自分の障害に気づけない(病識低下)|責めずに支えるための基礎知識 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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高次脳機能障害

自分の障害に気づけない(病識低下)|責めずに支えるための基礎知識

IMPAIRED SELF-AWARENESS

認めないのではなく、気づけない。

自分は大丈夫だと言う。リハビリはいらないと拒む。何度説明しても認めない。脳卒中や頭のけがのあとのその様子は、病識低下かもしれません。これは意地でも否認でもありません。脳が、自分に障害があること自体に気づけなくなっている状態です。そのしくみと、責めずに支える関わり方を整理します。

UPDATED2026
READ約13分
FORご家族・ご本人へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』(2024年・408頁)の著者が執筆しています。気づけないのは症状であり、本人のせいでも、支えるご家族のせいでもありません。診断や鑑別は自己判断せず、必ず主治医・専門機関にご相談ください。

病識への説明

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
病識低下は、自分の障害に気づけなくなる脳の症状です
02
わざとの否認とは違い、責めても本人は理由が分かりません
03
気づきは、あるかないかではなく、4つの段があります
04
説得より、今いる段に合わせた関わりが届きます
05
運転・服薬・お金など安全に関わることは、本人任せにしません
01
Why Won’t They Admit It

なぜ、認めてくれないのか。

A Family’s Voice
「自分は大丈夫、と言い張るのです」

明らかにうまくいっていないのに、本人は前と同じようにできると言う。リハビリはいらないと拒む。間違いを指摘すると、かたくなに認めない。心配して言えば言うほど、口論になり、関係がぎくしゃくしていく。どうして分かってくれないのか——。戸惑いと、いらだちと、責めてしまったあとの罪悪感がまざり合います。

でも、本人は意地を張っているのではありません。脳が、自分に障害があること自体に気づけなくなっているのです。名前は、病識低下といいます。

病識低下は、脳卒中や頭のけがのあとにみられる高次脳機能障害の一つです。多くは前頭前野や右脳の損傷によって、自分の状態を捉え直す働きが弱くなることで起こります。大切なので先にお伝えします。気づけないのは症状であって、本人のせいでも、支えるご家族のせいでもありません。責めなくていいのです。全体像は高次脳機能障害の完全ガイドをご覧ください。

02
Not Denial, But Unaware

STROKE LABの視点:認めないのではなく、気づけない。

病識低下を理解する鍵は、よく似た別の状態との違いにあります。それが、心理的な否認です。どちらも障害を認めないように見えますが、受け入れたくないのか、気づけないのかが、まったく違います。ここを取り違えると、対応もかみ合いません。

見分けるポイント 否認(受け入れたくない)と 病識低下(気づけない)
何が起きている 否認は事実が分かるのに受け入れたくない。病識低下はそもそも障害に気づけない
本人の自覚 否認は心のどこかで気づいている。病識低下は自覚が乏しく、困っている感じがない
助けになる関わり 否認は気持ちに寄り添う時間。病識低下はその場での具体的な気づきの経験

そしてもう一つ、大切な見方があります。気づきは、あるかないかの二択ではありません。まったく気づいていない状態から、先回りして気づける状態まで、間には段があります。私たちは、この気づきを4つの段の階段として捉えています。今どの段にいるかが分かると、関わり方の見当がつきます。

病識気づきの4段階

03
First Track — At Home

自宅でできること:直面させるより、段に合わせる。

まずは、ご家族が今日から実践できる関わりからお伝えします。病識低下への向き合い方で、いちばん大切な転換がこれです。いきなり全部を分かってもらおうと説得するより、今いる段に合わせて関わるほうが、確実に前へ進みます。1段目にいる人にいきなり4段目の理解を求めても、届かず、口論になるだけです。責めることは、気づきを進めません。

段ごとの関わりの入口を、まとめます。共通するのは、言葉で分からせようとするより、本人が自分で気づける経験を、そっと用意することです。

気づきの段 家庭での関わりの入口
気づいていない 説得しない。危険を先に減らし、失敗しても大事にならない安全な環境を整える
知的な気づき 責めず、事実をメモや映像などで穏やかに共有する。良し悪しの評価は加えない
体験的な気づき 失敗した直後に、責めずに一緒に「今どうだった」と振り返る
予測的な気づき やる前の計画を一緒に立て、自分で気づけたことを言葉にして認める

Evidence
その場でのフィードバックが、気づきを少し育てることがある

脳損傷後の気づきに対しては、作業のあとにその場で結果を一緒に振り返るフィードバックが、気づきを中くらいの程度で改善しうると報告されています。言葉で説明するより、本人がずれに自分で気づく経験を積むことが、鍵とされています。

限界:研究の数は少なく質にもばらつきがあり、効果は控えめです。生活そのものへの広がりもまだはっきりしていません。また、気づきが進むにつれて気分の落ち込みが強まることもあり、感情面のケアと一緒に進める必要があります。無理に直面させないことが大切です。効果には個人差があります。

出典:Schmidt J, Lannin N, Fleming J, Ownsworth T. Feedback interventions for impaired self-awareness following brain injury: a systematic review. Journal of Rehabilitation Medicine. 2011;43(8):673-680. フィードバック介入による自己認識の改善(中程度の効果量)と、研究の質・般化の課題が整理されている。
分からせようとするより、自分で気づける経験を、そっと用意する。

病識低下へのサポート方法

とはいえ、実際にどう声をかけ、どう会話を運ぶかは、いちばん悩むところだと思います。否定も説得もしない伝え方の具体的な型は、障害を認めない本人への伝え方の記事で、会話例つきでくわしく解説します。この記事は、その土台となるしくみと段階の見立てまでを担います。

ここまでは、家庭でできる段階に合わせた関わりでした。では、専門施設ではさらに何ができるのか。気づきをそっと後押しする関わりを、次にお伝えします。
04
Second Track — At STROKE LAB

専門施設で、さらに期待できること。

ここからは、少し専門的な話になります。リハビリに関わる方や、もっと深く知りたい方に向けて、気づきへの関わりの全体像をお伝えします。自宅での関わりが段に合わせて安全を守り、気づきの経験を用意することだとすれば、専門施設で目指すのは気づきの段を、無理なく一段ずつ上げていく関わりです。

ここからは、少し専門的な話になります。リハビリに関わる方や、もっと深く知りたい方に向けて、全体像をお伝えします。病識の低下は、自分の状態を一歩引いて監督する脳の働き(右半球の前頭葉や島、側頭頭頂接合部などによる、自己のモニタリング)の低下と関わると考えられています。だからこそ、言葉で説明するより、本人が自分でずれに気づく経験を設計します。代表的な介入を整理します。

介入 中身と、そのしくみ
体験的フィードバック 作業を映像や記録にとり、直後に一緒に見て、ずれに自分で気づく経験を積む。指摘ではなく、本人の発見を待つ
自己予測と自己評価 やる前に「どれくらいできるか」を予想し、やってみて、結果と照らし合わせる。この予想と結果のずれから、その場で気づく力(オンラインの気づき)を育てる
メタ認知文脈的介入 本人がしたい実際の生活課題の中で、気づきと対処の方略を同時に育てる。気づきの階段(知的→体験的→予測的)を、一段ずつ上げていく
交流と感情のケア 同じ経験をした人との出会いが気づきを促す。気づきに伴う落ち込みを、感情面からていねいに支える

これらに共通するのが、説得ではなく、本人が自分で気づける場を、段階に合わせて用意するという考え方です。気づきは、まったく気づかない状態から、頭では分かる段階、その場で気づける段階、先回りして気づける段階へと、階段のように育つと整理されています。今どの段にいるかを見て、一段上を狙う。海外の研究でも、その場で振り返るフィードバックや、生活課題に沿った気づきへの働きかけが、活動や参加の広がりにつながりうると報告されています。ただし効果は控えめで研究も限られ、気づきが進むと落ち込みが出ることもあるため、感情面のケアと一緒に、無理に直面させずに進めます。

これらに加えて、忘れてはならないのが安全に関わることは本人任せにしないという原則です。気づきが乏しいと、運転・服薬・お金の管理・火の扱いなどでも、危険が本人には見えていません。ここは気づきが育つのを待たず、主治医や専門職と一緒に、本人の尊厳に配慮しながら線を引きます。効果の出方には個人差があり、どれか一つが万能というわけではありません。

フィードバック

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Our Approach — At STROKE LAB
この関わりの中で、私たちが軸足を置くところ。
直面や指摘ではなく、経験と手がかりから。

STROKE LABが重視するのは、失敗を責める場ではなく、自分で気づける場を用意することです。本人がやりたいと思う作業を題材に、その場で映像や記録をとり、直後に並んで振り返る。指摘するのではなく、本人が自分でずれに気づけるように、難易度と手がかりを設計します。

そして、気づきが進むと落ち込みが出ることがあります。だからこそ、気づきと自信を、両方いっしょに育てることを大切にします。できるようになったことを言葉にして返し、次の一歩を小さく用意する。どの段にいて、何をどう組み合わせるかは一人ひとり違うため、評価にもとづいて個別に組み立てます。より専門的な評価と治療の詳細は、医療者向けの解説記事で扱います。

Evidence
気づきへの働きかけが、生活の活動や参加の広がりにつながりうる

脳損傷後の自己認識の障害に対する介入をまとめた系統的レビューでは、作業や生活課題を用いて気づきに働きかけると、日常生活の活動や社会参加の広がりにつながりうると報告されています。気づきそのものだけを目標にせず、生活の場面での実践と結びつけることが鍵とされています。

限界:研究の方法や対象はさまざまで、質にばらつきがあります。効果には個人差があり、進め方は専門的な評価と設計が前提です。気づきに伴う気分の変化にも配慮が必要です。

出典:Engel L, Chui A, Goverover Y, Dawson DR. Optimising activity and participation outcomes for people with self-awareness impairments related to acquired brain injury: an interventions systematic review. Neuropsychological Rehabilitation. 2019;29(2):163-198.
自宅で、段に合わせて支える。専門施設で、気づきと自信を、一段ずつ一緒に育てる。
05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

前の項でお伝えした気づきへの関わりは、今どの段にいるか、否認とどう重なっているかをていねいに見立てたうえで、その人に合わせて組み立てます。自分の状態に気づくことに関わる楔前部のしくみを解説した動画も、背景の理解に役立ちます。

自分の状態に気づくこと(自己意識)に関わる楔前部のしくみを解説(脳リハ.com)。効果には個人差があります。

受診の目安は、脳卒中や頭のけがのあとで、本人が困っている自覚に乏しく、リハビリを拒む・危ない場面が増えるなど生活に支障が出てきたときです。認知症やうつとの見分け、否認との切り分けは専門的な検査が必要なので、自己判断せず医療機関で確かめてください。とくに運転の再開は必ず主治医の判断を仰いでください。より専門的な評価や治療のアプローチを知りたい医療者の方は、医療者向けの解説記事もご覧ください。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 本人が「自分は大丈夫」と言って障害を認めません。わざとですか?

多くの場合、わざとではありません。脳卒中や頭のけがのあとで、自分に障害があること自体に気づけなくなることがあります。病識低下と呼ばれる症状で、高次脳機能障害の一つです。多くは前頭前野や右脳の損傷で起こります。本人は困っている感じが乏しく、リハビリを拒むこともあります。気づけないのは本人のせいでも、支えるご家族のせいでもありません。まずはこれが症状であると知ることが出発点です。見分けには専門的な確認が必要なので、自己判断せず医療機関にご相談ください。

Q. 病識低下は、ショックで受け入れられない否認とは違うのですか?

重なることもありますが、成り立ちが違います。否認は、事実はどこかで分かっているのに、つらくて受け入れたくない心の動きです。病識低下は、脳が自分の状態をうまく捉えられず、そもそも障害に気づけない状態です。否認には気持ちに寄り添う時間が助けになり、病識低下にはその場での具体的な気づきの経験が助けになります。どちらが主かは専門的な見立てが必要なので、医療機関や専門職に相談してください。

Q. 何度説明しても認めません。どうすればいいですか?

言葉で繰り返し説明しても、自分の状態に気づく脳の働きが弱いと、届きにくいことが多くあります。説得を重ねるほど、おたがいに消耗し、関係が悪くなりがちです。効果的なのは、いきなり全部を分かってもらおうとせず、今どの段階の気づきにいるかを見て、そこに合わせて関わることです。責めずに事実を記録や映像で穏やかに共有する、失敗した直後に一緒に振り返る、といった関わりが助けになります。具体的な伝え方は専用の記事でも解説します。

Q. リハビリを拒否します。どう考えればよいですか?

困っている自覚が乏しいと、必要性が感じられず拒むのは自然なことです。無理に説き伏せるより、本人が困っていることや、やりたいことを入口にすると受け入れやすくなります。それでも拒否が強いときは、押し引きで関係を壊さないことも大切です。一方で、安全に関わることは別で、譲れない一線は主治医や専門職と一緒に守ります。拒否が続くときや、対応に行き詰まったときは、抱え込まず医療機関や地域の相談窓口、家族会に相談してください。

Q. 病識低下は、リハビリで良くなりますか?

作業のあとにその場で結果を一緒に振り返るフィードバックなどによって、気づきが少しずつ育つことがあると報告されています。ただし効果は控えめで、研究の数も限られ、生活そのものへの広がりはまだはっきりしていません。また、気づきが進むにつれて気分の落ち込みが強まることもあり、感情面のケアと一緒に進めることが大切です。過度に期待せず、無理に直面させず、段階に合わせて関わるのが現実的です。効果には個人差があり、進め方は専門職に相談してください。

Q. 運転やお金の管理も、本人に任せて大丈夫ですか?

ここは慎重に考える必要があります。気づきが乏しいと、運転・服薬・お金の管理・火の扱いなど安全に関わることでも、できると感じてしまいます。危険が本人には見えていないため、本人の自己判断だけに任せるのは避けてください。運転の再開は必ず主治医の判断を仰ぎ、服薬やお金の管理は見える化や周囲の確認を組み合わせます。譲れない一線は、本人の尊厳に配慮しながら、主治医や専門職と一緒に決めていきましょう。
07
STROKE LAB

病識低下の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。病識低下は、その多くが脳卒中や頭のけがを背景に起こります。今どの段の気づきにいるかを見立て、責めずに気づける経験を用意する関わりと、暮らしの中の安全の線引きを、その人の生活に合わせて組み立てます。困っている場面そのものを題材にするので、押し付けにならず、本人の納得が生まれやすくなります。診断や薬は主治医を尊重し、私たちは生活と動作の側から支えます。保険リハとの併用もできます。

書籍『脳の機能解剖とリハビリテーション』(医学書院)の表紙
Book
脳の機能解剖とリハビリテーション
医学書院/2024年/408ページ

自分の状態に気づくことにかかわる前頭前野や頭頂葉をはじめ、脳の部位ごとの働きと症状のつながりを、豊富なイラストで解説。本文と連動するYouTube講義動画で、脳のしくみを目と耳から学べます。

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Message from CEO
分からせようとするより、
気づける場を、そっと用意する。
STROKE LAB代表 金子唯史

なぜ認めてくれないのか。説得のたびに口論になり、責めてしまったあとで落ち込む。病識低下のご家族が抱えるこのつらさを、私は現場で何度も見てきました。

お伝えしたいのは、分からせようとがんばるより、本人が自分で気づける場をそっと用意するほうが、暮らしは早く落ち着くということです。責めなくていい。今いる段に合わせれば、道は開けます。

障害を認めないことでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。今どの段にいるかを一緒に見立て、その方に合う気づきの場と、守るべき安全の一線を、一緒に整えます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の公的情報・診療ガイドラインと、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。症状の現れ方や回復には個人差があります。診断や鑑別、安全に関わる判断は、必ず主治医・専門機関にご相談ください(最終確認日:2026年7月7日)。

  • 国立障害者リハビリテーションセンター:高次脳機能障害情報・支援センター
  • Schmidt J, Lannin N, Fleming J, Ownsworth T: Feedback interventions for impaired self-awareness following brain injury: a systematic review. Journal of Rehabilitation Medicine. 2011;43(8):673-680.(自己認識フィードバックの効果と限界。第1エビデンスボックスの出典)
  • Engel L, Chui A, Goverover Y, Dawson DR: Optimising activity and participation outcomes for people with self-awareness impairments related to acquired brain injury: an interventions systematic review. Neuropsychological Rehabilitation. 2019;29(2):163-198.(気づきへの介入と活動・参加。第2エビデンスボックスの出典)
  • Crosson B, Barco PP, Velozo CA, Bolesta MM, Cooper PV, Werts D, Brobeck TC: Awareness and compensation in postacute head injury rehabilitation. Journal of Head Trauma Rehabilitation. 1989;4(3):46-54.(知的・体験的・予測的という気づきの階層モデル)
  • 日本高次脳機能障害学会ほか:病識・自己認識(アウェアネス)の階層と、脳損傷後のリハビリテーションに関する整理(知的・体験的・予測的な気づきの枠組み)
  • 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院.2024.
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