急性弛緩性脊髄炎(AFM)|突然の手足の麻痺とリハビリ
急性弛緩性脊髄炎(AFM)|突然の手足の麻痺とリハビリ
風邪のような症状のあと、腕や脚に急に力が入らなくなる。AFMはまれですが、早い医療評価が必要な病気です。その後のリハビリでは、筋力を一括りにせず、筋ごとの回復差を生活へつなぐ視点が重要になります。

突然の脱力は、すぐ医療機関へ。
AFMでは、腕や脚の力が数時間から数日のうちに急に低下します。力が抜けたように見え、筋肉の張りや反射も弱くなります。
首を支えにくい、顔やまぶたが下がる、飲み込みにくい、声が弱い、息苦しい。こうした症状は呼吸や嚥下に関わるため、様子を見ずに受診してください。
AFM以外にも、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎、脊髄の圧迫、子どもの脳卒中などで似た症状が起こります。診断、薬物治療、呼吸管理は医療機関の領域です。
AFMは、運動の出口に近い部分を傷つける。
AFMは、脊髄の灰白質、特に筋肉へ運動指令を送る前角細胞周辺が障害される病気です。脳で考えた運動を筋肉へ届ける出口が弱くなるため、弛緩性の麻痺が現れます。
発症前に発熱や呼吸器・消化器症状がみられる例が多く、非ポリオエンテロウイルスなどとの関連が考えられています。ポリオに似た麻痺を示しますが、AFMとポリオは同じ病名ではありません。

回復は、子どもごと、筋ごとに異なる。
同じ腕でも、指は動くのに肩が上がらない。脚でも、足首は動くのに立ち上がりで膝が支えられない。このような回復のばらつきがAFMの特徴です。
小児の報告では、上肢の遠位筋よりも、肩や上腕など近位筋の弱さが残りやすい傾向が示されています。ただし経過の幅は大きく、早い段階だけで将来を決めることはできません。
重力に逆らうと動かなくても、横向きや腕を支えた条件では筋収縮が現れることがあります。残された運動を見つけることが、次の練習設計につながります。
研究は回復を示す。ただし、方法の優劣はまだ決められない。
小児のリハビリ研究では、筋力や移動、セルフケアが改善した例が報告されています。一方、研究の多くは少人数の観察研究で、特定の訓練法が他より優れていると断定できる段階ではありません。
家庭では、無理に回数を増やすより、痛みや疲労を記録し、関節が硬くならない姿勢と、できる生活動作を守ることが基本です。学校では、移動距離、机の高さ、荷物、休憩、介助方法を共有します。
リハビリで機能が変化する可能性はありますが、回復には個人差があります。薬物治療や手術の代わりではなく、主治医による医学的管理と並行して行います。
専門施設で、さらに期待できること。
肩、肘、手首、指を一括りにせず、重力下、免荷、支持ありの条件で確認します。筋収縮、関節可動域、痛み、感覚、呼吸、疲労を重ね、動かしやすい入口を探します。
何回できたかだけでなく、何回目から肩をすくめる、体幹を傾ける、膝が崩れるかを見ます。休憩後の戻り方や翌日の疲労も含め、反復量と支持量を調整します。
腕を支える道具、子どもの装具、車いす、机の高さ、動作手順を組み合わせます。評価の終点は筋力ではなく、食事、着替え、移乗、歩行、書字、体育で参加できるかです。
| 生活上の困りごと | 専門的に確認すること | 生活での再評価 |
|---|---|---|
| 指は動くが腕が上がらない | 肩・肘の筋出力、支持条件、代償 | 食事、整容、本を押さえる |
| 立てるが膝が崩れる | 股・膝・足部の支持と装具条件 | 移乗、教室移動、段差 |
| 午後に動きが崩れる | 反復後の質、呼吸、休憩後の回復 | 授業配置、休憩、帰宅後の疲労 |

神経移行術などが検討される場合も、術前・術後の評価と訓練は専門医療機関との連携が前提です。特定の手技を万能に見せず、その子の残存機能と生活目標から方法を選びます。
よくある質問
医療と生活の間を、動作分析でつなぐ。
STROKE LABは、脳・脊髄などの神経疾患を対象とする自費リハビリ施設です。AFMの急性期診断や薬物治療は行いません。主治医の方針を尊重し、残された運動、代償、疲労、生活環境を評価して、家庭・学校・専門家で連携できる使い方を組み立てます。
生活へ戻す道筋に。

AFMでは、昨日までできていた動きが突然難しくなり、ご本人とご家族に大きな不安が生まれます。
私たちは、残っている小さな運動を見つけ、生活で使える形へつなぐことを大切にしています。回復を急がせるのではなく、正確さ、疲労、環境を見ながら段階を組みます。
医療機関と連携しながら、家庭・学校で何を優先するかを一緒に整理していきます。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。運動麻痺を「動かない」で終わらせず、姿勢・感覚・運動の連鎖として見る視点は、お子さんの回復を支えるうえでも土台になります。
本記事は公的情報と小児AFMの観察研究をもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。最終確認日:2026年7月13日。
- Centers for Disease Control and Prevention. Clinical Overview of AFM. 2024.
- Centers for Disease Control and Prevention. Clinical Guidance for the Acute Medical Treatment of AFM. 2024.
- Gordon-Lipkin E, et al. Comparative quantitative clinical, neuroimaging, and functional profiles in children with acute flaccid myelitis at acute and convalescent stages of disease. Dev Med Child Neurol. 2019;61(3):366-375.
- Melicosta ME, et al. Acute flaccid myelitis: Rehabilitation challenges and outcomes in a pediatric cohort. J Pediatr Rehabil Med. 2019;12(3):245-253.
- Marchese DL, et al. Rehabilitation Outcomes in Children With Acute Flaccid Myelitis From 2014 to 2019: A Multicenter Retrospective Review. Pediatr Neurol. 2023;147:41-47.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)