STEF(簡易上肢機能検査)とは|10項目・実施手順・採点と臨床での活用 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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STEF(簡易上肢機能検査)とは|10項目・実施手順・採点と臨床での活用

STROKE LAB / UPPER LIMB FUNCTION

つかめる。その先の
「使える手」を見つける。

簡易上肢機能検査 STEF
秒数と得点から、動作のつまずきと次の介入へ。

10項目左右各100点約20分2026年研究を収載
STEFの検査場面。専用台上の物品操作を計時し、同時に手の動きを観察します。イラストは説明用です。
STEFの検査場面。専用台上の物品操作を計時し、同時に手の動きを観察します。イラストは説明用です。

01|STEFとは|「つかむ・運ぶ・離す」を時間で捉える

簡易上肢機能検査(Simple Test for Evaluating Hand Function:STEF)は、形や大きさの異なる物品を操作する速さから、上肢の動作能力を評価する検査です。日本で開発され、専用の検査台と10種類の課題を使います。握力の強さだけでなく、物へ手を伸ばし、つかみ、運び、離すまでの一連の動作が結果に表れます。[1][2][3]

まず押さえる4点

  • 10項目を、左右の手でそれぞれ評価する。
  • 所要時間を項目ごとの基準に照合して得点化する。
  • 右100点・左100点満点。左右を足した100点ではない。
  • 所要時間は約20分が目安。準備・説明・休憩には別に余裕を取る。

合計点を出した後は、「何を扱う時に、動作のどこで時間がかかったか」を見ます。同じ60点でも、大きな物を運ぶ段階で遅い人と、薄い物を拾う段階で遅い人では、確かめることが変わります。

02|10項目と観察の焦点

項目名と順序は下表のとおりです。右欄は、結果を介入につなげるための臨床観察の例で、独自の加点・減点基準ではありません。[8]

項目 物品 実施中に見たいこと
1 大球 手を十分に開いて包み、運ぶ間に落とさず、目的位置で離せるか
2 中球 球へ手を合わせるタイミングと、持ち替え・転がりの有無
3 大直方 大きな物を保持したまま運ぶ時の肩・肘・体幹の使い方
4 中立方 指の開きと接触位置を合わせ、次の物へ滑らかに移れるか
5 木円板 円板の縁を捉えるまでの試行と、運搬中の握り直し
6 小立方 小さな角へ指を合わせる正確さと、置く時の手放し
7 布 薄い端を拾って裏返す時、指先と前腕がどう協調するか
8 金円板 薄い円板を拾う時に、滑らせる・何度も触り直すことがないか
9 小球 小さい球の位置を捉え、転がさずに保持できるか
10 ピン 細い物の向きを整え、穴に合わせるまでの時間と調整

特定項目の遅さだけで「肩の障害」「感覚障害」「失行」と決めるのではなく、実際に止まった場面を手がかりに、関節運動・感覚・視覚・課題理解を確認します。

布課題のイメージ。薄い端をつまみ、裏返す過程に注目します。配置は説明用に簡略化しています。
布課題のイメージ。薄い端をつまみ、裏返す過程に注目します。配置は説明用に簡略化しています。

03|準備|同じ条件で比べられる環境を作る

専用キット、付属の手引書・検査シート、ストップウォッチ、筆記用具を準備します。市販の積み木や硬貨は練習には使えても、寸法・材質・配置が変わるため、正式なSTEF得点へ換算する用途には使いません。[1]

安定した椅子と適切な高さの机を用い、足底と座位を整えます。車椅子の使用や座位条件は記録し、再評価でもそろえます。検者は本人と同じ側から見本を示すと、動きの方向を共有しやすくなります。[4]

新人の準備例

物品を並べる前に、今日の状態を確認する

「肩の痛みはありますか」「眼鏡は普段どおりですか」「今日は疲れが強くありませんか」と確認します。麻痺側、利き手、疼痛、疲労、座面と机の関係を記録すれば、次回の点数が変わった時に条件の違いを振り返れます。

姿勢や上肢を検者が支え続ける必要がある場合は、何を支えたかを明記します。正式測定と、支援を加えてできる条件を探す試行は、記録を分けて扱います。

04|実施手順|見本→計時→左右別の記録

以下は公開された手引の基本規則を短くまとめたものです。各物品の正確な配置・移動先・制限時間は、使用キットの付属手引書で確認します。[4]

  1. 課題を示す

    項目ごとに見本を示し、どこからどこへ動かすかを共有します。

  2. 開始位置をそろえる

    検査する手を、体の中央にある検査台の手前縁へ置きます。

  3. 合図と同時に計時する

    開始の合図で計時し、最後の物品が指定位置へ収まった時に終了。0.1秒単位で記録します。

  4. 片側を記録して、反対側へ

    原則は右→左。非麻痺側・軽症側がある場合はそちらを先にし、左利きへの対応を含めて手引に従います。

  5. 失敗・時間超過を残す

    落下・誤配置はやり直し、3回目も失敗なら当該項目を不能とします。制限時間では中止し、そこまでの完了個数を記録します。

測定中は、秒数と動作を同時に見る

「早く」と繰り返し促したり、途中で持ち方を教えたりすると、再評価の条件が変わります。助言を加えて試すなら正式測定を終えてから行い、その反応を臨床所見に残します。

全項目を一律の移動方向で実施する検査ではありません。布の裏返しやピンの操作を含め、課題ごとの違いを実施前に確かめます。説明イラストを配置図の代わりにはしません。

05|採点|左右別に100点、秒数も保存する

片側の総得点10項目の換算得点を合計 → 0〜100点

右と左を別々に記録。高得点ほど、その検査条件で速く遂行できたことを表します。

所要時間を、正式な検査シートの項目別得点プロフィールに照合します。全項目に共通する「10秒なら何点」という計算式はありません。不能・時間超過の処理も原版に合わせます。[1][8]

記載例は「STEF:右62/100、左96/100。右麻痺、発症前右利き」。加えて、各項目の秒数と観察を残します。得点の段階が変わらなくても、所要時間や動作の様子には変化が出る場合があります。[9]

合計点と観察を混ぜない

体幹を傾けた、肩をすくめた、指を何度も置き直したという所見は重要です。ただし、その所見を理由に検者が独自に点を引くのではなく、採点と動作所見を分けます。

06|何点なら実用手?|点数から言えること・次に見ること

STEFの点数は、年齢階級別の基準や過去の本人の結果と照合します。一方、単一の点数を、そのまま食事・更衣・復職の自立判定に置き換えることはできません。「検査台上で速くできること」と「生活の中で使っていること」を並べて確かめます。

結果のパターン 次の確認 介入へのつなげ方
大きい物を運ぶ時に遅い リーチ、肩の痛み、体幹の安定、把持の持続 持てる大きさ・距離・重さから、運んで離す動作を組み立てる
薄い物・小さい物で遅い 指先の接触、母指の対立、感覚、見え方、手関節の位置 つまめる条件を探し、硬貨・留め具など本人の生活課題へ進める
高得点だが生活で使わない 両手動作、疲労、習慣、失敗への不安、使用機会 実際の食卓や更衣で役割を作り、使用回数を確認する
0点の項目が多い 課題理解と、届く・触れる・保持する段階の残存能力 FMA-UEなどを併用し、最初に成立する動作を記録する

点数だけから半年後の回復率を示すこともできません。予後を考える時は、病期、麻痺・感覚、認知面、生活課題と、繰り返し評価した経過を合わせます。

07|2026年のエビデンス|何点変わればよいか

Imaiらは亜急性期脳卒中者53名を対象に、入院時・翌日・4週後のSTEFを検討しました。再検査信頼性はICC 0.98、MDC95は12.7点でした。整数の合計点なら13点以上の変化が、この研究の測定誤差を超える目安に相当します。[6]

重要な変化を判断する基準 MIC:ROC法 調整した予測法
本人の変化の実感(GRCS) 14.5点 7.9点
療法士の変化の判断(GRCS) 9.0点 8.6点
FIMセルフケア 11.5点 9.5点
mRS 16.0点 16.6点

MDCは測定誤差、MICは臨床的な重要性を考える指標です。基準と推定方法で値が変わるため、「STEFは何点上がれば必ず改善」と一つにまとめません。ここでは公開抄録で確認した値を示しています。

架空の読み方の例

45→59点なら14点上昇で、上記MDC95を超えます。45→52点なら7点上昇で、このMDC95には届きません。ただし、いずれも痛み・測定条件・生活での変化を併記します。MDC未満を「リハビリの意味がなかった」と解釈する必要はありません。

08|信頼性と、他の上肢評価との使い分け

Shindoらの2015年研究では、発症60日以内の片麻痺者34名を3週間追跡しました。STEFの内的一貫性はα=0.98〜0.99で、ARAT・FMA・MALと強い関連、FIMと中等度の関連を示しました。この研究での標準化反応平均はSTEF 0.52、ARAT 0.95であり、同じ対象でも評価によって変化の捉え方が異なります。[5]

評価 臨床での主な使い道
STEF 物品操作の速さと項目ごとの得意・不得意を把握する
FMA-UE 脳卒中後の上肢運動障害を捉える。操作課題が難しい時も運動面を確かめる
ARAT 把握・握り・つまみ・粗大運動の課題遂行を評価する
MAL・実生活の観察 生活で患側上肢をどれだけ、どのように使っているかを捉える

「STEFが上がったのに生活が変わらない」ときは、検査を増やすだけでなく、本人が困る動作をその場で見せてもらいます。片手の速度では捉えにくい、両手の役割分担や物品配置が見えてくることがあります。

modified STEFにも別の検証研究がありますが、原版STEFと同じものとして得点・基準を混用しません。[7]

09|臨床ストーリー|球は運べるが、薄い物を拾えない

架空事例 / 以下は標準検査後の介入例

「手は動くけれど、小銭が取れない」

Aさんは大きな物品の移動は比較的滑らかですが、金円板では指先が滑り、何度も触り直します。療法士は「指の力が弱い」と決めず、接触の位置、母指の向き、感覚、視線、手関節の姿勢を確認しました。

  1. 止まる場所を分ける:触れる前なのか、拾う瞬間なのか、保持して運ぶ途中なのかを観察する。
  2. 一つの条件を変えて試す:検査終了後、少し厚い物や滑りにくい台面で把持が成立するかを見る。
  3. 生活へ戻す:財布から硬貨を取り出す場面で、置く場所と両手の役割を整える。
  4. 正式測定は標準条件へ戻す:練習で得た工夫と、STEFの経時変化を別々に記録する。
金円板を拾う場面のイメージ。指先の接触と、拾い上げるまでの調整を見ます。正確な配置・移動先は手引書を参照します。
金円板を拾う場面のイメージ。指先の接触と、拾い上げるまでの調整を見ます。正確な配置・移動先は手引書を参照します。

10|生活で使う手へ|点数の先に目標を置く

例えば目標が「自分でお茶を飲むこと」なら、カップの大きさ、取っ手、重さ、置く距離を確認します。動かしやすい条件から練習し、こぼさず戻せることや、疲れた時にも使えることを確かめます。STEFの変化と、実際にできた生活動作を両方残します。

検査結果を生活動作へつなぐ場面。カップを持つ条件と、家庭で使う機会を本人・家族と共有します。
検査結果を生活動作へつなぐ場面。カップを持つ条件と、家庭で使う機会を本人・家族と共有します。

家族への説明も「点数が上がりました」で終えず、「薄い物を拾う時間はまだかかりますが、取っ手のあるカップは自分で持てる場面が増えています」と具体化します。点数と本人の体験が結びつくと、次に練習することを共有しやすくなります。

11|記録PDFと正式資料

STEF 評価・臨床記録シートをダウンロード

A4・2ページ。10項目の左右の秒数・得点、総得点、測定条件、動作観察、次の介入、再評価を記録できます。採点は付属の正式検査シートで行い、本用紙へ転記します。

正式キット・手引書・検査シートの案内

出典:金子翼らのSTEF、および酒井医療の資料。実施・採点の詳細は原版をご確認ください。臨床観察・支援計画欄はSTROKE LABによる補足です。

12|よくある質問

全項目を実施できなかった時、空欄は0点ですか?

測定して不能だった項目と、疲労などで実施していない項目は区別します。未実施を機械的に0点として総得点に混ぜず、理由を残し、完了した評価と分けて扱います。

毎回、麻痺側だけを測ってもよいですか?

片側だけの経過を追う場合は、その実施範囲を明記します。初回には反対側も含めて把握すると、利き手や両側の操作能力を考える材料になります。

100点なら上肢に問題がないと考えてよいですか?

検査で高得点でも、痛み、疲労、両手作業、生活での不使用が残る場合があります。項目の秒数、動作の質、本人が困る作業を確認します。

短時間で測りたいので、項目を半分にできますか?

任意に省いた結果を、原版10項目・100点満点の得点として換算しません。何を実施したかを明示し、同じ条件の結果と比較します。

参考文献・原資料

  1. 酒井医療:ステフ SOT-3000・正式用具と検査シート
  2. 酒井医療:上肢機能評価・STEFの実施例
  3. 金子翼・生田宗博:簡易上肢機能検査の試作.理学療法と作業療法.1974;8(3):197–204.
  4. 金子翼:簡易上肢機能検査・検査者の手引(公開転載テキスト。平成18年の用具変更資料を含む)
  5. Shindo K, et al. Psychometric properties of the simple test for evaluating hand function in patients with stroke. Brain Inj. 2015;29(6):772–776.
  6. Imai T, et al. Minimal detectable change and minimal important change of the simple test for evaluating hand function in patients with subacute stroke. Top Stroke Rehabil. 2026;33(7):767–778.
  7. Irie K, et al. Development of the modified simple test for evaluating hand function (modified STEF): Construct, reliability, validity, and responsiveness. J Hand Ther. 2019;32(3):388–394.
  8. 五嶋渉ほか:重度手根管症候群に対する母指対立再建術の機能評価.日本手外科学会雑誌.2025;41(4):417–419.
  9. 酒井医療:ステフ計測ソフトウェア 7ステップスガイド(2012年版)

確認日:2026年10月31日。メーカー資料、国内論文、PubMedの原著抄録を照合しました。手引の公開転載テキストは確認できましたが、現行製品に付属する採点表全体は確認できていないため、秒数の換算表は再作成していません。声かけ・介入例・イラストは説明用に作成しています。

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