vol.40:”予測”のための情報の種類で姿勢制御への影響は変わるのか!?:脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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vol.40:”予測”のための情報の種類で姿勢制御への影響は変わるのか!?:脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

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カテゴリー

脳科学,姿勢制御,歩行
 
 
 

タイトル

時間的予測情報は歩行中の支持面の急激な動揺における筋反射潜時を短くする Temporal, but not Directional, Prior Knowledge Shortens Muscle Reflex Latency in Response to Sudden Transition of Support Surface During Walking?PubMedへ Shinya M et al:Front Hum Neurosci. 2016 Feb 8;10:29
 
 
 

内 容

概 要

●支持面が動揺した際に適切な姿勢戦略をとり,転倒を防ぐことは重要な機能である
 
●筋の短・中・長潜時反射は,自動的な姿勢反応の一部であり,多様な外乱刺激に対応するための複雑かつ洗練された筋活動のパターンとして研究されている
 
●筋の反射には予測情報の影響が大きく,例えばトレッドミル上で被験者に予測情報がある場合,急激な加速に対する前脛骨筋の反応は減少することが知られている
 
●しかし,予測情報を空間的情報・時間的情報に分類し,それぞれの影響を調べた研究は少ない
 
 
 

目 的

●時間的及び空間的予測情報が,歩行中の動揺に対する筋反射にどのように影響するかを明らかにすること
 
 
 

方 法

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●統計解析:実験条件に差がないことを確かめるため,右下肢接地後の床反力値とEMG振幅の平均値について,一元配置分散分析を用いて通常歩行およびcatch-trialと比較
 
●また,予測情報の影響を調べるため,空間的情報・時間的情報・EMG潜時値を用いて二元配置分散分析およびBonferroni法を用いた多重比較を実施
 
 
 

結 果

●加速が予測されている場合,右下肢の腓腹筋とヒラメ筋の活動が減少し,前脛骨筋の活動が増加
 
●減速が予測されている場合,右下肢の腓腹筋とヒラメ筋の活動の増加が見られた(Fig.3)
 
●時間的情報が事前に予測されることが腓腹筋の潜時活動に最も影響し,その潜時が短くなり,さらに動揺後の反応が早くなった(Fig.4,5,7)
 
●減速時には前脛骨筋の活動が増加するが,事前情報の有無による潜時の変化はなかった(Fig.6)
 
●しかし,時間的情報があれば長潜時活動が減弱された(Fig.8)
 
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?その他のFig.は原著PDFへ(※上記図をClick!!)
 

Fig.3:各筋における筋活動記録

 
 
 

考 察

●動揺前の事前情報に基づいた姿勢戦略:時間的予測情報がある場合,床反力の垂直分力の減少,すなわち荷重戦略の変更がCatch DecおよびCatch Acc/Dec trial において見られた
 
●一方,Catch Accにおいて床反力の変化は見られなかった.これは,加速動揺は右下肢の前方への動きを阻害しないため,荷重を回避する必要性がなかったためと考えられる
 
●また,加速と減速では減速動揺の方が進行を阻害する点でバランスを崩しやすく,身体への危険度が高い
 
●これを無意識のレベルで被験者が予測したため,減速情報がある場合,荷重を回避したと考えられる
 
●時間的予測情報は加速動揺における腓腹筋の筋反射を減弱させる:被験者は11名であり,数としては不十分であるが,時間的情報が腓腹筋の潜時の短縮だけでなく,筋活動パターン全体の前倒しにつながった
 
●このメカニズムは,被験者の注意の影響が大きいと考えられ,先行研究においても,運動準備は注意現象の一環と表現されているものもある
 
●一方,今回の実験から注意機能のみでは説明できない点もある
 
●空間的予測情報がない場合で注意が十分に払えない場合でも潜時短縮が見られたり,ヒラメ筋は腓腹筋と同様の働きをするが潜時短縮は見られなかった点においては解明されていないが,筋長の長さが違うことや,腓腹筋反射が介在ニューロンを介しているのに対し,ヒラメ筋は単シナプス性の反射であることの相違などが原因と考えられる
 
●空間的予測情報が反射に与える影響は限られている:今回の研究では潜時への影響は見られなかったが,実験上の限界として,トレッドミル上であったためD-条件の場合でも起きうる外乱は被験者側が予測できた可能性や,下肢以外の筋活動は測定しなかったため,現段階では影響が全くないとは言いきれない
 
 
 

明日への臨床アイデア

●動揺に対する反応において腓腹筋は末梢からの感覚情報のみではなく,中枢機構からの予測情報や運動に対する注意の影響を受けて細かく筋活動が変化することが明らかとなった
 
●臨床上,例えば腓腹筋外側および腓骨筋に過負荷がかかり,腓腹筋内側の活動が乏しい症例を経験する
 
●上行性・下行性どちらのわずかな指令にも対応できる腓腹筋全体の活性化された状態を作ることが,新たな姿勢戦略の学習に重要なのではないだろうか
 
●予測情報の複雑な種類(例えば加速・減速・時間・それらの組み合わせ)によって,無意識のレベルで細かい姿勢戦略や筋反射が調整されていることが明らかとなった
 
●これらを無意識の状態で適切に作動させるには,自身のボディスキーマや空間・環境に十分注意を働かせ,適切な知覚―運動循環を形成する必要があると考えられる
 
●そのためには,例えば単一肢の運動を行う場合でも,他の四肢の位置や姿勢および環境を適切に設定する配慮が必要であると考えられる
 
 

執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表

・国家資格(作業療法士)取得

・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務

・海外で3年に渡り徒手研修修了

・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆

 
 
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