小児脳腫瘍の手術後の運動麻痺|片麻痺・失調とリハビリ – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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小児脳腫瘍の手術後の運動麻痺|片麻痺・失調とリハビリ

PEDIATRIC BRAIN TUMOR REHABILITATION

小児脳腫瘍の手術後|片麻痺・失調・疲労を、部位と動作から見る

「歩けるようになったのに、すぐ転ぶ」「右手は動くのに、食事や着替えでは使わない」「午前中はできるのに、午後になると崩れる」。術後の動きは、筋力だけでは説明できません。腫瘍・手術部位、失調、麻痺、眼球運動、感覚、治療関連疲労を分けて見ることで、次に選ぶ支援が変わります。

UPDATED2026
READ約16分
FORお子さんの保護者へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』(2024年・408頁)の著者が執筆しています。本記事では、腫瘍の診断や治療方針ではなく、手術・治療後にみられる運動麻痺、失調、疲労を生活動作へつなげる視点を解説します。診断、再発評価、画像、薬、放射線・化学療法、シャント管理は治療病院が担います。新しい症状や急な悪化は、リハビリより医療機関への連絡を優先してください。

バランス課題

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
術後の症状は、腫瘍・手術の部位と治療経過によって大きく異なります
02
歩けるかだけでなく、方向転換・階段・二重課題・疲労後を確認します
03
小脳性失調と筋力低下では、課題の組み立て方が異なります
04
急な悪化、頭痛・嘔吐、けいれん、意識変化は医療機関が優先です
05
目標は訓練室の動作ではなく、登校・更衣・食事・遊びへ戻すことです
01
After Surgery

術後の「動きにくさ」は、一つの原因ではない。

小児脳腫瘍の手術後には、片麻痺、ふらつき、手足の狙いのずれ、眼球運動の問題、嚥下・構音の問題、疲れやすさなどが現れることがあります。腫瘍そのものの影響だけでなく、手術、水頭症、放射線治療、化学療法、長期臥床、薬剤、内分泌の変化など、複数の要因が重なる可能性があります。

そのため、術後の歩行が不安定だからといって、すぐに「脚の筋力不足」と決めません。どの条件で、どの方向へ、何回目から崩れるのかを確認し、失調、麻痺、感覚、視覚・前庭、疲労の関与を整理します。

02
Location And Function

部位によって、現れやすい運動障害が異なる。

主な部位 現れ得る問題 動作で確認する視点
大脳半球 片麻痺、感覚障害、視野・注意の問題、けいれん 左右差、片手と両手、足の振り出し、視野と空間探索
後頭蓋窩・小脳 体幹・四肢の失調、測定障害、構音、眼球運動 座位と立位、支持の有無、速度、方向転換、頭部運動
脳幹周辺 眼球運動、顔面、嚥下、声、姿勢制御 視線固定、頭と体の協調、食事、呼吸、疲労
視床下部・下垂体周辺 視覚・視野、内分泌、体温・睡眠・体力への影響 時間帯、活動耐容能、視覚条件、医学的管理との連携

部位から症状を予測することは大切ですが、画像だけで介入を決めることはできません。同じ後頭蓋窩腫瘍術後でも、体幹失調が中心の子、眼球運動の影響が大きい子、疲労で変動する子では、支援条件が異なります。

小児腫瘍術後の部位別マップ

03
Medical Priority

新しい症状・急な悪化は、リハビリで様子を見ない。

慢性期であっても、新しい症状や一度改善した機能の急な低下は、単なる運動不足と判断しません。再発・増悪、水頭症、シャントの問題、出血・梗塞、感染、晩期合併症などの医学的評価が必要になる場合があります。

主治医・治療病院への連絡を優先する変化
  • 新しい頭痛、繰り返す嘔吐、強い眠気、意識や反応の変化
  • 新しいけいれん、急に強くなった麻痺やふらつき
  • 視力・視野・斜視・眼球運動の変化
  • それまでできていた歩行・食事・会話などの急な低下
  • シャントがある場合の発熱、機嫌不良、挿入部の発赤・腫れ
04
Movement Assessment

「できる・できない」ではなく、崩れる条件を評価する。

歩行は、直線を数歩歩けるかだけでは評価できません。速度を変える、曲がる、止まる、頭を動かす、物を持つ、話を聞く、疲れた後に歩くといった条件で反応を比べます。

Observation 01
体幹を支えると、手のずれが減るか
骨盤・体幹支持ありとなしで到達運動を比べ、近位制御と上肢失調の関係を確認します。
Observation 02
最初の3回と10回後でどう変わるか
誤差が学習で減るのか、反復で疲労し崩れるのかを見て、練習量と休憩を決めます。

上肢では、関節が動くかだけでなく、対象を見つける、手を運ぶ、つかむ、力を調整する、両手で役割を分けるところまで評価します。座位ではできても立位で乱れる場合、手だけでなく姿勢制御の負荷が関係します。

05
Evidence And Limits

研究でわかっていることと、限界。

Evidence
後頭蓋窩腫瘍の経験者では、特にバランスを含む身体機能の低下が残ることがある

小児後頭蓋窩腫瘍経験者を対象とした研究では、身体機能の低下が報告され、とくにバランスの課題が目立ちました。歩行が可能でも、走行、方向転換、片脚支持、両側協調などに困難が残る可能性があります。

限界:単施設の横断研究であり、腫瘍種・治療・年齢の違いがあります。個人の経過を予測する研究ではありません。

Evidence
運動介入は実施可能性が示されるが、標準的な方法を断定できる研究量ではない

小児脳腫瘍の運動介入に関する系統的レビューでは、体力や一部の認知・身体指標への可能性が検討されています。一方、研究数と対象数は限られ、プログラムも多様です。疾患・治療状況に応じた医学的安全確認が前提です。

限界:失調や片麻痺に対する特定の手技の優越性を示す根拠ではありません。研究結果を個別介入へ直接当てはめず、反応を再評価します。

06
At Home

家庭では、安全と活動量の「波」を記録する。

家庭で大切なのは、無理に回数を増やすことではありません。時間帯、治療日、睡眠、食事、活動前後の疲れ、転倒、休憩後の回復を短く記録します。活動量の波が見えると、主治医への相談やリハビリの負荷調整に役立ちます。

成功して終える
崩れが強くなる前に休憩し、良い動きを数回経験して終えます。失敗の反復を練習量とは考えません。
医学的要因を共有する
薬、内分泌、貧血、感染リスク、シャントなどは主治医へ。自費リハで治療判断は行いません。
From Home To Specialist Care
家庭で負担を減らす工夫から、評価にもとづく介入設計へ。

ここまでは、家庭で転倒や過負荷を減らし、活動量の波を把握する工夫です。専門施設では、片麻痺・失調・眼球運動・感覚・姿勢・疲労を条件別に評価し、介入候補を比較します。診断、再発評価、投薬、手術、放射線・化学療法、シャント管理は主治医・治療病院が担います。

07
Specialist Clinical Reasoning

専門施設で、さらに期待できること。

専門施設では、症状名に同じ訓練を当てはめません。評価所見→仮説→介入→その場の反応→生活での変化という因果鎖をつくり、反応がなければ仮説や条件を更新します。

困りごと 確認する評価 介入の選択 難易度・量 生活で再評価
歩くと左右へ寄る 体幹失調、足運び、眼球運動、頭部運動、感覚、疲労 支持と視覚・触覚手がかりを調整し、直線・方向転換を課題練習 支持物、速度、歩幅、頭部運動、反復数を段階化 校内移動、曲がり角、階段の介助量
片側の手を生活で使わない 麻痺、感覚、視野・注意、体幹、学習性不使用 目標物操作、両手課題、必要時の片手集中課題 物の大きさ、重さ、速度、反復、成功率を調整 食事、更衣、学用品での使用頻度
午後に歩行・注意が崩れる 治療関連疲労、睡眠、内分泌、廃用、認知疲労 短い反復、ペーシング、休憩設計、重要活動の時間配置 時間、回数、休憩、学校予定に合わせ調整 登校時間、授業後の移動、帰宅後の回復

失調への介入では、誤差を完全に消すのではなく、子どもが修正できる範囲へ調整します。支持を増やす、速度を落とす、対象を大きくする、視覚手がかりを加えることで成功率を確保し、安定したら一つずつ支援を減らします。難しすぎる課題の反復は、恐怖や代償を強める可能性があります。

片麻痺では、筋力や関節可動域だけでなく、感覚、視野・注意、体幹、両手の役割分担を確認します。「手が動くのに使わない」場合、生活課題の意味、成功率、必要な時間、周囲の手伝い方まで見直します。

術後の生活参加に向けた臨床推論マップ

Evidence
訓練室の改善と、一日の参加を分けて評価する

一回の歩行距離やバランス得点が改善しても、登校、授業、給食、階段、体育、下校を通して使えるとは限りません。STROKE LABでは、運動機能と治療関連疲労、自己効力感、学校参加を分けて追います。

限界:小児脳腫瘍術後の生活実装に関する直接的な介入研究は限られます。学校復帰計画は治療病院・学校・家族と連携し、個別に調整します。

08
Return To School

学校復帰は、「登校できた」で終わらせない。

学校では、歩くだけでなく、時間に間に合う、荷物を持つ、人を避ける、授業へ注意を向ける、休み時間に移動するという複数課題が重なります。施設で安定していても、学校では疲労や情報量によって崩れることがあります。

復帰計画では、一日のどこで機能が低下するかを確認します。段階登校、休憩場所、エレベーター、移動時間、体育の参加方法、教材量、保健室との連携などを具体化します。成長や進学、治療後の晩期合併症によって新たな課題が表れる可能性があるため、節目で再評価します。

09
Frequently Asked Questions

よくある質問。

Q. 脳腫瘍の手術後に、片麻痺やふらつきが残ることはありますか?
A. あります。症状は腫瘍や手術の部位、水頭症、治療の影響などによって異なり、大脳半球では片麻痺、後頭蓋窩・小脳では失調やふらつき、脳幹周辺では眼球運動・嚥下・姿勢制御の問題などがみられる場合があります。
Q. 歩けるようになれば、運動機能は回復したと考えてよいですか?
A. 歩行の可否だけでは十分ではありません。方向転換、階段、走行、頭を動かす、会話をする、疲労後などの条件で、左右差やふらつきが現れることがあります。生活で必要な条件まで評価します。
Q. 小脳性失調には、どのようなリハビリを行いますか?
A. 失調という診断名だけで一つの方法を選ぶのではなく、体幹、眼球運動、頭部運動、感覚、速度、疲労を分けて評価します。支持や視覚手がかりで成功率を確保し、実際の到達・歩行・方向転換課題へ段階的につなげます。
Q. 疲れやすさは、体力不足でしょうか?
A. 体力低下だけとは限りません。手術や放射線・化学療法、睡眠、薬剤、内分泌、貧血、認知疲労などが関係する可能性があります。医学的な要因は主治医へ相談し、リハビリでは時間帯・反復・休憩による変化を記録します。
Q. 学校復帰では、何を目標にしますか?
A. 登校できるかだけでなく、校内移動、授業、給食、体育、休み時間、下校後まで一日のどこで疲労や運動の崩れが起きるかを確認します。段階登校や休息、移動時間、教材調整などを学校と共有します。
Q. 術後に急いで病院へ連絡すべき症状はありますか?
A. 新しい頭痛や繰り返す嘔吐、眠気や意識の変化、新しいけいれん、急に強くなった麻痺・ふらつき、視力や眼球運動の変化、できていた動作の急な低下がある場合は主治医・治療病院へ連絡してください。シャントがある場合は、機嫌不良、発熱、シャント部の腫れや発赤なども医療相談が必要です。
10
STROKE LAB

STROKE LABの小児リハビリ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。診断・手術・投薬・画像検査などの医学的判断は主治医を尊重し、私たちは機能解剖と動作分析をもとに、生活と学習の側から併走します。医療機関でのリハビリとの併用も可能です。

Message & Clinical Backbone
不安を、
育ちに寄り添う関わりへ。
STROKE LAB代表 金子唯史

脳腫瘍の治療を乗り越えたあとも、動きや疲労への不安が続くことがあります。私たちは、「歩ける」「手が動く」という一つの結果だけでなく、どの条件なら安定し、どこで崩れるかを丁寧に見ます。

部位の知識と目の前の動作を往復しながら、子どもが再び学校・遊び・家族との外出へ参加できる条件を設計します。研究が限られる領域だからこそ、効果を断定せず、反応を測りながら仮説を更新します。

医療機関での治療とあわせて、家庭・学校での関わりを整理したい方はご相談ください。お子さんが大切にしている生活場面から、一緒に組み立てます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史
書籍『脳の機能解剖とリハビリテーション』の表紙
Book
脳の機能解剖とリハビリテーション
医学書院/2024年/408頁|脳の領域別からリハビリテーション方法を提案する専門書

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。運動を「筋力だけ」で終わらせず、姿勢・感覚・認知・環境との連鎖として見る視点は、小児リハビリの土台にもなります。

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References

本記事は、国内外の公的情報・査読研究と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、必ず主治医・関係する専門職へご相談ください(最終確認日:2026年7月12日)。

  • 日本小児がん研究グループ:小児がん治療後の長期フォローアップガイドライン.中枢神経腫瘍の神経学的合併症・水頭症管理を含む。
  • Piscione PJ, Bouffet E, Mabbott DJ, Shams I, Kulkarni AV. Physical functioning in pediatric survivors of childhood posterior fossa brain tumors. Neuro Oncol. 2014;16(1):147-155.
  • Sharma B, Allison D, Tucker P, Mabbott D, Timmons BW. Exercise Trials in Pediatric Brain Tumor: A Systematic Review of Randomized Studies. J Pediatr Hematol Oncol. 2021;43(2):59-67.
  • Kohler BE, et al. Therapeutic exercise interventions in pediatric survivors of brain cancer and other solid tumors: a scoping review. 2022.
  • 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。
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