vol.83:脳卒中患者の立位の姿勢分析と非対称性の原因 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
目次
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
脳卒中患者の立位の姿勢分析と非対称性の原因 Contribution of each lower limb to upright standing in stroke patients?PubMedへ Genthon N et al:Stroke. 2008 Jun;39(6):1793-9
内 容
Introduction
•脳卒中患者の直立姿勢は、非麻痺側下肢の過荷重(非対称性)と姿勢の動揺が大きいという特徴を有する。
•体力不足、筋出力の非対称性、体性感覚障害、空間認知の変化がこの姿勢不安定性に関与する可能性がある。
背景・目的
(1)脳/神経学的病変に起因する姿勢障害と荷重の非対称性に起因する物理的な影響による姿勢障害とを区別すること。 (2)姿勢障害における下肢の関与を評価すること。 (3)どのような臨床的な能力値の低下が姿勢障害の根底にあるのかをよりよく理解することでした。
方 法
•41人の脳卒中患者(初発の脳卒中の方:左16人、右25人)の立位荷重下の下肢の特徴を、非対称に立つように求められた40人の健常人のそれと比較しました。
•麻痺側下肢の平均運動能力は、0(正常強度)から40(収縮なし)の範囲で、15.5±10.7であった。麻痺側下肢を重力下で動かすのには十分であったが、抵抗に対しては動かすことができない強度であった。
•下肢筋群の痙性を評価した。平均スコアは、0(痙性なし)から20(重度痙性)の範囲であり、2.4±2.9であった。
•空間無視の重症度は、麻痺側空間と非麻痺側空間の両方を評価する行動的無視(0〜30の範囲)の標準尺度によって定量化し、平均無視スコアは3.2±3.7であった。
•データは、患者の1/5が軽度から重度の空間的無視を示した。
•姿勢の動揺は、2つの長方形のフォースプレートを並べて測定した。
•被験者は裸足でフォースプレートの上に立ち、上肢はリラックスさせ、装具なしで32秒間の4回の試行で体を揺らさないように指示されました。
•対照者は脳卒中患者がとる平均荷重分布を目安に非対称に立たなければなりませんでした。実際、荷重分布は、脳卒中患者の荷重分布と同等でした。
結 果
•平均COPの位置は、どのような軸であっても、対照群および脳卒中被験者において同様でした。
•非荷重足の平均CP位置(CPuf)は、荷重足(CPlf)の平均CP位置よりも前方に位置していました。 (Genthon N et al:2008)?PubMedへ
•脳卒中患者ではML軸に沿った変位がAP軸よりも大きかったのに対し、健常者では逆になっていました。
•脳卒中患者では、非麻痺足のCP軌道の平均振幅は麻痺足よりも大きく、対照被験者の両下肢よりも大きかった。
(Genthon N et al:2008)?PubMedへ
•脳卒中患者は麻痺足でのLR(Lengthening Ratio)の低下が特徴であり、麻痺足のCP軌道は縦軸に沿って構成されていないことが明らかになりました。
•麻痺足がより荷重出来ないほど、不活発、感覚の減退、運動麻痺および痙性の重症度が大きくなりました。
結 論
•非対称姿勢の健常人と比較して、脳卒中患者はより立位が不安定でした。
•非対称性および左右方向の姿勢オリエンテーション、不安定性は主に空間無視に関係していました。
•この知見は、空間無視の平均スコアが低いことを考えると意外であると考えられます。
•麻痺足は、圧力中心の正常な縦方向のパターンを再現することができず、これは、安定化制御の障害を反映しています。
•非麻痺側下肢が麻痺した四肢の姿勢障害を補うことができなかったとき、全体的な姿勢不安定が生じました。
•脳卒中患者の非対称性は、姿勢安定化の制御能の障害の結果です。
•麻痺側下肢は、直立姿勢を制御することができず、受動的に作用するようでした。非麻痺側の関与からなる適応的な戦略を構築するように制約されています。
•空間無視は、立っている2つの肢に体重を分配するために使用される空間座標に歪みが存在すると解釈することができます。
私見・明日への臨床アイデア
•安定した立位は、麻痺患者様の治療を行う上でほとんどの方が目標とされる所である。
臨床後記
更新:2021/2/17
●麻痺側への荷重というのは脳卒中患者のほとんどが直面する問題です。発症早期であれば、非麻痺側の不安定性・体幹の不安定性も大きく麻痺側への安定した荷重に影響を与えます。当然、麻痺側の頭頚部~足部まですべてが荷重に影響を与え、注意や視空間認知等も影響し、患者をしっかり評価するということがまずは重要と思います。経験が浅いうちは特に十分な評価をおすすめします。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)