Stroke Impact Scale(SIS)とは?脳卒中患者の感情面・生活参加・QOL評価を療法士向けにわかりやすく解説【論文サマリー】
機能回復だけが、
脳卒中後のQOLではない。
「歩けるようになったのに、なぜか元気がない」——退院後にそう感じるご家族は少なくありません。国際的な評価指標SISスコアの研究は、感情面と社会参加こそが、生活の質を左右すると示しています。本記事ではその根拠と、ご家族にできる具体的なサポートをお伝えします。
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こんなお悩みはありませんか?
退院後、歩行や食事が少しずつできるようになっても、「なんとなく元気がない」「以前と別人のようだ」と感じるご家族は多くいます。
これは気のせいではありません。身体機能の回復と、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)の回復は、必ずしも一致しないのです。
本記事では、その研究の内容とご家族にできる具体的なサポートを、わかりやすくお伝えします。
SISスコアとは何か。
SIS(Stroke Impact Scale:脳卒中影響度尺度)スコアは、脳卒中後の生活の質を多角的に測る国際的な評価指標です。患者さん自身が「自分の生活をどう感じているか」を5段階で評価します。
医師や療法士が外から測る評価とは異なり、「本人の実感」を数値化できる点が特徴です。
歩けるか・手が動くかという「できる・できない」だけでなく、「気持ちの安定」「人との交流」「社会への参加」なども評価します。
これにより、機能的には改善していても生活の質が低いという見落とされがちな課題を発見できます。
SISスコアが評価する8つの領域。
筋力・動きの範囲・体幹(胴体を支える力)の安定性などを評価します。
記憶力・注意力・問題解決能力などの認知機能(脳の情報処理力)を評価します。
気分の安定性・うつ状態(気持ちが沈んだ状態)の有無を評価します。研究では特にこの領域のスコアが低い傾向があります。
話す力・理解する力などの言語機能を評価します。
食事・入浴などの基本的な日常生活動作と、買い物・家事など複雑な生活動作を評価します。
屋内外の移動・歩行能力などを評価します。
手の器用さ・物を掴む力など、細かい手の動きを評価します。
地域活動・趣味・仕事などへの参加の度合いを評価します。機能が改善しても、この領域が低いケースがよく見られます。
評価の構造:各領域で患者が感じる困難さを5段階(1=非常に困難〜5=困難なし)で自己評価します。各領域スコアは0〜100点に換算されます。
臨床への活用:SISスコアを定期的に評価することで、HRQOL(健康関連生活の質)の変化を客観的にモニタリングできます。Modified Rankin Scale(mRS)や認知機能評価(MMSE)と組み合わせた包括的アセスメントが推奨されます。
エビデンス:White JH et al. Arch Phys Med Rehabil. 2007;88(9):1140-6. では、SISスコアおよびHRQOL(SF-36など)を用いて発症後1・3・5年の地域在住者をコホート比較しています。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは、身体機能の改善だけでなく、感情面・社会参加・QOL全体を見据えた個別プログラムを提供しています。退院後のリハビリに悩むご本人・ご家族の無料相談を随時受け付けています。
なぜ感情面が低下するのか。
脳の損傷は、体を動かす神経だけでなく、感情を調節する回路にも影響を与えます。退院後、身体機能が改善しても感情面が追いつかないのはそのためです。
さらに、社会的な役割の喪失・活動制限・孤独感が重なり、「何のために生きているか分からない」という気持ちになることもあります。これは心の弱さではなく、脳卒中後に起こりやすい医学的な変化です。
感情面の低下を引き起こす主な要因。
脳卒中後の感情低下には、神経学的な要因と心理社会的な要因の両方が関わっています。
有病率:脳卒中後うつ(Post-stroke Depression: PSD)は発症後1年以内に約30〜40%に認められるとされています(Hackett ML et al., Lancet Neurol. 2014)。
White(2007)の知見:SISスコアを用いた評価では、筋力(Physical Function)と並んで感情(Emotion)領域のスコアが低い傾向が示されました。機能的自立度が高くても感情スコアが低い患者が多く、包括的評価の重要性が示唆されています。
研究が示すエビデンス。
White JH らは2007年、地域在住の脳卒中者を発症後の時期によって3つのグループに分け、機能・薬物療法・社会サービス利用・QOLを比較しました。
コホート1:発症1年前後の脳卒中者(約30名)
コホート3:発症3年前後の脳卒中者(約30名)
コホート5:発症5年前後の脳卒中者(約30名)
評価指標にはModified Rankin Scale(障害度)・MMSE(認知機能)・SIS(健康度・QOL)・HRQOL・社会的サポートスケールを用いました。
主な研究結果。
| 指標 | 発症1年後 | 発症3年後 | 発症5年後 |
|---|---|---|---|
| 再発リスク疾患あり | 97% | 97% | 87% |
| 抗凝固薬を服用 | 73% | 63% | 58% |
| 降圧剤を服用 | 80% | 80% | 61% |
| 社会サービス利用 | 60% | 45% | 50% |
| 全自立(ADL介助不要) | 63% | 74% | 73% |
出典:White JH et al. Arch Phys Med Rehabil. 2007;88(9):1140-6.
SISスコアの8領域を詳しく見る。
SISスコアは患者自身の自己評価であることが最大の特徴です。各領域での困難さを「1(非常に困難)〜5(困難なし)」で評価し、0〜100点に換算します。
回復への道のり。
感情面・QOLの回復は、段階的なアプローチが有効です。焦らず、一歩一歩進んでいくことが大切です。
臨床心理士・カウンセラーとの個別セッションや、同じ経験をもつ仲間とのグループカウンセリングが有効です。感情や思考を整理するサポートを受けましょう。
家族・友人・地域コミュニティとのつながりが感情の安定を支えます。脳卒中サポートグループへの参加も孤立感の軽減に有効です。
規則正しい起床・食事・運動・休息のリズムが感情の安定を助けます。以前の趣味や楽しみを少しずつ再開することも、意欲の回復につながります。
運動は身体だけでなく精神面にも好影響を与えます。理学療法士と連携した個別の運動プログラムや、他の患者さんとのグループ運動も社会的交流を促します。

STROKE LABでは、SISスコアなどを用いてQOL全体を評価し、ご本人の「生きる豊かさ」を回復するための個別プログラムを提供しています。退院後の継続リハビリに悩まれているご家族も、まずはご相談ください。
ご家族ができるサポート。
ご家族の存在は、脳卒中後の感情回復において最も重要な支えです。「何か特別なことをしなければ」と構える必要はありません。
日々のかかわりで大切にしたいこと。
声かけの例。
「今日はどんな気分ですか?話したいことがあればいつでも聴きますよ。」
「前に好きだった〇〇、少し一緒にやってみませんか?無理のない範囲で。」
「焦らなくていいです。あなたのペースで進めましょう。」
感情サポートの6つのアプローチ。
| アプローチ | 内容 | 対象・方法 |
|---|---|---|
| 心理カウンセリング | 感情・思考の整理を専門家がサポート | 個別・グループ両方 |
| 社会サポートネットワーク | 家族・地域コミュニティとのつながり強化 | 家族教育・支援グループ参加 |
| 生活リズムの確立 | 規則正しい日課・趣味活動の計画 | 日常スケジュール作成 |
| 身体活動・運動 | 精神面にも好影響する運動の継続 | 個別・グループエクササイズ |
| 認知行動療法(CBT) | 否定的な思考パターンを変える療法 | 専門セラピストとの個別セッション |
| リラクゼーション・マインドフルネス | ストレス軽減・感情安定のための実践 | 呼吸法・瞑想・専門プログラム |
在宅復帰と公的支援制度。
White(2007)の研究では、在宅脳卒中者の社会サービス利用率は発症1年後で60%でした。しかしその内容を見ると、理学療法(身体リハビリ)の利用は19%にとどまっています。多くの方が、使える支援制度を把握できていない可能性があります。
在宅復帰チェックリスト。
主な公的支援制度。
| 制度名 | 内容・使える場面 | 窓口 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 各種福祉サービス・税控除・交通費助成などを受けられます | 市区町村の福祉窓口 |
| 介護保険 | 訪問リハビリ・デイケア・福祉用具レンタル・住宅改修などに使えます(要介護認定が必要) | 市区町村・地域包括支援センター |
| 障害福祉サービス | 居宅介護(ホームヘルプ)・就労支援など生活全般の支援を受けられます | 市区町村の障害福祉担当窓口 |
| 高額療養費制度 | 1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられます | 加入している健康保険組合・協会けんぽ |
| 自立支援医療 | 精神科への通院や心理的な治療の自己負担を軽減する制度です | 市区町村の福祉窓口 |
| 障害年金 | 脳卒中後の障害が一定以上の場合、受給できる可能性があります(要件あり) | 年金事務所・市区町村 |
回復までの期間と予後。
White(2007)の研究では、発症1年後・3年後・5年後を比較することで、脳卒中後の長期的な生活の変化を明らかにしました。全自立の割合は発症1年後63%から3年後74%へと改善しています。
一方で感情面や参加の課題は長期にわたって継続する傾向があります。機能回復のピークを過ぎても、QOLの改善は続けられます。
再発リスクとなる疾患を1つ以上もつ方が発症5年後でも87%にのぼる事実は、継続的な医療・薬物管理の重要性を示しています。
抗凝固薬(血栓を防ぐ薬)の服用率が年数とともに低下しているデータは、退院後の薬の管理に注意が必要であることを示唆しています。かかりつけ医と定期的に相談することが大切です。
よくあるご質問。
SIS(Stroke Impact Scale:脳卒中影響度尺度)スコアは、脳卒中後の生活の質(QOL)を多角的に評価する国際的な指標です。
身体機能・記憶・感情・コミュニケーション・ADL・移動能力・手の機能・社会参加の8領域を患者さん自身が5段階で評価します。機能面だけでなく「生きる豊かさ」全体を捉えられる点が特徴です。
White(2007)の研究では、地域在住の脳卒中者において筋力と並んで感情面のスコアが特に低いことが示されました。
脳の損傷による神経学的変化に加え、退院後の社会的孤立・活動制限・役割喪失などが感情面の低下を引き起こします。感情面のサポートはQOL向上に不可欠です。
White(2007)の研究では、発症1年後のコホートで社会サービスを利用していたのは60%でした。発症3年後は45%、5年後は50%と変化します。
利用内容はヘルパー21%、ガーデニング支援24%、食事作り支援19%、理学療法19%でした。多くの方が継続的なリハビリから離れている実態が示されています。
ご家族の存在そのものが最大のサポートです。以前の趣味や楽しみを一緒に再開する機会をつくること、毎日の生活リズムを整えること、話を聴く時間をもつことが有効です。
地域の支援グループへの参加を促すことも有効です。「回復を急かさない」という姿勢も大切です。
機能回復には「6ヶ月の壁」と呼ばれる時期がありますが、QOL(生活の質)は機能回復とは別の経過をたどります。
White(2007)の研究では発症1〜5年後を比較しており、長期にわたって感情面や参加の課題が残ることが示されています。生活の質の向上を目指したリハビリは、発症から年数が経っていても有効です。
STROKE LABは脳神経科学と徒手技術に特化した自費リハビリ施設です。SISスコアなどを活用して機能面だけでなく感情・参加・QOL全体を評価し、個別化されたプログラムを提供します。
退院後のリハビリに悩むご本人・ご家族の無料相談も受け付けています。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経科学と徒手技術(手を使った専門的なリハビリ技術)に特化した自費リハビリ施設です。SISスコアを含む包括的評価を基に、身体機能の改善だけでなく感情面・社会参加・QOL全体を見据えた個別プログラムを提供します。
— STROKE LABでの脳卒中後リハビリの実際の様子です。
「退院後しばらくは家に閉じこもりがちで、何をしても楽しくない状態でした。STROKE LABで身体のリハビリを続けながら、感情面のことも相談できたことで、少しずつ外に出られるようになりました。」— 60代・男性・脳梗塞・発症2年後
「体は動くようになったけど、気持ちがついていかなくて悩んでいました。机上の評価だけでなく、自分が日々どう感じているかをちゃんと聞いてもらえたことが心強かったです。今は趣味の園芸も再開しています。」— 70代・女性・脳出血・発症1年6ヶ月後
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諦めないでください。

身体が回復しても「気持ちが戻らない」と感じるご家族、そしてご本人は、少なくありません。それは決して心が弱いからではなく、脳卒中後に起こりやすい医学的な変化です。
White(2007)の研究が示すように、機能回復だけを追いかけていては、生活の質は改善しません。感情面・社会参加・日々の豊かさを一緒に取り戻すことが、本当の意味でのリハビリだと私は考えています。
発症から何年経っていても、適切なサポートがあれば生活の質は必ず改善できます。まずは無料相談から、一歩を踏み出してみてください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)