vol.96:脳卒中患者の骨盤のアライメントと歩行の関係 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学系
タイトル
脳卒中患者における骨盤のアライメントと歩行能力の関係Correlation between balance and gait according to pelvic displacement in stroke patients?PMCへSeon Woong Kong et al.(2015)
はじめに
●骨盤は全体的な姿勢の重要な要素です。脊柱と下肢をつなぎ、座位で荷重を受けたり、立ち上がり時など脊柱から下肢に体重を移すのを助ける役割を果たす。
●骨盤~下肢間のマルアライメントは、下肢および体幹の安定性に影響し、正常歩行を困難にします。 骨盤傾斜エクササイズは、脳卒中患者におけるバランスと歩行能力を阻害している非対称骨盤に対して良好な影響を与えます。
●左右の骨盤傾斜の差が多様な臨床症状を引き起こすことが報告されている。したがって、このような骨盤傾斜の差と歩行とバランスの相関に関する研究が必要である。
【目的】
●研究目的は、脳卒中患者の骨盤変位に応じたバランスと歩行の相関を調べることであった。
【参加者】
●本研究の対象は、入院した58人の脳卒中患者でした。(25人の左片麻痺患者と33人の右片麻痺患者)
【方法】
●骨盤のアライメントは、Global Postural System(GPS)を用いて測定した。デジタルカメラを用いて被験者を撮影しました。その後、写真を使用してアライメントを分析しました。信頼性を向上させるために、測定を3回行い、平均値を分析に使用しました。
●バランス能力を測定するために、Tetraxバランスシステムを用いて荷重配分の指数および安定性の指数を測定しました。被験者の体重分布指数(WDI)および安定性指数(SI)を、目を開閉して測定しました。Tetraxバランスシステムは、4つの独立したフォースプレートで構成されています。 4つのフォースプレートは、左右の足の前足および後足の垂直圧力の変化を測定します。
●歩行能力は、10m歩行テストおよびFigure-of-8 Walk Testの間に測定されました。
●歩行時の方向転換能力を測定するために、Figure-of-8 Walkテスト(F8WT)を使用しました。全長1.52m、幅1.21mの2つの障害物を円内に配置しました。被験者は2つの障害の中間点に立って試験を開始した。被験者が1つの障害物を反時計回りに回り、次の障害物を時計回りに歩いてから元の位置に到達するまでの時間を測定しました。
【結果】
●本研究の結果は
1)骨盤変位の上前腸骨棘の高さの差と体重/荷重分布指数(WDI)との間に有意な正の相関があった。
2)閉眼正常位における上後腸骨棘高さの差と安定性指数(SI)に有意な正の相関があった。
3)上前腸骨棘高さの差と直進歩行能力と旋回歩行能力との間に統計学的に有意な正の相関が見られた。
●脳卒中患者における骨盤変位の増加は、バランス能力および歩行速度の低下をもたらす。これは、脳卒中患者の機能トレーニングの前に、骨盤変位の制御が必要であることを示唆している。
●骨盤変位に関して上前腸骨棘(ASIS)および上後腸骨棘(PSIS)の高さの差は、それぞれ12.9±9.8mmおよび4.8±2.5mmであった。左側のASISとPSISの高さの差は43.1±22.0mmであり、右側のASISとPSISの高さの差は39.4±21.7mmであった。
私見・明日への臨床アイデア
●骨盤周囲には多数の体幹や下肢の筋が付着している。脳卒中患者といっても、麻痺の程度により、それらの筋の状態に差が出現し、骨盤のアライメントへの影響にも差が出ると思われる。そこで、他文献では脳卒中後の立位における側方骨盤傾斜は、Brunnstrom stage下肢運動回復段階3および4の脳卒中患者において体幹コントロール能と適度に相関すると述べている。stage5では、麻痺の状態としては軽い為、特に体幹のコントロール能の個人差が骨盤の変位の程度と関係しているようである。
⇒Pelvic alignment in standing, and its relationship with trunk control and motor recovery of lower limb after stroke(2016)
•脳卒中では筋腱等の状態の変化が著明に出現する為、それらを考慮して3Dで骨盤のアライメントを捉えることが求められる。その捉えた情報を課題動作獲得とリンク付けして意味のある練習をする必要がある。
•空間的な認知や感覚障害等も考慮して検討が必要である。
臨床後記:2021/3/2更新
●臨床においても骨盤の姿勢は重要です。上肢活動時、下肢の立ち上がりや歩行時にも骨盤がしっかり起きていないとパフォーマンスが低下します。筋活動レベルで言えば、例えば座位で座骨座りできる事で大腿直筋近位やハムストの遠心的な活動と繋がりやすく、殿筋や腹部の活動等も賦活されやすくなり下肢と体幹が繋がってきます。アライメントは筋活動とも直接的にかかわるため、重要と言えます。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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●体幹の可動性と下肢のバランス影響 治療効果とは!?vol.13 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー:
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)