パーキンソン病で立ちくらみがする|原因と対策・自宅でできる工夫
急に立つは敵、段階を踏むは味方です。
立ち上がった瞬間にフラッとする、目の前が暗くなる。それはパーキンソン病でよくみられる立ちくらみ(起立性低血圧)かもしれません。原因は一つではなく、自律神経・薬・水分・体力低下が重なって起こることがほとんどです。しくみと、今日から自宅でできる立て直し方を整理します。

「フラッとする」が、増えてきた。
トイレに立とうとしたとき、食後にソファから立ち上がったとき、ふらっとして壁に手をついた——。「疲れているだけ」「歳のせい」と見過ごしてしまいがちですが、繰り返すうちに転倒への不安から、動くこと自体を避けてしまうご家族もいます。
でも、知ってほしいのです。立ちくらみには複数の原因が重なっていることが多く、原因ごとに手が打てるということを。
パーキンソン病では、立ち上がったときに血圧をうまく保てず、立ちくらみやふらつきが起こることがあります。これは自律神経のはたらきの低下だけでなく、薬・水分・食事・体力といった複数の要因が絡み合って起こる、非運動症状のひとつです。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
立ちくらみの、しくみと原因。
立ち上がると、重力によって血液は脚や腹部にたまろうとします。通常は自律神経がすばやくはたらき、血管を締めて心拍を上げ、脳への血流を保ちます。パーキンソン病では、この自律神経の調整そのものが低下し、血圧が下がったまま戻りにくくなることがあります。ただし、それだけが原因とは限りません。実際には複数の要因が重なっていることが多く、整理すると次のようになります。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| 自律神経の低下 | 血管を締める指令が弱まり、立位で血圧が下がったまま戻りにくい |
| 薬の影響 | 一部のパーキンソン病治療薬や降圧薬が、内服後しばらく血圧を下げやすくする |
| 食後に起こる | 食後は消化のため血液が胃腸に集まり、食後30〜60分は血圧が下がりやすい |
| 脱水・水分不足 | 循環する血液の量そのものが減り、血圧を保ちにくくなる |
| 体を動かす機会の減少 | 脚の筋肉は血液を心臓へ送るポンプでもあり、動かないほど戻りが弱くなる |
ここに、立て直しのヒントが隠れています。急に立つほど症状が強く出るなら、段階を踏んで立てばよい。脚のポンプ機能が落ちているなら、立つ前に脚を動かしておけばよい。次の章から、この考え方を具体的な手順にしていきます。

STROKE LABの視点:立つ前に血圧を整える3ステップ。
立ちくらみの対処でいちばん手早く効くのが、立ち上がる前に、脚と体幹の力で血圧を先に整えておくことです。これは体を締めつける動作(カウンターマヌーバー)と呼ばれ、自律神経の代わりに、筋肉の力で血管の圧を高める工夫です。次の3ステップで、今日から実践できます。
ステップ1:座ったまま、足首をパタパタ動かす。ベッドの端や椅子に座った状態で、足首を上下に10〜20回動かします。ふくらはぎの筋肉が血液を押し上げるポンプとして働きます。
ステップ2:脚を組む、または膝をぎゅっと閉じる。座った姿勢のまま、脚を組んで力を入れる、または両膝をぎゅっと閉じ合わせる動作を10〜20秒キープします。下半身の血管の圧を高めます。
ステップ3:数を数えながら、ゆっくり立つ。座位のままゆっくり10ほど数えてから、手すりや壁を支えにして立ち上がります。立った直後も、その場で10秒ほど待ってから歩き出します。
朝の起床時は特に血圧が下がりやすいので、寝た姿勢からいきなり立たず、寝た状態でしばらく手足を動かす、座った状態で数十秒待つ、という2段階をはさむとより安心です。合う手順や待つ時間は人によって違うので、作業療法士や理学療法士と一緒に調整すると近道です。

生活の工夫と、道具のコツ。
立ち方の工夫にあわせて、生活面でも血圧が下がりにくい状態をつくっておくと、より安定します。原因が重なっている分、対策も一つに絞らず、無理のない範囲でいくつか組み合わせるのがコツです。
水分はこまめに、主治医の指導の範囲でしっかりとることが基本です。腹部やふくらはぎを軽く圧迫する弾性ストッキングや腹帯も、血液が下にたまるのを防ぐ助けになります。食事は一度にたくさん食べず、少量を回数多く分けると、食後の血圧低下がやわらぐことがあります。食後すぐに立ち上がらず、少し座って休んでから動き出すのも有効です。暑い場所や長い入浴、熱いお風呂は血管を広げて血圧を下げやすくするため、ぬるめのお湯で短めに、を心がけましょう。寝るときに上半身をやや高くしておくと、朝の急激な血圧変化がやわらぐこともあります。運動で下肢の筋力を保っておくと、脚のポンプ機能そのものが底上げされるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。薬の種類や量、飲むタイミングの調整は、必ず主治医と相談してください。

パーキンソン病における起立性低血圧の管理をまとめた総説では、水分・塩分の調整、弾性着衣、体を締めつける動作といった薬を使わない対策が、薬物療法と並ぶ管理の柱として位置づけられていると報告されています。薬の前に、まず生活の工夫から見直す価値があるということです。
限界:質の高い大規模な比較試験はまだ多くなく、効果の大きさは個人差が大きい分野です。効果には症状の程度や体調によって変動があります。生活の工夫は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
自宅での工夫が、その場でフラつきを起こしにくくする応急的な対処だとすれば、専門施設で目指すのは、なぜ血圧が下がりやすいのかを評価し、原因に応じて体そのものを立て直すアプローチです。立ちくらみへの働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 評価。横になった状態と立った状態での血圧・脈拍の変化、症状が出やすい時間帯(起床時・食後・入浴後など)を確認し、原因の重みづけを行います。
2. 下肢筋力とポンプ機能の運動療法。脚の筋力トレーニングを段階的に行い、血液を心臓へ戻すポンプとしての機能そのものを底上げします。
3. 動作と環境の再設計。起床動作・入浴動作・食後の過ごし方など、症状が出やすい生活場面を具体的に洗い出し、一つひとつ手順を組み直します。
STROKE LABが軸足を置くのは、その方に立ちくらみが起こる「場面」と「原因の重なり」を丁寧に見きわめ、運動と生活動作の両面から立て直すという流れです。薬の調整は主治医の役割であり、専門リハはそれと連携しながら、動作と体力の側から支えます。効果には個人差があり、体調によって変動します。

起立性低血圧を伴うパーキンソン病の方を対象に、通常のケアに加えて8週間の脚の筋力トレーニングを行った予備的な研究では、傾斜台を使った検査で、立位時の血圧低下が改善する傾向がみられたと報告されています。脚の筋力そのものが、血圧を保つ土台になりうることを示す結果です。
限界:これは少人数を対象にした予備的な研究で、効果の大きさを断定するものではありません。トレーニングの強度や頻度は個別の体調に合わせて決める必要があり、自己流での強い負荷は避けてください。効果には個人差があり、進行度によって変動します。
脳リハ.comのYouTubeでは、座ったままできる脚の運動や体力づくりの体操を配信しています。無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、いつ・どんな場面で症状が出るかを一緒に確認し、起立の手順、脚の運動、生活動作を、その人の原因の重なりに合わせて調整します。「実際に困っている場面」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と体力の側から支えます。
受診の目安は、意識を失った、転倒してけがをした、症状が繰り返し起こる、悪化してきたといったときです。立ちくらみの原因は起立性低血圧だけとは限らず、脱水や不整脈など別の要因が隠れていることもあります。自己判断せず、早めに神経内科や主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. パーキンソン病で立ちくらみが起こるのはなぜですか?
Q. 薬のせいで立ちくらみが起きることはありますか?
Q. 立ち上がるとき、どうすればフラつきを防げますか?
Q. 自宅でできる対策はありますか?
Q. 立ちくらみは運動やリハビリで良くなりますか?
Q. 立ちくらみで倒れたことがあります。すぐ受診すべきですか?
立ちくらみの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている場面と原因の重なりを一緒に確認し、起立の手順・脚の運動・生活動作を、その人に合わせて組み立てます。起床時や食後など、実際の場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、動作と体力の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
体は変わります。

立ちくらみが増えると、転ぶのが怖くて動くこと自体を避けてしまい、それがさらに体力を落とすという悪循環に陥りがちです。「立つのが怖い」とおっしゃる方に、たくさん出会ってきました。
お伝えしたいのは、立つ前に一段階はさむだけで、体は驚くほど落ち着くことがあるということです。原因は一つではないからこそ、対策も一つに絞らず、自分に合う組み合わせを見つけていく。それだけで、動ける場面はまだまだ広がります。
立ちくらみでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う立ち方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。立ちくらみで意識を失った、けがをした場合は自己判断せず、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月28日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Intersection of Autonomic Dysfunction and Parkinson’s Disease: Insights Into Neurogenic and Classical Orthostatic Hypotension. Cureus / PMC. 2025.(水分・塩分調整、弾性着衣、体を締めつける動作が薬物療法と並ぶ管理の柱と位置づけられていると報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Effect of strength training on orthostatic hypotension in Parkinson’s disease—a pilot study. PMC9236997. 2022.(8週間の下肢筋力トレーニングにより、傾斜台検査での起立時血圧低下が改善する傾向がみられたと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)