2017.06.07上肢
vol.119:脳卒中者の肩関節痛とテーピング 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!!
カテゴリー
上肢
タイトル
脳卒中者の肩関節痛に対するテーピング -ランダム化比較試験- ?PubMed: Hanger et al, ‘A randomized controlled trial of strapping to prevent post-stroke shoulder pain.’ Clin Rehabil. 2000 Aug;14(4):370-80.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脳卒中者の肩関節痛に対し、テーピングによる予防は可能か知りたかったから
内 容
目 的
脳卒中者の肩関節にテーピングを行い、①痛みの増悪を予防、軽減できるか、②肩関節可動域を保てるか、③上肢機能を改善することができるか検討する。
方 法
・無作為化比較試験
・テーピング群49名、コントロール群49名
・最長6週間のテーピング(麻痺側90°の自動外転獲得、もしくは退院した場合は6週以下で終了)。
・非伸縮性のテープとアンダーテープを使用(図)し、亜脱臼の防止を目的として貼付した。
図:テーピングの貼り方 Hanger et al (2000)より引用
・アウトカムは感覚、痛み(SROMP、VAS)、上肢機能(Motor Assessment Scale: MAS)、FIMにて評価し、開始時、終了時(6週後)、終了時から2か月後(14週後)に計測。
※SROMP:上肢自動外転の際に疼痛が発生した角度
結 果
・どのアウトカムに対しても両群間に有意な差は見られなかった。
・終了時(6週後)、VASはテーピング群1.8、コントロール群2.5 (p=0.09)、MASはテーピング群5.5、コントロール群2.8(p=0.12)であり、有意差はないが疼痛、上肢機能はテーピング群に良好な値がみられた。
・テーピングが亜脱臼を防止したという結果は得られなかった。
・両群ともSROMPは時間の経過とともに値が低下した(より小さい外転角度でも痛みが発生するようになった)。
| 開始時 | 終了時(6週後) | 終了時から2カ月後(14週後) |
テーピング群 | 55° | 45° | 35° |
コントロール群 | 60° | 44° | 40° |
興味深かったこと
・今回テーピングによる疼痛予防効果や機能改善はあるとはいえず、非麻痺側外転時の痛みは時間の経過とともに悪化していた。原因として①テーピング自体が亜脱臼を防止できていなかった、②亜脱臼が痛みの原因ではなかった、が考えられる。①ではテーピング後にX線などで亜脱臼が整復されたかは検証されておらず、筆者もテーピングが適切だったか疑問視していた。②では亜脱臼以外の肩関節痛の原因として、筋緊張異常、肩甲骨内転、感覚低下、身体失認、関節不動や不良なハンドリングなどが挙げられており、これらの因子の影響を考慮する必要があると思われる。
明日への臨床アイデア
・麻痺側肩関節の痛みを亜脱臼と決めつけず、原因を精査し対応していきたい。
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします