【2026年版】脳卒中後のロッキングやStiff Knee Gaitの原因とは?大腿直筋・ハムストリングスの関係と効果的リハビリ法を徹底解説
Stiff Knee Gaitは、なぜ膝が曲がらないのか。大腿直筋反射亢進のメカニズムと介入戦略。
脳卒中後のStiff Knee Gait(SKG)は、遊脚相における膝屈曲の著明な低下を特徴とします。その背景には大腿直筋の反射亢進という脊髄レベルの神経調節障害が関与しており、単なる痙縮とは異なる介入視点が求められます。新人セラピストが現場で迷いやすい評価・介入の全体像を整理します。
— Stiff Knee Gaitの概要と大腿直筋反射亢進の臨床的意義を解説します。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
病棟廊下での歩行練習中、振り出した左足がフローリングに引っかかる。股関節を外転させてぐるりと回すように前に出すパターン(Circumduction)が目立つ。膝はほぼ伸展したまま。
担当OTから「大腿直筋が原因? それともハムストリング?」と相談を受けた新人PTの場面です。この問いに答えるために必要な知識を本記事で整理します。
Stiff Knee Gait(SKG)は、脳卒中後の地域リハビリや回復期病棟で日常的に遭遇する歩行障害です。患者さんが「足が持ち上がらない」「床に引っかかる」と訴えるケースでは、まずSKGの可能性を想定してください。
転倒リスクの増大、エネルギー効率の低下、代償動作による二次的な関節痛など、SKGが引き起こす問題は多岐にわたります。早期の正確な評価と介入が、患者の生活の質を左右します。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
そのお悩み、一度ご相談ください。
STROKE LABは脳神経疾患専門の自費リハビリ施設です。Stiff Knee Gaitに対し、神経科学的評価と個別の運動学習プログラムを組み合わせた集中介入を提供します。初回20分の無料相談でまず状態をお聞きします。
定義・疫学・診断基準。
Stiff Knee Gait(SKG)は、遊脚相(swing phase)における膝関節屈曲角度の著明な低下として定義されます。健常者では遊脚初期に膝が約60°屈曲して足のクリアランスを確保しますが、SKGでは大腿四頭筋の過活動によりこの屈曲が妨げられます。
①関節痛:膝伸展位での代償的な体幹・股関節運動が慢性的な関節負荷を生む。
②エネルギー効率の低下:Hip hikingやCircumductionなど代償動作により酸素消費量が増大する。
③転倒リスクの増大:足のクリアランス不足により段差やカーペットへの引っかかりが起きやすい。
SKGの主な原因筋群:3つの視点
大腿直筋は股関節屈曲・膝関節伸展の二関節筋です。脳卒中後に脊髄反射興奮性が高まると、遊脚相でも過剰に活性化し膝屈曲を妨げます。RFは「踏み出しの邪魔者」になるイメージです。
ハムストリングスは遊脚相での膝屈曲を促進します。筋力低下やタイミングの遅延があると、RFの過活動を相殺できず膝屈曲不足が顕在化します。
遊脚開始の推進力を担う足関節底屈筋(ヒラメ筋など)と腸腰筋の活動が不十分だと、膝を曲げるためのモーメント自体が生まれにくくなります。
神経メカニズムと責任病巣。
正常歩行では遊脚相に移行するとRFの活動は自動的に抑制されます。脳卒中後は上位運動ニューロンの障害により、この「抑制のスイッチ」が壊れます。
結果として、前に脚を振り出そうとするとき(アクセル)に、RF が同時に過剰に活性化(ブレーキ)し、膝が曲がれない状態が生まれます。
Nonnekes et al.(2020)は、SKGを呈す脳卒中患者10名と健常者10名のプレスイング相における大腿直筋H反射を記録しました。H反射(Hoffmann反射)とは、感覚神経を電気刺激して起こるα運動ニューロンへの単シナプス反射のことで、脊髄の反射興奮性を評価できます。
対象:脳卒中後SKG患者10名・健常対照者10名。プレスイング相でのRF H反射を計測。
主要結果:SKG群ではRF H反射振幅と膝屈曲角度の間に有意な負の相関が観察された(r=-0.82程度)。健常者では筋活動を自発的に増加させてもこの相関は認められなかった。
臨床的意義:SKGの大腿直筋過活動は「随意的な過緊張」ではなく「脊髄反射興奮性の調節障害」であることを示す。すなわち、リラクゼーション指示だけでは改善しない。
体位依存性H反射変調の消失
健常者では立位とプレスイングの間でRF H反射が適切に変調(抑制)されます。脳卒中後のSKG患者ではこの体位依存性変調が消失していました。つまり立っていても振り出し局面でも、RFの興奮性が同じように高い状態が続いています。
鑑別診断と類似症候。
足の「引っかかり」を訴える患者全員がSKGとは限りません。以下の鑑別が臨床では重要です。観察ポイントを明確にして評価してください。
| 病態 | Stiff Knee Gait | フットドロップ | Scissor Gait |
|---|---|---|---|
| 主病態 | RF反射亢進・遊脚膝屈曲↓ | 前脛骨筋の麻痺・背屈不足 | 内転筋の痙縮・両下肢内転 |
| 観察特徴 | 遊脚相で膝がほぼ伸展のまま | つま先が地面を引きずる | 両足が交差するように内側へ |
| 代償動作 | Circumduction・Hip hiking | Hip flexion増大・Steppage | 骨盤側傾・体幹側屈 |
| 主な介入ターゲット | RF・Hamstrings・協調性 | 前脛骨筋・AFO | 内転筋・BoNT-A |
評価尺度と観察ポイント。
SKGの評価は「何を見るか」を事前に決めることが重要です。高精度な三次元動作解析が理想ですが、臨床では観察評価とシンプルな計測を組み合わせることが現実的です。
0:筋緊張の増大なし。パッシブ可動域を通じて抵抗なし。
1:わずかな筋緊張の増大。パッシブ可動域の最終域で引っかかり感あり。
1+:わずかな筋緊張の増大。引っかかり後に可動域の残り半分未満で軽微な抵抗あり。
2:可動域の大部分で筋緊張の増大。受動的に動かすことは可能。
3:著明な筋緊張の増大。受動的な運動が困難。
4:強直(rigidity)状態。完全な屈曲・伸展位での固縮。
「MAS単独でSKGの重症度を判断するのは危険です。MASは静的な検査で、歩行中の動的な筋活動パターンとは必ずしも一致しません。」
「必ずビデオ撮影での動的観察をセットで行い、『いつ、どの筋が、どのタイミングで活動しているか』を確認してください。」
介入の段階とエビデンス。
SKGへの介入は単一筋への対処ではなく、評価に基づいて段階的に組み立てます。以下の4フェーズを参考に、患者の状態に応じて優先順位を調整してください。
ボツリヌス療法(A型):大腿直筋への選択的注射。Stoquart et al.(2008) RCTでは遊脚相の膝屈曲角度が有意に改善(エビデンスレベルⅠb)。効果持続は3〜4か月。
注射後は必ず課題指向型歩行訓練と組み合わせる。注射単独では長期的改善が得られにくい。
ヒップエクステンション・レッグカール・スイスボールを用いたHamstrings強化。週3回・10回×3セット・8〜12RM強度を目安に実施。
神経筋電気刺激(NMES):遊脚相トリガーに同期したハムストリングス刺激。膝屈曲を誘導し筋活動を強化。パラメータ:周波数35〜50Hz、パルス幅200〜300μs。
足首の背屈訓練(タオルを使った抵抗背屈・ステップ練習)でフットクリアランスを改善。FESによる前脛骨筋刺激も有効(遊脚相トリガー方式)。
【臨床アイデア】足底にタオルを敷いた状態での荷重練習:下腿三頭筋の過収縮を緩和し、膝の過剰伸展(ロッキング)を抑制する簡便な方法として有用です。
エクササイズバイク・膝屈曲を意識した段差昇降・体幹強化(プランク・サイドブリッジ)で全身の連動性を改善。週2〜3回・3か月継続が運動学習効果の推奨頻度。
バイオフィードバック・ビデオフィードバック:リアルタイムで膝の過伸展を患者自身に認識させることで自己修正能力を高める。運動イメージ訓練(ハムストリングスと前脛骨筋の活性化タイミングのイメージ)も補助的に有効。
デザイン:二重盲検RCT。慢性期脳卒中患者にRFへのBoNT-A注射と偽薬を比較。
主要結果:BoNT-A群では遊脚相の膝最大屈曲角度が有意に改善。歩行速度も改善傾向。
注意点:効果持続は3〜4か月。注射後に課題指向型の歩行訓練を組み合わせることで長期効果が期待できる(強く推奨)。
— 足底にタオルを敷いた荷重練習。下腿三頭筋の過収縮緩和とロッキング改善を目的とした臨床アイデア。

脳卒中後6か月を過ぎてからも、適切な介入で歩行機能が改善する症例を私たちは多く経験してきました。Stiff Knee Gaitはメカニズムさえ理解すれば、対処できる歩行障害です。まずはお気軽にご相談ください。
多職種連携と環境調整。
SKGは医師・PT・OT・看護師・MSWの連携があってはじめて効果的な介入が成立します。誰が何を担うかを事前に明確にしておくことが、連携のカギです。
| 職種 | SKGに対する主な役割 | 連携ポイント |
|---|---|---|
| 医師 | BoNT-A注射の適応判断・処方・実施。痙縮の重症度評価。 | 注射タイミングとPTの歩行訓練開始時期の調整。 |
| PT | 歩行分析・筋力評価・BoNT後の課題指向型歩行訓練・FES活用。 | 歩行能力の変化をチームに定期的にフィードバック。 |
| OT | ADL場面での歩行動作指導・環境調整(段差の除去・手すり設置)。 | 生活場面でのSKGのリスク箇所をPTに共有。 |
| 看護師 | 病棟内歩行時の安全管理・転倒予防対策の実施・観察。 | 夜間・休日の歩行状態の変化をリハビリスタッフへ報告。 |
| MSW | 退院後の自費リハビリ・通所サービスの情報提供・橋渡し。 | 「もっとリハビリを続けたい」ニーズを制度につなげる。 |
環境調整のチェックリスト
「カーペットの端・廊下の段差・スリッパなど、SKG患者が引っかかりやすい要因は病棟内に無数にあります。OTとともに生活環境を実際に歩いて確認してみてください。」
「装具(AFO)は処方したら終わりではなく、患者の筋活動パターンが変化するにつれてフィッティングを見直すことが必要です。月1回以上の再評価を習慣にしましょう。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
SKGの介入において、新人セラピストがはまりやすい「罠」があります。先輩たちが経験から学んだ失敗パターンを事前に知っておきましょう。
臨床判断の分岐点:どこに集中するか
「まず『どの局面で膝が伸びたままか』を確認してください。遊脚初期か、中期か、全体にわたるかで、責任筋が違います。」
「Circumductionが強ければ膝の問題より股関節屈曲筋の問題かもしれません。代償動作のパターンを整理してから、原因を探るクセをつけましょう。」
「重心移動の欠如が引き金になるケースもあります。体幹・股関節・膝・足首の連鎖を全身的に評価する視点を持ってください。」
予後とゴール設定。
脳卒中後のSKGの予後は、痙縮の程度・発症からの期間・患者の認知機能・訓練への参加度などに依存します。発症後6か月以降でも適切な介入によって機能改善が得られることが研究で示されています。
Hatem SM et al.(2016, Systematic Review):発症後6か月以降でもリハビリにより上肢機能指標(FMA/ARAT)が有意改善することを示した。SKGも類似の可塑性の恩恵を受けられる可能性がある。
重要なのは、「いつ始めるか」より「適切な介入を継続するか」です。週2回以上・3か月継続が推奨される運動学習の最低ラインとされています。
ゴール設定の実際
短期目標:遊脚相の膝屈曲角度を5〜10°改善し、Circumductionを軽減する。中期目標:安全な歩行速度の向上(0.8m/s以上を屋外歩行の目安)。長期目標:段差・屋外歩行での転倒なしの自立歩行。ゴールは常に患者の生活ニーズ(「孫と公園を歩きたい」など)と連動させてください。
よくある質問(新人の疑問)。
Stiff Knee Gait(SKG)とは、脳卒中後に見られる歩行障害で、遊脚相(足を前に振り出す局面)における膝関節の屈曲角度が正常より著明に低下した状態を指します。
健常者の遊脚相では膝が約60°屈曲して足のクリアランスを確保しますが、SKGでは大腿直筋の反射亢進などにより屈曲が妨げられ、足のクリアランスが確保できなくなります。
最も広く認められている原因は大腿直筋(Rectus Femoris:RF)の過活動です。Nonnekes et al.(2020)の研究では、SKGを呈す脳卒中患者の大腿直筋H反射振幅と膝屈曲角度の間に有意な負の相関が示されています。
また、ハムストリングスの筋力低下・タイミング遅延、足関節底屈筋の活動低下も複合的に関与します。
臨床現場ではビデオ撮影による観察と関節角度計による膝屈曲角度測定が主流です。遊脚相の膝最大屈曲角度が正常値(約60°)と比較して著明に低下しているかを確認します。
Modified Ashworth Scale(MAS)で大腿直筋の痙縮度も評価しますが、静的評価のみでは不十分です。動的観察と組み合わせてください。
ボツリヌス療法(A型)は大腿直筋・下腿三頭筋への選択的注射が有効で、筋の過活動を一時的に抑制します。Stoquart et al.(2008)のRCTでは遊脚相の膝屈曲角度が有意に改善されました(エビデンスレベルⅠb)。
効果持続は3〜4か月で、注射後は必ず歩行訓練と組み合わせる必要があります。
FES(Functional Electrical Stimulation)はハムストリングスや前脛骨筋への遊脚相トリガー刺激として有効です。歩行サイクルに同期してハムストリングスを刺激し、膝屈曲を誘導します。
推奨パラメータは周波数35〜50Hz、パルス幅200〜300μsです。STROKE LABでは徒手技術・運動学習・FESを中心とした介入を行います。
AFO(足関節装具)は前脛骨筋活動が低下しフットドロップを合併するSKGケースでは有効なサポートになります。ただし、硬性AFOは足関節を固定するため膝関節への二次的影響を考慮する必要があります。
また、足底にタオルを敷く簡便な方法で下腿三頭筋の過剰収縮を緩和し、荷重練習中のロッキング改善を試みることも可能です。患者の筋活動パターンに合わせた選択が重要です。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。Stiff Knee Gaitをはじめとする脳卒中後の歩行障害に対し、神経科学的評価と個別の運動学習プログラムを組み合わせた集中的なサポートを提供しています。保険リハとの併用も可能で、1回ごとのお支払い制を採用しています。
— STROKE LABでの脳卒中後歩行リハビリの実際の様子です。

「Stiff Knee Gaitに悩む患者さんは、歩くたびに転倒への恐怖と戦っています。技術的な介入と同時に、患者さんが『また歩ける』と信じられる環境を作ることが私たちの仕事だと思っています。」— 理学療法士・臨床経験12年・脳卒中リハビリ専門
「大腿直筋の問題だと思って介入していたら、実は足関節底屈筋の活動低下が主因だったという経験を何度もしました。原因の仮説を立てたら、必ず介入前後でビデオ比較をする習慣をつけてください。」— 作業療法士・臨床経験8年・神経リハビリテーション
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その気持ちを、諦めないでください。

脳卒中後の歩行障害は、適切な評価と介入があれば、発症から時間が経っていても改善できます。「もう歩けない」「これ以上は無理」と諦めていた方が、再び外を歩けるようになった瞬間に何度も立ち会ってきました。
Stiff Knee Gaitは、神経科学的なメカニズムを理解した上で、個別に計画された継続的な介入によって改善できる歩行障害です。STROKE LABでは、一人ひとりの状態に合わせたプログラムを組み立てています。
まずは無料相談で、現在の状況と目標をお聞かせください。「どこまで回復できるか」を一緒に考えます。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)