【2022年版】高次脳機能障害に対するリハビリの方法を学ぼう!注意機能の評価で転倒を予測できる? – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 | STROKE LAB 東京
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【2022年版】高次脳機能障害に対するリハビリの方法を学ぼう!注意機能の評価で転倒を予測できる?

学生さん
学生さん
実習先でくも膜下出血後の患者様と関わらせて頂いて、高次脳機能障害に対する療法士としての関わり方の難しさを痛感しています。

 

ストロボ君
ストロボ君
どの部位が障害されたことで、どのような部分で本人が躓いているのか臨床推論できないと関わりは難しいよね。今回は、高次脳機能の基礎をおさらいしていこうか!

 

 

高次脳機能障害とは?

 

 

高次脳機能障害とは、脳卒中等の疾患や頭部外傷により脳が損傷を受け、主に脳の障害によって様々な認知・知覚障害が生じることです。

 

認知とは、知識を獲得する過程です。認知には、推論、記憶、認識、判断、直感などが含まれます。また、問題解決、計画能力、誤りの認識、抽象的思考などの実行機能も認知に含まれると述べる著者もいます。多くの場合、実行機能は高次認知機能やメタ認知機能として分類されています。

 

知覚とは、感覚を心理学的に意味のある情報に統合することです。注意と行動を必要とする刺激を選択し、それらを統合し、解釈する能力です。

 

知覚と感覚は同じではないので、混同しないようにしましょう。感覚は、目、耳、鼻などによる刺激、内部受容器、あるいは末梢皮膚系による認識と定義されます。そして、知覚は個々の感覚よりもはるかに複雑です。末梢皮膚系による認識に限っても様々な情報を統合しなければなりません(図1)。

 

高次脳機能障害:知覚とは

図1 図引用:金子 唯史:脳卒中の動作分析 医学書院より

 

 

注意障害について

 

注意障害

 

注意障害は、脳卒中後によく見られるものです。注意システムは、認知、活動パフォーマンス、言語、記憶、および空間構成などの様々な認知機能に関連しているため、注意障害は家庭や職場での人の機能的能力に大きな影響を与える可能性があります。

 

脳血管障害の後、集中的注意(選択的)障害は大多数の患者で治りますが、高次の注意の問題が後に残ることがあります。これには、処理速度、分割注意、ワーキングメモリー、警戒心などが含まれます。

 

神経心理学的評価は、言語、注意、記憶のような認知的問題をもつ患者を分類するために用いられます。

 

選択的注意

 

集中的注意とも呼ばれます。視覚、聴覚、環境刺激の存在下で課題を行う能力です。患者が特定の刺激を無視しなければならないときに必要とされます。

 

例えば、患者が治療者と話している間に着衣の動作を止めた場合は、選択的注意が影響を受けます。

 

選択的な注意機能の評価として用いられるTrail Making Test(TMT)の詳細は下記記事を参照してください。

 

持続的注意

 

活動中に関連する情報に対処する能力。患者は課題中に効果的に反応することができます。

 

分配性注意

 

一度に2つ以上のタスクに対応できます。

 

転導性注意

 

複数の作業を適切に行うことができる能力です。

 

リハビリテーション:
注意障害患者においては、最初は簡単な課題から始められ、何度か練習されます。徐々にセラピストによって複雑さが加えられていきます(図2)。

 

注意障害を有する患者のリハビリにおける課題と環境設定

図2 図引用:金子 唯史:脳卒中の動作分析 医学書院より

 

 

記憶障害

 

脳卒中後の記憶力の低下は一般的であり、患者の機能的能力に影響を与えます。長期記憶障害、短期記憶障害、即時想起など、様々な記憶障害があります。記憶の全体的な劣化は、認知症と呼ばれます。

 

リハビリテーション:

 

認知リハビリテーションの一部である記憶のリハビリテーションは、このような患者さんにとって重要な役割を果たします。ここでは、内的および外的な補助を使用することができます。内的補助は、心的イメージ、記憶術(キーワードで覚える方法:ニーモニクス)、リハーサルで構成されています。外部補助は、掲示板、日記、リストなどで構成され、記憶の想起と回復を助けます。

 

前庭刺激は、視覚的記憶の想起を改善するために有効であることが証明されています。低レベルのガルバニック前庭刺激(GVS)は、前庭神経に経皮的に電流を供給します。電極は乳様突起の上に設置します。電流はバイポーラ(各電極に反対の電流を流す)です。GVSは低コストで適用が容易であり、患者が積極的に関与する必要はありません。

 

前庭刺激は、様々な神経学的状態で使用される刺激の最も一般的な形態であり、それは運動技能を向上させるのに有効であることが証明されています。

 

STROKE LABでも、前庭に着目したリハビリテーションが行われています↓

 

 

半側空間無視について

 

半側空間無視は、リハビリテーションに紹介された患者のほぼ25%に報告されていると言われています。これは、右頭頂部の病変とよく関連しています。半側空間無視は外部の空間に対してと自己の身体に対しての無視症状がありますが、ここでの半側空間無視は自己の身体に対する無視症状のことを指します。

 

リハビリテーションの主な目標は、無視された側の注意力を向上させることであり、固有感覚と運動感覚を改善することです。最近のリハビリテーションの技術は、頸部筋振動、バーチャルリアリティ、四肢活性化トレーニング、メンタルイメージトレーニング、TENS、アイパッチ、前庭リハビリテーション、ミラーセラピーなどです。

 

一部を以下に紹介します↓

 

頸部筋振動とは?

 

頸部筋振動による体性感覚刺激を半側空間無視の患者の頸部に加えることで、同側(患側)視野の刺激に対する検出力を向上させることです。

 

半側空間無視のクロスドレッグサインに対する介入例↓↓↓

 

病態失認(Anosognosia)について

 

頭部外傷の患者に見られる病気の否定です。患者は、欠損について関心がないか、自分の病気について言葉で否定しています。リハビリテーションの利点に気づかず、どんな治療も受けたがらないことも多いです。視野欠損、無気力、および絵を識別できないことは、病態失認で一般的です。片麻痺やアルツハイマー病などの神経症状でも一般的に見られるものです。

 

リハビリテーションの科学的根拠によれば、前庭刺激は病態失認に使用されています。

 

 

身体失認(Asomatognosia)について

 

身体失認(Asomatognosia)

 

身体の構造に対する認識が欠如しています。患者は体の部位と自分または他者との関係を理解することができません。セラピストの動きを模倣することができない場合があります。

 

左右失認(左右識別障害):患者は、右手と左手での課題指示をそれぞれ識別することはできません。

 

手指失認:この状態では、患者は自分の指を示したり、名前をつけたり、選択したり、区別したりすることができません。これは、大脳の病変を持つ患者に起こります。

 

<空間の障害>

 

1. 空間関係障害
・物体と背景の分離
視覚系によって背景から要素を選択し分離することができません。

 

形状の識別
似たような形の物体を識別することができません。例えば、オレンジとボールのような2つの類似した物体を識別するように指示した場合、患者はそれらを識別・区別することができません。

 

空間的関係
この患者さんは、物の位置を正しく特定することができず、空間における互いの関係や自分自身との関係を理解することができません。例えば、食卓を正しくセットすることができず、スプーン、ボウル、皿を適切に置くことができません。

 

空間における位置
上下、前後、左右などの空間的な概念が理解できません。目の前にあるボールを右足で蹴るように言われても、どうしたらいいのかわかりません。

 

奥行きと距離の認識
階段の上り下りで、足をどこに置けばよいのかがわかりません。コップに注ぐ水の量を判断できず、コップが一杯になった後も注ぎ続けてしまいます。

 

・地誌的失見当識
ある場所から別の場所への移動が困難で、ある場所と他の場所との関係が理解できません。例えば、家の中で自分の寝室を見つけることができません。病変は右後頭葉皮質にあります。

 

垂直方向の見当識障害
垂直なものが傾いて見えます。利き手でない頭頂葉に病変があります。杖を持つ作業をやってもらうと、まっすぐ持てず、傾いてしまいます。

 

リハビリテーション:
空間関係障害のある患者に対して、バーチャルリアリティを用いた訓練プログラムを適用し、空間認知を高め、現実世界での練習と同等の効果があることが研究により示されています。

 

 

失認について

 

失認(agnosia)

 

失認では、認識の失敗があります。神経変性疾患でよく見られます。

 

触覚性失認

 

触覚の知覚はありますが、触診によって対象物を認識できません。頭頂葉の病変があります(片側/両側)。体性感覚機能、知的能力、言語能力、注意力は適切です。

 

リハビリテーション:

 

触覚無動作症ではFaberの操作のアプローチが用いられます。視覚刺激の有無にかかわらず、両手を使って対象物を操作します。

 

聴覚性失認

 

聴力は正常ですが、音の知覚に障害があります。このような患者は、言語と認知機能に障害がありません。

 

リハビリテーション:

 

読唇術とコミュニケーション技法は、聴覚性失語症のクライアントに適用されます。

 

視覚的物体失認

 

この患者は、目の前に提示された物体/顔/言葉に名前を付けることができません。例えば、自転車を「パイ」と呼ぶことがあります。これは、図形の模写/描画によって評価することができます。

 

リハビリテーション:

代償戦略と復元練習を視覚物体失認に適用します。

 

 

失行について

 

失行は、患者が熟練した動作を行うことができない障害です。下記記事にて詳細に解説しています。

 

 

・観念運動失行

 

手振りを真似ることができなくなることです。患者は要件を理解しているが、適切な動作を実行することができません。ジェスチャーの生成にエラーが発生します。

 

・観念失行

 

課題の正しい概念を理解しておらず、他動的な修正の困難があります。タスクの順序付けやオブジェクトの使用などの困難に直面します。

 

リハビリテーション:

 

課題は、様々な構成要素に分解されます。各構成要素は一度に教えられ、練習されます。視覚と聴覚によるフィードバックが効果的であることが証明されています。個々のテストが適切に学習されると、理学療法士は、複雑な動作パターンを追加します。

 

●知覚障害のPTリハビリテーション全般

 

知覚障害を持つ患者は、通常、作業療法士によって治療されます。

 

主に、「改善アプローチ」と「代償アプローチ」の2つのアプローチがあります。

 

改善アプローチ

 

成人の脳は、脳損傷後、感覚運動、認知、知覚の練習をすることで、自己修復が可能であるとするアプローチです。リハビリテーションの間、セラピストはクライアントの障害に焦点を当てます。患者の機能的な能力は、特定の知覚的な要素を再教育することによって改善されます。リハビリテーションの際には、環境刺激も利用されます。

 

代償アプローチ
障害された能力を補うために、既存の能力を利用します。損傷した脳が一般的な課題を学習することは困難であるため、日常生活動作の特別な訓練が行われます。

 

 

ストロボ君
ストロボ君
それでは、論文も踏まえて高次脳機能障害について深掘りしていこう。今回は、注意機能障害についての論文を読んでいくよ!

 

 

高次脳機能障害(注意障害)のリハビリ論文サマリー

 

 

 

カテゴリー

脳科学
 

タイトル

TMTが急性脳神経障害の入院患者の転倒を予測する能力の研究
The Trail Making test: a study of its ability to predict falls in the acute neurological in-patient population.Bilal Akhter Mateen, Matthias Bussas, Catherine Doogan, et al. (2018)
 
 
 

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

・医師・看護師・セラピストなどのカンファレンスで患者様を自立にするべきかどうかの判断は悩ましいのではないでしょうか?
 
以下のような会話はよく病院であると思います。
 
看護師「介助量も軽減しているし、トイレ動作も安定しているので自立にしてもよいのでは?」
 
セラピスト「リハビリ室など人が多い場所だと注意がそれてふらつく様子があります。もう少し治療を進めて・・・」
 
看護師「本人も自立を望んでますし、なにか基準などはないですか?」
 
・職場で入院患者の転倒予測のためにどのような高次脳機能評価を行うべきかという議論が出たので本論文を読むことにしました。
 

 

内 容

INTRODUCTION

・現在の転倒を予測する方法では年齢、尿意の切迫性、歩行障害などの要素を元に評価される。他のリスク要因を追加することで予測の正確性を高められる可能性がある。
 
・転倒のリスク要因として認知機能障害が重要であるという仮説もあるが、注意機能と転倒の関係は遂行機能と転倒の関係に比較して分かっていない。
 
・この研究の目的は注意機能評価として良く用いられるTrail Making Test(TMT)が、他のリスク要因との組み合わせで急性の脳神経障害の入院患者における転倒予測を正確に行えるかを決めるものである。
 
 
 

METHODS

・意しない者を除き、テストを全て行えない者も含めた。
 
・評価バッテリーはTMT、運動機能の患者自身の採点によるアウトカム評価(Walk-12)、過去1ヶ月の医療情報(手術、身体機能の変化、転倒の有無)について2択(yes/no)の質問、人口統計学的情報(診断名、年齢、性別、民族性、教育年数)、で構成されている。
 
・転倒は意図しない床との衝突、もしくは床との間にあるものに足部以外の体の一部が接触することと定義した。転倒は重大な事故としてコンピュータに記録され、この記録を使って後方視的にどの患者が入院中に転倒したか調べ、評価バッテリーの結果と照合した。
 
・どの組み合わせと統計モデルが最も信頼性が高い転倒の予想ができるか決めるために予測モデルを作った。モデルはR (v 3.2.0)統計ソフトウェアとmlr (v 2.7)機械学習ライブラリーを用いて行った。モデルは大まかにロジスティック回帰分析のような「分類」モデルとランダムフォレストのような「機械学習」モデルに分類された。
 
・それぞれの予想戦略の信頼性の量的評価として誤分類の平均、感度、特異度、精度(正しく予想した値)、F1スコア(感度と特異度のトレードオフ)を用いた。
 
 
 

転倒を防ぎ、移動能力を強化する戦略

・正常認知機能を持つ高齢者に対する転倒予防の試みは先行研究で成功例が示されているが、その方法を認知症高齢者に行っても成功しないと最近、結論付けられた。
 
 
 

RESULTS

・TMT-A、Bの時間は転倒者と非転倒者で0.01%の有意な差が出た(Table 1)。TMTのエラーはBでは有意な差が出たがAでは有意ではなかった。その上、3つの2択質問では最近1ヶ月以内の手術歴だけが転倒と有意な関係がなかった(Table 2)。
 
・解析の結果、TMTは最もよく予測できることを示した (Wilcoxon signed-rank P <
0.001)。他のデータを加えても予測精度は有意に上がることはなかった(Wilcoxon signed- rank P < 0.001)(Table 3)。
 
・TMTとランダムフォレストの組み合わせが最も良い予測モデルであった。最も良いモデルで感度68% (± 7.7)、特異度90% (± 2.3)、精度0.600 (± 7.6)、F1-score0.630 (±0.063)であった。
 
・ランダムフォレストのような機械学習はブラックボックスの特性を持つので個々の
決定にどのように、なぜ至ったのかは分からない。結論として我々は単純なカット
オフ値を示すことが出来なかった。
 


 
 
 

DISSCUSSION

・ランダムフォレストのような機械学習はブラックボックスの特性を持つので個々の決定にどのように、なぜ至ったのかは分からない。結論として我々は単純なカットオフ値を示すことが出来なかった。
 
 
 
 

私見・明日への臨床アイデア

・本論文ではカットオフ値が示されず、臨床で直接的に使用していくのは難しいのではないかと感じた。
 
・当院で転倒予測にTMTを用いるためには、当院独自でTMTの時間やエラーの数と転倒の有無の関係を調べる必要があると考える。
 
・また直近の転倒を尋ねるなどごく簡単な評価でも転倒予測に資するということなので、データなどを蓄積し、評価バッテリーと併せて行いたい。
 

 

 
 

 
 

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