ブリストル便形状スケール(BSFS)とは?7タイプの見分け方・記録方法と排便支援
「出た」から、
「どう出た」へ。
ブリストル便形状スケール(BSFS)
7タイプの便形状を、苦痛の少ない排便と生活支援へつなぐ。

01|BSFSとは|便の形を共通の言葉にする
Bristol Stool Form Scale(BSFS/ブリストル便形状スケール)は、便の形と硬さの特徴を7タイプで表す方法です。「便が出た」だけでなく、硬い粒だったのか、形が保たれていたのか、水様だったのかを共有できます。[1][6]
分類は短時間でできますが、原著に「必ず何分以内」という制限時間はありません。初回は図の見方を説明し、日誌の書き方まで確認します。記録期間も尺度固有の固定日数ではなく、目的に合わせます。本記事では、日常の傾向を見る運用例として1〜2週間の記録を提案します。
02|7タイプの見分け方|迷いやすい境界を確認
| タイプ | 形の目安 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | 硬い粒がばらばら | 一つずつ独立した硬い塊。 |
| 2 | 塊がつながり、表面がごつごつ | 一本にまとまっていても、硬い粒の集まりに見える。 |
| 3 | 形があり、表面にひび | まとまった便の表面に亀裂がある。 |
| 4 | なめらかで、軟らかい一本状 | 表面がなめらかで、形を保っている。 |
| 5 | 輪郭がはっきりした軟らかい小片 | 軟らかいが、小片の境界は見分けられる。 |
| 6 | 輪郭が崩れた泥状・不定形 | 小片の端が不明瞭で、全体が崩れやすい。 |
| 7 | 固形物のない水様 | 形のある部分が見られない液状の便。 |
上表は特徴を理解するための要約です。実際の分類は、公式チャートの図と説明を見ながら行います。特に2と3は表面のごつごつと亀裂、5と6は小片の輪郭が保たれているかに注目します。[2][3][6]
1〜2は硬便側、6〜7は軟便・水様便側です。3〜4は形のある便の目安として使いやすい一方、研究では3〜5を正常範囲として扱うこともあります。タイプ5を一律に「下痢」「異常」とせず、本人の普段の状態や回数と一緒に読みます。[2]
03|実施手順|排便直後に、見た便を分類する

- 公式チャートと記録用紙を準備。本人に「硬い、軟らかいだけでなく、近い形を選びます」と説明します。
- 排便ごとに観察。可能な範囲で流す前に確認します。便に触れる必要はありません。介助者が確認した場合は、その人が記録します。
- 最も近いタイプを選択。直前の便と図を比較します。見ていない便は推測で埋めず、本人の申告なのか観察なのかを区別します。
- 混在を残す。硬い便の後に水様便が続くなど、一つにまとめにくい時は「初め1、後半6」のように経過を添えます。
- 出しやすさを追記。時刻、量の目安、いきみ、残便感、痛み、漏れ、薬・坐薬・浣腸などとの関係を残します。
排便のなかった日は「排便なし」と書きます。「なし」をタイプ1や0点に置き換えません。おむつへの吸収、水への浸漬、観察の遅れで見え方が変わった場合は、その条件も補足します。これらは記録の質を保つための運用上の工夫で、原版に追加された採点項目ではありません。
04|番号の解釈|高いほど良い評価ではない
タイプ1から4への変化が望ましいことも、タイプ7から4への変化が望ましいこともあります。「3点改善」のように差だけを計算せず、どの形からどの形へ変わり、苦痛や漏れがどうなったかを示します。
| 記録 | 読み取りと次の確認 |
|---|---|
| 1〜2が繰り返す | 硬便の傾向。回数、いきみ、食事・飲水、薬などを確認。 |
| 3〜4だが長くいきむ | 便の形が整っていても、排出の問題は残り得る。姿勢・残便感・排出困難を確認。 |
| 6〜7が繰り返す | 薬、感染を疑う症状、食事変化などを確認。便秘後の少量の漏れなら便貯留も検討。 |
| 1と7を行き来する | 平均4として「良好」としない。各タイプの回数と薬・排便の経過を確認。 |
BSFSだけで便秘症・下痢の原因、腸管通過時間、将来の排便自立度は確定できません。日本の2023年ガイドラインでも、硬便だけでなく排便頻度、いきみ、残便感、排出困難などを組み合わせて評価します。[3]
05|エビデンス|何と関連し、どこまで分かるか
LewisとHeatonの1997年の研究は66人を対象に、便形状と全消化管通過時間を検討しました。開始時の相関はr=−0.54で、硬い便ほど通過が遅い方向の関連が示されました。これは集団としての関連であり、タイプから個人の通過時間を「何時間」と換算する式ではありません。[1]
Blakeらの2016年の研究では、便水分量との相関はρ=0.491でした。便模型の分類は正答率81%、同じ模型を再分類した一致率76%で、タイプ2・3・5・6などの境界では判断が難しいことも示されました。迷う場面でチャートを見直すことには意味があります。[2]
これらの検証対象は主に健常成人や下痢型過敏性腸症候群の患者です。脳卒中後の排便自立を直接予測するカットオフではありません。便の形の変化と、排泄動作・介助量・本人の負担を別々に追います。
診断基準と便形状分類も分けて扱います。Rome FoundationはRome Vの情報を公開していますが、本記事は日本の2023年便秘症ガイドラインと原著を軸に、BSFSの観察・記録方法を解説しています。BSFSの番号だけをIBSの診断基準として使いません。[3][8]
06|脳卒中・神経疾患で見ること|便だけでなく排泄の過程
便意を伝えられるか、トイレまで移動できるか、ズボンを下ろせるか、座位を保てるか。これらが難しいと、便が軟らかくても排便の機会を逃したり、間に合わず漏れたりします。BSFSは便の情報を整理し、動作観察は別に行います。

脊髄損傷後の神経因性腸機能障害に関する2021年ガイドラインでは、便性状に加え、排便量、所要時間、便意、失禁、薬、姿勢、介助を含む評価が勧められています。脊髄損傷に対する知見を、脳卒中全例に同じ手技として適用するものではありません。[4]
排便環境では、足が安定する支持、手すり、援助を呼べる方法を確認します。台を置く場合は移乗時のつまずきやすさまで確認し、一律に高い台を勧めません。姿勢調整だけで解決しない排出困難は医療チームに共有します。
07|臨床ストーリー|形が変わった後も確認を続ける
説明用の架空事例:Aさんの「出たけれど、すっきりしない」
脳卒中後のAさん。最初の1週間はタイプ1〜2が多く、排便時の強いいきみがありました。日誌を見ると、便意があっても更衣介助を待ち、トイレの機会を逃す日がありました。
医師・看護師と薬や便の貯留を確認し、療法士は更衣と移乗の手順、足の支持、介助を呼ぶタイミングを調整しました。飲水は嚥下状態や制限を確認して計画します。
次の週はタイプ3〜4が増えましたが、残便感が続きました。そこで「形が良いから終了」とせず、排便の所要時間と排出困難を医師に共有。本人の目標は、無理にいきまず予定した時間に排便できることとしました。
この例では、便を軟らかくすることと、排出しやすい条件をつくることを別々に評価しています。便形状の正常化だけを成功条件にしないことが重要です。
08|支援と再評価|同じ条件で経過を比べる

再評価では、記録期間、観察者、薬・食事・環境の変更をそろえて確認します。タイプ別の回数、排便のない日、いきみ、漏れ、介助量を並べると、平均値だけでは見えない変化が分かります。
| 課題 | 支援の例 | 確かめる変化 |
|---|---|---|
| 硬便が多い | 薬や摂取状況を医療チームで確認。嚥下・心腎機能などに合わせて計画。 | 形、いきみ、痛み、残便感。 |
| 便意後に間に合わない | 呼び出し方法、動線、更衣、介助のタイミングを調整。 | 漏れた回数、到着までの時間。 |
| 座位が不安定 | 足の支持と手すり、必要な介助を調整。 | 姿勢の安定、疲労、排便の負担。 |
| 水様便が続く | 薬や発症経過、発熱・腹痛、便貯留の可能性を共有。 | 水様便の回数、全身状態。 |
水様便が漏れていても、硬い便の貯留に伴う溢流性便失禁の場合があります。特に便秘が続いた後の漏れは、下痢と決めつけず診察につなげます。[4]
血便、持続する強い腹痛、嘔吐、ガスが出ない状態、発熱などを伴う場合は、日誌をためるより受診・報告を優先します。[5]
09|臨床記録PDFと公式チャート
2ページのPDFに、7タイプの特徴の要約、排便ごとの記録欄、追加評価、支援計画、再評価欄をまとめました。原版図版の転載ではなく、公式チャートと併用する記録用紙です。
分類は原版をご確認ください。公式図版の転載・研究利用は提供元の利用条件に従ってください。
参考文献・公式資料
- Lewis SJ, Heaton KW. Stool form scale as a useful guide to intestinal transit time. Scand J Gastroenterol. 1997;32:920–924.
- Blake MR, Raker JM, Whelan K. Validity and reliability of the Bristol Stool Form Scale in healthy adults and patients with diarrhoea-predominant irritable bowel syndrome. Aliment Pharmacol Ther. 2016;44:693–703.
- 日本消化管学会 編.便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症.Minds公開資料.
- Management of Neurogenic Bowel Dysfunction in Adults after Spinal Cord Injury: Clinical Practice Guideline for Health Care Providers. 2021.
- NIDDK. Symptoms & Causes of Constipation.
- Rome Foundation. Bristol Stool Form Scale:公式チャートの入手案内.
- Rome Foundation. Copyright and licensing.
- Rome Foundation. BSFS and Rome V Criteria:更新情報.
文献確認:2026年11月1日。事例・イラストは説明用です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)