vol.107:パーキンソン病と転倒予防に対するエビデンス パーキンソン病リハビリ論文
目次
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カテゴリー
歩行、神経系
タイトル
パーキンソン病と転倒:ビデオ録画による実際の転倒の記録
引用文献
Falls and Parkinson’s Disease: Evidence from Video Recordings of Actual Fall Events.
?PubMed Weaver, T. B., J Am Geriatr Soc. 2016 Jan;64(1):96-101.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・転倒の瞬間を実際に見ることは少なく、どのように転んだかは常に推測せざるを得ないものと考えていたが、本研究は高齢者施設に住む方々の転倒の瞬間を録画し分析しているため、この論文の知見を活かすことでパーキンソン病患者様の転倒時の様子をより確かなものに出来るのではないかと思ったため。
内 容
目 的
・パーキンソン病の有無による転倒の特性の違いを実生活の録画から分析すること。
方 法
・2つの高齢者施設に住む被験者306名(パーキンソン病群16名、コントロール群290名)。
・2007-2013年の間、共有スペースと居室(同意を得た上で)の被験者の生活を録画した。
・転倒は職員の報告をもとに発見され、ビデオ分析された。
・転倒の定義は「意図せず床、地面などの低いところに接触すること」だった。
・転倒はfall video analysis questionnaireで分析され、以下の4項目の評価を中心に行った。
・incorrect weight shift:自身の動きで重心が支持基底面から外れること
・tripping:椅子などなにか外的環境の影響で躓く、支持基底面から重心が外れること
・reaching reaction:上記二つの結果、上肢で何かに掴まろうとした(保護伸展反応)。
・reactive step:支持基底面から重心が外れた結果、下肢のステッピングが生じた。
結 果
・全部で960回の転倒を分析
・パーキンソン病の有する被験者はコントロール群に比べ、1.3倍自身の動きで、1.5倍躓きで転ぶことが多かった。
・パーキンソン病群の約半数(50.7%)の転倒は歩行中に生じた。
・支持基底面から重心が外れたあと、パーキンソン病群は全転倒のうち47.9%にステッピングが生じたが、歩幅がコントロール群に比べて小さいことが多かった。
・パーキンソン病群の上肢保護伸展反応は全転倒のうち36.6%に見られた。そのうち88.9%は把持に成功していた。
論文背景や興味深かったこと
本論文にて「転倒」の定義は「意図せず床、地面などの低いところに接触すること」とされていたが、ステッピングの有無が観察されていたため、定義に疑問を持った。
ステッピングが生じたのであれば低いところに足底以外の身体が接触することはないはずであり、本論文での「転倒」は支持基底面から重心が外れただけの状態、ふらつきのような「転倒しそうだった」状態も含まれているのではないかと思ったからだ。
しかし、考察にて「転倒しそうだった」状態は分析対象外と明記されていた。このことからわかることは、パーキンソン病患者はステッピングが出たとしても転倒してしまう恐れがあるということだ。その証拠に、本研究のパーキンソン病群のステッピングの歩幅はコントロール群より小さく、ステッピング反応の不十分さを示唆している。
明日への臨床アイデア
パーキンソン病の患者様を評価した際、「ステッピングが出ているから大丈夫」と安易に考えてはいないだろうか。ステッピングの大きさなど実用性を合わせて評価していきたい。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)