進行性核上性麻痺(PSP)とパーキンソン病の違い|転倒と眼球運動から見分ける – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

進行性核上性麻痺(PSP)とパーキンソン病の違い|転倒と眼球運動から見分ける

PSP vs PARKINSON’S DISEASE

後ろに倒れやすい、下が見にくい。

パーキンソン病と診断されたのに、なぜか早い時期から転びやすい。下を見るのが苦手になってきた——。それは、進行性核上性麻痺(PSP)という、似ているけれど別の病気のサインかもしれません。違いの見分け方と、転倒を防ぐ生活の工夫を整理します。

UPDATED2026
READ約10分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。この記事は特徴の違いを整理するものであり、診断を行うものではありません。診断は必ず神経内科の専門医にご相談ください。
Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
PSPは、パーキンソン病と似た症状が出るものの、原因が異なる別の病気です
02
PSPは、発症から早い時期に、特に後方への転倒が目立ちやすいです
03
PSPでは、特に下を見る目の動きが乏しくなりやすい特徴があります
04
振り向く動作や視線の使い方を工夫すると、転倒のリスクを減らせます
05
診断の確定は専門医の領域です。気になる変化は神経内科で確認を
01
Something Feels Different

「様子が違う」、その違和感。

A Family’s Voice
「パーキンソン病と聞いていたのに、進み方も転び方も何か違う気がして」

パーキンソン病の薬を飲んでいるのに、あまり効いている感じがしない。震えよりも、転びやすさや体の硬さが目立つ。特に、振り向いたときや椅子に座ろうとしたときに、後ろにドスンと倒れることが増えた——。そんなご相談を受けることがあります。

こうした経過は、進行性核上性麻痺(PSP)という、パーキンソン病と似ているけれど別の病気の可能性を含んでいます。

PSPは、パーキンソン病と同じように動きが硬くゆっくりになる病気ですが、原因になる脳の変化や、症状の出方には違いがあります。特にはっきりした違いとして知られているのが、転倒の出方と、目の動きです。この記事では、この2点を軸に違いを整理し、今日からできる転倒予防の工夫をお伝えします。パーキンソン病全体のリハビリについてはリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
What’s The Difference

PSPとパーキンソン病、何が違うか。

どちらも、動きが乏しくなる「パーキンソニズム」と呼ばれる状態を示しますが、現れ方の順番や強さに違いがあります。代表的な違いを整理します。

パーキンソン病 PSP(進行性核上性麻痺)
転倒は経過の後半に目立ちやすい 転倒は発症から早い時期、特に後方への転倒が目立つ
目の動きは比較的保たれる 特に下を見る動きが乏しくなりやすい
左右どちらかから始まることが多い 比較的、体の両側に同じように出やすい
姿勢は前かがみになりやすい 首がそり、体が後ろに傾きやすい
表情が乏しくなる(仮面様顔貌) まぶたが開いたまま、驚いたような表情になりやすい
L-ドパの薬がよく効きやすい L-ドパの効果がはっきりしない、続きにくいことが多い

これらはあくまで傾向であり、全員に当てはまるわけではありません。実際の診断は、こうした特徴に加えて、専門的な診察や検査を組み合わせて総合的に行われます。次の章では、ご家族が日常生活の中で気づきやすい3つのサインに絞って、もう少し具体的に見ていきます。

03
Three Signs To Notice

STROKE LABの視点:見分ける3つのサイン。

診断は専門医の領域ですが、ご家族が日常生活の中で気づける手がかりはあります。次の3つのサインが重なって見られるときは、受診の際に医師へ具体的に伝えることをおすすめします。

Three Signs

サイン1:後ろに倒れる。振り向いたとき、椅子に座ろうとしたとき、後ろのものに手を伸ばしたときに、後方へバランスを崩しやすい。発症から1〜2年程度と、比較的早い時期から見られることがあります。

サイン2:下が見にくい。階段の下りや、食事のお皿、床に置いたものを見るのを苦手そうにしている。目だけでなく、頭ごと動かして見るような様子が増える。

サイン3:首がそり、驚いたような表情になる。背筋が伸びて後ろに反るような姿勢になり、まぶたが開いたまま、驚いたように見える表情が増えてくる。

この3つは、どれか1つだけでは判断材料になりません。複数が重なって、しかも比較的早い時期から出ているときに、PSPの可能性を含めて確認する意味が出てきます。気づいたときは、いつ頃からか、どんな場面で起きたかをメモしておくと、診察がスムーズになります。

04
Preventing Falls

転倒を防ぐ、生活の工夫。

PSPの転倒は「後ろ」に起こりやすいという特徴を踏まえると、対策の方向性が見えてきます。合言葉は「視線を先に、体はあとから」です。

振り向くときは、体をひねる前に、まず目と頭を先にゆっくり動かして目的の方向を確認してから、体を動かします。椅子に座るときは、後ろを振り返らずに、手で座面を確かめてからゆっくり腰を下ろします。後ろのものに手を伸ばすのではなく、一度立ち位置を変えて、体の前で取るようにします。環境面では、廊下や部屋の背後に物を置かない、手すりを後方にも設置する、椅子は肘掛けのあるものを選ぶといった工夫が助けになります。運動で体の使い方を整えておくことも土台になるので、体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。

Evidence
早期からの後方転倒は、PSPを見分ける核となる特徴とされる

PSPの臨床的な特徴を整理した総説では、発症から早い時期の姿勢反射障害による転倒(特に後方への転倒)と、垂直方向、とりわけ下方への核上性注視麻痺が、パーキンソン病との鑑別における中心的な手がかりとして位置づけられています。

限界:これは臨床的な特徴を整理した専門的な文献であり、診断は個々の経過や検査を踏まえて専門医が総合的に行うものです。特徴が当てはまるからといって、それだけで確定するものではありません。

出典:Williams DR, Lees AJ. Progressive supranuclear palsy: clinicopathological concepts and diagnostic challenges. Lancet Neurol. 2009;8(3):270-279
視線を先に、体はあとから。振り向く前に、まず目で確認する。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の個別のバランス・眼球運動訓練まで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
環境を整える段階から、体そのものの反応を立て直す段階へ。

自宅での工夫が転倒の場面を減らす環境調整だとすれば、専門施設で目指すのは、目の動きとバランス反応そのものを訓練し、崩れにくい体をつくる回復的アプローチです。PSPへの働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. 眼球運動訓練。上下・左右への視線移動を繰り返し練習し、頭を先に動かさなくても目で情報を得られる範囲を少しずつ広げます。

2. バランス・姿勢反応訓練。後方への重心移動に対して、安全な環境の中で繰り返し反応を引き出し、崩れたときに立て直す力を育てます。

3. 動作の組み立て直し。振り向く、立ち上がる、方向転換するといった生活動作を、後方に崩れにくい手順に置き換えて練習します。

STROKE LABが軸足を置くのは、眼球運動とバランス訓練を組み合わせ、安全な環境の中で繰り返し、生活動作に落とし込んでいくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。診断や薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
眼球運動とバランスを組み合わせた訓練で、歩行が改善し維持された研究

PSPの方を対象に、眼球運動とバランスを組み合わせた訓練を行った準無作為化比較試験では、歩行速度をはじめとする歩行の指標が改善し、その効果が訓練終了後も一定期間保たれたと報告されています。目の動きへの働きかけが、姿勢やバランスの安定にもつながる可能性を示す結果です。

限界:対象人数は多くなく、効果には個人差があります。進行に伴って変動することもあり、専門的な評価と個別の訓練計画が前提です。運動療法は薬や環境調整の代わりではなく、組み合わせて用いるものです。

出典:Zampieri C, Di Fabio RP. Balance and eye movement training to improve gait in people with progressive supranuclear palsy: quasi-randomized clinical trial. Phys Ther. 2008;88(12):1460-1473

Watch & Practice
バランスを整える体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、姿勢とバランスを整える体操を配信しています。安全な環境で、無理のない範囲から始めてみてください。

バランス体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、転倒が起こりやすい場面を一緒に振り返り、視線の使い方、動作の手順、環境の調整を、その人の生活に合わせて組み立てます。診断や薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と生活の側から支えます。

受診の目安は、発症から比較的早い時期に転倒が増えてきた、下を見にくそうにしている、薬の効果がはっきりしない、といった変化が重なってきたときです。気になる変化は自己判断せず、神経内科で確認してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. パーキンソン病と診断されたのに、転びやすいのはなぜですか?

転びやすさが発症から早い時期に強く出ている場合、パーキンソン病ではなく進行性核上性麻痺(PSP)という、似た症状の別の病気が疑われることがあります。PSPは、パーキンソン病に比べて早い時期から、特に後ろに倒れる転倒が目立つ特徴があります。自己判断はせず、神経内科で改めて確認してもらうことをおすすめします。

Q. 目の動きの検査は、どのように行われますか?

医師が指や指標をゆっくり上下・左右に動かし、それを目で追ってもらう検査が基本です。PSPでは特に下を見る動きが乏しくなりやすく、これを核上性注視麻痺と呼びます。ご家族が普段の生活で気づく手がかりとしては、階段の下り、食事のお皿、床の物などを見にくそうにしている様子が挙げられます。

Q. PSPの転倒は、なぜ後ろに倒れやすいのですか?

PSPでは、姿勢を保つための反射や、体を後ろにそらせる傾向、下を見る動きの乏しさが重なり、後方へバランスを崩しやすくなります。振り向く、後ろのものを取ろうとする、椅子に座ろうとして体重を後ろにかけすぎるといった場面で、後方へ転倒しやすい点が特徴です。

Q. PSPにパーキンソン病の薬は効きますか?

PSPでもパーキンソン病の薬が使われることがありますが、パーキンソン病ほどはっきりとした効果が続きにくいことが知られています。薬の効き方や調整は主治医の判断によるもので、自己判断で中断したり増減したりしないことが大切です。気になる変化は診察のときに相談してください。

Q. リハビリで転倒は防げますか?

眼球運動とバランスを組み合わせた訓練で、歩行が改善し、その効果が期間をおいても保たれたという報告があります。生活の中での動作の工夫(振り向き方、立ち上がり方、視線の使い方)と組み合わせることで、転倒のリスクを下げやすくなります。ただし効果には個人差があり、進行に伴って変動します。運動は薬や環境調整の代わりではなく、組み合わせて行うものです。

Q. PSPとパーキンソン病の違いは、家族でも気づけますか?

完全に見分けることは専門医でも簡単ではありませんが、後ろに倒れやすい、下を見にくそうにしている、首がそって驚いたような表情になってきた、といった変化は、日常生活の中でご家族が気づきやすい手がかりです。気になる変化があれば、メモをして受診時に伝えると、診断の助けになります。
07
STROKE LAB

転倒予防の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。実際に転倒が起きやすい場面を一緒に確認し、視線の使い方・動作の手順・環境調整を、その人に合わせて組み立てます。診断や薬の調整は主治医を尊重し、私たちは動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

動作分析の視点から、姿勢反射やバランス反応の立て直し方を体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
「なぜ違うのか」を知ることが、
最初の安心になります。
STROKE LAB代表 金子唯史

「パーキンソン病のはずなのに、思っていた経過と違う」——そうした戸惑いを抱えたまま、原因のわからない転倒を繰り返してしまうご家族に、たくさん出会ってきました。

お伝えしたいのは、違いを知ることは、不安を減らす第一歩になるということです。後ろへの転倒、下を見にくい目の動き。そこに気づけたなら、視線の使い方ひとつで、変えられる場面はまだあります。

転倒でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。実際に崩れやすい場面そのものを題材に、その方に合う動き方を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断は必ず神経内科の専門医にご相談ください(最終確認日:2026年8月11日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:進行性核上性麻痺(指定難病5)
  • Williams DR, Lees AJ. Progressive supranuclear palsy: clinicopathological concepts and diagnostic challenges. Lancet Neurol. 2009;8(3):270-279.(早期の後方転倒と垂直方向の核上性注視麻痺を鑑別の中心的特徴と位置づけた総説。sec4・エビデンスボックス①の出典)
  • Zampieri C, Di Fabio RP. Balance and eye movement training to improve gait in people with progressive supranuclear palsy: quasi-randomized clinical trial. Phys Ther. 2008;88(12):1460-1473.(眼球運動とバランス訓練の組み合わせで歩行速度が改善し効果が持続したと報告。sec4・エビデンスボックス②の出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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