト感度の低下 明暗の差を感じ取る力が弱まり、段差や物の境目が分かりにくくなる
暗がりの継ぎ目とすくみ足 明るさが急に変わる場所や、狭く暗い戸口で足が止まりやすい
光への慣れの遅さ 暗い所から明るい所へ移った時、目が慣れるまでに時間がかかりやすい
見間違い・幻視 薄暗い環境や影の中で、物を見間違えたり、実際にないものが見えたりすることがある
睡眠・体内リズムの乱れ 日中の光を浴びる機会が減ると、昼夜のリズムが崩れやすくなることがある

ここで大切なのは、原因が一つではないぶん、対策も一つではないということです。「暗さそのもの」だけでなく「暗さと明るさの継ぎ目」「影」「まぶしさ」にも目を向けると、工夫の幅が広がります。次の章から、この考え方を具体的な手順にしていきます。

03
Erase The Dark Seams

STROKE LABの視点:暗がりの「継ぎ目」を消す3ステップ。

照明の工夫というと「明るくする」ことだけを考えがちですが、それだけでは不十分なことがあります。私たちが大切にしているのは、家の中にある「暗がりの継ぎ目」を消していくという視点です。次の3ステップで、動線をひとつずつ見直してみてください。

Three Steps

ステップ1:動線の暗闇を消さない。寝室からトイレまで、玄関から居間までなど、よく通る道に人感センサーライトを置きます。スイッチを探す間の真っ暗な時間そのものをなくすことがねらいです。

ステップ2:光を切らさず、影をつくらない。天井の一灯だけに頼ると、家具や体の影が濃く落ちて、それが見間違いや歩行のきっかけになることがあります。フットライトや壁付けの補助照明を足して、影が薄く広がる配置にします。

ステップ3:段差・出入口は照らし「分ける」。階段の一段一段や、部屋の出入口には、周囲より少し明るい照明やコントラストのあるテープを使い、「ここに境目がある」と分かるようにします。均一に明るくするのではなく、大事な境目だけ際立たせるのがコツです。

この3ステップは、一度に全部やろうとしなくて大丈夫です。まずは夜間にいちばん困っている一箇所(多くはトイレへの動線)から始め、少しずつ広げていくのがおすすめです。合う明るさや色味には個人差があるため、実際に本人と一緒に歩いて確かめながら調整すると失敗が少なくなります。

04
Room By Room

場所別、照明の工夫。

3ステップの考え方を、場所ごとの具体策に落とし込んでみましょう。生活の中でよく使う動線から優先的に整えるのがおすすめです。

場所 工夫の例
寝室〜トイレの廊下 足元の人感センサーライト。まぶしすぎない暖色系の常夜灯で、目が慣れる時間を短くする
玄関・戸口 扉の内外で明るさの差が急に出ないよう、両側にセンサーライトを設置する
階段 踏み面の縁にコントラストテープ、上りきり・下りきりの位置に手元灯を追加する
トイレ・浴室 立ち上がってすぐの動作に対応できるよう、入室と同時に点灯するセンサー式にする
居間・寝室 一灯だけに頼らず複数の光源で影を減らす。夕方以降は暖色系にして就寝への切り替えを助ける

床の模様やつやのある素材は、光の反射によって段差のように見えてしまうことがあります。可能であれば、動線上のマットや敷物はシンプルな単色にし、光が乱反射しにくい状態にしておくのも工夫のひとつです。体を大きく動かす練習とあわせて、生活の土台を整えていくと、動きやすさにもつながります。体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。

Evidence
視覚の合図を使った練習で、自宅での歩行の乱れが和らいだ研究

パーキンソン病の方を対象に、床に引いた線などの視覚の合図(キュー)を使った練習を自宅で行った無作為化比較試験(RESCUE試験)では、練習を行った群で歩行速度や歩幅などの指標が改善し、日常生活での移動のしやすさにもつながったと報告されています。視覚の手がかりを環境側から整えることが、歩行の乱れに対する一つのアプローチになりうることを示しています。

限界:この研究は床の線を使った意図的な合図の効果を検証したもので、家庭内の照明そのものを直接評価したものではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。照明の工夫は、歩行訓練や薬物治療の代わりになるものではありません。

出典:Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140
暗闇を消さない。影をつくらない。境目だけを、照らし分ける。

ここまでは、自宅でできる環境の工夫でした。専門施設では、その先の歩行そのものへのアプローチまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
環境を整える段階から、環境が変わっても崩れにくい歩き方へ。

照明の工夫が環境側からすくみ足のきっかけを減らす代償だとすれば、専門施設で目指すのは、暗がりや戸口といった苦手な場面でも歩行が崩れにくい状態に近づける回復的アプローチです。すくみ足への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. 多様なキューイング。視覚の合図だけでなく、聴覚(一定のリズム)や体性感覚の合図も組み合わせ、その人にいちばん効く合図を見極めます。

2. 苦手な場面を想定した歩行練習。戸口をくぐる、方向を変える、暗い場所を通るなど、実際に困る場面を安全な環境で繰り返し練習します。

3. 姿勢とバランスの土台づくり。すくみ足が起きたときに転倒につながらないよう、姿勢の立て直しやバランス反応を高めておきます。

STROKE LABが軸足を置くのは、環境の工夫で安全を確保しながら、少しずつ苦手な場面そのものに慣れていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Watch & Practice
バランスと歩行の体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、姿勢やバランスを整える体操を配信しています。環境を整えることとあわせて、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

バランスの体操を見る

05
Hallucinations, Sleep & When To See A Doctor

幻視・睡眠との関わりと、受診の目安。

薄暗い環境で、実際にはないものが見える幻視や、物を見間違える錯視は、パーキンソン病の方に比較的よくみられる症状です。部屋を明るく保ち、影ができやすい家具や柄物を減らすことは、環境側からできる工夫のひとつです。ただし、幻視の頻度や内容が急に変わったときは、薬の影響や他の要因が関わっていることもあるため、自己判断で様子を見続けず、主治医に相談してください。

また、パーキンソン病では昼夜のリズムが乱れやすく、日中の眠気や夜間の不眠につながることがあります。日中にカーテンを開けて自然光を取り入れる、決まった時間に明るい場所で過ごすといった工夫は、生活リズムを整える助けになると考えられています。

Evidence
時間を決めた光療法で、日中の眠気が改善した研究

パーキンソン病に伴う日中の強い眠気や睡眠の問題を対象に、時間を決めて明るい光を浴びる光療法を検証した無作為化比較試験では、光療法を行った群で日中の眠気の指標が改善したと報告されています。光の当たり方が、動きだけでなく睡眠や覚醒のリズムにも関わることを示す研究のひとつです。

限界:光療法は専門的な機器と時間帯の管理を前提とした研究であり、家庭の照明を明るくするだけで同じ効果が得られるとは限りません。効果には個人差があり、症状や体調によって適した方法は異なります。睡眠の問題が続く場合は、自己判断せず主治医に相談してください。

出典:Videnovic A, et al. Timed Light Therapy for Sleep and Daytime Sleepiness Associated With Parkinson Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2017;74(4):411-418

受診の目安は、転倒やすくみ足が増えてきた、幻視の頻度や内容が変わってきた、睡眠の乱れが日常生活に影響しているといったときです。照明の工夫は生活の土台を整える手段であり、原因の見極めや薬の調整に代わるものではありません。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. なぜパーキンソン病では、照明が特に大事になるのですか?

パーキンソン病では、コントラスト(明暗の差)を感じ取る力が弱くなりやすいこと、暗いところから明るいところへの切り替わりで足が止まりやすいすくみ足が出ること、暗がりで見間違い(錯視)や幻視が出やすいことなどが知られています。どれも光の当たり方に影響を受けるため、照明を整えることは有効な工夫のひとつです。

Q. 廊下やトイレへの道ですくみ足が出やすいのですが、照明でできることはありますか?

暗がりから明るい場所へ切り替わる境目や、影で床の境界が分かりにくい場所は、すくみ足のきっかけになりやすいと考えられています。廊下や寝室からトイレまでの動線に人感センサーライトを置き、暗闇の継ぎ目をなくすことが工夫のひとつです。段差や扉の縁にテープなどでコントラストをつけるのも助けになります。

Q. 夜、暗い部屋で人影のようなものが見えると本人が言います。これは何でしょうか?

パーキンソン病では、暗がりや薄暗い環境で、実際にはないものが見える幻視や、影や物を見間違える錯視が起こることがあります。部屋の照明を確保し、影ができやすい家具や模様を減らすことは工夫として有効ですが、頻度が増えている場合は薬の影響が関わることもあるため、自己判断せず主治医に相談してください。

Q. 自宅でできる照明の工夫を教えてください。

動線上の暗がりをなくす人感センサーライト、天井の一灯だけでなく複数の灯りで影を減らす配置、階段や段差に照らし分けやコントラストをつける、夜間はまぶしすぎない暖色系の常夜灯を使う、といった工夫があります。場所ごとに困っている場面を思い浮かべながら、少しずつ整えていくのがおすすめです。

Q. 照明を整えると、動きやすさや睡眠にも関係しますか?

光を使った合図(視覚のキュー)が歩行の乱れを和らげたという報告や、日中に適切な光を浴びる工夫が睡眠のリズムに関わる症状の改善につながったという報告があります。ただし効果には個人差があり、照明の工夫は薬や専門的な治療の代わりになるものではありません。生活の土台を整えるものとして取り入れてください。

Q. 照明を工夫しても転びやすさが心配です。専門家に相談したほうがよいですか?

はい、おすすめします。照明の工夫は転倒リスクを下げる一つの手段ですが、歩き方や筋力、生活動線全体を見た調整が必要な場合もあります。転倒が増えている、すくみ足の頻度が上がっている、といった変化があるときは、神経内科の受診とあわせて、リハビリの専門職に相談することをおすすめします。
07
STROKE LAB

生活環境の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。ご自宅の間取りや、実際に困っている場面をうかがいながら、照明を含めた生活環境の工夫と、歩行そのものへのアプローチを組み合わせてご提案します。薬の調整は主治医を尊重し、私たちは動作と環境の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
廊下の電球を1つ増やすだけで、
夜が変わることがあります。
STROKE LAB代表 金子唯史

夜中にご本人が転ばないか、ご家族が眠れずに耳をすませている——そんなお話を、これまで何度もうかがってきました。「気をつける」だけでは、不安は消えません。

お伝えしたいのは、家の中の暗がりの継ぎ目を一つ消すだけで、動きやすさも、見え方の不安も、驚くほど変わることがあるということです。光は、薬とは違う角度から、生活を支えてくれる味方になります。

照明や動きにくさでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。ご自宅の間取りを一緒に見ながら、その方に合う工夫を見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。転倒や見え方の変化には他の原因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月22日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140.(自宅での視覚キューを用いた練習が歩行関連の指標を改善したと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
  • Videnovic A, et al. Timed Light Therapy for Sleep and Daytime Sleepiness Associated With Parkinson Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2017;74(4):411-418.(時間を決めた光療法が日中の眠気の指標を改善したと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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