パーキンソン病で箸が使いにくい|食事動作を助ける道具と練習 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で箸が使いにくい|食事動作を助ける道具と練習

EATING & DEXTERITY

箸は、工夫でまた使えます。

つまんだつもりが、こぼれる。運んでいる途中で、力が抜ける。パーキンソン病では、箸を使う細かい動きが少しずつ難しくなることがあります。皿・道具・動きの3つを整えるだけで、食事はもう一度、楽なものに変わります。しくみと、今日から自宅でできる工夫を整理します。

UPDATED2026
READ約9分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。食べにくさには他の原因もあります。気になる変化は自己判断せず、神経内科で確認してください。
Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
箸の使いにくさは、動作緩慢や固縮など、指先の動きの変化から起こることがあります
02
震え(振戦)と動作緩慢は別のしくみで、対処の考え方も変わります
03
皿を安定させ、道具を変えるだけで、つまみやすさは大きく変わります
04
つまむ・運ぶ・離すを一つずつ、ゆっくり練習するのがコツです
05
食べにくさは他の原因もあります。気になるときは神経内科へ
01
A Meal That Got Harder

「うまくつまめない」と、気づいた日。

A Patient’s Voice
「今まで普通にできていたのに、豆一つ、つまめなくなって」

箸を持つ手は変わらないのに、つまんだつもりが指の間からこぼれる。運んでいる途中で力が抜けて、口元まで届かない。食事は1日3回ある、いちばん身近な動作だからこそ、うまくいかないたびに気持ちが沈む、という方は少なくありません。

でも、知ってほしいのです。これは食事動作の困難で、皿・道具・動きの練習を変えるだけで、ぐっと食べやすくなるということを。

パーキンソン病では、箸で食べ物をつまむ・運ぶ・離すという一連の動作が少しずつ難しくなることがあります。指先の細かい動きは、力の調整とタイミングの両方を必要とする複雑な作業です。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
What Is Happening

箸が使いにくくなる、しくみ。

箸を使う動作には、大きく分けて3つの症状が関わることがあります。動作緩慢(動きが小さく・遅くなる)、固縮(筋肉がこわばる)、振戦(じっとしているときの震え)です。それぞれしくみが異なるため、まずは自分の困りごとがどれに近いかを整理しておきましょう。

症状 箸の場面での現れ方
動作緩慢 箸を開閉する幅が小さくなり、つまむ動作が小刻みで途切れやすい
固縮 指や手首がこわばり、なめらかに開いたり閉じたりしにくい
振戦 箸を構えた瞬間や運ぶ途中に、手先が細かく揺れる
急ぐと悪化 早く食べようとするほど、つまみ損ないや取りこぼしが増えやすい

ここに、立て直しのヒントが隠れています。動きが小さくなるなら、動きを大きく引き出す環境を作ればよい。急ぐと悪化するなら、動作を分けてゆっくり行えばよい。次の章から、この考え方を具体的な手順にしていきます。

03
Reshape The Setting

STROKE LABの視点:皿・道具・動きを「使いやすい形」に変える。

箸の使いにくさの対処でいちばん手早く効くのが、食卓の環境を「つまみやすい形」に整えることです。皿が動かず、道具が扱いやすく、動作が分かりやすければ、指先の負担はぐっと減ります。次の3ステップで、自宅の食卓から見直せます。

Three Steps

ステップ1:皿を動かなくする。皿の下にすべり止めシートを敷くだけで、押さえる手の負担が減り、箸を動かす手に集中できます。ふちの高い皿を使うと、すくう動作も安定します。

ステップ2:道具を変える。太めで軽い持ち手の箸や、バネの力で開閉を補助する箸は、指先の力が弱くても扱いやすくなります。うまくいかない食材だけ、フォークやスプーンに変えるのも現実的です。

ステップ3:動きを分解して練習する。「つまむ・運ぶ・離す」を一つずつ区切り、それぞれをゆっくり行う練習をします。慣れてきたら、区切りを減らして自然な一連の動きに近づけていきます。

豆やスポンジの小片など、つまみやすい物で練習すると、失敗してもこぼれるだけで済み、気軽に続けられます。大切なのは、環境の工夫でうまくいく体験を積み重ね、少しずつ普段の食卓に近づけていくこと。合う道具や練習の量は人それぞれなので、作業療法士と一緒に調整すると近道です。

04
Practice & Assistive Tools

練習のコツと、自助具。

環境を整えたら、動き方と道具でさらに食べやすくなります。合言葉は「一動作ずつ、大きく、ゆっくり」。急がないことが何より大切です。

道具では、太めで軽い持ち手の箸、開閉をバネで補助する箸、柄を太くしたスプーンやフォークが扱いやすいことがあります。豆をつまんで小皿に移す、洗濯ばさみをつまむといった箸を使わない指の練習も、手指の動きの土台づくりに役立ちます。上肢全体を動かす運動も箸操作の安定につながるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。無理に箸にこだわらず、スプーンやフォークと場面で使い分けるのも賢い方法です。

Evidence
自宅でできる手指の課題練習で、指先の細かい動きが整った研究

パーキンソン病の方103名を対象に、課題に特化した自宅での手指トレーニングプログラムを4週間行った無作為化比較試験では、一般的な運動を行った群に比べて、指先の細かい動き(巧緻性)と、それに関わる日常動作の両方が有意に改善したと報告されています。

限界:効果は12週間後には維持されておらず、続けることが前提の練習であることが示唆されています。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。手指の練習は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

出典:Vanbellingen T, et al. Home based training for dexterity in Parkinson’s disease: a randomized controlled trial. Parkinsonism Relat Disord. 2017;41:92-98
つまむ・運ぶ・離す。一つずつ、ゆっくり。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の回復的アプローチまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
道具に「頼る」段階から、指先の力そのものを引き出す段階へ。

自宅での工夫が、皿や道具を変えてその場で食べやすくする代償だとすれば、専門施設で目指すのは、指先の力と動きの幅そのものを引き出す回復的アプローチです。食事動作への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. 手指の課題練習。粘土やペグなど、目的にあった課題を使い、つまむ力と細かい動きを繰り返し引き出します。

2. 上肢全体の運動学習。肩・肘から手首、指先まで、一連の大きな動きを繰り返し、食事動作を支える運動の土台を立て直します。

3. 座位と体幹の安定。食卓に向かう姿勢や体幹の安定を整え、腕や手先が余計な力を使わずに動ける身体の下地をつくります。

STROKE LABが軸足を置くのは、道具の工夫で成功体験を積みながら、並行して指先の力と動きの幅そのものを引き出していくという流れです。道具に頼るだけで終わらせず、身につけていく、その設計を専門的に組み立てます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
たった15分の手指運動でも、直後に巧緻性と握力が改善した研究

パーキンソン病の方60名を対象に、粘土状の道具を使った15分間の手指運動セッションを検証した無作為化比較試験では、対照群と比べて、指先の細かい動きと、握る力・つまむ力の両方が直後に有意に改善したと報告されています。短時間の運動でも、その場の動きやすさに変化をもたらせることを示す結果です。

限界:これは直後の効果を調べた研究で、効果がどれくらい持続するかは示されていません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。手指運動は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

出典:Mateos-Toset S, et al. Effects of a single hand-exercise session on manual dexterity and strength in persons with Parkinson disease: a randomized controlled trial. PM R. 2016;8(2):115-122
Watch & Practice
手や体を動かす体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、手や体を大きく動かす体操を配信しています。食事動作の土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

大きく動く体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、その人の食事の癖や困る場面を一緒に確認し、皿・道具・動きの練習を、その人に合わせて調整します。「実際に食べにくい食材や場面」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは食事動作と生活の側から支えます。

受診の目安は、食べにくさで食事量や体重に変化が出てきた、むせやすくなった、字の変化や体の動きにくさなど他の症状も出てきた、といったときです。食べにくさの原因は指先の動きだけとは限りません。自己判断せず、神経内科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 箸が使いにくくなるのは、パーキンソン病のせいですか?

箸で食べ物をつまむ・運ぶ・離すという一連の動作は、指先の細かい動きの連続です。パーキンソン病では、動きが小さく・遅くなる動作緩慢や、筋肉のこわばり(固縮)が指先にも及ぶことがあり、これが箸の使いにくさにつながることがあります。ただし食べにくさには他の原因もあるため、気になるときは自己判断せず、神経内科で確認してください。

Q. 箸ではなく、スプーンやフォークを使ってもよいですか?

はい、まったく問題ありません。食事は毎日のことなので、疲れやストレスを減らすために道具を変えるのは合理的な工夫です。無理に箸にこだわらず、食べやすい道具を優先しつつ、練習したい場面でだけ箸を使う、という使い分けもおすすめです。

Q. 自宅でできる箸の練習はありますか?

あります。豆や小さなスポンジなど、つまみやすい物を使い、つまむ・運ぶ・離すの動作を一つずつ分けてゆっくり練習するのが基本です。急がないことがポイントです。皿の下にすべり止めシートを敷く、太めの箸を使うといった工夫も助けになります。無理のない範囲で、毎日少しずつ続けるのがおすすめです。

Q. どんな自助具(道具)がありますか?

バネ付きで開閉を補助する箸、太めで軽い持ち手の箸、ふちの高い皿、すべり止めマット、柄を太くしたスプーンやフォークなどがあります。指先の力や動きの状態によって合う道具は変わるため、作業療法士に相談しながら選ぶと、無理なく続けやすいものが見つかります。

Q. 食事の時間と薬のタイミングは関係ありますか?

パーキンソン病の薬は、食事のタイミングによって効き方が変わることがあります。食後に動きが硬くなりやすい、薬が効いている時間に食事を合わせたいといった相談は、自己判断せず主治医に確認してください。私たちリハビリスタッフは、その調整を踏まえたうえで、食事動作そのものの工夫をお手伝いします。

Q. 箸が使いにくいのは震えのせいですか、動作緩慢のせいですか?

どちらの場合もあります。震え(振戦)は、じっとしているときに手が震える症状で、箸を持つ瞬間に安定しにくくなることがあります。一方、動作緩慢は、動き自体が小さく・遅くなる症状で、つまむ・運ぶ動作がぎこちなくなります。しくみが異なるため、対処の考え方も変わります。どちらが強く出ているか、専門家と一緒に確認するとよいでしょう。
07
STROKE LAB

食事動作の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている食事の場面を一緒に確認し、皿・道具・動きの工夫を、その人に合わせて組み立てます。実際に食べにくい食材や場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、食事動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
皿の下に、1枚のシートを。
それだけで箸は変わります。
STROKE LAB代表 金子唯史

箸が使いにくくなると、毎日3回ある食事のたびに、うまくいかない自分を突きつけられます。「もう箸は無理かもしれない」とあきらめかけている方に、たくさん出会ってきました。

お伝えしたいのは、皿の下にすべり止めシートを1枚敷くだけで、箸は驚くほど扱いやすくなることがあるということです。皿を安定させ、道具を選び、動きを分解する。ちょっとした工夫で、食べられる物はまだまだ広がります。

食事動作でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている食材や場面そのものを題材に、その方に合う食べ方を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。食べにくさには他の原因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月6日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Vanbellingen T, Nyffeler T, Nigg J, et al. Home based training for dexterity in Parkinson’s disease: a randomized controlled trial. Parkinsonism Relat Disord. 2017;41:92-98.(課題特化の自宅手指トレーニングが指先の細かい動きと関連ADLを有意に改善したと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
  • Mateos-Toset S, Cabrera-Martos I, Torres-Sánchez I, et al. Effects of a single hand-exercise session on manual dexterity and strength in persons with Parkinson disease: a randomized controlled trial. PM R. 2016;8(2):115-122.(15分間の手指運動セッションが直後の巧緻性・握力・つまむ力を有意に改善したと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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