パーキンソン病で汗を異常にかく・かかない|原因と対策・自宅でできる工夫
汗は、体からのサインです。
「急に汗が止まらなくなる」「反対に、暑いのに全然汗をかかない」——どちらもパーキンソン病でみられる発汗異常です。汗のかき方には、その方その方のパターンがあります。しくみと、今日から自宅でできる整え方を、原因別に見ていきましょう。

「止まらない」も、「かかない」も。
「真夏なのに、下半身は全然汗をかかない」
同じパーキンソン病でも、悩みは正反対だったりします。ある方は、じっとしていても急に顔や首がびっしょりになり、人前で困る。別の方は、汗をかきたい場面でかけず、体がだるく、微熱が続く。どちらも、決して珍しいことではありません。
多汗も発汗低下も、根っこは同じ自律神経の乱れであることが多いのです。まずはそのしくみから、整理していきましょう。
汗は、体にこもった熱を逃がすための、大切なしくみです。その調整をしているのが自律神経で、パーキンソン病ではこの自律神経の働きに乱れが生じることがあります。発汗の変化は、便秘や立ちくらみと並ぶ、パーキンソン病の代表的な非運動症状のひとつです。全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
発汗異常の、しくみと特徴。
パーキンソン病の発汗異常には、いくつかの原因が重なっています。「これひとつ」で説明できるものではないことを、まず知っておいてください。
| パターン | 考えられている背景 |
|---|---|
| 震えのある側の多汗 | 筋肉の動きに伴う発汗に加え、震えを起こす神経の働きが発汗の中枢を刺激している可能性が指摘されています |
| オフの時間帯の多汗 | 薬の効果が切れている時間帯に、発汗が増えやすいと報告されています |
| 下半身の発汗低下 | 自律神経の障害により、体の一部、特に下半身で汗をかきにくくなることがあります |
| 代償性の多汗 | 下半身で汗をかきにくい分、顔や上半身で多く汗をかいて帳尻を合わせようとすることがあります |
つまり「多汗」と「発汗低下」は、まったく別の症状のように見えて、同じ自律神経の乱れが、部位や場面によって違う形で現れているだけ</span、ということが少なくありません。だからこそ、自己判断で「多汗症」「汗っかき」と決めつけず、パターンを見ていくことが大切になります。
パーキンソン病の自律神経障害を発汗の観点から検討した報告では、心臓の交感神経系や血圧の調整に比べると、発汗系への影響は比較的軽いこと、薬の効果が切れているオフの時間帯には発汗が増えやすいことなどが示されています。また、寒い環境でかえって発汗が増えるという特徴も報告されています。
限界:発汗のしくみを調べた研究であり、対処法の効果を検証したものではありません。発汗の出方には個人差があり、進行に伴って変動します。

STROKE LABの視点:汗を「記録」で読み解く。
発汗異常は原因が一つではないからこそ、まず自分のパターンを「記録」でつかむことが、対策の近道になります。特別な道具はいりません。手帳やスマホのメモで、次の3ステップから始めてみてください。
ステップ1:いつ・どこに・どれくらいを書き出す。「朝10時ごろ、顔と首にどっと」「入浴後、下半身だけ乾いたまま」など、時間帯・部位・量を短くメモします。
ステップ2:服薬の時間と重ねてみる。薬を飲んだ時刻・効いていた時間帯(オン)・切れていた時間帯(オフ)をあわせて記録すると、発汗との重なりが見えてきます。
ステップ3:パターンをもとに、先回りで整える。「オフの時間帯に多汗が出やすい」とわかれば、その時間帯だけタオルを手元に置く、涼しい服に替えるなど、起きる前に備えられます。
この記録は、自分の安心材料になるだけでなく、主治医に「いつ・どんな汗か」を的確に伝える材料にもなります。発汗の変化がパーキンソン病によるものか、他の原因(更年期、甲状腺の病気、薬の副作用など)によるものかを見極める手がかりにもなるため、自己判断で終わらせず、記録を持って相談するのがおすすめです。

場面別の、工夫と道具。
多汗と発汗低下では、必要な工夫が正反対になります。自分のパターンに合わせて、使い分けてください。
多汗が気になる方へ
通気性のよい重ね着にして、汗をかいたら1枚脱げるようにしておくと、体が冷えすぎるのを防げます。ハンドタオルや携帯用の小型扇風機を持ち歩くと、人前でも落ち着いて対処できます。カフェインや香辛料の強い食事は、発汗を強めることがあるため、多汗が出やすい時間帯の前は控えめにするのもひとつの工夫です。「隠す」より「先に備える」ほうが、気持ちの負担は軽くなります。
汗をかきにくい方へ
暑い環境や直射日光を避け、室温は涼しめに保ちましょう。のどが渇く前に、こまめに水分をとることが大切です。入浴は熱すぎるお湯や長湯を避け、湯上がりは涼しい場所でゆっくり休みます。体がだるい、微熱が続く、頭がぼーっとするといった様子があれば、体に熱がこもっているサインかもしれません。無理をせず、涼しい場所へ移動し、水分をとって様子を見てください。体を動かすことで血流や体温調整の働きを支える面もあるため、体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。

パーキンソン病の70代男性が、原因のはっきりしない発熱を繰り返した症例報告では、発汗テストで下半身の発汗低下が確認され、周囲の温度を調整することで発熱が改善したことから、発汗障害による体温のこもり(うつ熱)と診断されています。
限界:1例の症例報告であり、すべての方に同じことが起こるとは限りません。発熱や体調不良には他の原因(感染症など)も考えられるため、自己判断せず医療機関で確認することが大切です。
脳リハ.comのYouTubeでは、無理なく続けられる体操を配信しています。血流や体温調整の働きを支える土台づくりとして、活用してみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、発汗記録をもとに、「困る場面」を予測し、活動のペース配分や環境調整を一緒に組み立てます。外出前の準備、入浴のタイミング、暑い時期の過ごし方など、生活動線に沿って具体的に整えるのが特徴です。
また、体を大きく動かす運動を続けることは、姿勢や動きの改善だけでなく、体力や血流を保つことにもつながり、体温調整の働きを間接的に支える一助になると考えられています。薬の調整(オン・オフのコントロール、発汗に影響する薬剤の見直しなど)は主治医の領域であり、私たちは生活面・動作面から補います。
効果には個人差があり、進行に伴って変動します。運動やリハビリは治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
受診の目安は、原因のはっきりしない発熱が続く、だるさや意識のもうろうとした感じがある、発汗の様子が急に大きく変わった、といったときです。発汗の変化はパーキンソン病だけが原因とは限りません。更年期や甲状腺の病気、感染症、飲んでいる薬の副作用など、他の原因が隠れていることもあるため、自己判断せず、記録を持って神経内科・主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 汗をたくさんかくのは、パーキンソン病のせいですか?
Q. 逆に、汗をかかないのもパーキンソン病と関係がありますか?
Q. 薬の効いている時間帯によって、汗のかき方が変わるのはなぜですか?

Q. 自宅でできる工夫はありますか?
Q. 汗をかかないと、熱中症になりやすいですか?
Q. 発汗の異常は、リハビリで良くなりますか?
発汗の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。発汗の記録をもとに、困る場面を一緒に整理し、生活のペース配分や環境調整を、その人に合わせて組み立てます。薬の調整は主治医を尊重し、私たちは生活面・動作面から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
言い出しにくいものです。

震えや歩きにくさに比べて、汗の悩みは診察でも話題になりにくいものです。でも実際にお会いすると、「人前で顔から汗が滴るのが恥ずかしい」「夏になると体がだるくて怖い」と、静かに、でも切実に語ってくださる方が少なくありません。
お伝えしたいのは、汗のパターンは、記録すれば見えてくるということです。見えれば、備えられます。備えられれば、外出も入浴も、少し怖くなくなります。
発汗でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを一緒に整理し、その方に合う備え方を見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。発汗の変化には他の原因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月28日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- 山元敏正.Parkinson病の自律神経障害:特に発汗系について.自律神経.2020;57(1).(心臓交感神経系に比べ発汗系への障害は軽度であること、オフ時の発汗亢進、寒冷誘発性多汗を報告。sec2エビデンスボックスの出典)
- 迫祐介,麻生泰弘,中村憲一郎,木村成志,熊本俊秀.発汗障害によるうつ熱をきたしたパーキンソン病の1例.臨床神経.2010;50(3):151.(下半身の発汗低下による体温のこもり(うつ熱)の症例を報告。sec4エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)