パーキンソン病で体操が三日坊主になる|原因と対策・自宅でできる工夫
続かないのは、意志が弱いからではありません。
体操を始めても、気づけば三日坊主。それは「怠けている」のではなく、パーキンソン病そのものが、やる気や段取りのしくみに影響していることがあるためです。原因を知り、今日から自宅でできる続け方の工夫を整理します。

「今日はいいや」と、思ってしまう。
入院中や外来のリハビリで教わった体操。退院した日は「毎日やろう」と思っていたはずなのに、気づけば1週間、1か月とやらない日が続いている。声をかけても「今日はいいや」「あとでやる」と返ってくる。本人を責めたくないけれど、このままでいいのか不安になる——。そんな声を、ご家族からよく伺います。
先にお伝えしたいのは、これは本人の性格や努力不足だけの問題ではなく、パーキンソン病そのものが継続を難しくしている場合があるということです。
体操を続けるには、「やろう」と思う意欲、段取りを組む力、体を動かし続ける体力が必要です。パーキンソン病は、まさにこの3つすべてに影響しうる病気です。だからこそ、続かないことを気合や根性の問題として片付けず、原因を分けて考えることが、立て直しの第一歩になります。運動そのものの種目選びは体操・自主トレ大全に、リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめていますので、あわせてご覧ください。
三日坊主になる、本当の原因。
「続かない」の裏側には、いくつもの異なる原因が重なっていることが多いのです。まずは、代表的な原因を整理してみましょう。ご自身やご家族が、どれに近いかを考えながら読んでみてください。

| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| アパシー(意欲低下) | 脳内のやる気に関わる回路の変化で、行動を起こす気力そのものが湧きにくくなる |
| 実行機能の低下 | 「いつ・何を・どの順で」という段取りを組む力が弱まり、始めるまでに時間がかかる |
| 症状の日内変動(オン・オフ) | 薬の効果で動きやすい時間と、動きにくい時間があり、時間帯によって体操のハードルが変わる |
| 疲労感・倦怠感 | 見た目の動作量以上に、体力を消耗しやすく、疲れが休んでも取れにくいことがある |
| 気分の落ち込み(うつ) | 気分の落ち込みや自分を責める気持ちが強く、何をしても楽しめないと感じる |
| 単調さ・達成感のなさ | 同じ動作の繰り返しで、変化や手応えを感じにくく、飽きにつながりやすい |
| 転倒への不安 | 動くこと自体への恐怖心が先に立ち、体操そのものを避けてしまう |
なかでも見落とされがちなのがアパシーです。うつのように気分が落ち込むわけではなく、ただ「関心が湧かない」「動き出すきっかけがつかめない」状態で、パーキンソン病でよくみられる症状のひとつとされています。本人にも自覚しづらく、周囲からは「怠けている」「やる気がない」と誤解されやすい点が、この症状のつらいところです。
地域のパーキンソン病患者を対象にした調査では、少なくない割合の方にアパシーがみられ、うつを伴わない場合でも生じうることが報告されています。意欲の低下は、本人の性格の問題ではなく、症状として理解する視点が大切です。
限界:アパシーの現れ方や程度には個人差が大きく、進行度や併存する症状によっても変わります。気になる場合は、自己判断せず神経内科・主治医に相談してください。
STROKE LABの視点:続く仕掛けを作る。
意欲や段取りの力そのものが下がりやすいのなら、「やる気を出す」ことに頼らず、やらざるを得ない・自然とやってしまう仕組みを外側から作るのが近道です。合言葉は「気合は続かない、しくみは続く」。3つの視点で整理します。
1. 生活動作にひもづける。「体操をする」という新しい行動を単独で覚えるのではなく、歯みがきの後、朝のニュースを見ながら、といったすでにある習慣にくっつけることで、思い出す負担を減らします。
2. 見える化する。カレンダーに丸をつける、アプリに記録するなど、やったことが目に見える形にします。積み重ねが見えると、それ自体が次の一歩を後押しする手がかりになります。
3. オンの時間に固定する。薬が効いて動きやすい時間帯を把握し、同じ時間・同じ場所で行うようにします。時間と場所が決まっているほど、段取りを考える負担が減り、始めやすくなります。
大切なのは、最初から完璧を目指さないことです。合う時間帯や方法は人それぞれなので、作業療法士・理学療法士と一緒に、その方の生活リズムに合わせて調整していくと、無理なく定着しやすくなります。

今日から、できる工夫。
3つの視点を、具体的な行動に落とし込んでみましょう。すべてを一度に取り入れる必要はありません。まずは1つだけ、今日から試すつもりで選んでみてください。
小さく始める。「1日1分だけ」「1つの動きだけ」から始めます。ハードルが低いほど、始めるまでの心理的な負担が減ります。物足りなさを感じたら、少しずつ増やせば十分です。
音楽やリズムを使う。好きな音楽に合わせて体を動かすと、単調さが和らぎ、リズムが動作のきっかけ(キュー)にもなります。テンポの良い曲を選ぶと、動きも大きくなりやすいという声もよく聞かれます。
誰かと一緒に行う。家族と時間を合わせる、オンライン教室やデイサービスの体操に参加するなど、一人でやらない仕組みは、アパシーによる「動き出せなさ」を外から補う効果的な方法です。
メニューに変化をつける。曜日ごとに内容を変える、季節の話題を取り入れるなど、小さな変化があるだけで飽きにくくなります。運動の種目そのものは体操・自主トレ大全を参考に、いくつかを組み合わせてみてください。

自宅で行う有酸素運動プログラムを検証した研究では、遠隔での見守りや定期的なやり取りを組み合わせた仕組みのもとで、長期間にわたり運動が継続されやすかったことが報告されています。個人の意志だけに頼らず、外側からの関わりや仕組みを添えることの重要性を示す結果といえます。
限界:見守りの方法や頻度は研究ごとに異なり、効果は対象者の症状や環境によって変わります。運動プログラムの内容は、専門家と相談のうえ、無理のない範囲で設定してください。
自宅での工夫が思いつく範囲での対策だとすれば、専門施設で目指すのは、評価に基づいて、その人特有の「続かない理由」に的を絞った設計です。継続支援は、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 症状の見極め。アパシー・うつ・疲労・実行機能低下など、続かない背景にある要因を評価から見極め、対応の優先順位をつけます。
2. 生活リズムに合わせた設計。服薬時間や1日の過ごし方を伺いながら、その方が最も動きやすい時間帯・場所・方法を一緒に見つけます。
3. 段階的な難易度調整。できたという実感を積み重ねられるよう、種目や量を少しずつ調整し、無理のない範囲で継続と向上の両立を図ります。
STROKE LABが軸足を置くのは、続かない理由を本人のせいにせず、しくみと環境の側から立て直していくという考え方です。効果には個人差があり、症状や生活状況によって変わります。気分の落ち込みが強い場合の判断や薬の調整は、主治医の役割です。
脳リハ.comのYouTubeでは、その場で一緒に動ける体操を配信しています。段取りを考える負担なく始められるので、続けるきっかけとして活用してみてください。
専門リハと、相談の目安。
専門のリハビリでは、続けられない背景を一緒に整理し、その方の生活に合った継続の仕組みを組み立てます。ご家族の関わり方についても、「どう声をかければよいか」「どこまで手伝ってよいか」を具体的に相談できます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは生活と行動の側から支えます。
相談の目安は、意欲の低下が数週間以上続く、気分の落ち込みや自分を責める気持ちが強い、以前は楽しめていたことにも関心が持てない、といった変化がみられるときです。アパシーとうつは対応の考え方が異なることもあるため、自己判断せず神経内科・主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. 体操が続かないのは、意志が弱いからですか?
Q. アパシーとうつは、何が違うのですか?

Q. 調子の良い時間と悪い時間があるのですが、体操はいつやればよいですか?
Q. 毎日同じ体操だと飽きてしまいます。どうすればよいですか?
Q. 続けるための具体的なコツはありますか?
Q. 本人がやる気を出さないとき、家族はどう声をかければよいですか?

続けるための相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。続かない背景にある要因を一緒に整理し、生活リズム・時間帯・関わり方を、その方に合わせて組み立てます。ご家族の関わり方の相談も歓迎です。薬の調整や気分の評価は主治医を尊重し、私たちは生活と行動の側から継続を支えます。保険リハとの併用も可能です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
責めないでください。

「体操表をもらったのに、続けられない自分がだめなんです」——そう話される方に、何度も出会ってきました。でも臨床の現場で感じるのは、続かないことのほとんどは、意志の弱さではなく、病気そのものが作り出す壁だということです。
お伝えしたいのは、気合を入れ直す必要はなく、続く仕組みに変えればよいということです。生活にひもづけ、見える化し、動きやすい時間に固定する。小さな仕掛けの積み重ねが、いちばん確かな継続の力になります。
続けられずに悩んでいるなら、どうぞ一度ご相談ください。続かない理由を一緒に整理し、その方に合う仕組みを見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。意欲の低下や気分の落ち込みが強い場合は、自己判断せず、神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月13日)。なお、下記の論文引用は要旨レベルの紹介であり、著者・数値・年次については公開前に一次資料で必ず再確認してください。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Pedersen KF, et al. Prevalence and clinical correlates of apathy in Parkinson’s disease: a community-based study. Parkinsonism Relat Disord. 2009;15(4):295-299.(アパシーの頻度に関する紹介。第1エビデンスボックスの出典・要検証)
- van der Kolk NM, et al. Effectiveness of home-based and remotely supervised aerobic exercise in Parkinson’s disease. Lancet Neurol. 2019;18(11):998-1008.(見守り付き在宅運動の継続に関する紹介。第2エビデンスボックスの出典・要検証)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)