【2026年版】フットコアシステムと歩行の関係性とは?脳卒中・脳梗塞における足部機能と歩行リハビリを論文から徹底解説
足部内在筋の促通が、脳卒中患者の歩行を変える理由。
脳卒中後の歩行評価では下腿三頭筋や前脛骨筋に目が向きがちです。しかしフットコアシステムの視点で足部内在筋を促通することで、外在筋の過緊張が緩和され歩行効率が改善することが、RCTで示されています。本記事では理論から実践プロトコルまでを体系的に解説します。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
歩行は50m以上可能で、屋内での独歩も自立しています。しかし「歩くと足が疲れる」「なんとなく地面を蹴れない感じがある」という訴えが続いています。足関節背屈制限(患側5°)と立ち上がり時の下腿三頭筋過緊張が観察されます。
このとき、足関節ストレッチや筋力訓練だけでなく、足部内在筋への介入を検討する視点を持っていると、アプローチの選択肢が広がります。
この症例のように、歩行速度の停滞や下腿の過緊張を訴える脳卒中患者は臨床でよく出会います。下腿・足関節の問題に見えても、その根底に足部内在筋の機能低下が潜んでいることがあります。
「フットコアシステム(Foot Core System)」という概念はまだ日本の臨床でも浸透しきっていません。この記事を通じて、新人セラピストの皆さんに「足部から歩行を変える」視点を身につけてほしいと思います。
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フットコアシステムの定義と疫学。
「フットコアシステム(Foot Core System)」とは、McKeon et al.(Br J Sports Med, 2015)が提唱した概念です。体幹の「コアスタビリティ」と同じ構造で、足部内在筋が縦・横アーチを動的に安定させ、外在筋の効率的な張力伝達を可能にする機能単位のことを指します。
体幹コアは「腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群が脊柱を安定させる機能単位」として知られています。フットコアシステムはその足部版です。足部内在筋が内側縦アーチを動的に支持し、歩行時の衝撃吸収とエネルギー伝達を担います。
足部内在筋が弱化すると、外在筋(下腿三頭筋・前脛骨筋など)が過代償として過緊張を起こします。これが脳卒中後患者で観察される下腿の「使いすぎ感」や疲労感の一因となりえます。
足部内在筋の4層構造
足部の内在筋は足底・足背の計4層に分布し、それぞれ異なる役割を担っています。主要な内在筋は以下の通りです(エビデンスレベル:解剖学的知見・強く推奨)。
母趾外転筋・短趾屈筋・小趾外転筋。歩行時の足趾離地(toe-off)と内側縦アーチの初期安定に関与します。
足底方形筋・虫様筋(4本)。長趾屈筋の作用を修正し、足趾の方向を矢状面に合わせる調整機能を持ちます。
短母趾屈筋・母趾内転筋・短小趾屈筋。母趾のMP関節安定と横アーチ維持に重要です。SFEで直接促通される主要ターゲットです。
底側・背側骨間筋(計7本)+短趾伸筋・短母趾伸筋。足趾の内外転と中足趾節関節の安定に関与します。
神経メカニズムと機能解剖。
なぜ足部内在筋の促通が、下腿外在筋の過緊張を緩和するのでしょうか。その機序を理解することで、介入の根拠がより明確になります。


イメージとしては「橋の構造」が参考になります。アーチ(拱橋)は支柱がしっかりしていれば、上を走る車(外在筋の張力)は少ない力で効率的に進めます。しかし支柱(内在筋)が弱いと、橋全体がたわみ、支えるために余計な力が必要になります。
脳卒中後は上位運動ニューロン障害により、足部内在筋の随意制御が低下します。結果として内側縦アーチが動的に不安定となり、代償として下腿三頭筋・前脛骨筋が過剰収縮します。
ウィンドラス機構との関係
「ウィンドラス機構(Windlass Mechanism)」とは、足趾背屈時に足底腱膜が緊張し、アーチが高まる現象です。歩行の蹴り出し相(pre-swing)で自動的に作動します。
足部内在筋が機能不全になると、このウィンドラス機構の効率が低下します。母趾のMP関節が適切に背屈しにくくなり、蹴り出し時のエネルギー伝達が不十分になります。
研究概要:Headlee DL et al. Gait Posture. 2008;28(3):524-528. 足部内在筋を選択的に疲労させると、ナビキュラードロップ(舟状骨降下量:内側縦アーチの指標)が有意に増大することを示した。
臨床的含意:内在筋の機能低下がアーチ崩壊に直結することを実証。脳卒中後に内在筋の随意制御が低下している患者では、同様のアーチ不安定が起こりうることを示唆しています。(エビデンスレベル:観察研究)
鑑別評価:足部機能不全の識別。
脳卒中患者の足部問題は一様ではありません。SFEの適応を判断するためには、足部機能不全の種類を鑑別することが重要です。以下の3つのパターンを整理してください。
| 評価項目 | 内在筋弱化型 (SFEの主適応) |
痙性尖内反足型 | 構造的扁平足型 |
|---|---|---|---|
| 歩行の特徴 | 蹴り出し弱化・下腿疲労感 | 内反・尖足・クリアランス低下 | 回内・扁平・疼痛 |
| 痙縮の程度 | 軽度〜中等度(MAS 0〜1+) | 中等度〜重度(MAS 2〜4) | なし〜軽度 |
| アーチ形態 | 軽度低下・荷重時に変化 | 高アーチ(内反尖足) | 著明な低下・構造的扁平 |
| SFEの適応 | ◎ 主適応 | △ 痙縮管理後に検討 | △ 装具・徒手と併用 |
| 主な介入 | SFE + 歩行訓練 | ストレッチ・AFO・促通 | インソール・SFE補助的 |
評価方法と評価指標。
SFEを導入する際は、介入前後の比較が可能な客観的指標を必ず記録します。Paul Lee et al.(2016)で使用されたアウトカム指標を中心に解説します。
SFEの介入手順とエビデンス。
Paul Lee et al.(2016)の研究で行われた介入プロトコルを、臨床で再現可能な形に整理しました。介入群は一般的理学療法に加えてSFEを追加実施しています。
SFEの実施手順(4ステップ)
端座位で両足部を床に平置きします。膝関節90°屈曲・足関節中間位を目標にします。患者に「足裏全体が床につくように」と指示します。踵・母指球・小指球の3点接地を確認します。
全足趾を軽く伸展(背屈)させます。このとき足趾が床から離れる程度で十分です。足趾が「グー」にならないよう注意します。IP関節(趾間関節:足趾の第1・2関節)は伸展位を保ちます。
IP関節伸展位を保ったまま、母趾のMP関節(中足趾節関節:足趾の付け根の関節)を屈曲方向に等尺性収縮させます。「足の裏のアーチを吸い上げるイメージ」が患者に伝わりやすいです。踵と母指球は床から離さないよう指示します。
コントロール群(一般的理学療法)の内容:立位評価・足部モビライゼーション・筋促通・立位アライメント調整。介入群:上記にSFEを追加。共通プロトコル:1回90分×週5回×6週間(計30セッション)。
研究の結果
Paul Lee et al., NEUROTHERAPY 2016 — 凡例:CEG:一般的理学療法群、SFE:Short Foot Exercise群、Affected:麻痺側、Non-affected:非麻痺側、GCM(M):下腿三頭筋内側頭、GCM(L):下腿三頭筋外側頭、TA:前脛骨筋
対象:34名の脳卒中患者(1年以内に再発なし、50m歩行が可能、他の神経学的問題なし)を無作為に2群に割り付け。
主要結果:SFE群では一般的理学療法群と比較して、立ち上がり時の下腿三頭筋(内外側頭)および前脛骨筋の筋張力が有意に低下。10m歩行速度と足関節背屈ROMが有意に改善。
機序の考察:足部内在筋の促通により安定したアーチが形成され、少ない外在筋収縮でも効率的に張力が伝達されたと推察。これが下腿筋の過代償を軽減し、歩行効率を高めた。
エビデンスレベル:RCT(ランダム化比較試験)。サンプル数が少ない点は限界だが、現時点で脳卒中患者へのSFE適用を支持する重要な根拠となっている。
本研究で特に興味深いのは、足部内在筋促通が足関節背屈ROMの改善をもたらした点です。これは、内在筋のアーチ安定化が下腿三頭筋の筋緊張を緩和し、関節可動域練習としても機能することを示唆しています。
背屈制限のある患者に対して、従来のストレッチに加えてSFEを組み合わせることで、より効果的なROM改善が期待できます。

STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。足部内在筋への介入を含む包括的な歩行プログラムで、患者様一人ひとりの回復をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
多職種連携と環境調整。
足部内在筋への介入は、PT単独で完結するものではありません。OT・看護師・医師などと連携することで、訓練効果が生活場面に般化されます。
各職種の役割分担
| 職種 | 役割 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| PT(理学療法士) | 中心的役割 | 足部詳細評価・SFE指導・歩行訓練への統合・プログラム進捗管理 |
| OT(作業療法士) | 生活場面への般化 | ADL動作時の足部使い方の指導・適切な靴・インソールの選定アドバイス・自主練習プログラムの作成 |
| 看護師 | 足部管理・モニタリング | 足部皮膚状態の観察(特に糖尿病合併例)・浮腫のモニタリング・病棟での自主練習の声かけ |
| 医師 | 痙縮管理・適応判断 | 痙縮の程度評価・SFE適応の最終判断・装具(AFO等)処方の相談窓口 |
| MSW | 社会資源の調整 | 退院後の歩行訓練継続のための通所リハ・訪問リハの調整・自主練習継続を支える福祉用具の検討 |
環境調整のポイント
「靴の中での足の動きを考えずにSFEだけを繰り返しても、歩行での般化が不十分になります。適切な靴(踵カウンターがしっかりしたもの)と組み合わせることで、トレーニング効果を歩行場面に活かせます。」
「過体重の患者では、内在筋だけでは足部の構造的変化を抑えきれないことがあります。インソールや装具との組み合わせを医師・OTとともに検討してください。」
「病棟での自主練習として、椅子に座った状態でのSFEを看護スタッフに伝えておくと、セラピー外の時間も訓練量を確保できます。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
SFEはシンプルに見えますが、新人セラピストが見落としやすい落とし穴があります。先輩から後輩へ伝えたい3つのポイントをまとめます。
臨床判断の分岐点
「最初に『この患者さん、SFEできるかな?』と思ったとき、まず足趾を自分でゆっくり伸展できるか確認してみてください。できなければ、まず痙縮への介入が先です。」
「SFE中にアーチが挙上されているかを確認するには、患者の足背側から舟状骨(足甲の内側の骨の出っ張り)が少し盛り上がるかを視るとわかりやすいです。」
予後とゴール設定。
Paul Lee et al.(2016)の研究では、6週間のSFEプログラム後に以下の変化が確認されました。これをベースに現実的なゴールを設定する指針を示します。
①歩行速度の改善(10mWT):SFE群でコントロール群より有意な改善が確認されました。速度の数値的な改善幅は個人差がありますが、臨床的に意味のある改善が期待できます。
②足関節背屈ROMの向上:内在筋促通による下腿三頭筋緊張の緩和を介したROM改善が期待されます。
③立ち上がり時の筋張力低下:下腿三頭筋(内外側頭)・前脛骨筋のEMG活動が有意に低下。下腿の「疲れやすさ」の軽減が患者の主観的評価にも反映される可能性があります。
ゴール設定の際は、「6週間で速く歩けるようになる」という数値目標だけでなく、「下腿の疲労感が軽減し、より長距離を歩ける」という患者が実感できる目標も併せて設定しましょう。患者のモチベーション維持につながります。
よくある質問(新人臨床家の疑問)。
端座位で足部を床に置き、足趾を伸展(IP関節伸展位)させながら内側縦アーチを挙上するよう母趾MP関節を等尺性収縮させる運動です。
「足趾を曲げる」運動ではなく「足裏のアーチを吸い上げる」感覚が正しいです。足趾が「グー」になってしまう場合は外在筋が優位になっているので、鏡などで視覚フィードバックを行いながら修正します。
適切な対象者選定のもとで安全に実施できます。Paul Lee et al.(2016)の研究では、50m歩行が可能で1年以内に再発のない脳卒中患者34名を対象に有害事象なく実施されました。
重度の痙縮(MAS 2以上)・感覚消失・足部整形外科的問題がある場合は適応を慎重に判断してください。まず担当医師と相談したうえで導入を検討します。
Paul Lee et al.(2016)では1回90分・週5回・6週間(計30セッション)のプログラムで、歩行速度・足関節背屈ROM・下腿筋張力に有意な改善が確認されました。
臨床的には6週間を効果判定の目安にすることが推奨されます。ただし外来や通所では頻度が少ないため、自主練習の徹底がより重要になります。
内在筋(intrinsic muscles)は起始・停止ともに足部内に存在し、縦・横アーチの動的支持と足趾の細かな制御を担います。外在筋(extrinsic muscles)は下腿から起始し足部に停止する筋群(前脛骨筋・下腿三頭筋・腓骨筋など)で、足関節の主要な運動を担います。
フットコアシステムの概念では、内在筋がアーチを安定させることで外在筋の張力伝達効率が高まるとされています(McKeon et al. Br J Sports Med, 2015)。
50m以上の歩行が可能な脳卒中慢性期患者で、足部アーチの低下・下腿筋の過緊張・歩行速度低下・下腿疲労感を呈している方に特に適しています。
重度の麻痺や感覚障害が強い急性期患者では適応が限定されます。足部の詳細評価(踵の内外反・アーチ高・荷重分布)を行ったうえで適応を判断することが重要です。
Paul Lee et al.(2016)では歩行速度の改善に加え、足関節背屈ROMの向上と立ち上がり動作時の下腿三頭筋・前脛骨筋の筋張力低下が確認されました。
内在筋によるアーチ安定化が外在筋の過剰収縮を軽減し、動作全体の効率向上につながります。患者が実感しやすい効果として「下腿の疲れが軽くなった」「歩くのが楽になった」という変化があります。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳卒中・脳梗塞に特化した自費リハビリ施設です。足部評価から歩行訓練まで、脳神経系に精通したセラピストが個々の状態に合わせた最適なプログラムを提供します。「病院のリハビリが終わってしまったが、まだ回復したい」というご家族のお気持ちに、私たちは全力でお応えします。
— STROKE LABでの歩行リハビリテーションの実際の様子です。
「足部評価は”土台の評価”です。歩行や立位の問題を足部から整理すると、介入の優先順位が変わることがよくあります。特に慢性期の患者さんで歩行速度が伸び悩んでいるとき、SFEの視点を持っていると新たな突破口が見えることがあります。」— 理学療法士・臨床経験15年・神経系疾患専門
「Short foot exerciseを患者さんに指導するとき、『足の指をグーにしないで、アーチだけを吸い上げてください』という言葉かけがとても有効です。最初はなかなかできませんが、鏡や触診で舟状骨の動きを確認しながら練習すると、多くの方が2〜3セッションで感覚をつかんでくれます。」— 理学療法士・臨床経験10年・歩行リハビリ担当
諦めないでください。

「病院でのリハビリが終わった」「もうこれ以上回復しないと言われた」——そうした言葉を胸に来られる患者様やご家族に、私は何度も出会ってきました。
しかし、諦めたときが本当の終わりです。脳の可塑性は、適切な刺激があれば生涯続くというエビデンスが積み重なっています。足部という「土台」へのアプローチは、そのための有効な選択肢の一つです。
STROKE LABでは、足部評価から始まる個別化されたリハビリプログラムで、患者様の「もう一歩」をサポートしています。まずは無料相談から、どうぞお気軽にお声がけください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)