2018.09.11療法士専門系
vol.353:皮質脊髄路の損傷後の運動ニューロンの接続 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
皮質脊髄路の損傷後の運動ニューロンの接続
Changes in descending motor pathway connectivity after corticospinal tract lesion in macaque monkey?PMC Boubker Zaaimi et al.(2012)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中後の皮質下の運動に関わるふるまい、mirror movements等に興味があり、脳卒中後の神経回路に関わる論文を読む中で本論文に至る。
内 容
背景
●皮質脊髄路の損傷は、脳卒中または脊髄損傷における運動障害の主要な要因である。いくつかの機能は通常回復するが、損傷を受けていない同側下行路の皮質脊髄軸索および網様体脊髄路などの脳幹経路の可塑性が回復に寄与するかどうかは不明である。
●我々は最近、網様脊髄路を含む内側脳幹に由来する下降経路が、弱くても霊長類の手の筋肉を活性化できることを示した(Riddleら、2009)。
目的
●皮質脊髄の病変からの回復後、これらの経路の運動ニューロンへの繋がりを調べた。
方法・結果
●錐体路内の皮質脊髄線維の髄質部の広範片側性病変を、3匹の成体マカクザルで作った。
●対側の弛緩性麻痺後、運動機能は急速に回復し、その後に全ての動物は麻痺手でケージバーを握り、その体重を支持することができた。
●実験的試験が行われた1匹では、細やかな分離した指の動きは回復しなかった。
●病変の約6ヶ月後、 手および前腕筋を支配する167の運動ニューロンから細胞内記録をとった。
●非損傷側の同側の錐体路および内側縦状束を刺激することによって誘発されたシナプス応答を記録し、6匹の動物からの207の運動ニューロンにおける対照応答と比較した。
●同側錐体路からの入力は、損傷を受けた動物および対照群の動物の両方で稀かつ弱く、機能的回復におけるこの経路の限られた役割を示唆している。
●我々は、網様体脊髄路系が皮質脊髄病変後の機能回復の一部を補助すると結論する。
●対照的に、単シナプスおよび2シナプスの興奮性シナプス後電位(excitatory postsynaptic potential; EPSP)は内側縦束から誘発され、回復後の平均サイズは有意に増加した。それは前腕屈筋および手内在筋を支配する運動ニューロンにおいてのみであり、前腕伸筋運動ニューロンにおいてではない。
●伸筋ではなく、屈筋への不均衡で強力な結合は、運動ニューロンは、神経学的経験において脳卒中者の回復に共通の制限である伸筋weaknessおよび屈筋スパズムを反映する。
●系統発生的に古い脳幹経路は、運動指令が脊髄に到達する経路を提供することができる。サルの皮質脊髄病変後、赤核からのアウトプットが強化されることが示されている(Belhaj-Saif and Cheney、2000)。
●人の赤核からの脊髄への投影は弱いか稀であり、これらの知見と猿の関係が疑問視されている。脳病変から回復する患者にとって重要な経路である。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中後に、赤核のアウトプットが強化されるという点で、赤核脊髄路は生理学的屈曲の発火を高めることが知られている。しかし、この経路は人では、退化・萎縮していると言われる。それぞれの脳回路がどのように補い合って、臨床患者像に繋がるのか、継続して臨床に活かせるまで関わる論文を読み理解を深めたい。
職種 理学療法士
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