【2026年版】家族で実践!効果的な呼吸リハビリの方法とコツ:ポジショニング・胸郭ストレッチ・症例別アプローチ・パルスオキシメーター活用術
家の中にある呼吸のリハビリ、ご家族にできること。
退院後、ご本人の呼吸が浅く感じられる。そんな時、ご家族が安全にできる呼吸のサポートがあります。正しい知識と手順を、わかりやすくお伝えします。
続きをお読みください。
こんなお悩みはありませんか。
退院後、ご本人の呼吸が浅くなったと感じることはありませんか。
「痰が増えた気がする」「少し動くと息が切れる」など、ご家族から見て心配な変化に気づいても、どこまで手を出していいのか分からず、戸惑ってしまうことがあります。
呼吸リハビリ(こきゅうりはびり:呼吸の働きを整えるための運動や練習)は、特別な技術がなくても、ご家族が安全に行える方法があります。この記事では、その具体的な手順をお伝えします。
呼吸リハビリとは。
呼吸リハビリは、生活の質(QOL:日常生活の満足度や快適さ)を支える大切なケアです。
脳卒中後や呼吸の力が落ちている方では、呼吸筋(こきゅうきん:呼吸を支える筋肉)を整えることが、生活の安定に直結します。

専門職だけが行うものではなく、ご家族が自宅で続けられる内容を含めて指導することに意味があります。
大切なのは、なぜ必要なのかを理解しながら続けることです。
基本的な呼吸介助の目的
仰向けや半座位(はんざい:背もたれを起こした姿勢)で、吸う時に胸の外側を軽く押し上げ、吐く時にゆっくり戻すようにサポートします。
横隔膜(おうかくまく:お腹と胸の間にある呼吸の主役となる筋肉)を意識して、お腹に手を置き、呼吸のリズムを整えます。
体位ドレナージ(たいいどれなーじ:姿勢を変えて痰の排出を促す方法)と、軽いカッピング(背中を軽く叩く方法)で痰の動きを助けます。
出典:Jeong JH. Effect of caregiver education on pulmonary rehabilitation, respiratory muscle strength and dyspnea in lung cancer patients. J Phys Ther Sci. 2015 Jun;27(6):1653-4.
対象:肺がん術後患者41名(実験群22名・対照群19名)。実験群の介護者には咳嗽練習・気道確保・呼吸練習・ストレッチ・筋力トレーニングを教育。
結果:実験群の最大吸気圧(MIP)・最大呼気圧(MEP)・改訂版Borgスケールは介入後に有意な改善が得られたが、群間の有意差は認められなかった。
ストレッチでできること
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは脳卒中・パーキンソン病などの神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。呼吸の状態を含めた全身評価から、ご家族への関わり方までご提案します。
なぜ呼吸が浅くなるのか。
呼吸は、横隔膜や肋間筋(ろっかんきん:肋骨の間にある筋肉)が連動して行う、いわば一つの楽器の演奏のようなものです。
脳卒中で筋肉のコントロールが乱れると、演奏のバランスが崩れ、呼吸が浅く、努力性(りきが入りやすい呼吸)になりやすくなります。
ポジショニングの考え方
ポジショニング(姿勢の調整)は、肺活量や血液中の酸素濃度に影響します。
健側(けんそく:麻痺のない側)を下にした側臥位(そくがい:横向きの姿勢)は、麻痺側の胸郭拡張を助けます。30〜45度の半座位は、肺への血流を整えやすい姿勢です。
空気の質:空気清浄機を利用し、室内の湿度を50%程度に保つことが推奨されます。
姿勢補助具:ポジショニングを支えるクッションや枕の活用が有効です。
症状による違い。
呼吸の困りごとは、ご本人の状態によって対応の中心が変わります。
| 状態 | 中心となる目標 | ご家族の関わり方 |
|---|---|---|
| 脳卒中後の呼吸筋弱化 | 横隔膜機能の改善・胸郭の可動性向上 | 半座位での横隔膜呼吸の介助 |
| 痰の貯留(慢性疾患を併発) | 痰の排出促進・気道閉塞の改善 | 体位ドレナージ・水分摂取の促進 |
| 全身の筋力低下 | 呼吸筋の筋力維持・柔軟性向上 | 呼吸筋ストレッチ・肩甲帯のサポート |
確認の方法(パルスオキシメーター)。
パルスオキシメーター(指や耳に挟んで使う、酸素の状態を測る機器)は、血液中の酸素飽和度(SpO2)をパーセントで表します。
パルス
安全に使うためのポイント
指や耳たぶをしっかり挟みます。マニキュアがついていると正確に測れないことがあります。
極端に寒い場所では血流が減り、測定が不安定になる場合があります。
赤色光と赤外線を用い、酸素と結合したヘモグロビンと未結合のヘモグロビンの吸光特性の差から酸素飽和度を算出します。脈拍に同期した血流成分のみを解析することで、組織や静脈血の影響を除外しています。
ご家族ができる呼吸介助の手順。
ここでは、よく見られる状態に合わせた手順をご紹介します。
脳卒中後、呼吸が浅い場合
半座位(30〜45度)を基本とし、背中をクッションで支えます。足元を軽く上げると、よりリラックスできます。
みぞおちの少し下に手を軽く置き、吸う時にお腹が膨らむ感覚を確認しながら、ゆっくり吐くよう促します。1セット10回、1日3セットが目安です。
両手を肋骨の下部にあて、吸う時に外側へ軽く広げ、吐く時に軽い圧をかけながら元に戻します。
呼吸の深さや疲労感の変化を記録し、必要に応じて医師に伝えます。

発症から時間が経っていても、改善が報告されている研究があります。ご本人の状態や生活背景に合わせて、必要なアプローチを一緒に考えていきます。
声かけと安全のポイント。
中止すべきサイン
声かけの例
「お腹が膨らむのを感じられますか。ゆっくりでいいですよ」
「よく頑張っていますね。あと2回だけやってみましょう」
「少し苦しそうなら、すぐに教えてくださいね」
成果の確認方法
| 確認項目 | 方法 | タイミング |
|---|---|---|
| 酸素飽和度 | パルスオキシメーターで測定 | リハビリ前後 |
| 呼吸パターン | 努力性呼吸が減っているか観察 | 毎回 |
| 本人の感覚 | 呼吸のしやすさ・疲労感を聞く | 毎回 |
在宅復帰と公的支援制度。
呼吸リハビリを自宅で続けるには、環境づくりと支援制度の活用が役立ちます。
在宅復帰チェックリスト
主な公的支援制度
| 制度名 | 主な内容 | 相談先 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 障害の程度に応じた福祉サービス利用の基礎となる | 市区町村の福祉窓口 |
| 介護保険 | 訪問リハビリ・福祉用具レンタルなどに利用可能 | 地域包括支援センター |
| 障害福祉サービス | 居宅介護・生活訓練などの支援 | 市区町村の障害福祉窓口 |
| 自立支援医療 | 通院医療費の自己負担を軽減 | 市区町村の窓口 |
| 高額療養費制度 | 医療費が高額になった場合の負担軽減 | 加入している健康保険組合 |
| 障害年金 | 一定の障害状態にある場合の年金給付 | 年金事務所 |
効果が出るまでの期間。
呼吸リハビリの効果は、すぐに目に見える変化として現れるとは限りません。

脳卒中後のリハビリに関するシステマティックレビューでは、発症後6か月以降でも、上肢機能の評価指標(FMA/ARAT)に有意な改善が見られたことが報告されています(Hatem SM et al., 2016)。
パーキンソン病に関する24か月の研究でも、運動を伴うリハビリにより注意力やワーキングメモリが改善したことが示されています(David FJ et al., 2015)。
よくあるご質問。
1日2〜3回、各10分程度から始めるのが目安です。
ご本人の様子を見ながら、つらそうな場合は回数や時間を減らしてください。
酸素飽和度(SpO2)が95〜100%であれば、おおむね正常範囲とされています。
90%以下になる場合は、早めに医師へご相談ください。
痰が溜まっている時に、痰の動きを促す目的で行います。
手をカップのような形にして、一定のリズムで5分程度を目安に行います。
強い疲労感、呼吸困難の悪化、唇や顔色が青白くなる(チアノーゼ)が見られた場合は、すぐに中止してください。
その上で、速やかに医師に連絡してください。
研究では発症後6か月以降でも、上肢機能などに改善が見られた報告があります。
呼吸機能についても、継続的な介入には意義があると考えられています。
STROKE LABは脳卒中・パーキンソン病などの神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。
呼吸機能を含めた全身評価をもとに、ご家族への指導も行っています。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳卒中・パーキンソン病・脊髄損傷など、神経疾患のリハビリに精通したスタッフが在籍する自費リハビリ施設です。
公的保険のリハビリでは時間や回数に上限がありますが、自費リハビリでは、ご本人のペースに合わせて内容や頻度を調整できます。1回ごとのお支払い制で、ご都合に合わせてご利用いただけます。

— STROKE LABでの神経疾患リハビリの実際の様子です。
「呼吸が浅いことが心配でしたが、お腹に手を置く方法を教えてもらい、家でも続けられるようになりました」— 70代男性・脳卒中後・発症から8ヶ月のご家族
「パルスオキシメーターの数値の見方が分からず不安でしたが、安心できる範囲を知れて気持ちが楽になりました」— 60代女性・脳卒中後・発症から1年のご家族
諦めないでください。

「もう退院したのに、呼吸が落ち着かない」「家でできることは限られている」。そんなお気持ちで、この記事を開いてくださったのではないでしょうか。
呼吸を整える手助けは、特別な機器がなくても、ご家族の手だけで始められることがたくさんあります。
不安なことがあれば、いつでもご相談ください。ご本人とご家族の生活が少しでも穏やかになるよう、私たちも一緒に考えていきます。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)