【2026年版】Wolf Motor Function Test(WMFT) 評価項目から実施方法、エビデンス、リハビリまで
WMFTの採点基準と17項目を、新人セラピストのために完全解説する。
ウルフ・モーター・ファンクション・テスト(WMFT)は、脳卒中後上肢機能を定量化できる国際標準の評価尺度です。17項目の時間計測と機能的能力スコア(FAS)を組み合わせることで、CI療法の効果判定から退院後のゴール設定まで、幅広い臨床判断を支えます。採点の迷いをなくすために、この記事ですべてを整理しましょう。
— WMFTの実施方法と各タスクの動作確認ができます。評価前に必ず視聴してください。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
石川さんは数年前に脳卒中を発症し、右半身に麻痺が残っています。リハビリセンターで上肢機能回復を目指して訓練中です。本日は担当の田中先生がWMFTを用いて機能を評価します。
「石川さん、前腕をテーブルに置いてください。」石川さんは深呼吸をして、肩を使って前腕をそっとテーブルに置きました。動作はぎこちないものの、患者の意志が伝わる確かな動きでした。FAS:3点。
WMFTに初めて出会う新人セラピストの多くは、「なぜ時間も測るのか?」「0点と1点の違いがわからない」という戸惑いを感じます。この評価は、スコアを付けるだけでなく「どの動作でどこが止まるか」を観察する眼を同時に鍛えるツールでもあります。
WMFTの定義と特徴。
Wolf Motor Function Test(WMFT)は、Steven Wolf博士らが開発した上肢運動機能の標準化評価です。脳卒中・外傷性脳損傷後の患者を主な対象とし、リハビリテーションの効果を定量的に測定するために設計されました。
①高い信頼性:評価者間ICC>0.97、評価者内ICC>0.97(Wolf et al., 2001)。誰が評価しても同等の結果が得られます。
②機能的タスク構成:缶を持ち上げる・鍵を回すなど日常生活に即した動作を測定します。神経学的回復と生活機能の橋渡しができます。
③介入感度の高さ:CI療法・課題指向型訓練の前後変化を鋭敏に捉えます。治療効果の根拠として研究でも広く使用されます。
WMFTの3つの主な特徴。
主に脳卒中後・外傷性脳損傷後の上肢機能評価に使用されます。慢性期患者のCI療法適応判断にも活用されます。
両上肢で約30〜45分が目安です。各タスクの制限時間は120秒です。慣れると30分前後で完了できます。
評価者間・評価者内信頼性ともにICC>0.97。内的一貫性(Cronbach’s α=0.92〜0.97)も高く、構成概念妥当性・基準関連妥当性も確認されています。
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上肢機能は、適切なリハビリで変わります。
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理論的背景と測定原理。
脳卒中後に麻痺側上肢を使わない習慣が定着することを「学習性不使用(Learned Nonuse)」といいます。WMFTはCI療法とともに開発され、この学習性不使用からの回復を定量化する目的があります。
WMFTが測定する2つの次元。
WMFTは「どこまでできるか(質)」と「どれだけ速くできるか(量)」という2つの次元で上肢機能を評価します。FASスコアが質(運動遂行能力)、タイム計測が量(運動速度・効率)を表します。
タイム改善は「慣れ」による場合もあります。FASスコアが変化しないのにタイムだけ短縮した場合は、代償動作の巧緻化の可能性を疑う必要があります。
対象・方法:脳卒中患者222名を対象にWMFTの測定特性を検証。評価者間・評価者内信頼性、内的一貫性を分析。
主要結果:評価者間ICC=0.97以上、評価者内ICC=0.97以上、Cronbach’s α=0.92〜0.97と高い信頼性を確認。
出典:Wolf SL, et al. Assessing Wolf Motor Function Test as outcome measure for research in patients after stroke. Stroke. 2001;32(7):1635-1639.
類似評価尺度との鑑別。
上肢機能評価にはFMA・ARAT・BBT・MALなど複数の選択肢があります。WMFTの特徴を正しく理解して、評価目的に応じた使い分けをしましょう。
| 評価尺度 | WMFT(本記事) | FMA-UE | ARAT |
|---|---|---|---|
| 主な測定対象 | 機能的上肢動作(時間+FAS) | 分離運動・反射 | 物品操作(つかむ・つまむ) |
| 項目数 | 17項目(時間計測15+筋力2) | 66項目(上肢66点) | 19項目 |
| 所要時間 | 30〜45分 | 30〜45分 | 約15〜20分 |
| 最適使用場面 | CI療法・課題指向型訓練の効果測定 | 急性期〜回復期の神経学的回復 | 物品把持・操作能力の評価 |
| MDC目安 | FAS:約0.7点 / 時間:約2.3秒 | 約5〜7点(上肢スコア) | 約5点 |
評価方法と採点基準(完全版)。
WMFTは17のタスクで構成されます。各タスクで「機能的能力スコア(FAS):0〜5点」と「所要時間(秒)」の両方を記録します。スコアリングの基準をしっかり身につけることが、この評価の核心です。
| 点数 | 判定基準 | 臨床的解釈 |
|---|---|---|
| 0 | 麻痺側上肢でタスクを試みない | 完全麻痺または意欲・認知的問題の可能性 |
| 1 | 麻痺側は動かず、非麻痺側のみを使用してタスクを実施 | 麻痺側の随意運動はほぼ不可。学習性不使用の可能性が高い |
| 2 | 麻痺側で試みるが、著明な代償動作あり(体幹の大きな傾きなど) | 随意運動はあるが質が低い。代償パターンに注目 |
| 3 | 麻痺側で完了できるが、非麻痺側の補助が必要(安定・位置調整など) | 機能的動作は可能。片手機能の自立に向けた介入段階 |
| 4 | 正常に近いが、明らかに遅い・努力感・ぎこちなさが残る | 機能は回復しているが速度・流暢性に課題。タイム改善を目標に |
| 5 | 正常と見なせる動作(速度・協調性ともに健側と同等レベル) | 臨床的な回復の到達点。維持・般化の支援へ |
※各タスクの時間スコアは別途記録。120秒以内に完了できない場合は時間を120秒として記録し、FASはその時点の達成状況で判定します。
必要物品一覧。
評価前に下記の物品をすべて準備し、患者が座る椅子の高さを調整(足が床につく高さ)してから開始します。
| 必要物品 | サイズ・重量の目安 |
|---|---|
| テーブル | 長さ30cm程度 |
| 椅子 | 座面高さ40〜45cm(足底接地) |
| ベッドサイドテーブル | 高さ60〜75cm |
| 箱 | 高さ25cm・幅奥行き20〜25cm |
| 手首重り | 0.5kg〜(複数準備) |
| 飲料缶 | 350ml |
| 鉛筆 | 長さ18cm |
| クリップ | 長さ5cm |
| 小さな円盤 | 直径3cm |
| メモカード | 7.6cm × 12.7cm |
| 鍵と鍵穴 | 標準サイズ |
| タオル | フェイスタオルサイズ |
| バスケット | 片手で持てるサイズ |
| ダイナモメーター(握力計) | 標準的な握力計 |
| ストップウォッチ | 各タスクの時間計測用 |
17タスク詳細・口頭指示・採点ポイント。
まず非麻痺側から全タスクを実施し、次に麻痺側を実施します。「どうぞ」でスタート、「止めてください」で終了。120秒を超えたら必ず終了です。
| No. | タスク名 | 口頭指示 | FAS/時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 前腕をテーブルに置く(横向き) | 「前腕をテーブルに置いてください。」 | 両方 |
| 2 | 前腕を箱に置く(横向き) | 「前腕を箱に置いてください。」 | 両方 |
| 3 | 肘を伸ばす(横向き) | 「肘を伸ばしてテーブルに置いてください。」 | 両方 |
| 4 | 肘を伸ばす(重りを押す) | 「重りを押して肘を伸ばしてください。」 | 両方 |
| 5 | 手をテーブルに置く(正面) | 「手をテーブルに置いてください。」 | 両方 |
| 6 | 手を箱に置く(正面) | 「手を箱に置いてください。」 | 両方 |
| 7 | 重りを箱に置く ★筋力測定タスク |
「重りを持って箱に置いてください。(最大重量)」 | 重量記録 |
| 8 | 物を取って戻す(0.5kg重り) | 「重りを取って元に戻してください。」 | 両方 |
| 9 | 缶を持ち上げる(350ml) | 「缶を持ち上げてください。」 | 両方 |
| 10 | 鉛筆を持ち上げる(3点持ち) | 「鉛筆を持ち上げてください。」 | 両方 |
| 11 | クリップを持ち上げる(2点持ち) | 「クリップを持ち上げてください。」 | 両方 |
| 12 | 小さな円盤を積む | 「小さな円盤を積んでください。」 | 両方 |
| 13 | カードをひっくり返す | 「カードをひっくり返してください。」 | 両方 |
| 14 | 握力測定(ダイナモメーター) ★筋力測定タスク |
「ダイナモメーターを握ってください。」 | kg記録 |
| 15 | 鍵を回す(180度) | 「鍵を回してください。」 | 両方 |
| 16 | タオルをたたむ | 「タオルをたたんでください。」 | 両方 |
| 17 | バスケットを持ち上げる | 「バスケットを持ち上げてください。」 | 両方 |
介入への橋渡しとエビデンス。
WMFTのスコアは「どんな訓練が必要か」を示す羅針盤になります。FASが低いフェーズから高いフェーズへ、段階的に介入プログラムを設計しましょう。
他動的・促通的アプローチで随意運動を引き出します。神経筋促通法(PNF、Bobath)・電気刺激(NMES)などの活用を検討します。患者の意欲・認知機能の確認も必要です。
WMFTと同様の日常タスク練習(缶・鉛筆・カードなど)を繰り返します。1回30〜60分・週3〜5回の集中的訓練が推奨されます(Wolf et al., 2006)。代償動作を最小化しながら動作の質を改善します。
タイム短縮に焦点を当てた反復練習へ移行します。制約誘発(CI療法)の導入を検討する段階です。10日間・毎日6時間の集中プログラムが原型ですが、修正版(mCIMT)も有効です。
自宅・職場での実使用を促進します。Motor Activity Log(MAL)で日常生活での使用頻度・質を追跡し、般化を確認します。定期的なWMFT再評価で維持を確認します。
対象・方法:脳卒中発症3〜9か月後の患者222名を対象にCI療法(10日間・毎日6時間)の効果をRCTで検証。主要アウトカムにWMFTを使用。
主要結果:介入群でWMFT所要時間が有意に短縮(p<0.001)。FASスコアも有意改善。効果は12か月後まで持続。
出典:Wolf SL, Winstein CJ, Miller JP, et al. Effect of constraint-induced movement therapy on upper extremity function 3 to 9 months after stroke. JAMA. 2006;296(17):2095-2104.

STROKE LABでは、WMFTなどの標準化評価をもとに、お一人おひとりの上肢機能を正確に把握し、科学的根拠に基づいたプログラムを提供しています。退院後も諦めずに、一緒に取り組みましょう。
多職種連携と環境調整。
WMFTのスコアはOTが主導することが多いですが、そのデータはチーム全体の臨床判断に役立てられます。評価結果の共有と役割分担を明確にしましょう。
多職種連携の役割分担。
| 職種 | WMFTに関連する主な役割 | 連携のポイント |
|---|---|---|
| OT(作業療法士) | WMFT主評価・採点・結果解釈。日常生活動作への介入計画立案 | FAS・タイムの両結果をカンファで共有する |
| PT(理学療法士) | 体幹安定性・肩甲帯機能の評価と介入。上肢リーチ改善の土台づくり | WMFTの近位タスク(項目1〜6)の改善に体幹介入が寄与することを共有 |
| ST(言語聴覚士) | 口頭指示の理解確認・認知機能評価(検査実施時の0点要因を鑑別) | 低スコアが「運動障害か認知・高次脳機能か」の鑑別情報を提供 |
| 看護師 | 日常生活場面での麻痺側使用状況を観察・記録 | FAS3〜4点の患者が病棟ADLで麻痺側を使えているかを報告してもらう |
| 医師 | 疼痛・筋緊張亢進など評価の妨げになる医学的問題の管理 | 痙縮が強い場合にボツリヌス療法の適応を相談する |
| MSW(ソーシャルワーカー) | 退院後の自費リハビリ・介護サービス調整 | WMFT結果を根拠に「継続介入の必要性」を退院調整に活用する |
「WMFTのスコアを看護師さんと共有すると、病棟でも麻痺側を意識的に使う声かけをしてくれるようになりました。評価結果を「自分だけのもの」にしないことが大切です。」
「退院時にWMFTのタイムスコアをご家族に見せると、具体的な数値で改善が伝わります。次のリハビリへの動機づけになります。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
新人セラピストがWMFT実施・採点時にはまりやすい3つの落とし穴を紹介します。先輩から後輩に伝えておきたい実践知です。
臨床判断の分岐点。
「採点で迷ったら『患者さんが麻痺側を使おうとしているか』に立ち返ると、0点〜2点の判断がクリアになります。意欲と認知の確認にもなります。」
「タイムが改善したのにFASが変わらない場合は、代償動作の巧緻化を疑います。タスクの質を動画で確認すると見えてきます。」
予後とゴール設定。
WMFTのベースラインスコアは、介入後の改善幅を予測する情報を含んでいます。MDCとMCIDを基準に、現実的かつ挑戦的なゴールを患者・家族と共有しましょう。
MDC(最小検出変化量):FASで約0.7点、時間スコアで約2.3秒(Morris et al., 2001)。この値を下回る変化は測定誤差の範囲と解釈されます。
MCID(最小臨床的重要差):FASで約1.0点が目安(脳卒中患者)。患者が「改善した」と実感できる変化量の基準です。ゴール設定の際に活用しましょう。
よくある質問(新人の疑問)。
臨床的には15項目(時間計測タスク)の結果が特に重視されます。
項目7(重りを箱に置く)と項目14(握力測定)は筋力評価で、タイムスコアとは別に解釈します。研究目的では17項目すべてを記録することが推奨されています。
0点は麻痺側での「試み」がまったくない状態です。
1点は麻痺側が動かないものの、非麻痺側を用いてタスクを遂行しようとする意図が見られる状態です。「患者が麻痺側を使おうとしているか」が判断の分岐点です。
時間は120秒として記録します。
FASスコアは「120秒時点での達成度」に基づいて採点します。完全に動けなかった場合は0点、途中まで動作できた場合はその程度に応じて1〜2点を付けます。
FMAは関節ごとの分離運動・反射を評価するため、急性期〜回復期の神経学的回復の把握に向いています。
WMFTは日常的な物品操作タスクを中心とするため、機能的回復の測定とリハビリ効果の評価に適しています。両者を組み合わせると、神経学的・機能的回復の両軸で評価できます。
CI療法前後でWMFTを用いる場合、評価者を統一することが最重要です。
集中的な練習により短期間でスコアが変化するため、評価のタイミング(直後・1か月後)も明確にしましょう。MDCは約0.7点(FAS)なので、それ以上の変化が臨床的に意味のある改善の目安です。
MDC(最小検出変化量)はFASで約0.7点、時間スコアで約2.3秒です(Morris et al., 2001)。
MCIDについては脳卒中患者では約1.0点(FAS)が目安とされています。ただし個別の目標設定に応じて解釈することが重要です。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。WMFTなどの標準化評価をもとに、お一人おひとりの上肢機能を正確に把握し、科学的根拠に基づいた個別プログラムを提供しています。退院後も上肢機能の回復を諦めたくない方のために、専門スタッフが全力でサポートします。
— STROKE LABでの上肢リハビリテーションの実際の様子です。

「WMFTはスコアの数字より、どの動作でどこが止まるかを見ることが大切です。タイムが伸びても代償動作が増えていないか、常に意識して観察しています。」— 作業療法士・臨床経験12年・上肢リハビリ専門
「採点で迷ったら”患者さんが麻痺側を使おうとしているか”に立ち返ると、0〜2点の判断がクリアになります。評価は患者さんの意欲を確認する機会でもあります。」— 理学療法士・臨床経験9年・脳卒中リハビリテーション
あわせて読みたい:STROKE LABの脳卒中リハビリテーションを徹底解説
諦めないでください。

脳卒中後の上肢麻痺は、退院後も回復が続く可能性があります。WMFTのスコアが低くても、それは「終わり」ではありません。適切な評価と的確な介入があれば、機能は変わります。
STROKE LABでは、標準化評価に基づく個別プログラムで、ご本人の可能性を最大限に引き出します。缶を持ち上げる、鍵を回す——小さな動作の回復が、生活の質を大きく変えます。
まずは無料相談にお越しください。ご本人・ご家族のお悩みを丁寧にお伺いし、現状と可能性について一緒に考えます。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)